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第46話 「狂った予定はしょうがない」

お読みいただきありがとうございます。


ふわぁああ、よく寝た。


ここ三日は野宿だったため、しっかりしたベッドで寝れたのは疲労回復の面で大きい効果を示した。どれだけ強い身体を持ち、どれだけ強い精神を持っていたとしてもずっと緊張感がある状態、リラックスできない環境では、たいした回復効果は得られない。


数日ぶりのちゃんとした睡眠は、レイアはともかく俺は久々だからな。頭を獣耳を避けてポリポリと掻くようにして触るとそこにある違和感に気づいて、寝る前に起こったことを思い出す。


「そっか。今は獣人じゃなかったわ。」


昨日とは違う耳の位置を気にして人間の耳を引っ張ったり抑えたりしながらベッドから立ちあがる。もういい時間だ。この町は鐘も鳴らないようなので、自己判断で動きだす。


顔を洗うために洗面所に向かうと、そこにはちょうどレイアが身だしなみを整えていた。彼女はルグラを出てから俺が走っている間、背中で器用にも寝続けていたので寝不足などはないはずだが、どうにも気怠げに髪を整えている。


「おはよう~」


まだ眠たげなレイアはこちらを見ることもなく、朝の挨拶をしてくる。そしてこちらを向いて吹きだしてしまった。


「ぶふぅ、ゴホゴホッ。アル、あんた何してんのよ?!」


どうしたんだろうか?と自分の状況を思い返すと、自分の耳が気になったまま、耳を引っ張った状態でここまで来てしまった。

どうにも間抜けな見た目のようだ。レイアはツボにはまってしまったのか、まだむせている。


「悪い悪い。昨日〔人化〕して、耳の位置が変わったからさ。気になっちゃって。人族の耳って真横についてんのな。耳もなかった骸骨が言うのは違うかもしれないけど、ここ三か月くらい頭の上にあって360度しっかり聞こえてただけに、真横だとカバーできないんじゃないかと思ったけど、そうでもないみたいでさ。面白いな人族の耳。」


「はあ、はあ、それはよかったわね」


何とか落ち着いたようだよかったね。顔洗ったり歯磨いたりしてたら、そこで俺の腹がぐぅと鳴る。朝飯の時間だ。昨日レイアが買って来てくれた食事はうまかったので、朝食も期待していた。

レイアも朝食を取っていないみたいなので、一緒にギルドの一階にある酒場のスペースに向かう。


「あ~腹減った。昨日の飯もうまかったし、朝食も楽しめるだろうな。」


「ええ、そうね。」


ギルドの一階に出ると、昨日よりも冒険者でにぎわっていた。昨日は日が落ちきってから来たので冒険者は皆無だったが、やはり朝は依頼を受ける冒険者でにぎわうのはどこの冒険者ギルドでも同じようだ。

さらにはレイアが視線を集めるのも同じことか。

冒険者たちがこそこそとしゃべってやがる。とっとと依頼決めないと取られちまうぞ。



(おい、あれが昨日ギルドに泊まったって言う、外の冒険者か?)

(そうみたいだな。見ろよ、とんでもない美人だぜ)

(一緒にいるあの男はなんだ、コレか?)

(馬鹿言え、そんなことは考えるな。悲しくなるだろ)

(てか、聞いた話だと、男のほうは獣人だって話じゃなかったか?人族の男だぜ?)

(俺が知るかよ、どうせ間違えたんじゃねえのか?フード被ってたって言うし、見間違えたのかもしれねぇ)

(そうだな。そもそもニピッドに獣人が来ることもないか。)



昨日俺たちがギルドで一泊したことは結構広まって噂になってしまっているようだ。しかも獣人ってことまで知れてやがる。

まあ、打ち合わせ通り、スキルの効果で獣人だったってことにすればいいか。


相手にする必要もないかと聞き耳立てることを辞め、酒場スペースに進もうとすると、レイアに袖を引かれ受付のほうに促される。


「部屋のカギを返さなきゃ、出発するにしても滞在するにしても、ギルドにいる必要はなくなったんだから。昨日言ったように暗黙の了解ってのがあるのよ。」


おおう。忘れてた。もう普通に宿が取れるんだったわ。さっさと鍵返して朝食にしましょうか。


朝食♪、朝食♪と口ずさみながら受付に行き他の冒険者が並んでいる列に並ぶ。数人が用事を済ませて列が進むと、俺たちの順番が来る。


「おはようございます。レイアさま、アルカナさま。昨晩はよく眠れましたか?」


「「おはよう」」

「しっかり眠れたよ。はい、これ部屋の鍵。俺たちは今日飯食ったら、そのまま王都に向けて出発するんで、ありがとな。」


「わかりました。ところで、アルカナ様。私の記憶が正しければ、昨晩は獣人だったような気がするんですが、今は普通の人族のように見えますが、いったいどういうことでしょうか。」


