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第52話 「いや、故意的じゃないから、許してよ。」

お読みいただきありがとうございます。


突然現れた、見知らぬ男に、いきなり無実を示すといわれ、「ちょっと頭の中を見せてくれる?」と言われたわけですけども。


どういうことでしょうか。ナニヲイッテイルカ、ヒトツモワカリマセン。


俺ってば、脱獄しようとしてたよな、ニコラスだズカーホだ法務官だ、って全員殺して。

でも、無実が証明できるらしい。

俺の正当防衛が証明されるということだろうか。


「意味がわかっていないようだね?そりゃそうか、今まさに殺して逃げようとしてたわけだからね。突然の展開についてけないのか。簡単に説明すると、僕が本来、君の審判を行う予定の法務官だったわけなんだけど。ちょうどいい機会だったから、利用させてもらったんだ。こいつの不正を暴くためにね。」


利用した形になって申し訳ない、と頭を下げる目の前の法務官に、困った事態になったと思う。この法務官が頭を下げるのはいいのだろうか。いろいろと。

小心者の俺にあまり偉い人が頭を下げないでほしい。びっくりしちまうから。ほら、利用されてムカついたのが一瞬でどっか行っちゃった。


「頭を上げてくれ。釈然としないが、もう責めようとは思っていない。それで?俺はどうすればいいんだ。頭の中ってどういうことだ?切り開くつもりか?俺は抵抗するぞ?」

「ああ、違う違う。ははは、そんなことはしないさ。他のSランクだったら何とかなっても、君は無理だってはっきりわかっているよ。さっきの〔王威〕だろ?勝てない、勝てない。」


特に謙遜もなく自分の実力を語るのも、俺のスキルを一応当てたのも、牽制のつもりだろうか。いや、ないな。どうも軽いが、こんなんでいいのか、王国は。


「さて、頭の中を見せてくれって言ったのは、君の過去を見せてくれって意味なんだけど。今度は通じたかな?うん、大丈夫そうだね。僕のスキルで、君の直近一か月の出来事を覗かせてもらう。それで、きみが、えーと、「ゲオルギア・アブサンです」そう!ゲオルギア・アブサンを故意的に殺害したのか、正当防衛なのかってのがわかるんだ。要は僕が君の過去をさながら追体験してみるって感じだよ。」


被害者(笑)くらい覚えておけよ。

まあ、とにかく俺の記憶を見るってことはわかったが、それって尋問とかで最強じゃね?防御しようもないし、確実に情報が引き出せる。


「あ、今、尋問に最適って思ったね?チッチッチ、そう簡単な話じゃないんだよねぇ。僕より精神値が低い相手以外には受け入れてもらう必要があるから、誰にでもできるってわけじゃないんだよ。ほら、暗殺者って情報漏らさないために精神値を訓練で上げてるんだ。まあ、このスキル、割と有名だから、対策されてるんだよね。」

「なるほど、確かに、それなら、よほどの強者には意味がないのか。」

「まあ、その分、冤罪を晴らすには持って来いのスキルなんだよね。さあさあ、それじゃあ、早速だけど、君の無実を証明しましょうかねー。っとその前に......起こせ!」

「「「はっ!」」」


そういって、部下が拘束された三人をたたき起こす。


「ぐほぁ」

「がはぁ」

「ぶへぇ」


かなり手痛い起こし方だが、こちらは、正直もっとやれと思う。殺そうと思ってたわけだから、生ぬるいと感じてもしょうがないさ。

起こされた三人は、現状が理解できていないようで、まず部屋の中をきょろきょろと見回し、人の顔を見た後、自分が縄でぐるぐると拘束されていることに気が付く。


「な、なんだこれは!」

「解け!解かんか!」

「私を誰だと心得る!王都法務局の法務官であるぞ。そこな罪人を拘束せんか!」


三人とも思い思いに喚き散らしているが、どうも、現状を見ても理解はしていないようだ。

明らかに拘束されているのに解けといわれて解くわけもない。

しかし、クソ法務官が目の前の男に気が付くと、目を見開き、先ほどまでの勢いが嘘のように失われていく。


「こ、これは、いったい、いや、どういうことだ。しかし、あああ。とにかく挨拶せねば。」

狼狽えて腰から頭を下げる。

「初めて御前にて拝謁いたします。私、王都法務局で地方法務官をさせていただいております、ブレンダン・ニールと申します。第二「よい、ここへは法務官として来ている。それに貴様はすでに法務官ではない」...へ?」


