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第73話 「さて、行きますか。」

お読みいただきありがとうございます。


「私は...」


さあ、どうするのかな。

............あ、あれ?マジでどうすんのかな?



レイアが答えを溜める。沈黙がずんずんと沈むようにこの場の全員に重くのしかかる。あまりの重い雰囲気に周囲の面々はどうしたらいいかもわからずおろおろする俺とその答えに期待し不安になるユーゴー並びに部下数名。


どうにもこういった真剣な雰囲気が苦手ということがわかった気がする。


「(な、なあ、これって受けてくれるんだろうか?)」

「(わかりません。でも悩んでいるのかもしれません。それだけ大変な事態ですから。)」


こそこそと言っているが、たぶん全部レイアにも聞こえてると思うぞ。まあ、それを親切に伝えるつもりはないが。

あ、今度はユーゴーが耐えられなくなったようだ。


「レイア嬢、どうだろうか?報酬は白金貨10枚、10000000セルでどうだろうか?正直、1つの依頼に対して国庫から出せる限界だ。どうにか頼む。」


あーあ、また頭下げてら。この王子様は自分の立場忘れてるんじゃないか?にしても一千万セル。前の世界の価値にして一億円くらいか。大金だし、SSSランクの依頼としても適正だろう。


............頭下げてからどれだけ時間が経っただろうか。レイアはよくこの時間に耐えられるな。沈黙が重く感じられる。俺だったら速攻でオッケーしちゃうけどなぁ。


この沈黙が続く中で、レイアに求められている答えは、Yes、ただそれだけ。だが、もちろんレイアには拒否権があるし、ギルドもそれを理解しているから、”レイア次第”なんて回答をしたのだろうし。


さて、どうしたものかとレイアを窺うと、静かに口を開き始めた。


「...私はこの依頼受けるわ。」


随分ともったいぶったレイアの静かな肯定に、その答えを待っていたこの部屋の中にいる者たちは、それはもう感謝している。頭を上げたユーゴーはとてもいい満面の笑みで喜んでいる。

他の面々も同じような反応だが、俺だけたいして喜んでいないのが申し訳なくなる。だってなぁ。


「あー、水を差す様で申し訳ないが、どうしてこの依頼を受けることにしたのか聞いてもいいか?」

「ええ。もちろん。長いこと待たせてしまったからね。それにアルも関係あるし。」


喜ぶ他のやつらには本当に申し訳ないが、あれだけ長い間考えていたんだから少しは何を考えていたか気にならないかと疑問に思う。

まあ、俺は大体予想はつくけどな。わかっているのは、俺たちには時間が無いということだろう。それに敵の強さが未知であるということ。最後は報酬が安い、かもしれないということ。

んで、なぜか俺が関係しているということ。


「それじゃ私がこの依頼を受けるという前提で話を聞いてね?

この依頼はエミィにはできない。彼女は王都を離れる依頼は受けない人だから。これが1つの理由。どうにか説得できないか考えたけどどれだけ考えても無理だったわ。


次に私たちには時間が無いということ。ここから国境まで普通に考えて3日以上かかる、どれだけ急いだとしてもね。私たちは今、現在進行形で受けている依頼がある。3日後には始まってしまうのよ。私が昨日作った資料が意味ないものになってしまう。


3つ目は敵の強さが測れないってこと。土竜が亜竜だとしても竜は竜よ。それが魔力的に成長している個体だとすると、危険度を測ることは不可能。いくらSSSランクとギルドが指定しても、それはSSが勝てないという事実を鑑みて一つ上に設定されただけ、それ以上が無いならSSSに指定されるのは当り前よね?


これくらいかしらね。ちなみに一番悩んだのはエミィの説得に関してよ。」

「うーん、それじゃ受ける理由にならなくないか?ほとんど断る理由に聞こえたけど。」


1つ目はレイアがこの依頼を受ける理由にはなるだろう。王族やその周囲の人間ならエミィさんが昔したことも知っているだろうし、説得できないって言うのも分かる話だ。

ただ2つ目と3つ目は受けることができない理由にしか聞こえない。本来の意味だったら間違いなくそうなると思うんだが、そうじゃないようだ。


「まあ、そう聞こえたかもしれないわね。一つ目はいいとして、それ以外について説明するわ。これはユーゴー達も聞いてちょうだい。依頼にも関係する話だから。」

「ああ。」

「へ?わかったよ。」


今もなお喜んでいるやつらを落ち着かせてから、レイアの話に集中する。理由を話すって言ってたのを無視してまで喜び続ける意味がわからん。問題が解決したわけでもないのに浮かれすぎだ。

