第44話 「装備の物も俺の物、俺の物も俺の物」
お読みいただきありがとうございます。
対魔族の締めのような形でちょっと短いです
はあ、はあ、はあ。
とんでもなく驚いたわ。まさかの出来事だったからしょうがないとは思うけど、大きな声を出しすぎて、レイアも驚いている。
いや、悪かったって。そう睨んでくれるなや。
「何をそんなに驚いているのよ?大したことなかったら承知しないわよ。ただでさえこれからのことを考えるとめんどくさいのに、厄介ごとじゃないといいけど!」
『悪い悪い。俺だって意図して大きな声出したわけじゃないし、図体がでかい分声もでかいんだよ、たぶん。それに、大したことだと思うよ?なんていうか、〔強奪〕の別の使い方を見つけた的な?』
まあ、言ってもわからないだろう。俺だって訳が分からないのだから、当事者でも何でもないレイアに分かるはずもない。
なんのこっちゃわからないでいるレイアに、丁寧に教えてやる。
『レイア君、いいかね?今回私は不覚にもゲオルギアとかいう魔族にスキルを〔強奪〕されました。』
「ええ、そうね。あのスキルは接触しなければ脅威にはなりえないのだから、はっきり言って間抜けだったわ。で、それがどうして〔強奪〕の別の使い方につながるのよ?」
実に手痛いことを言ってくれるレイアにちょっと傷つくが、間違ったことは一つも言ってないので、反論の余地はない。甘んじて受け入れよう。
俺は今回の一件でわかったことをレイアに伝える。
『確かに間抜けを晒してしまったことは、誠に遺憾ではあるが、今後に期待していただきたい。ってことで、俺が間抜けかましたことは置いておいて、今回俺が気づいたことで重要なのは、俺のスキルの〔強奪〕場所と返却場所だ。』
これだけを言ったところで獅子王面のことはリオウの死体であることくらいしか教えていないレイアにはわからない。
「だから何よ。場所も何も取られたのはアルでしょ?なら返却場所もアルじゃないの?」
『それが違うんだよ。まず、〔強奪〕場所だけど、これを説明するには獅子王面についても教える必要がある。これは一応、準神器に値するらしいからできるだけ広めないでほしい。レイアと俺は似たような立場だから、どうしてかはわかると思るだろ?』
「わかったわ。私だって冒険者だもの、秘密を漏らしたりはしないわ。」
『ありがとう、じゃあ、説明するけど、〔強奪〕はその所有者が手で直接触れた相手のスキルを奪うみたいだ。ここまではいいな?うん。で、今回ゲオルギアが奪ったのは俺の〔人化〕だけど、正確にはちょっと違う。正確には俺の装備品である獅子王面から〔人化〕を奪った。』
ここまで言うとさすがにレイアも察して驚いている。まあ、わざわざ言うことでもないけど、スキル付与された装備品ってことなんだよな。それ自体は特に珍しいことではないが、その素材が問題。神獣のスキルが付与されているということになるからだ。
『“直接触った場所”ということは、今回のようにスキル付与された装備品だった場合、祖の付与されたスキルが奪われるようだ。だから今回奪われたのは〔人化〕だった。ここで問題なのが、返却場所だ。普通に考えると、そのまま装備品に戻されるのだけど、どうやらそうじゃない。今〔人化〕は俺のスキルになった。』
「それって」
『そう、〔強奪〕を使って装備品から付与されたスキルを奪うとその返却先が装備者になるってことだ。これを使ってやろうと思えば、いくらでもスキルを増やすことが可能だ。』
これが今回わかったことで、正直、結構やばい情報。ある程度まわる頭と行動力、スキル〔強奪〕があれば、スキルを取り放題だ。まあ、そんなにスキル付与された装備は手に入らないという問題があるけどな。
装備の物も俺の物、俺の物も俺の物ってな。
自分自身に強奪できるなんてことはないだろうけど、装備を指定してならできる気がする。