自分が法務官だと威張り散らしていたクソ法務官、もとい、ブレンダンはすでにその職にないといわれて、呆気にとられる。

何かを言いかけたが、法務官殿は、[法務官]という立場できているということを強調して来たわけだから、言われるのはまずいんだろう。俺としても見たけど、知らないふりをしよう。


「貴様はすでに法務局から追放が決定しており、もはや罪人の一人だ。法務局というのはすべてに平等でなくてはならない。貴族だからといって、横暴は許されん。ニール男爵家も取り潰しが決定している。観念するんだな。」


くるりとこちらを見る。その顔は今ブレンダンに話していたのとは違う、ほんわかとしたような声色に戻っていた。


「じゃあ、君の記憶を見せてくれるかい?」

「ああ。よろしく頼む。俺にはそれしか道はないようだ。しかし、下手なことはしないでくれよ?」

「もちろん♪それじゃ、〔|過去視の魔眼《What is your past?》〕君の過去を見せておくれ。」


俺の頭を左右から挟むように手をかざし、魔力が流れる。法務官殿と目を合わせるとそこからも魔力が放出され、俺の中に入ってくる。体が動かなくなってきたな。

ああ、魔力を流す必要があるから、精神値が高いと抵抗されるのか。受け入れてしまうと抵抗できなくなるわけだから、油断してる相手くらいならどうとでもできそうだが。


「さて、一か月前から見ていくよー。ふむふむ、君は冒険者としての活動をずいぶん熱心にやっていたようですねー。あールグラを拠点にしていたんですか。エルサリウムエレイン翁は相も変わらず元気そうですね。彼は私の魔法の師のようなものでしてねー。彼の魔法は特殊なので厳密には違うんですがー、いろいろ教えてもらいましたー。」


俺がルグラで活動しているところをしっかりと見ているようだ。見ても面白い物などないと思うけどな。

一か月ってことだから、俺が骨の王であることやレイアが吸血鬼であることはばれるわけもないし、安心して待っていられる。


「あー、エルフのご飯いいですねー。あの国はあまり人が踏み入れる機会がなかったのが嘘みたいに開けてきましたからね。今では、人口の半分と同じくらいの観光客が常にエルフ国にいるようですよー?行ってみたいなあー。あ、Sランクの昇格試験ですねー。おおー強いですねーやっぱりー。私では逆立ちしても勝てそうにないですねー。翁とレイア嬢のー推薦だからー納得ですー。このハゲの方が―噂の『親父』どのですかー。防御だけでしたら、盾さえあれば―、SSともやりあえますねー。いやー見ごたえのある試合でしたー。ふう」


これが、大体一週間前の話だが、あれ、やばくないか?

法務官殿は相当な速さで記憶が流れているからか、思考が加速して言動がゆっくりしている。一度区切って額の汗をぬぐう。


「ここまで、は順調に見せていただきましたが、一つだけ質問させてもらっていいですか?うーん、どうして、一月前のあなたは獣人なんでしょう」


忘れてたわ、やべ。そういやルグラにいた頃はずっと獣人のままだったわ。あれ、そうなると問題のシーンはこれからだぞ。思いっきりゲオルギアに魔物だってばれるし、そもそも一回〔獣化〕しちまってる。いや、これはスキルだってごまかせるか。あ、ニピッドに着いた日にギルドの二階で骨になってるわ。


詰んでね?


