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第61話 「マジで、そういうのあるんだな。」

お読みいただきありがとうございます。


とんでもなくでかい西洋風の門の中は、敷地からして広く、壁で囲われていることからも一目にすべてを見通せるわけではないが、門の隙間から見えるちょっとした光景だけでも、隣の貴族の敷地よりも広いことがわかる。

一冒険者の敷地としてはあり得ないくらい広い。


「ここが私の屋敷だってことは一般には知られていないわ。せいぜい王都の衛兵くらいまでよ。公的にSSSになった時に公表するらしいわ。前宰相の時にもらったから、いつになるのやらって感じだったけどね。」


聞いた話だと、この国の先王が引退して今の国王が戴冠した際に、前宰相も代替わりしたらしい。いずれも長子や一番弟子とも言える存在が相続したようで、王を支える弁えた宰相のようだ。

正直、貴族と王家が対立しているような状態でなくてよかったとホッとする。

すでに王家側ともいえる法務局、第二王子と関わってしまった手前、何かしらの手違いで騒動に巻き込まれるようなことにはなりそうにないことには安心しているのだ。


まあ、ユーゴーが下手こいて人族至上貴族を取り逃がした場合は、何かしらの報復くらいはあるかもなぁ、なんて考えてはいる。トゥーピッドが勝手にやらかしたとはいえ、俺がやつらに引導を渡すきっかけになったわけだからな。


なんにしても、これから約一年弱のあいだ、要はエルフの国の交易船が王国の港に来るまでの滞在場所になるかもしれないわけだから、広いなら、それに越したことはない。広いから何かするわけではないけど。


「じゃあ、入りましょうか。ここの門は門番がいるわけじゃなくて、魔道具になっているから、そこの装置に魔力を流すことで門が開くのよ。一定時間で閉まるから通るなら早めにね。開け続けるときは魔力を流し続けて。」

「ふむ。こんな大きい門が魔道具って、どれだけの金出せば手に入るんだか。」


ゴゴゴ、と動きながらも音はそこまで大きいわけではない。さすがにこれだけ大きな魔道具だけあって、それなりな魔力を必要とするようだが、レイアは涼しい顔をしたまま、何事もなかったように中に進む。


ほえ~、と呆けたように見ていた俺も、これはいかんとレイアに続くようにして中に入る。閉まったとしても魔力を流せばいいじゃないか、というとそう簡単ではない。そんなでは、誰でも入ることができてしまう。それこそ犯罪者までもが。


魔道具というのは、誰でも使えるようなものと所有者を固定するようなものがある。例えば、今回のように門やドアなどの魔道具は、誰でも使えるようなものでは、防犯などの観点からあってはならない。

誰の魔力であっても作動するのなら、普通と同様に鍵をかける必要がある。それでは、魔道具化する必要がなくなってしまう。そう言ったことから、所有者や利用者が固定される必要があるわけである。

ただ、商店などの不特定の多数が使用する扉は鍵付きの魔道ドアが使われることも多い。自動ドアとでもいえばわかりやすいだろうか。



門から屋敷の玄関までは、これまた長い石畳の道を進まなくてはならない。

少しの間歩き進めると、やっと玄関の前に到着した。ここまで広いと逆に面倒が増えてしまうな。


「おお。これがレイアの家か。遠目から見てもわかっていたけど、とんでもなく大きいな。まさしく屋敷だ。」

「ほら、別に珍しいものじゃないから。入りましょう。」

「えー。こんなでかい家、普通に珍しいと思うけどなぁ。」


レイアはこの家が大したことはないとは言うが、そんなことはないだろう。今まで見た中でここより大きな建物は冒険者ギルドや商業ギルド、王城、ここまで来るまでの間に見たいくつかの貴族の屋敷、両手で数えて足りるほどだ。これだけ広い王都でこの数では珍しくないわけがない。