『これは正直やばい情報だし、獅子王面を誰かに奪われて今言った手順でスキルを移動させられたら、今の状態だと〔獣王〕が持っていかれる。専用装備みたいなもんだけど、できなくはないはずだ。』
「確かにうかつに外には出せない情報ね。〔強奪〕なんて持っている人は他に聞いたことないけど、いないわけもないと思うわ。ていうか、神獣様のマスクって〔獣王〕なんてスキルが付与されているのね、規格外だわ。」
実際、このスキルは規格外もいいところであるが、スキルとしての威力が強すぎて普段使いには向いてない、という欠点になるんだかならないんだわからないところがある。
この間のゴブリン集落を消し飛ばしたときは余剰威力だけで、森が随分と吹き飛んだ。実は〔温情〕だけじゃ抑えきれなかった部分も多分にある。
『本当に規格外だよ、リオウには感謝している。でも威力が高すぎるし、やりすぎないようにするのが難しいんだよな。〔人化〕してるならまだやりようもあるんだけど、今回みたいなパターンは想定してなかったからなぁ。』
「とりあえず〔人化〕したらどう?いつまでもその姿はよくないでしょう?これから通る町はさっきのゲオルギアが立ち寄る予定だった街よ。つまり他種族排斥主義者ともいえるようなのがたくさんいるの、ムリニール家みたいにね。領主だってムリニール家の親戚なんだから、人族至上主義よ?ゲオルギアは長男に気にいられていたから魔族でもやっていけたみたいだけど、それ以外に家中に亜人の存在は皆無らしいわ。」
聞いているだけでめまいがするな。人族至上主義に他種族排斥主義者って、若干違うみたいなんだよね。
人族至上主義は人族が偉くてそれ以外はみんな奴隷以下みたいな感じ。ムリニール家は全員がそんな感じ。ゲオルギアはそんな中で長男に気にいられて出世したみたい。
他種族排斥主義者は、人族以外は嫌いって連中らしい。つまり、これから行くトゥーピッド家の町、ニピッドには一人の亜人もいない。そんなところに獣人の姿のまま俺が行ったら、恰好の的になる未来しかないな。
しかし、そんな街にもギルドはあるし、人が住んでいるから依頼も十分。他種族を奴隷にしているわけではないため、王国からの指導も入れることはない。この国のほうでは、主義主張は取り締まれるものではないからだ。
『それじゃ、人化するかね』
人化を発動させると俺の体はみるみる縮んでいき、いつもの姿まで戻る。
やっぱりこの姿が一番気が楽だ。さっきまでは無理やり人の形に抑えるためにスキルを全力で発動し続けなくちゃいけなかったからな。
「よし、そんじゃ、そのニピッドまで進みますか。ここまでざっと2日かかったわけだけど、このままいけば中継町であるニピッドまで3日、そこからさらに3日で王都か大体1週間くらい余裕があるな。これなら王都観光もできるしこのルートで正解だった。」
「そうね何事もなければいいけど。さっき襲われたとはいえ貴族の私兵を殺しちゃったわけだから、面倒なことになるかもしれないわね。まあ、私たちの本質は魔物だからしょうがないわよね。」
言われてみれば確かに、ゲオルギアは私兵だったわけだし、その主人が滞在する町にこちらも一泊するのだから、面倒ごとのにおいがする。
「どうするかね?飛ばして次の街に行く?俺が乗せて走ればそこまで難しくないと思うけど。」
いいえ、とレイアは首を振る。
「確かにアルの速度ならかなり進めると思うけど、王都とニピッドの間には王都寄りの地点に宿場町があるくらいで、さすがに辿り着けないわ。それなら、我慢して一泊していったほうがいいのよ。」
そんなもんか。しっかりとした宿屋で寝れる方がいいよな。なら、急ぐ必要もないか。
俺たちは予定通り次の町ニピッドで宿を取ることにした。
次の町に到着しましょう
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