第59話 「よかったのだろうか。」
お読みいただきありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。
読み返していて気が付いたのですが、〔○○察知〕となっているものは正しくは〔○○探知〕です。
失礼しました。気づき次第変更しますので、漏れがありましたら誤字報告や感想等で教えていただけますと幸いです。
鍛冶屋に入る。小奇麗な建物は、想像通り中も小奇麗なスッキリした印象を受けるつくりだった。インテリアの類も雰囲気に合ったものが選ばれているようだった。
「いらっしゃいませ、レイア様、本日はどのようなご用向きでしょうか?」
「あら、私のことご存じなのね。まあいいわ、こっちのアルの儀礼剣の作成をお願いしたいの。」
出てきて対応してくれたのは、鍛冶屋というには少しキッチリし過ぎているようにも思える執事然とした初老の紳士だった。
鍛冶師としては、そう見えないというしかないが、このスッキリと雰囲気のいい店内の様子にはベストマッチしている。
レイアがこちらを指さして用件を言っている間にも紳士はこちらを観察するように見てくる。見てくるといっても、普通では気取られないように巧妙に視線を外した実にうまいものだ。
「そちらの方の儀礼剣ということは、先だって昇格成された『死神』殿でしょうか。レイア様にご同行されているとは噂で聞いておりましたが、事実だったようですね。」
「ああ、よろしくな。儀礼剣なんて持ってないからさ。作らなきゃいけなくなったんだけど、授与式までにできるか?」
「もちろんでございます。私はすでに引退した身ですが、娘婿でもある私の弟子は鍛冶師としての実力はドワーフにも劣らないと考えております。期限までに最高の儀礼剣を打てるでしょう。」
なんと、彼の言い口によるとこの鍛冶屋として実質的に鎚を振るっているのは娘婿で弟子のようだ。つまりは、この執事にしか見えない紳士がも鍛冶師だったということか。
鍛冶師の知り合いはドヴァルしかいなかった俺としては、カルチャーショックというしかない。
鍛冶師ってみんな酒好きの筋肉だるまじゃないんだな。ずいぶんスマートだが、ふむ。身体強化して鎚を振るうようだな。弟子がそうだとは限らんけど。
「ギルドに紹介してもらってきたから、間に合うようにお願いね。これ、紹介状よ。」
「確かに、受けつけました。儀礼剣と言えど剣ですので、持ち主にあったものを作成するために採寸させていただきます。その後、簡単なデザインや報酬などご相談させてください。」
「デザインと報酬は任せるわ。ギルドが紹介したのだから下手なことはしないでしょ?さ、アルは採寸してきなさい私はここで適当に見てるわ。」
「かしこまりました。」
「了解。」
採寸と行っても、特にやることは多くなく、手の細かいサイズを測るのと、剣の柄と同じくらいの粘土を握らされた。
俺自身スキルも何もないし剣を使うことはあり得ない。そもそも儀礼剣で戦うようなバカもいないと思うので、この採寸も鍛冶師の自己満足と言える。
「はい、これで完了でございます。デザインはこちらに任せていただけるとのことですが、何かご希望があれば、それも取り入れさせていただきます。」
うーん、何かあったかな。儀礼剣ってことは、あの宝剣みたいな感じってことだろ。宝石とか持ってたかな。
魔核ならいくらでもあるんだけど、これじゃだめなん?