まあ、こいつらからしたらSSSランクが動くってだけで解決したのと同じようなものかもしれないがな。


「まず時間に関しては、問題ないと考えてるわ。王家の依頼だから、最大限の支援はしてくれるでしょ?それなら転移陣を貸してちょうだい。それくらいはしてくれないと受けられないわ。」

「ああ、もちろんだ。国境までの魔力はどうにかして集めよう。」

「いえ、魔力はこちらで負担するから心配しないで。私がいるわ。それ以上にアルがいるから。」

「おう、そういうことか。魔力ならいくらでも。」


そうか、転移陣で緊急連絡が来たということは転移陣で送ることも可能なわけか。そんで、何とか集めなきゃいけないレベルの魔力が必要だと。

俺とレイアで魔力を負担するなら余裕なのだろう。あってよかったよ、魔力の量。


「次に土竜の危険度ね。さっきも言ったけど、魔力的に成長を遂げた魔物は驚異的な成長を遂げるわけだから、ほとんど前例なんてない。今回の土竜に関してもそう。私が行っても倒せるかわからないの。

ただ私には仲間がいる。そう、アルがね。アルはこと戦闘に関しては間違いなく私よりも上よ。理由は言う必要がないから言わないけど、すぐにSSSランクまで届くと思う。

どれだけ強化された魔物でもアルとなら勝てると確信しているわ。ってことで、この依頼は受けることにしたわ。アルには手伝ってもらうし、報酬は折半。いいかしら?」

「ああ。報酬を折半ってのはいいな。当分遊んで暮らせる。」

「こちらとしてはレイア嬢の判断で動いてもらって構わない。」


どうやらこれで話はまとまったようだ。それじゃこれから準備に入るのかな?といっても俺は準備はいらないし、レイアも装備は準備万端のはずだ。


「レイア、これから準備してから行くのか?」

「いいえ。これからすぐよ。緊急連絡という時点であちらには一刻の猶予もないと考えたほうがいいわ。おそらく現場の判断として王国に入られる前に連絡したはずだから、まだ国境を越えてからそう時間は経ってないはず。急げば被害は抑えられるかもしれない。」

「ええ、国境警備隊はそういう訓練を行っていますから。」


なるほど、急いだほうがいいということはわかった。ただ、これは正式な依頼として行っていいのだろうか?グランドマスターも承知とはいえ依頼書が無い。ギルドを無視して直接依頼を受けたらペナルティとかないか?


「なあ、ギルドに言ってから行くんだよな?無断はさすがにまずくないか?」

「ああ、アルカナくんは国からの依頼を受けるのは初めてかい?国からの依頼には緊急事態のみグランドマスターからの直接依頼と同等の効力を発揮するんだ。」

「そういうことよ。だからアルと私がそのまま行っても文句は言われない。さ、行きましょ。こうしている間にも死人が出ているかもしれないわ。」


そんなルールがあったと知らなかったが、まさしくそういう事態が自分に振りかかってみるとそうなんだとしか思わないな。

とりあえず装備はいつものに戻しておこう。


「〔換装〕ブラックドラゴンシリーズ、〔換装〕ドヴァルメタルガントレット、〔換装〕影龍の外套、〔換装〕大鎌斧イシュガル。さ、これで準備完了。行こうか。」


いつも通り、ブラックドラゴンの幼竜の皮防具を装備し、外套を羽織る。いつもはこれで完了なんだが、ガントレットをつけることで、簡単な小盾代わりにも使えるだろう。

それで、最後はイシュガルだが、斧モードのままだ。そのまま背中に背負う。この重さはここ数日体験していなかったから、微妙になつかしさを感じる。

レイアもレイピアを取りだして腰に帯びる。俺が見たことないレイピアだが、本気装備かもしれないな。

レイアはユーゴーに跪き、頭を下げる。ユーゴーもそれを受けて姿勢を正す。


「そうね、それじゃ、行きましょう。第二王子殿下これより依頼完遂のために国境へ向かいます。転移陣の使用許可を。」

「ああ!ベルフォード王国第二王子ユーゴー=レイク=ベルフォードの名においてレイア=ブラッドレイ並びにアルカナに転移陣の使用許可を与える。此度の一件で使える往復の使用許可になる。我が祖国をよろしく頼む。」

