3 だって、恥ずかしいじゃん!
そして一組の教室へ行った俺は彼女を連れ出し、屋上へとやって来た。
今回も都合のいい事に屋上には他に誰も居なかった。
ちなみにここで断っておくが、俺がここに連れてきた彼女とは、
伊予美ではなく小暮です。
何で伊予美やなくて小暮やねんと思う方は多いやろう。
小暮も何でいきなり俺に連れ出されたのかわからないという顔をしている。
そんな小暮に、俺は頭をかきながら言った。
「すまんな小暮、いきなりこんな所に連れだして」
それに対して小暮は、走ってここまで来たせいか、若干顔を赤くしながら言った。
「それは別にいいけど、一体何の用だよ?」
「実は、お前に頼みたい事があるんや」
「頼み?な、何だよ?」
目を丸くして尋ねる小暮に、俺は頭を下げて言った。
「伊予美ちゃんに、野球部のマネージャーになってくれるよう頼んでくれへんか?」
「は?」
俺の言葉を聞いた小暮は更に目を丸くした。
そして一転して不機嫌そうな顔になり、こう言った。
「そんな事の為に俺をここに連れてきたのか?」
「確かにお前にとってはそんな事かもしらんけど、
俺にとっては切実な問題なんや!頼むわ!」
「人の気も知らないで・・・・・・」
「え?何て?」
「何でもねぇよ!ていうかそういう事は自分で頼めよ!
何でわざわざ俺に頼ませるんだよ⁉」
「だってお前、これから本格的に野球部の活動をしていくには、
マネージャーが絶対必要やろ?」
「そりゃそうだけど、
伊予美ちゃんにマネージャーになって欲しいのはお前だろ?
だったらお前が頼むべきだろ!」
「だ、だって、恥ずかしいじゃん!」
「じゃんって何だよ⁉それに恥ずかしがるような事でもねぇだろ!」
「そうは言うけどお前な、
伊予美ちゃんにマネージャーになってもらおうと思うたら、
伊予美ちゃんに『マネージャーになってください』って言わなあかんやろ?」
「当たり前だ!そう言えばいいだろ!」
「これって、愛の告白みたいとちゃう⁉」
「どこがだよ⁉愛の告白にマネージャーを引用する奴が居るかよ⁉」
「間違えて『俺だけのマネージャーに、なってください』
って言ってしまいそうで・・・・・・」
「だったらまず先にちゃんと告白をしろよ!」
「なっ⁉あ、アホか!そんなの恥ずかしいじゃん!」
「だからじゃんはもういいんだよ!
馬鹿馬鹿しい!そんな事にいちいち付き合ってられるか!
俺はもう教室に戻るからな!」
小暮はそう言って踵を返すと、スタスタと校舎の入り口に向かって歩き出した。
それを見た俺は、
「ま、待ってくれ小暮!ちゃんと伊予美ちゃんにマネージャーの事頼んどいてくれよ⁉」
と訴えたが、小暮は、
「うるさい!そういう事は自分で言え!」
と吐き捨てるように言い、そのまま屋上を後にした。
「くっ・・・・・・」
その場にひざまづく俺。
何となくこうなる気はしとったけど、やっぱりこうなってしもうた。
何か今の俺って、昨日の下積先生そのまんまやなぁ・・・・・・。
いやいや!
こんな事ではあかん!
確かに小暮の言うとおり、
伊予美にマネージャーになって欲しいのはこの俺!
だから俺がお願いせなあかん!
そう決意した俺は、立ち上がって両拳を握りしめた。
・・・・・・でも、一旦それは置いといて、まずは監督の方から何とかしよう。