俺が自分のミスに気が付いてあたふたし始めたことに気が付いたのか法務官殿は怪しむようにグイッと体を寄せてくる。

とりあえず、スキルの効果だとごまかそう。


「スキルの効果だ。詳しくは話すことはしないが、理解してくれないか?」

「そうですね。まあ、冒険者の飯の種って言いますし理解はできます。うーん。ちょっと難しいですね。全部とは言いませんが、すこしは教えていただきたいです。」

「あー、あまり人がいるところではちょっとむ「わかりました、全員許可があるまで退出しなさい。終わったら呼びます。ああ、そこの罪人もですよ。逃げようとするなら多少は認めます。」り...って早っ。」


おお、言うが早いかさっと全員が退出する。こりゃ相当に訓練されてるんだな。グルグル巻くの三人も引きずられて退出した。あれ(・・)に気が付いてからずっと静かだったなやりやすくてありがたい。


「さて、これで、この部屋には、僕と君だけになったわけだが、これで話してくれるかな?」

「はあ、しょうがないか。一部だけで勘弁してくれ。色々気づいてることもあるだろうが、たのむよ。」

「ええ、それでは、そのスキルについて教えてください。種族が変わるというのは聞いたことがないのでね。」


ニピッドの受付嬢は、すぐに納得していたんだけど、やっぱり種族が変わるってそんなありふれたものじゃないよな。

まあ、話しておくか。どうやって話しますかね。


「えっとな、俺のスキルは魔物の力を使うことができるんだが、今ある中で一番強い力が、ライオンの力なんだよ。動物の力を使うとあんな感じで獣人になってしまうんだよ。今は発動してないから、人族のままってことさ。これでいいかい?結構しゃべったけど。」

「ふむ、それは、また面白いスキルですね。初めて聞きました。差し支えなければスキル名もっと思いましたが差支えがあったようです。顔が引きつってますよ。失礼、さあ、続きを見ましょうか。」


そういってまた手をかざし魔力を流す。何度やってもなれないだろうな。


「あー、Sランクになって王都に向かうわけですかー、急ぐ理由もあったようですしー、ニピッドを通った理由もわかりましたー。あれこの僧は確か-、まあいいですー。あららー、これが被害者とされているー、ゲオルギア・アブサンですかー。へー、魔族ですかー、珍しいですねー。ムリニールの私兵は人族ばかりと聞いていたんですが―。」


二回目の過去視はどうやらじっくりと見ているようで、先ほどよりも声が間延びしている。そろそろ、まずい地点であるが。どうにかならんもんはならんと腹をくくろう。最悪逃げよう。


「さてさてー、うーん、ズカーホのー発言は間違いなく奴隷をー所持しているもののー発言ですねー。黒ですー。これはもう、踏み込んでしまいましょう―。それにしても、ゲオルギア―強いですねー。間違いなくゲオルギアから攻撃しているのは確認しましたのでー正当防衛成立ですー。」


よし、これで俺の正当防衛が証明されたってことでいいんだろう。いや―よかった。これで切り上げてくれないかね。

あ、続けるんですね。バレマスネ、コノママジャ。


「ゲオルギアってー、Sランク以上のー実力者の様ですねー。スキルも珍しいものを持っているみたいですー。さてー、なにを奪われたのでしょう―。あれあれー。光りだしましたねー。え?どういうことですかー?ライオンになっちゃいましたー。これが魔物の力ですかー。こんな大きい獅子の魔物は見たことがありませんー。すごいですねー。」


どうにかスキルでごまかせたみたいだ。しかし、骨になるところまでばれたらかなりまずいぞ。でも、ルグラのギルマスの弟子なら何とかなりそうじゃないか?いやそうに違いない。無理そうなら逃げよう。


「おおー、最終的にはオーバーキルな気がしますが―、正当防衛で大丈夫ですー。せっかくなのでーこのまま最後まで見せてもらいますー。」


いや、終わったならやめろよ。

一度受け入れてしまった時点で抵抗できないのがもどかしい。このまま解除までどうにもできない。

何度も言うが、どうにもならなそうだったら逃げよう。


「まーこっからはー会話はいいですー。目的は達成できましたのでー、一応覗いているだけです―。ニピッドに入りましたー。どこの宿屋でもー断られていますねー。ここまで人族以外に住みにくい街になっているとはー思いませんでしたー。これも先代がー亡くなった影響ですかねー。珍しいですー。」