「ハッ!」「え?ハッ!」

「ふふふ」「クククク」

「「「「はっはっはっは」」」」


ちょいちょいちょい!俺の名前も呼ばれるんかい!全然準備してなかったからあわてて跪いたよ。

ちょっとみなさん笑ってますけど緊急だってのに余裕ですね。


「悪い悪い。でも、不思議と君らなら負けないって妙な確信を持っているんだ。きっと万事うまくいくだろうってね。」

「そうよ。肩の力抜いて気楽に行くのはアルの得意なことでしょう?きっと異常個体の土竜はおいしいわよ?」


負けるつもりはないが、まだわからないのだから現場に行かなくても少しは緊張しろやと思っていたら、レイアからそんなことを言われてしまった。

確かに俺は緊張なんてこれまでしたことはほとんどないし、これからもないと思っていたが、そうか、これも緊張なのか。


深呼吸をして全身に入った余計な力を放出する。なんだかんだで、強敵はゴブリンエンペラー以来かもしれない。深呼吸はしたが、正直まだ緊張はしている。

しているが、それよりも大きな興奮を覚えてもいる。


だって聞いただろう?異常個体はうまいんだってさ。体の奥底からふつふつと土竜への興味が沸きあがる。

それに、よく考えたら、うまくやれば異常個体の皮が手に入るかもしれない。これからの働き次第だが先に活動していた冒険者が大した戦果を挙げていなければ、一匹丸々土竜が手に入る。

巨大な魔物でマスクを作るのもいいものだろう。これも俺の興味の炎に油を注いだ。


「大丈夫。興奮しちゃあいるが、いたって冷静に対処できるさ。ところで転移陣ってどこにあるんだ?」


俺の質問に答えたのは、緊急連絡を報告した兵士だった。

早速部屋を出て案内を始める。さすがに兵士の彼も部屋を出る前にユーゴーに挨拶することを忘れない。


「それではユーゴー殿下、失礼いたします。ささっ、こちらになります。」

「じゃあね、なるべく早く帰ってくるつもりだけど、想定外の事態が起きたらコウモリ飛ばすから。その時はエミィにお願いなさい。私が死んだ可能性があるといえばさすがに動くはずだわ。」

「!?...あ、ああ。すまない。」


レイアが突然落とした小さな爆弾は、冒険者として活動する以上は常に隣にある死を予見する言葉だった。普段、死を目の当たりにすることもないような法務局連中の中でも死には慣れている部類のユーゴーでも息をのむような、こんな反応をするんだな。

しかし、そうはいくか。


「心配するな、ユーゴー。レイアは必ず生きて帰るさ。万が一にも死なない。死なせないよ、この俺が。大船に乗せたつもりで待ってるんだな。」

「あら、じゃあ、せいぜい守ってもらっちゃおうかな?私はそこらの女よりも重いわよ?」

「望むところさ。獅子王面(この装備)の制御にも慣れてきたからよ。」


俺は自分の胸をドンッと叩きさらに胸を張った。どんなことがあってもレイアは俺が守るさ。なんたって俺は耐久特化の超越種だからな。いっそ根源種の一人や二人どんと来いよ。


俺たちのそんなやり取りを見て、ユーゴーは何が面白かったのか小さく笑っている。

いや、マジで何が面白かったのか教えてほしいんだが。


「いや、ごめんね。君たちのやり取りが素晴らしいと思ってね。うん、信頼し合っているのがよくわかったよ。僕も信頼しているよ。君たちならやってくれるだろう。帰りを待っているよ。行ってらっしゃい。」

「ん?よくわからんが、行ってくるよ。」

「兵士さん時間を取らせたわね。行きましょう。」


レイアがそういうと兵士は走りだす。どうやら転移陣はこの建物内にあるようだ。言われてみれば、この建物は国の重要機関が複数入っているということだったので、そのうちの一つが転移陣だったんだろう。


今回は魔道昇降機を遣わずに階段をグングンと進み地下まで行くようだ。〔魔力察知〕を行ったところ地下に少しだけ大きな魔力を見つけた。おそらく俺たちの回答に関わらず、伝令兵を送り返す予定で魔力を溜めていたのだろう。


どんどん魔力に近づいていき一枚の扉を開けると、中では魔力を貯めている魔導士とポーションで魔力を回復させている魔導士が2人ずついた。だいぶ強攻に魔力を貯めているようだが、申し訳ないがここからは交代だ。

