13 伊予美は何も知らない
するとその時、
「あ、二人ともここに居ったんや」
と、公園の入り口から伊予美の声が聞こえた。
その途端俺達は、
「い、伊予美ちゃん⁉」
と同時に声を上げ、伊予美の方に振り向いた。
さっきまでの闘争心は、お互いにどこかへ吹き飛んでしまった。
そんな俺達の前に、買い物袋を下げた伊予美が駆け寄って来て、
ニッコリ笑って言った。
「二人で何の話をしてたん?」
「うっ・・・・・・」
伊予美の言葉に口をつむぐ俺と宗太。
間違ってもさっきの話を伊予美に言う訳にはいかんので、
俺はとっさにとりつくろった。
「い、いやあ、最近なかなか会われへんかったから、
今度お互い休みがあう日に遊ぼうって話をしとってん」
「そ、そうそう!」
宗太もわざとらしく頷く。
すると伊予美はそれを疑う様子もなく、目を輝かせて言った。
「うん!その時はウチも誘ってね!
あ、でも、たまには男同士で遊んだ方が楽しいのかな?」
「と、とんでもない!」
「その時は絶対に伊予美ちゃんも誘うから!」
伊予美の言葉に俺と宗太は全力で訴えた。
するとそれを聞いた伊予美は改めてニッコリ笑ってこう言った。
「ありがとう!ウチも楽しみにしてるね!」
そんな伊予美の笑顔に、俺と宗太はぎこちない笑顔を返すのが精一杯やった。
何やかんや言うても、俺と宗太は伊予美を前にするとたじたじになってしまう。
これじゃあ下積先生をどうこう言う事はでけへんわ。
まあこんな感じで、今日も日が暮れていくのやった。




