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第78話 「うまく行ったみたいでよかったな。」

お読みいただきありがとうございます。


「ハッ ん?ここは?」


俺はどこか見覚えのある部屋で目が覚める。どこだったかな、ここは。

俺が見覚えのあるベッドがある部屋なんて、ダンジョンのハオの私室、ルグラの宿屋、ニピッドのギルド、マロ氏の店、ブラッドレイ邸の五つしか...って、もう一つあったわ。

なるほどな、てことはうまく行ったみたいでよかったな。

ここは、サンヨウ砦の救護室だな。気を失ってからここに運ばれたのは予想が付くが、この世界で初めての大怪我がスキルの過剰な重ね掛けで自傷とは、これまでが順調すぎたと納得すればいいのか、これからを考えなすぎと言えばいいのか。


まあ、生きていたし見たところ後遺症もないようなので良しとしよう。

とりあえず、ぐるりと見まわしても俺以外に誰もいないことからも少し時間が経っているかもしれないな。


もともと魔力枯渇でここにいたはずの“深緑の反撃”のメンバーもいないようなので魔力が回復するくらいの時間が経っているということがわかるのだ。

俺が気絶した理由も怪我以外に魔力が極端に減りすぎたことも含まれるのだろう。


「さて、起きるか。」


このまま救護室で寝ていても暇なだけだし、それならいっそ動いたほうがいい。もしかしたら、時間が経ちすぎてレイアは学園の依頼の方に行っているかもしれないが、まあ、転移陣を使えばすぐに戻れるから、急げば間に合うかもな。


俺はベッドから降りて立ち上がると、前に通った道を進んで壁の上に出る。〔巨大化〕の影響が出ないかと心配したが、想定よりも数段軽い影響しか出ておらず、軽度の歩行困難といったところだった。それも〔骨格完全制御〕で無理やり矯正しいつもの調子に戻る。


そして、壁の上に出るとそこから見えるのは、主に二つの光景だった。


まず一つ目は言わずもがな、レイアの魔法でしっかりとどめを刺したあの巨大な土竜である。傷口を見る限りでは額の真ん中にある小さな穴と俺が握り潰した尻尾の先の方くらいしか見当たらない。俺は直接見ることが叶わなかったが、とんでもない魔法だということだろう。


それ以外に土竜の死体はまるで生きているかのようにキレイなままだ。これなら俺が使うのにもいいかもしれない。ついに新しい有用なマスクを手に入れることが可能かも。これまではルグラの鉱山ダンジョンのゴーレムやゴブリンとかのマスクには適してない魔物ばかりだったからな。


二つ目は、河川の復旧工事のようだ。そう言えば土竜が山に埋まっているときに川がどうとかいっていたっけな。

完全に埋まっていたようだから、復旧にも相応の時間が必要だろう。しかし、重機も無く魔法だけであそこまでの速度で掘り進めることができると考えると機械が無いとしても問題が無いんだな。

俺がどれだけの間、眠っていたかわからないが、すでに川があったであろう位置に溝が作られていてそこを深く掘る作業をやっている段階だから、結構経っているのかもしれない。


あ、エアリードがいる。ってことは、アレが“深緑の反撃”のメンバーか。魔力枯渇で苦しそうだったし急ぎだったから顔も見なかったけど、うん、元気そうでよかった。


とりあえず、今砦の中には人はいないようだし、あそこに行ってレイアがどうしたか聞いてみよう。一人くらいは居場所を知っている人がいてもいいはずだ。

とりあえず見えてるエアリードか国境警備隊の隊長あたりだな。


ここから河川工事現場までは、結構な距離がある。スキルを使えば、時間をかけずに一直線で迎えるだろうが、念のためスキルは使わずに向かう。一応病み上がりと言っておかしくない体だからな、俺。


ただ、さすがにこの距離を歩いていたら、間違いなく日が暮れるため、全力疾走はしないまでも駆け足程度で走っていく。

たったったったっ、と走ってみるが、スキルで矯正しているとはいえ何やらいつもより体が軽く感じる。なんでだろうか。


疑問に感じながらもエアリードのもとへと到着した。エアリードはまだこちらに気が付いていないので、少し驚かせてやろうと思う。

エアリードの後ろに音もなく忍び寄り両手を広げて。


「ばぁ!!」

「おわっ!?」


しょうもないとは思うが、これがまた絶妙な驚き具合なんだよな。相手を怒らせるでもなくただ驚かせるには、この方法が一番だ。驚かせた後は、周りの反応は決まってこう。


「「「「はっはっはっはっはっは。「やられたなぁリーダー」」」」」

「う、うるせーよ!」


遠くの方にいる“深緑の反撃”はもちろん俺の存在には気が付いていただろう、視界に捉えられるような動きをしていたから。

そんな彼らに笑われているエアリードは俺を軽くにらみつけ、用件を聞いてくる。


「それで?こんなことしたのは今は不問にしてやる。快気祝いにしておけ。何の用だ?」

「すまんすまん。それで、聞きたいことがあってさ。今ってあれからどれくらい経ったかってこととレイアがどこにいるか知らないか?ってことが聞きたくてさ。どっちも知ってそうなエアリードに聞きに来たわけさ。」