ま、関係ないか、寝泊りできるなら何でも。

俺にはわからないが、SSSは魔物に対する大事な戦力で、時には国の味方になってくれることもあるかもしれない。そんな人物を厚遇しない国などないということだろうかね。


ガチャリとドアを開けると中は落ち着いた内装ながらそれはもう高そうな壺やら家具が設置された玄関となっていた。

そして目の前には、ずらりと並んだ使用人風の、というか、絶対使用人の行列。左右に分かれるようにして並んだ光景は壮観だった。


「「おかえりなさいませ、レイア様」」

「「「「「「「おかえりなさいませ」」」」」」」

「ほぉ~。」


先頭にいる執事とメイドがキレイな礼をするとそれに続くようにして後ろに並ぶ使用人たちが続く。

その一糸乱れぬ動作には思わず感嘆の声を上げてしまう。

隣を見るとレイアが実に嫌そうな顔をしている。いったいどうしたのだろうか。


「どしたん?そんな顔して。」

「まあね。セバスチャンだったかしら。そういえば私が留守の間は、あなたが管理することになっていたわね。私がここに来るのを知っていたのは王城に連絡が行ったからだというのはわかるけど、どうして使用人が増えているのかしら。」

「お久しぶりでございます。レイア様。ここにいるのはご想像通りでございますが、使用人が増えたのは、そちらのアルカナ様がいらっしゃることがわかったからですね。至急で人員を増やした次第です。」

「あ、ども。どうやら、名前を知っているようですね。改めて自己紹介する必要はないかもしれませんが、アルカナです。Sランクの冒険者やってます。一年弱こちらにお世話になるかもしれないので、よろしくお願いします。」

「はい。よろしくお願いします。私とこちらのメイド長のマイがお二方のお世話の責任者となります。普段は管理のみ王城から派遣された使用人が担当しておりましたが、戻っていらしたということで、ブラッドレイ邸に常駐するように申し付かっております。」


王城で働く執事って偉い人じゃないとなれないんじゃないの?もしかしたら貴族かも。一応丁寧な言葉遣いをしておいてよかったわ。


「ライオネルね。いらない配慮だわ。私が自分で出来ることは知っているはずなのに。」

「まあ、そう言わないでください。我が国としても貴重なSSSランク冒険者を厚遇しないわけにもいかないんですよ。」

「マイ...。しょうがない、マイに免じて許すわ。貴女には家事を教えてもらった恩もあるしね。」

「ふふ、ありがとうございます。」


このマイさんというメイド長の女性は、レイアに家事を教えたらしい人物だったようだ。レイアの〔家事〕は〔家事・真〕という上位スキルだ。それを教えたというなら、もっと上位なのだろう。

どれだけ王家がレイアというSSSランク冒険者を大事にしているかということが現れているようだ。


「それじゃ、立ち話をしているのもおかしいし、荷物を降ろしてくつろぎましょう。セバスチャン、私の部屋は前のままよね?」

「はい、しっかりと管理されております故に以前と変わりなくお使いいただけます。アルカナ様の部屋もご用意できておりますので、ご案内いたします。」

「そ、ありがとう。」

「ありがとうございます。」


やっぱり仕事ができるなぁ。さすが王城の執事。


「いえ、それとアルカナ様。私どもは使用人ですので、敬語等は不要です。普段通りにしてくだされ。」

「ん?了解。敬語苦手だし、ありがたいわ。」


さっきからちょいちょい素が出かけてたからまずいなぁとは思ってたんだよな。


「アル、荷物置いて落ち着いたら、執務室に来てちょうだい。そこが一番いい部屋だから。リビングみたいなものね。今後の予定の確認とかしておきましょう。」

「了解。」

「ではこちらです。」


そう言って一度レイアとは別行動になる。いや、別行動といっても同じ屋敷内だけどね。いかんせん広いから、“別”って感じなのよ。


セバスチャンについて行くと、俺が通された部屋は、客間の様で、高級そうな家財が揃っていて居心地がよさそうだ。

なんだかんだでニピッドを出発してからは野宿か村での宿泊だったので、野宿はもちろん村長宅でも布団などにはお目にかかることもなく、久しぶりの布団に感動すらしている。


いや、うん。王都に来てよかったよ、本当に。色々あったのは目をつむって。


「それでは、この部屋はご自由にお使いください。執務室に行く際は、そちらのテーブルにあります、ハンドベルを鳴らしていただければ、近くの者が案内いたしますので、なんなりとお呼びください。」


