8 再びキャッチボールで状況報告
その日の放課後。
俺達張高野球部はいつもの市営グラウンドへ行き、練習を開始した。
そしてストレッチとランニングを終え、キャッチボールの時間になったところで、
俺はキャプテンとキャッチボールをしながら今日の昼休みの報告をした。
ビュッ(ボールを投げる音)。
「今日の昼休み、顧問の下積先生の事を色々聞いてきましたよ」
パシッ、ビュッ(ボールをグローブで受けて、また投げ返す音)。
「おう、どうやった?」
パシッ、ビュッ。
「何か体調を崩して、ここ一週間休んでいるらしいです」
パシッ、ビュッ。
「そうかぁ、あの先生は結構身体が弱いからなぁ」
パシッ、ビュッ。
「下積先生って、あんまり部活に熱心じゃないらしいですね。
だから野球部にも全然顔を見せないんでしょ?」
パシッ、ビュッ。
「いや、それは違うんや。あの人はな、責任感がムチャクチャ強いねん」
パシッ、ビュッ。
「え、そうなんですか?じゃあどうして全く部活に顔を出さないんです?」
俺の問いかけに、キャプテンはボールを投げ返すのをやめてこう続けた。
「下積先生はな、張高野球部を何とかして強くしようと色々頑張ってくれとってん。
でもあの人は野球に関してズブの素人で、やる気は物凄くあるんやけど、
指導の方はからっきしでけへんねん。
おまけにウチの部はついこの前まで連敗続きやったやろ?
その事に責任を感じて、下積先生は野球部に顔を出さんようになってしもうたんや」
「そ、そうやったんですか」
「多分学校を休んでんのも、その事が少なからず原因なんとちゃうか?
部活の事で悩みすぎて、ノイローゼにでもなったんやろ」
「えぇ?部活の事だけでそこまでなりますかね?」
「下積先生はそういう人なんや。ええ先生なんやけど、真面目すぎる性格なんやな」
「そう、なんですか。でもそんだけやる気のある先生なら、
何とかまた戻って来て欲しいですね」
「そうやなぁ、じゃあちょっくら下積先生の所にお見舞いに行くか」
「いいですね、部活の皆で行きましょう」
「いや、正野君行ってきて」
「またそうやって俺に押しつける!」