まあ、気になるよな。ギルドに報告しておけば、次の時も説明しないで済むかもしれないし、しといたほうがいいよな。とレイアのほうをみると、コクンと頷いたので、簡単に説明する。


「昨日までは確かに獣人だったよ。スキルの効果でさ。ルグラからこっちに来るまでに何度か戦闘したんだけど、このスキルの使い勝手が悪くて、一度発動すると一定時間解除できなくてね。そんなときにこの町だろう?困っちまったさ、はっはっは。」


こんな説明で大丈夫だろう。ほとんど真実じゃないが、真実なんて知ってるやつはいないし、平気だよな。この子も納得してくれるといいが。


「なるほど、納得しました。この世界にはまだ解明されてないスキルや未発見のスキルの報告もあるくらいですし、そういうこともあるかもしれませんね。それにしても災難でしたね。この町は、そんな町ですから。嫌になってしまいます。」


よかった。何とかなった。やっぱり、よそからこの町に来ると、ちょっと辛かったりするんだろうな。他種族がいないって言うのは、それだけ異常であるということだ。


用事も済んだので、それでは、と酒場スペースに行って席につく。話している間にも冒険者は依頼に出発していき、ギルドの中にはほとんど従業員しかいなくなっていた。

俺たちは席に備え付けのメニューを見て、朝食を頼む。


ふむん、なににしようか。いろいろとあるなぁ。あ、カレーがある。ハンバーグも。結構、地球にあった料理があるな、だれかが伝えたのかな。なんにしてもうまい飯があるってのは嬉しいことだ。

よし、カレーライスにしよう。


「俺は決めたけど、レイアは?ん?ああ、ハンバーグ定食ね。すいませーん、注文いいですかー。」


店員を呼ぶとすぐに来てくれる。決めたメニューを告げると、承知しましたといって下がろうとする。そこを俺が引き留めて、料理のことを聞く。


「カレーライスって、ここでも食材はそろうのかな。いきなり質問しちゃって申し訳ないんだけど、できればそろえたいんで。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。カレーライスに使う食材は、大体はここの市場でもそろいますよ。ただルーとライスは王都から仕入れてます。ここは麦が主食なのでライスは収穫してないんですよ。ルーは調合する人がいないのが理由ですね。」


「なるほど、ありがとう。」


失礼しますと、厨房に帰っていく。そうか、王都に行けばカレーライスが自分でも作れると。ルーまであるとは思わなかったが、ありがたい。スパイスからはさすがにハードル高いしな。


「なあに?そのカレーライスが何かあるの?私王都で食べたことあるけど、おいしかったわね。王都には専門店もあるわよ?いろんなトッピングできるから大人気店で支店もたくさんあるのよ。連れていってあげようか?」


「まじか!?いや、あってもおかしなことじゃないか。是非とも行ってみたいな、王都に行ったら絶対に連れていってくれ!」


俺の剣幕にちょっと引き気味のレイアだが快諾してくれたので、明るい未来に胸を弾ませながら、近い未来のカレーライスを待ち続ける。


ウキウキしていると、なんだかギルドの外の方がざわざわとうるさくなってきた気がして。入口の方をみると、外に出ようとしていた冒険者がなかに引き返してきた様子が見えた。

少しずつざわざわが近づいてきたので何かあったんだろうかと考えていると、俺とレイアが先ほど頼んだカレーライスとハンバーグ定食を乗せたお盆を器用に片腕に乗せて運ばれてきた。