さすがにSSランクなら情報を持っているだろう。


「ああ、あれからの時間な。今が『女神』が土竜にとどめを刺してから丸2日ってところだな。『女神』は一応依頼が完了したってことで王都まで報告に戻ってるって話だぞ。転移陣で戻ったし、そのまま転移陣で帰ってくるだろう。報告だけのはずだから、すぐ戻ってくるさ。」

「おっ!そうなのか。それなら予定変更はないだろうから、ラッキーだな。そんじゃ俺も戻ろうかね。」

「おう、それがいいだろう。ここの事は俺たちやベルフォード王国の国境警備隊の仕事だからな。まあ、ミツバとベルフォードの国境があの川っつーことで無理やり国境警備隊の仕事にしちまったみたいだけどな。」


なるほど、国境を警備するのが仕事なら国境線の修復も君たちの仕事の内ですよってことなんだろうな。

実際、ああして仕事をしているんだから、納得してやってるんだろう。俺に手伝えることはないか聞こうかとも思ったが、役立てるようなことが何もないんでやめた。


とりあえず“深緑の反撃”とちょうど近くにいた隊長さんに帰ることを伝えて砦に向かう。隊長さんはレイアから仕事が終わったら帰ることを聞いていたようなので、特に引き留められることもなく了承してくれた。

まあ、俺のスキルが気になるようだったが、無言で黙っていたら引き下がってくれた。


あとは、あの土竜の死体だが、〔骨抜き〕してマスクにするにしてもでかすぎて、〔巨大化〕する必要がある。そうなると今の俺はスキル発動に不安もあるし、レイアと話をしてからにしたい。

利用法は決まっているようなもので、所有権も俺とレイアにあるようだし、特に盗難の心配もない。

兵士さん兵士さん、コレここに置いていってもいいかね?


近くにいた兵士にだめもとで聞いてみた。


だめだよな...っていいらしい。それに保存の魔法もかけてくれるってよ。砦を守った大巨人のためならって、もしかして俺のことですか?


ま、まあ、保管していてくれるなら、それに越したこともないので、その恥ずかしい称号も受け入れよう。

そこですかさず確認するのは自分のステータス。こんな恥ずかしい称号が付いたとしたら全力で隠すしかない。


~~~~~~~~~~~~~

名前:アルカナ

種族:骨の王 (超越根源種)

性別:男

レベル:83

体力:92300/92300

魔力:2058795/2494380

筋力:52160

耐久:360698735

敏捷:52580

精神:2085000

運 :86

【伝説級スキル】

 〔骨の王〕〔人化〕

【固有スキル】

 〔完全反射〕〔魔法陣魔法〕

【通常スキル】

 〔鎌聖術〕〔拳聖技〕〔家事〕

〔縮小化〕〔探知〕〔巨大化〕

【加護】

 〔戦争と死の神の加護〕

【称号】

 〔異世界の死体〕〔着用者〕〔最強の一角〕〔死神〕

~~~~~~~~~~~~~


ふう、どうやら恥ずかしい称号はなかったようだが、それなりに変化はあったようだ。土竜にはレイアがとどめを刺したとはいえ、俺も長時間戦っていたということを考えるとそれも当然かもしれない。


レベルも倍以上になっているし、ステータスも結構伸びた。耐久は倍に膨れ上がっているのは元の値が高いということもあるが、上昇値が破格だからというのもあるだろう。その他の数値も軒並み急上昇している。


あとはスキルか。〔魔法陣魔法〕〔探知〕が増えてるな。気絶している間に〔生命探知〕を習得して合体したみたいだな。〔魔力探知〕と〔気配探知〕は問題なく使えるので特に問題はない。


試しに〔生命探知〕を使ってみる。俺の脳内で周囲の生命力の探知が開始され、脳内地図に再生される。どうやら〔生命探知〕も〔気配探知〕や〔魔力探知〕と同様の使い勝手のようだ。


ふむ、どうやらこれは生きている者すべてに反応するスキルの様だな。これなら、生命力の強弱で人か否か、強者か否かを見分けることができそうだ。〔探知〕はこれとそれ以外の二つを組み合わせて使えるみたいなのでより探すことに便利になるということか。



砦に足を進めようとして〔探知〕を切ろうとしたところで、魔法陣が存在する部屋で魔力が反応したのがわかった。

誰かといっても確定だろう。魔法陣が起動したようだし、十中八九レイアだな。俺を迎えに来てくれたのかもしれない。予定通りなら明日から学園での依頼だから、様子を見に来ただけかもしれないが。起きていたら連れていく的な?


