11 キャプテンの説得
「おい手古山よ。
お前は昨日遠川さんに竹刀でケツをシバかれまくって、
気持ちよかったんやろ?」
それに対して手古山先輩。
「メッチャ気持ちよかった」
「これからも、そんな快感を味わってみたいと思わんか?」
「思う」
「じゃあ、遠川さんが監督でもええな?」
「うん」
何なのこのやりとり?
「うおおおい手古山⁉お前裏切るのかコノヤロウ!」
怒りの声を上げる岩佐先輩。
しかしそんな事には構わず、キャプテンは次に扇多先輩に声をかけた。
「おい扇多、お前は昨日みたいに激しい練習をすると、
自慢のそのセンター分けのセットが乱れる事が不満なんやな?」
それに対して扇多先輩。
「まったくその通り」
「じゃあこれから練習に出る時は、
ウルトラハードスプレーでガッチリとセットしといたらええんとちゃうか?」
「あっ!そうか!その手があったか!」
「じゃあ、遠川さんが監督になって、激しい練習をしても大丈夫やな?」
「うん、大丈夫やで」
だから何なのこのやりとりは。
「扇多まで何だよオイ⁉ふざけてんのかお前ら!」
怒り狂う岩佐先輩。
するとそこに、ユニフォーム姿の小暮が現れた。
「どうも、遅くなってすみません」
その小暮にキャプテンは問いかけた。
「小暮君、君は昨日来てくれた遠川さんに、
ウチの部の監督になって欲しいとは思わへんか?」
それに対して小暮は、逆にキャプテンに問い返した。
「他に監督に適任の人って居るんですか?」
それを聞いたキャプテンは、ニヤッと笑って岩佐先輩に言った。
「さあどうや?
もはや遠川さんに監督をやって欲しくないって言うてんのはお前と近藤だけやぞ?
どうすんねん?またお前らだけ野球部を抜けるんか?」
「ぐぬぬぬ・・・・・・」
「ど、どうしようガンちゃん・・・・・・」
キャプテンの言葉にたじろぐ岩佐先輩と近藤先輩。
何か俺が初めてここに来た時みたいな感じになってるけど、
あの二人はどうするんやろうか?
またあの時みたいにこの部を辞めてしまうんやろうか?
と思ったその時、キャプテンが俺の方をチラッと見やり、パチッとウインクした。