部屋に入ってきた俺たちを見た魔導士たちはギョッとした顔をするがすぐに気を取り直して自分の仕事に戻る。まあ、いきなり部屋に俺みたいな恰好したやつが入ってきたら驚くわな。魔導士の中には俺の足を確認してきたやつがいたくらいだから幽霊だとでも思ったのかね。


「失礼します。SSランク冒険者『女神』レイア=ブラッドレイ様、Sランク冒険者『死神』アルカナ様をお連れいたしました。これより国境サンヨウ砦に転移します。」

「ご苦労。しかし、魔力がまだ規定値の20万に足りていない。しかも君を入れて三人を転移させるのであれば三倍の魔力が必要だ。応援が来るまでしばし待たれよ。」


先程の反応を感じさせない理性的な対応で魔導士が魔力の説明をする。


ほぉ~、この転移陣は20万で動くのか。想定よりも全然楽だな。どれちょっと見てみるか。

ん~と、3人分貯めるのはかなり時間かかりそうだな。


~~~~~~~~~~~~~

都市間転移魔法陣

王都ベルフォリア⇔サンヨウ砦

必要魔力20万×人数

現在チャージ0 ・ 68%(13.6万)

~~~~~~~~~~~~~


魔法ということもあってどうやら〔戦力把握〕の範囲内だったようだ。ただ、魔法陣の情報を覗いた俺の頭に声が響く。


《個体名アルカナは通常スキル〔魔法陣魔法〕を取得しました》

《高位魔法陣の解析に成功しましたので通常スキル〔魔法陣魔法〕が固有スキル〔魔法陣魔法〕に進化しました》


「んぬうぉ!?」


突然のことにずいぶんとかっこわるい声が出てしまった。皆さんこちらを見ていらっしゃる。後ろのレイアも怪訝な目でこちらを見ている。


「どうされましたか。何か忘れものでも?」

「いや、すまない。魔法陣に驚いちまったわ。」


まあ、嘘は言ってないし。実際、〔魔法陣・・・魔法〕のことで驚いたわけだからな。


「(ちょっと?突然奇声を上げないでよ。まあ、どうせ見たんでしょ、アレ(・・)。)」

「(ああ。それでな、たぶんだけど相当時間がかかるから予定通り俺が魔力を出そうと思う。)」

「(そうね。魔力は大丈夫?)」

「(ああ。獅子王面のおかげで魔力は余裕がある。)」

「そ、じゃお願いね。」


俺は魔法陣に近づいて一番外の先に触れる。魔力の込められたインクで定着しているため、手で触れても消えないようだ。


「お、おい。突然何をしているんだ。まだ魔力はたまっていないぞ。」

「ああ、わかってるさ。急いでるんで、魔力を提供するよ。すこし離れてくれ。」


俺の注意を素直に受けてくれる。一応威圧しない程度に魔力を放出したのが効いたかな。

さて、魔力を一息に入れると壊れてしまう気がするので、とりあえずそれなりのスピードで往復の6人分を込める。ざっと120万くらいなら余裕で賄える。俺個人の魔力でも問題ないが、獅子王面によるブーストでなら負担はグッと減るのだ。


魔力をグイグイと吸われていくが、そのスピードはとても遅い。待っていられないのでこちらから魔力を流す。すると、魔法陣がだんだんと光り始めてきた。一定の段階で光の強さが増して、6度明るさが増した。

これで、充填完了ということでいいのだろうか。


~~~~~~~~~~~~~

都市間転移魔法陣

王都ベルフォリア~サンヨウ砦

必要魔力20万×人数

現在チャージ6 ・ 5%(1万)

~~~~~~~~~~~~~


よし!