思い切って聞いて見るか。
「なあ、儀礼剣には鞘やら柄やらに宝石つけるんだろ?それって魔核じゃだめなのか?」
「魔核...ですか、魔核...魔核...あ!魔石のことでしょうか。それなら儀礼剣や宝剣に使う方もおりますよ。」
ふーん、魔核のことを人間は、魔石って言うのか。魔物《俺ら》からしたら、魔物の核ってイメージだけど、人間からしたら、魔力の石ってわけな。
どちらも物は同じでも、認識が違う。魔物からしたら魔核が存在を確立するうえで最も大事だが、魔核を持たない人間種には、それはただの魔力の塊、それに意味など持たないのだろう。
これが魔物と人間種との違いの一つなのだろう。
「冒険者の方ですと、従魔が死した際にその魔石を取っておいて、儀礼剣や普通に武器に混ぜるなどして活用することがあります。信頼していた従魔を連れている感覚になるそうです。」
従魔ね。俺もいつかはペットみたいなのを飼ってみたいな。おっと、いかんいかん、思考がそれた。魔核が使えるということだから、それなら、いろいろあるけどどういったものがいいだろうか。
今ある魔核はと言うと、
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所持魔核一覧
・ゴブリン
・ホブゴブリン
・ゴブリンキング
・ブラドバッド
・スケルトン
・各種スケルトン上位種
・スケルトンエンペラー
・戦争虎
・デスモンキー
・劣化飛龍
・デスモンキーエンペラー
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数は特に重要じゃない。なぜなら売れないから。
ここで重要なのはどれを使うかということだ。特に思い入れもないんだよな。当時も(骨が)食糧としか見てなかったわけだから。
ん?待てよ?信頼か。信頼ね。信頼とは少し違うが、今まで会った魔物の中でもただの魔物として扱わなかったやつがレイアやリオウを除いて一体だけいる。
スケルトンだ。
え?何を言っているかって?お前がスケルトンじゃないかって言いたいのだろうね。だけどさ、俺がこれまでにあったスケルトンに仲間ともいえるやつがいただろ。覚えてないかな。
この世界で初めて目が覚めたとき、または、生まれたときと言い換えても問題ない。
とにかく最初に起きたときだ。
あの時の俺は、自分の状況が飲み込めていなかったし、正直パニックに陥っていた、あのまま落ち着かずにパニック状態だったら長生きできなかった可能性まであると思っている。
自分が何かも誰かもわからないあの時、この世界で初めて会ったスケルトンに会釈されたことで、この世界で生きることを肯定された、歓迎されたと無意識に思ったのかもしれない。
あの会釈で不思議と落ち着いたんだ。もちろん向こうにそんなつもりはなかっただろうけど、あの時のスケルトンの魔核は拾って今も持っているんだ。
感謝しかない。
よし、これにしよう。従魔に対する信頼とは違うが、感謝の気持ちを込めて、俺の儀礼剣にあのスケルトンの魔核を使ってもらおう。
「この魔核、いや、魔石は使えるか。あまり大きくはないんだが、大切なものなんだ。」
「もちろんでございます。スケルトンの魔石ですか。ピンク色というのは珍しいですが、あまり大きくはございませんので、装飾としてはぴったりだと思います。簡単なイメージも湧いてきました。」
「そうか、よかった。他にもいろいろあるが、どれが使える?」
そういって他にも魔核を差し出す。
店主はそれを見て目を剥くが、すぐに表情を戻して吟味する。さすがに商売しているだけあるわな。こちらとしてもありがたい。
「これは、すごいですね。ふむ、この中でしたら、こちらが色的にも大きさとしても、ちょうどいいかと。」
「それなら、それも使ってくれ。スケルトン系の上位種の魔核だから、相性もいいと思う。」
「それはそれは。こちらを使用しまして、授与式用の儀礼剣を作成させていただきます。1週間ほど時間をいただければ幸いでございます。」
「それで頼む。楽しみにしてるよ。」
俺と店主が採寸や素材の提出を終えたところで元の場所に戻ってくるとレイアに声をかける。
「おわったよ。」
「あら、早かったわね。もうちょっとくらいかかると思ってたけど。まあ、いいわ。それじゃ行きましょうか。私の家に招待するわ。」
「であれば、完成いたしましたら、レイア様のお屋敷に使いを送りますのでよろしくお願いします。」
「わかった。」
そう言って俺とレイアは鍛冶屋を後にする。いやぁ、魔核の意外な使い道ができたな。金属に砕いて混ぜたりするらしいが、儀礼剣にもそれをするんだなぁ。一応他にも魔核を置いてきたが、それもしっかり使うらしい。
これから滞在先になるレイアの家に行くらしいが、レイアは頑なにどんな家なのか教えてくれない。王都の家だから、小さくても高いだろうな。
どんな家なんだか。
しかもレイアの家は貴族街にあるらしいので、正直緊張している。貴族街に行くにしても門をくぐる必要があり、そこで身体検査もされるらしい。