ニピッドの町に入って宿屋が探しても決まらないのは困ったが、他の町では大丈夫そうだな、とのんきに考える。

これから、町の中に入れなくなる可能性もあるわけだが、気にしない気にしない


「ギルドで―宿泊ですかー、高位冒険者でーギルドに宿泊って言うのはーあまり聞きませんが―、こういった時は高位も低位もないんですねー。うーん、部屋でお休みですかー。レイア嬢がお食事を買ってきたようですねー。おいしそうですー。んんん?骨―!?どういうことでしょうかー?あれは、説明してもらいたいですねー。解除」


法務官殿が過去視を解除して戻ってくる。骨になったのを見てしまったので、ここからは交渉するしかない。


「さて、説明してくれますね?まさか、ここまで見られて、魔物の力などといわないですよね?あんなスケルトンは見たことがありません。」

「まいったな。記憶を見られている間は動けないのを良いことに、必要ないとこまで見られるとは思っても見なかったわ。ここでのことはできる限り話さないと誓ってくれないか?」


ここで、全力の〔王威〕を発動させる。いくらそこそこ強いと言えど、全力には耐えることは無理だろう。

まずは、言い訳をきこうか。


「すまなかった。好奇心に勝てなかったんだよ。どうか許してくれ。あと威圧を緩めてくれないか?さすがに辛い。これが脅しであることはわかる。たのむよ。」

「まあ、いいだろう。シカシナ、余計なことはするもんじゃないぞ、こういったことを引き寄せる。さて、説明だが見てもらったほうが早いだろう。」


うだうだと口で説明するよりも、見せてしまったほうが早い。どんなに言ったところで理解できるかわからんし。

〔人化〕を解いて骨の王の姿になる。今は影龍のローブに鎌を持っているため、さながら死神だ。


「〔人化〕解除」

「え!?どういうことだ。君は、魔物なのかい?これは驚いた。人化ってことは、こちらが本来の姿ってことだよね?いやー驚いた。魔物といっても意思疎通が獲れるものは一定数みられるが......こんなに短期間に見られるとは。」


最後の一言は聞きとれなかったが、十分に驚いているようだ。とりあえず質問に答えつつ、俺のことについて話す。ルグラのギルマスに話したのとほぼ同じないようだ。


「まあ、これが本来の姿だな。そんで俺はな―――――





――――――ってわけだ。このことはルグラのギルドマスターは知っているし、確認取ってもらってもいいぞ。」

「なるほど、すぐには理解できんが、まあ、魔物ではなくあの骨の王なのだとわかっただけでもよかった。」


理解ができなくても俺が人に害ある魔物であると思われなかっただけで収穫ありだ。しかし、「あの」ってなんのことだろうか。


「ああ、あのっていうのはですね私の実家に伝説がかかれた本があって、それが骨の王について書かれているのですよ。要は神の使徒の物語ですね。わかりました、あなたは冒険者として真面目に活動していたようですし、翁に聞けばより安全性が保障されるでしょう。」

「よかったよ。いやー逃げないといけないかと思ったわ。せっかくなんとかやってきたのに。話が分かる法務官殿でよかったよ。」

「あ、そういえば自己紹介しておりませんでしたね。僕は、ユーゴー=レイクそういうことにしてくれ。今の肩書はベルフォード王国法務局長だ。よろしく、アルカナくん。いやアルカナ様かな?」

「よしてくれ。これからも冒険者として働いて行くつもりだし、お偉いさんに様付けされたらそれだけで騒ぎになっちまうよ。普通にしてくれ普通に。」


わかりましたといってユーゴーは了承してくれた。


「王都に帰ったら一応、国王陛下と宰相には話を通しておきますがよろしいですね。...ありがとう。面倒ごとがなくなるようにしておくよ。さて、罪人をさばきに行きますか。」


ユーゴーが手を叩くと、ドアが開き先ほど出ていった全員が戻ってくる。罪人は多少暴行の痕跡があるが、逃げようとしたのかね。あほらし。


まあ、いいや。

どうにかやり過ごすことができたようでホッとする。

ルグラのギルマス、レイアに続いて三人目か。ちょっとバラしすぎかね。いや、故意的じゃないから、許してよ。






再会しましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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