9 首吊り疑惑
という訳で俺は、張高野球部の顧問である下積先生が
住んでいるというアパートにお見舞いに行く事になった。
部活を終えてから向かっているので、辺りはすっかり夜になっていた。
俺は碇をつれて(というかこいつが勝手について来たんやけど)電車に乗り込み、
下積先生のアパートの最寄り駅に向かっている。
電車で十駅くらい行かなければならないので、
そこにたどり着くだけでもそこそこ時間がかかるのやった。
そんな電車の中でボーっと座席に腰掛けていると、隣に座る碇が俺に話しかけてきた。
「ねぇ、顧問の下積先生って、どんな人なんだろうね?」
「キャプテンから聞いた話やと、ごっつい真面目な人らしいなぁ」
「家で首でも吊っていなければいいけど」
「何かそれ、妙にリアルな話やな・・・・・・」
等と言い合っているうちに、電車は目的地の『益子駅』に到着し、
俺と碇は電車を降りて駅の改札を出た。
そこは小さなアパートや年季の入った家が建ち並ぶ住宅街で、
帰宅の時間のせいか、多くの人達が改札から出て住宅街へと散っていく。
そんな中俺はユニフォームのズボンからキャプテンにもらった地図を取り出し、
下積先生のアパートの位置を確認した。
そのアパートはここから十分ほど歩いた所にあるみたいやった。
「よっしゃ行くか」
俺が地図をポケットにしまいながらそう言うと、
碇はニッコリ笑って「うんっ!」と元気よく頷いた。