そんなこんなで、レイアと明日以降の打ち合わせ、といっても観光にどこを案内してくれるかとか、ユーゴーに会うにはどういった手順を踏めばいいか、などといった他愛もない話をしているうちに、貴族街の門に到着した。
貴族門には屈強な二人の騎士が立っており、不審者が通らないように目を光らせている。この門をくぐるものの中でも貴族だとはっきりわかる場合は手続きがいらないようだ。
そして俺たちはと言うと。
「止まれ!ここからは貴族街である。何用であるか、示せ。」
もちろん止められる。まあ、貴族ではないわけだからしょうがないわな。とりあえず事情を説明するかと、一歩前に出ようとするとレイアに手で制される。
「あら、私がだれかわかってないのね。だから嫌なのよ貴族街に家を持つのは。陛下に言って引っ越しさせてもらおうかしら?」
「あ、あなたは、レイア様ではございませんか。これは失礼しました。しかし、どうか引っ越しはご勘弁願います。SSランクが貴族街にいるだけで貴族が悪事を働かなくなるから、と前宰相殿より頼み込むように言われております故。」
「そう。前宰相ね。爺様にはお世話になってるから、それに免じて許してあげる。」
「はっ!ありがとうございます。して、こちらの方は。」
騎士は一人は軍人的な口調というかなんというか、でもう一人は丁寧な語り口のようだ。
おっと、俺のほうに話が振られた。ここは自己紹介の流れだな。
「初めまして、アルカナと言います。レイアとは目的地が同じということで同行させてもらってます。以後お見知りおきを。」
「ああ。これはご丁寧にどーも。それではレイア様の屋敷に滞在されるということだな。」
「それでしたら、ここも何度も使うことになるかと思われますが、可能でしたら顔を拝見してもよろしいですか?」
そういえば俺は外を歩くときは影龍の外套のフードを被っている。フードを取っていると、髪色からかちょっと目立つんだよな。
この世界、黒髪は少しだけ珍しい。いないわけじゃないが、人族には特に珍しい。茶髪や金髪が主なようだから、できるだけ隠せとニピッドを出たときからレイアに言われて徹底している。
ぱさり
「これでいいですか?できればすぐに被りたいんだけど。」
「はい、ありがとうございます。黒髪ですか。フードを被っているのも理解できました。」
「それじゃ行くけどいいかしら。」
「あ、ギルドカードを見せてくれ。レイア様は知れ渡っているがアルカナくんは初めてだからな。登録だけさせてくれ。」
貴族街の門でもギルドカードを登録して置く必要があるのか。見られて困る記録などは隠してあるため、特に躊躇なく渡す。
それを受け取ると、騎士は懐から板を取り出して重ねるようにくっつけた。
「おし、これで完了だ。問題は起こさないでくれよ。Sランクだろうが問答無用で逮捕するからな。」
「わかりました。」
「ほら、終わったなら行くわよ。そろそろ日が暮れてきたから、早く荷物を下ろしたいわ。」
良く言う。俺もレイアも収納系のスキルを持っているため荷物など皆無のはずだが、切り上げる口実としては妥当である。
「引き留めて悪かったな。じゃあ、気をつけて。」
騎士たちはこちらに軽く会釈して通してくれた。彼らも職務だからしょうがないけど、これからは毎度止められるということもなくなりそうで、ホッと安心したよ。
さて、貴族街は広い王都に比例したようにこれまた広い。結構入り組んだつくりになっているのは攻められた時のことを考えられているからだろうか。
たくさんの屋敷があるわけだが、どうにもすべてが使われているというのが信じがたいと考えていると、レイアが簡単に教えてくれた。
「貴族といっても領地を持っている場合は社交のオフシーズンは領地運営もあるわけだから、ここで暮らすのは社交シーズンの時だけなの。王立学園に子供が通ってる場合でも学生はすべて寮での生活になるからここは使わない。そんなときに浮いたこの場所をどうするかって言うのは貴族にもよるけど、大体が貸し出すわね。懇意にしている冒険者とか、王都に屋敷を持っていない知り合いの貴族とかにね。」
「へぇー。」
言われてみれば貴族がずっと王都にいたら領地経営は代官などの他人に任せなければならないか。そういうのもいるんだろうけど。
ま、俺には当分関係ないか。
しかし、結構歩くな。レイアの屋敷って貴族街でも結構奥の方。言い方を変えると立地のいい場所、王城に近いみたいだ。地位の高さを示しているのだろうか。
「さ、着いたわよ。ここがあたしの家。ようこそ、アル、歓迎するわ。」
そして俺の目の前に出現したレイアの家は、まさしく屋敷で、近くにある貴族の家と何ら遜色ないどころか、むしろ敷地を含めてこっちの方がでかい。
うわぁ、SSSランク冒険者の社会的地位ってものを舐めてたわ。
すごい。お呼ばれしてしまってよかったのだろうか。
一方王城では
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