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ハリガネベイスボウラーズスリイ!  作者: 椎家 友妻
第三話 その、ある事情とは
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7 遠川さんがやって来た

 それから数日後、遠川さんは約束通り張高野球部の練習の見学に来てくれた。

 いつもの市営グラウンドに集まった張高野球部員に、下積先生は遠川さんを紹介した。

 「こ、こちらは、去年まで浪速ノ国体育大学の

野球部に所属していた遠川沙夜さんだ。

今日は縁あってウチの練習を見学しに来てくれたので、

聞きたい事があればどんどん質問するように!」

 その言葉を受け、隣に立つ上下黒のジャージ姿の遠川さんが、元気のいい声で言った。

 「はじめまして!遠川沙(とおかわさ)()です!

今日は皆の練習風景が見られる事を楽しみにしているのでよろしく!」

 それに対して俺達野球部員は、

 「お願いしゃーっす!」

 と帽子を取って頭を下げた。

そして俺の隣に居たキャプテンが、俺に小声で話しかけてきた。

 「もしかして、あの人が正野君が言ってた監督候補の人か?」

 「はい、そうです」

 俺が小声でそう答えると、今度は背後に居た岩佐先輩が小声でつぶやいた。

 「名門大学の野球部が知らねぇけど、所詮は女だろ?大丈夫かよ?」

 その言葉に小暮がピクンと反応したが、

それ以上に反応したのは遠川さんで、

彼女は不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

 「確かに私が女というのは心もとないかもしれないが、

少なくとも小学生チームに負ける君らよりは、

野球の事はわかっているつもりだよ?」

 「な、何だとぉっ⁉」

 怒りの声を上げる岩佐先輩。

するとそこに、向井先輩が口を挟んだ。

 「なあ、せっかく来てくれたんだから、

今日は遠川さんにコーチをしてもらわない?

そうすればこの人の言ってる事が、本当かどうかもわかるだろう?」

 「む、た、確かに」

向井先輩の言葉に、岩佐先輩はそう言って口をつぐんだ。

そしてそれを聞いたキャプテンは、右手を上げて遠川さんに言った。

 「そういう訳なんで、

今日は臨時コーチとして俺達を指導してもらえないでしょうか?」

 すると遠川さんは、ニッコリと笑ってこう言った。

 「ああいいぞ。私でよければいくらでも協力させてもらおう。

よろしいですか?下積先生」

 「は、はひっ!ぜひお願いします!」

 遠川さんの問いかけに、下積先生は声を上ずらせながら答えた。

相変わらず彼女を前にすると物凄く緊張するみたいや。

まあその気持ちは俺もわかるけど。

 そんな中遠川さんは、おもむろに細長い袋からある物を取り出した。

ちなみにそれは、竹刀やった。

それを見た山下先輩が遠川さんに尋ねた。

 「あの、その竹刀は何に使うんですか?」

 それに対して遠川さんは、優しい笑みを浮かべながらこう言った。

 「もちろん、野球の指導で使うんだ。

こんな事もあろうかと持って来たんだよ。

人を鍛える時は、これが一番便利だからな」

 それを聞いた俺達野球部員は、その優しい笑顔とは裏腹に、

遠川さんの内面から放たれるドス黒いオーラにたじろいだ。

 一体これからどんな特訓が始まるんやろうか?

それを思うと、俺達は生唾を飲み込まずにはいられへんかった。

とその時、千田先輩が俺に話しかけてきた。

 「なあ正野、あの人の名前、遠川沙夜っていうたか?」

 「え?はい、そうですけど?」

 俺が小声で答えると、千田先輩は眉をひそめて遠川さんを見据え、

 「いや、そんな訳ないか」

 と独り言のようにつぶやいた。

 はて、何なのやろう?


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