本当に至れり尽くせりだな。

ま、部屋に居続けられても気になるし、この距離感がちょうどいい。それに、ユーゴーも言ってたけど、王家に伝わる伝説の神の使徒ってのが俺だったら、王家も敵対ともとれる行動はさせないだろう。

玄関にいた使用人のうち何人かは、戦闘力もそれなりであることが見えてるし、まあ、警備も兼ねてることはわかったが、もしかしてということもあるし警戒だけはしておこう。


「それでは失礼いたします。」


きれいな礼をして部屋から退室していくセバスチャンを見届けてから、ベッドに腰かけるようにして、楽な体制を取り、この町に来るまでをぼーっと思い出す。


「思えば遠くまで来たものだ。もともとは、この国の未発見のダンジョンで生まれて、何の因果か、こんな体。雑な使命もあるけれど、きつい縛りではないことが幸いか。順調に根源種には会えたけど、もう一人はどんな奴なんだろうなぁ。」


俺たち、根源種。たった三人の仲間だけど、いまだに面識がないもう一人は、何をしているのだろうか。

俺が探そうと思ったように、会ってみたいと思ったように、彼または彼女も探しているのだろうか。むしろ興味がなかったりするかもな。


レイアはもう一人に会ったことがあるのだろうか。リオウが言うにはすでに超越化して久しいようだが、どれだけ強いんだろうか。


スケルトン、吸血鬼、龍。あとは龍だけ。龍と言えばって国があるわけだけど、そこには聖龍と言われる神の使いがいるらしい。

正直俺は、そいつが神獣なんじゃないかと思っている。


ルグラのギルドマスターに聞いたのだが、その国、ベントラ神聖龍国という光神教の総本山は、光の神を信仰しているらしいが、それが最高神の一柱創造と破壊を司る神ブラウマンのことなのだろうと言っていた。


ルグラのギルマスは昔、リオウに会ったことがあるだけあって、神獣などの情報を集めていたそうだ。その過程で手に入れた情報らしいので、その信ぴょう性は相当に高い。

正直そこまで必死になって会いたいというほど、ブラウマンの根源種に会いたいというわけでもないので、いつかエルフの国を満喫した後にでも会いたいものだ。


ふう、どうでもいいことを考えていたところで、ずいぶんと時間が経った。そろそろ執務室に行って予定の確認をしておこうかね。


テーブルの上にあったベルを鳴らすと、チリィンとあまり大きな音はせずとも、コンコンとドアがノックされる。


「失礼します。」

ガチャリ

「お呼びでしょうか。」

「あ、うん。マイさんだっけ?執務室?に行きたいんだけど案内お願いできるかな。」

「かしこまりました、こちらになります。」


入ってきたのは、レイアに家事を教えたというメイド長マイさん。先ほど言った戦闘力を持つ使用人の一人だ。

実際に戦っているところを見たわけではないが、スキルやステータス的に見て、法務局のユーゴーの部下より強いくらいか。

メイド長ともなると危険があったりするのだろうか。暗殺者だったりして。


「なあ、質問だけどさ。メイドってそんなに荒事が多いの?」

「?それはどうしてでしょうか。」

「いや、どうにもずっと警戒しているみたいだからさ。メイドというより、警備とか警護って感じだからさ。」


俺がのんきにそんなことを言っていると、びゅん、と音がして俺の眼前をナイフが通りすぎていく。

あっぶね。どこから取り出したんだか。当たっても平気だと思ってはいるが、気持ちのいいものではないため、即座に抗議する。


「危ないじゃないか。俺じゃなかったら死んじまうよ?」

「もちろんです。相手の実力もわからないようでは、あんさ...いえ、メイド失格です。」


今ぎりぎりで踏みとどまったように見えるけど、間違いなく『暗殺者』って言いかけたよね!?

マジで、そういうのあるんだな。

これ以上は聞かない。藪蛇って知ってるよね。蛇の尻尾が見えてる藪を誰が好んで突きますか!


「ヘースゴイデスネ。アリガトウゴザイマス。」

「いえ、失礼しました。」


まあ、それから、執務室にたどり着くまでの間、意識して無言を貫いたのはしょうがないと思う。







予定の確認をしましょう。


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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