その匂いはとても食欲をそそられ、先ほどからなっている腹の音が、どんどんと大きくなってきた。レイアもしきりににおいをかいでいる。


「お待たせいたしました、こちらがカレーライスで、こちらがハンバーグ定食になります。ハンバーグの方はお熱くなっておりますのでお気をつけてお召し上がりください。」


ついに目の前にあるカレーライスに手をつけようとスプーンを構える。するとギルドの入口のほうから、どたどたばたばたという足音が聞こえてきた。

こちらは食事時だというのに、埃を巻き上げるような足音にむっとするが、今はカレーライスに集中しようと、いざ、とばかりにカレーライスにスプーンを突っ込む。


しかし、突っ込ませようとした、その時、俺の腕が背後から伸びてきた腕に捕まれて止められた。

なにしやがる?と思って後ろを睨みつけるように振り返ると、一人の男が俺の腕を掴んで引っ張り上げようとしていた。また、さらに後ろには男と同じ装備をした、いつぞや見た私兵の集団がいた。


「ん?お前らって、たしか」


もしかしてと見覚えのある集団の真ん中を見ると、そこには見覚えのない痩せた体にジャラジャラとアクセサリーをつけた貴族?がいた。

そこはチビデブハゲじゃないのかいっ!なんて思ったけど、そこは些細な問題だ。今一番の問題は、なぜ俺が食事を止められているかってことだ。


「おい、どういうつもりだ?人の朝飯を遮るんだからそれなりの覚悟はしてるんだろうな、ああん?」


ちょっと脅すように凄んでみたが、魔力も何もかけていないよな凄みでは意味がなかったようだ。そんなことをしていると痩せ貴族が勝手に話しだす。


「貴様がSランク冒険者アルカナだな!貴様には殺人の容疑がかかっている!身に覚えがあるだろう?!この町に立ち寄ったのが貴様の運の尽きだったな!神妙にお縄つけい!!」


マジで意味がわからないんだけど。どういうことだ。マジで身に覚えがないんだけど。この町に来るまでに戦ったのは、雑魚魔物数匹とゲオルギアくらいだ。雑魚魔物は問題ないはずだし、ゲオルギアだって正当防衛になるはずだ。

言ってるとしたらゲオルギアのことだが、納得はいかない。


「身に覚えがないんだ。もう少し具体的に言ってくれないか。そちらの間違いである可能性が高い。」


意味がわからないといった調子で話すと、痩せ貴族の横にいるちょっと豪華な服のやつが何やら怒りだしてしまった。


「貴様ぁ!こちらの御方をどなただと思っている!トゥーピッド子爵家御次男、ニコラストゥーピッド様にあらせられるぞ!口の利き方に気をつけんか!!」


ん?確かそいつってこの町の町長だったか。うん、なるほど読めたぞ。この痩せ貴族はあの時に会ったゲオルギアの主人の縁戚だったはずだし、それつながりってところか。


俺が考えているうちにレイアも大体のことはわかっていたらしく、痩せ貴族に反論する。


「ちょっと!アルが何したって言うのよ!私はこの町まで一緒に来たけれど人殺しなんてしていないわよ!証拠はあるんでしょうね!」


「これはこれはレイア殿。こちらも暇ではないのでね、何もないなら来たりはしませんよ。今回の件で言うならば、あなた方がギルドに来た時の報告を聞き、ムリニール伯爵家の御嫡男がおっしゃられているのです。ご自身の親衛隊長が殺されたようだ、と。それ以上の証拠が必要ですかな。」


やはりか。どうやってあいつが死んだことに気が付いたか知らないが、この世界でも正当防衛は認められているし、あれは間違いなくこちらが被害者である。

それならば、こちらは堂々としていればいい。どうにも今回の件はきな臭い。大方レイアのそばにいる俺が邪魔だということなのだろうが、手口が杜撰だ。


どうしてくれようかと考えていると、受付のほうから受付嬢の子がやってくる。


「何をしているんですか!ここはギルドです。いくら貴族様でも好き買ってして良い所ではないですよ!それにこちらはSランク冒険者です。本格的にギルドと事を構えるおつもりですか?」


「はんっ!平民風情が偉そうに!私たちとてギルドとやりあうつもりなど微塵もありませんよ。この獣人がSランクの冒険者だからって、犯罪者であれば、その取り締まりは町長の領分です!口出しはさせませんよ。」