レイアも〔探知〕を持っているため、特に隠してもいない俺の位置は把握しているだろう。それなら俺もそちらに向かえば効率よく合流できる。これでレイアじゃなかったら恥ずかしいなんてものじゃないが、魔力量的にもまず間違いない。


河川工事現場に言った時と同じように駆け足で砦の方に戻ると、砦の通用門のあたりからレイアが出てきた。俺を迎えに来たということで間違ってはいなかったみたいだ。

今回も心配かけたかもしれないので、一応謝っておこう。


「おーい、レイアー!調子はどうだー?」


何を言ったらいいかわからず、調子なんて聞いてしまったが、レイアも昨日とんでもない魔法を使ったはずなので間違ったことを聞いたわけではないよな?

レイアもこちらに来てくれているが、何かを手で持っている。袋のようだが、ずいぶん重そうだな。


「アル!目が覚めたのね?無茶するんだから。〔巨大化〕していても〔超強体〕は5倍が限界って言ってたのに10倍なんて、心配したのよ?」

「すまんね。あそこで逃がすわけにはいかなかったんだよ。どこに行くかわからないし。あの時はあれしかなかったと思ってる。」

「ええ、そうね。でも、あなたが無茶するのは心臓に悪いわ。次がないようにしなさいよ?」

「ああ、わかってる。ところでそれはなに?」


まあ、心配させたようだけど、ここまでボロボロになるとは思っていたわけではないので、気をつけてたとしても結果は同じだ。次も同じことを起こさないようには気をつけよう。

そんな話よりも俺はレイアの手元の袋にくぎ付けだった。

さっきはちょっと離れた場所だったからわからなかったが、その袋からは金属同士が当たる音がしている。その音で中身にも想像が付くが、実際に見るまではわからない。


レイアはその袋をあれの方に突きだして見せる。やはり金属のカチャカチャという音が聞こえるので中身を確信してそれを受け取る。

うん、いい重さだ。自分がどれだけの仕事をしたのか実感できる。


「これが今回の報酬。白金貨5枚よ。すでにユーゴーとギルドへの報告はしてきたから、これで依頼は終了よ。私もアルも動き回れるくらいには魔力も回復しているみたいだし、明日の依頼も問題なく受けることができそうね。」

「いろいろありがとな、レイア。俺の分も報告させちゃって悪い。今度何かでお返しするから。明日の依頼、俺は戦闘技能だし、今日は早めに休んでおきたいなぁ。」

「そうね。さ、帰って用事を済ませましょうか。それと医者が言うにはあなたの体はもう何ともないそうよ。良かったわ。」

「ああ、ありがとう。ん...あれ?用事って?」


俺にこの後用事なんてあったっけ?全く記憶にないんだけど。もともと、法務局に行った後は少しは余裕があったはずなんだが。用事といっても依頼とかそんなオチ?


「忘れてたの?まあ、連絡が来たのは今日みたいだったから仕方がないかもしれないけど、フェアリーズと礼剣チャンからの完成したという報告があったのよ。ギルドに報告に行った時にセバスチャンが待っててくれたの。」

「礼服と儀礼剣のことか。今日取りに行くんだ。了解。」


エミィさんの店の名前は知ってたけど、あの鍛冶屋の名前ってことなんだろうか。儀礼剣作るならって紹介されたわけだけど、店名が『礼剣チャン』って変な名前だな。


「礼剣チャンは儀礼剣を作るのが得意なチャンさんって意味らしいわ。店主のお爺さんがつけたみたい。店主はギルバルド・チャンって名前なんだって。」

「ややこしい苗字だな。ギルバルドちゃんって言ったら怒られそう。」


そんな下らない話は時間の経過を早めるのか、たいして急いでもいないのにもう転移陣の部屋まで到着してしまった。

これから王都に帰るわけだが、今日儀礼剣と礼服を受け取って一週間の学園での講師生活、その後、誕生祭と授与式と予定が詰まってるなぁ。


「魔力は今回は私が負担するわ。行くわよ?」

「ああ。」


まあ、なんにしても楽しみだ、何も予定が無いよりもあったほうが何倍も。

あ、休みもあるとなお良いけど。



くだらない独り言とともに俺とレイアを魔法陣から放たれる光が包む。

数瞬後、その部屋は無人となり魔法陣も光を失った。







受け取りに行きましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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