「充填できたぞ。さて、それじゃあ、行こうか。」

「何!?本当だ。あの短時間で6回分だと!?あり得ん、これでSランクだと...?」


まあ、魔力量はSSSどころじゃないくらいには持っているという現状だ。レイアをちらりと見ると覚悟を決めた顔で魔法陣に近づいてくる。


さて、行きますか。


「準備が完了したようなので、砦へ向かいますか?それとも休憩は必要ですか?」

「いらん。すぐに行こう。」

「そうね、休んでる時間が無いわ。アルには悪いけど、急ぎましょ。」

「ハッ!それでは、私が発動させていただきます。」


そういうと伝令兵くんは魔法陣に手をつき少量の魔力を流し始める。どうやらこの魔法陣はあらかじめ貯めた魔力に呼び水代わりの魔力を流して発動するタイプのようだ。

先ほど溜めているときとは魔法陣の光る線が違うので、今度のが転移の光のようだ。


「それでは行きます。<転移>サンヨウ砦!」


光が強烈になると一瞬の浮遊感とともに俺たちの視線にあった光景が切り替わった。

先ほどまでのほとんど何もない部屋の中から今度は石造りの壁が現れた。


「――――どうやら成功したようだわ。」

「ええ。ここがサンヨウ砦の転移の間です。外に出ましょう。国境警備隊長がいるはずです。」

「よし、行こう」


俺たちは魔法陣を出て外に出る。どうやら砦の地下だったようで、階段を上るとそのまま外につながっていた。

外は今のところ砦の形を崩していないということで、伝令兵くんはホッとしているようだ。


ここまでは土竜が来ていないということは明白だが、そうなるとどこにいるのかが問題だ。


「おーい、隊長ー!どこですかー?」

「おおー、こっちだー。正面の壁の上だー。こちらへ来てくれー!」

「どうやら上のようですね。階段はこちらです。」


そう言って目的の壁の逆側にある階段のほうに行こうとする伝令兵くんを捕まえて肩に担ぐ。レイアはすでにかがんでいるから、そのつもりなのだろう。

目の前の壁はおよそ20m、まあ、問題ない。〔超強体〕を発動させ俺も勢いをつけてレイアと同時に飛ぶ。


「どぅわぁあああ」


突然飛んで悪いと思うが、時間が無いんだから大目に見てくれ。

ドカンと音がして俺が壁の上に着地する。俺は普通以上に骨がある分重いため、単純な着地もちょっとした地震が起こる。

それに引き換えレイアは軽やかだ。音一つなく着地した。


さて、伝令兵くんを下ろして、隊長と対面する。歴戦の戦士といった風貌で、相応の実力だとわかる。伝令兵くんを急かして報告させる。


「隊長、王都よりSSランク冒険者『女神』レイア=ブラッドレイ様、Sランク冒険者『死神』アルカナ様をお連れいたしました。あの土竜の討伐を引き受けてくださりました。」

「うむ、ご苦労。十分に休んでくれ。」

「ハッ!失礼します!」

「レイア様お久しぶりでございます。この度はありがとうございます。」

「ええ、それで魔物はどこにいるの。」


挨拶もそこそこに本題の土竜の話に移る。猶予がほとんどないと聞いていたが、今目の前に広がる景色は特に変なところは無く山が一つ見えるだけだ。


「あちらにございます。」


隊長さんは目の前の光景を指さしあちらと言った。ん?あの山にいるということだろうか?


「あの山にいる土竜を倒せばいいということか?結構近くまで来ているんだな。レイア、どうするこのままいくか?」

「あの山...?隊長あそこにある山は、いえそれよりこう聞いたほうがいいかもしれないわね。あそこにあった川はどうしたのかしら。」

「ハッ!国境の川は土竜により埋められ、現在は見えなくなっております。」

「やはりね。アル、まずいわ。想定よりも成長しているわ。」


成長しているって川を埋めてしまえるほどってことは能力が高いのか。楽な戦いじゃないとは思っていたが、気合いを入れよう。

あれ、土竜を抑えていたSSはどうなったんだ?


「SSランクの冒険者はどうしたんだ?」

「彼らは最後に土竜の動きを土魔法で止めたことにより魔力枯渇状態になり現在は砦内部で静養している。」

「十分な働きよ。危険度はSSSよりも高いかもしれないのだから。」

「どういうことだ?」


そんなに強いのか。あの山には魔物の姿も見えないけどそんな大きさで危険度が高くなるものかね。


「アル、わかっていないみたいだけど、〔魔力探知〕であそこを集中して見てみなさい。」

「あ?ああ。わかった。」


俺は言われた通りに〔魔力探知〕で山を見る。


「!!!?マジか。とんでもない魔力量を感じるぞ。ただ、土魔法の魔力量的にはまだ動けないはずだからすこしは猶予があるのは唯一の救いだな。

つまりアレは――――――








――――――――あの山自体が土竜なわけだ。」


でかいでかすぎる。土魔法で覆われているとしてもこの砦の壁と同じくらいある、その山が巨大な土竜だったわけだ。


ここまで大きいとは想像もしていなかったな。

こんなのがぶつかったらこの砦もひとたまりもないぞ。いや、それこそ、どんな壁だろうが城だろうが、要塞でさえ止めることはできないんじゃないかね。



たらりと一筋の汗が流れる。どうやって戦えばいいのだろうか。正直手を思いつかないぜ。













作戦会議をしましょう。


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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