12 写真の人物
そしてその中に一人の人物が写っていて、
それを見た下積先生は途端に顔を真っ赤にし、ガバッと立ち上がって叫んだ。
「おわーっ⁉そ、その写真は何でもないんだ!だからそこに置いといて!」
「おやぁ?何をそんなに慌てているんですか?」
下積先生のリアクションが何やら面白いので、
俺も立ち上がって碇の元に歩み寄り、その写真を覗き込んだ。
その写真に写っていたのは、二十歳すぎくらいの女の人やった。
黒くて長い髪を後ろでひとつに束ねた、細身で背が高い女の人。
ちなみにその写真は近くで『はいチーズ』というノリで撮ったものではなく、
少し離れた所からこっそり隠し撮りをした感じの写真やった。
これを見た俺は、下積先生に尋ねた。
「この女の人って、先生の恋人ですか?」
「い、いや、違うんだ!僕の恋人だなんてとんでもない!
僕みたいなし(・)が(・)ない(・・)男が、そんな素敵な女性と付き合える訳がないし!」
両手をあちこちに動かしながら、下積先生は言った。
そしてこの人のリアクションとこの写真で何となく状況が分かった俺は、
ズバリ下積先生に言った。
「先生もしかして、この写真の人に片思いをしてるんですか?」
すると下積先生は一層顔を赤くして叫んだ。
「そ、そんな事は君達には関係ないだろ⁉いいからその写真を返してくれ!」
しかし俺はニヤニヤしながらこう続ける。
「いや~、先生も青春してるんですねぇ。
で、この人は誰なんです?一体どういうキッカケで好きになったんですか?」
「そ、それは・・・・・・」
俺の問いかけに、下積先生はモジモジしながら語り始めた。




