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ハリガネベイスボウラーズスリイ!  作者: 椎家 友妻
第一話 張高野球部、本格始動!
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11 落ち込む下積

 下積先生の住む部屋は、六畳の畳部屋がひとつに狭い台所とトイレだけの、

『ザ・一人暮らし』というような所やった。

でも部屋の中は仕事の書類等が沢山積まれてはいるものの、

キチンと整頓されていて、男の一人暮らしとは思えない程キレイに片づけられていた。

割と几帳面な性格なんやろうか?

それとも彼女が片づけてくれてるとか?

そんな下積先生は、

丸いちゃぶ台の前に座った俺達の前に紙コップに入れたお茶を差し出し、

苦笑しながら言った。

 「狭い所でごめんねぇ」

 「いえ、全然構わないですよ」

 俺はそう言いながら紙コップを受け取った。

すると同じく紙コップを受け取った碇が、下積先生に言った。

 「先生、もう体調は大丈夫なんですか?」

 「ああ、実はインフルエンザにかかってしまってね、

今日ようやく出歩けるくらいに回復したから、

底をついた食料の買い出しに行っていたんだ」

 「ずっと一人で寝込んでいたんですか?」

 「うん、一人暮らしだからね」

 俺の問いかけに下積先生はそう答え、畳に腰をおろしながら続けた。

 「野球部の方はどうだい?

この前はあの矢沙(やさ)(ぐれ)高校に勝ったらしいね?凄いじゃないか」

 「あ、はい、まぐれの部分もありましたけど、何とか勝つ事ができました」

 俺がそう答えると、下積先生は視線を畳に落としながらこう言った。

 「そうか、皆自主的に頑張ってるんだね。それに引き換え僕は全然ダメだな・・・・・・」

 「そんな事ないですよ。また野球部に顔出してくださいよ。

先輩達も心配してましたよ?」

 「でも、野球の指導も満足にできない僕が行っても、

却って皆の足を引っ張るだけだよ」

 「そやけど、下積先生は今まで野球部の為に一生懸命頑張ってくれたんですよね?

そういう人が居てくれるだけでも、チームに団結力が生まれるんですよ。

指導の方は、他に監督を探せばいいし」

 「でも他に監督を雇うなら、尚更僕は必要ないよ・・・・・・」

 「・・・・・・」

 う~む、こりゃあ俺がいくら説得しても無理そうなやなぁ。

凄く真面目な人なんやろうけど、

その真面目さが却ってこの人をがんじがらめにしている感じや。

 これはどうしたもんかと途方に暮れていると、

そんな俺と下積先生のやり取りを眺めていた碇がおもむろに立ち上がり、

部屋の隅にある仕事机のそばに歩み寄った。

そして机にあったある物を手に取り、それを下積先生に差し出して言った。

 「先生、ここに写っている人はどなたですか?」

 碇が手に取ったそれは、プラスチック製の写真立てやった。



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