痩せ貴族、いや、ニコラスは勝ち誇ったように言う。確かに犯罪者になればSランクだろうが関係ない。むしろ協力しなくてはならなくなる。ここでやりあうのはよくないな。


って、ん?今獣人って言ったかね?情報が古いなぁ、残念ながら。


二階から降りてくるころにはフードを被っているため今も被ったままである。どうやらそれが幸いして、もはや獣人ではないことは知らないようだが、なんて言われてきたんだか。

いよいよ陰謀くさいな。


拘束している腕を振りほどきカレーをスプーンごと〔骨壺〕入れてフードを取る。もちろん貴族並びにムリニールの私兵は俺が獣人だと思っていたわけだから、その驚きも一入ひとしおだったろう。


私兵たちは腕を振りほどいたことで一気に警戒態勢に移りフードが取れた姿を見てざわざわとしだす。そんな様子にニコラスは頭を傾けている。この場で驚いていないのは、レイアと受付嬢の子くらいだ。


「貴様は獣人だったはずではなかったか?ズカーホさまは白髪の獣人といっていたのだが、どうしたものか。」


今は黒髪の人族だもんな、見た目は。くくくっ。

いい感じに揺さぶれたと思ったところで、さっきの横にいるやつが、虚勢と共に声を張り上げる。


「町長殿、もしかしたらズカーホさまが見間違われたかもしれません。しかし、レイア殿と行動を共にしている冒険者ということですから、間違いはないかと。ここはひとまず拘束して尋問すれば自らの罪を自白するでしょう。賞罰の珠を使用すれば一目瞭然でございましょう。」


「そうであるな。実際にゲオルギアが死んだのは事実であるのだから、あの者が関係していない訳もないか。よし、やはり、貴様の犯行であるな!ズカーホさまの私兵たちよ、奴を拘束しろ!町長屋敷の地下牢に入れるのだ。明日尋問を行う。」


おいおいマジか。死んだからって俺が殺ったとは限らんだろ。こりゃ相当にムリニール家ってのは力ある貴族家ってことかもしれない。

って、まてまて。レイアさん。こんなところで暴れてもいいことないですって。


「ちょーっと待った!待ってくれ、レイアが暴れたら、相手の思うつぼだ。ここで暴れるとギルドも庇えなくなっちまう。何か賞罰の珠?とかいうので判断するみたいだから大丈夫だと思う。それに俺がそう簡単には死なないことも知っているだろ?安心してくれって。ほいじゃ、行ってくるよ。」


「――うぅ、わかったわ、今はやめとくわ。だけどどうにもできないとわかればすぐに動くからね。」


ふぅーあぶねー。何とか止められた。実際こいつらが何かしたところで俺が傷をつけられることすらないだろう。それくらいには愕然としたステータスの差がある。


そんなことを考えていたら、私兵に縄でぐるぐると巻かれ拘束される。手足が動かせないようにされた状態で担がれ、連れていかれる。

ギルドから連れ出されると、えっちらおっちら、と運ばれていく。


十数分程運ばれたところで、これまで見た家よりはるかに大きいが趣味の悪い屋敷に到着した。屋敷に入ると階段を下りていく。あいたっ!ぶつけやがった。この野郎。


階段を下りていくと牢屋があり、その牢屋の先には厳重に施錠された鉄扉があった。

運ばれる俺の前を歩くニコラスが鉄扉に近い牢屋を示すと、そこに放り込まれた。こいつら受け身も取れない俺を放り投げると、どういうつもりだ。



「明日には貴様を殺人罪で裁いてやるから首を洗って待っているんだな。洗うための手は使えんがな。はっはっはっは。」


ニコラスは俺にそういって私兵とともに上へと戻っていく。

はあ、明日の尋問ですぐに吐かせるつもりでいるみたいだが、今のところ証拠も何もないんだけど、賞罰の珠とかいう魔道具?一点突破でもするつもりなのかね。

あーあ、今頃飯食って出発してたのになあ。


予定が狂ってしまったことにがっくりとしたとき、ぐぐぅと腹が鳴る。


「狂った予定はしょうがないとして、腹が減ったが、腕が使えないから食えない、と。どうしたもんかね。って、あれ、俺以外の腹の音がしたぞ?」


腹の音の主を探して芋虫のように動きだす。

するとどうやら俺より先にこの牢屋に入っている人がいたようだ。


「やあ、あんた、どちらさん?俺はアルカナ、こんなでもSランク冒険者だ。よろしくな。」




どうしましょう


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