第43話 「............はあ?」
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俺がスキルを取られたことで絶望するのを想像してかにやにやとこちらを覗くように見るゲオルギア。
確かにスキルを奪われたことで驚きはしたが、放心してなにもできなくなるほどではなかった。実際その隙にゲオルギアの〔戦力把握〕は済ませている。
ゲオルギアのステータスはこんな感じである。
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名前:ゲオルギア・アブサン
種族:魔族
性別:男
レベル:190
体力:180000/180000
魔力:12100000/12100000
筋力:800000
耐久:1000000
敏捷:80000
精神:50000
運 :30
【固有スキル】
〔強奪〕〔闇魔法〕〔信仰〕
【通常スキル】
〔剣聖技〕〔万能探知〕〔身体強化〕〔物理耐性〕<人化>
【称号】
〔復讐者〕〔親衛隊長〕〔略奪者〕
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〔強奪〕:相手のスキルを強奪する。相手とのレベル差によって成功率は決まる。相手のスキルを一つだけ収奪し自分の力とする。ただし、保持できるのは一つだけで、本来の所持者が生きている間だけ有効。
〔闇魔法〕:隠蔽や暗転などの闇魔法が行使可能になる。熟練度により解放。
〔信仰〕:人物、神、動物など生物を対象に信仰心の強さによって耐久を増強する。
〔万能探知〕:〔探知〕上位スキル。〔気配探知〕〔魔力探知〕〔生命探知〕をより強力にしたスキル。同時使用が可能になる。
〔物理耐性〕:物理攻撃に耐性を持つ。
〔復讐者〕:復讐を成した者
〔親衛隊長〕:ムリニール伯爵家騎士団ズカーホ親衛隊長。
〔略奪者〕:二つ名
こんなところである。強さとしては弱体化リオウよりステータスで勝りスキルで負けてるって感じだ。相性の問題でゴードンと互角ってところだな。
いくつか気になるところはあるだろうが、上から見ていくと、まずは種族。
この世界にきてから初めての魔族ですよ。見た目はほとんど人だからわからなかったけど目が普通とは逆。白と黒が反転してる。これが魔族の特徴みたいだ。この世界ではただの一種族で、ほとんどの国では差別されずに生きている。種族として長命なので数は少ないが、各国に点在しているらしい。
魔族も人族と大差ないが、ヒトとしては強い部類なのは間違いないね。
次はレベルだ。だいたいゴードンの倍くらいのレベル。冒険者で言うとSSランクになりかけのSランク位。
物理攻撃防御に傾いた前衛タイプ。隊長でありながらも指揮系統のスキルを持っていないから、自分は最前線で戦うタイプの隊長なんかな。
あとはスキルだと称号だけど。どっちもやばい。〔強奪〕現在進行形でやられているわけだから言わずもがなで食らってはいけないスキル。見た感じランダムで一つって感じだから、今回は運がよかったとでもいえるかな。〔獣王〕とかシャレにならない。
それなりに強い部類にいるだけあって、スキルもそこそこ育っているとわかる。スキルが統合したり進化したりしてるからには相当な試練、修羅場をくぐり抜けてきているはずだ。
称号は、簡単に言ってしまえば、その人物の生き方を示すものだ。だから、二つ名などの他人からの評価が記載されるし、冒険者ランクなんかの地位、そして、成したことが表示される。
このことからも、ちょっとやばいよね称号に硬貨が付くことはめったにないが、表示されない効果があることがある。ゲオルギアの称号で言うと〔親衛隊長〕だ。
これは隠し効果として〔信仰〕に追加で筋力に補正がかかるようになるみたいだ。ステータス上はレイアよりも筋力は無いはずなのに、ゲオルギアのほうが強く感じた理由はこれだろう。
単純なステータスの増加はそれだけでも厄介な流れを生む。物理的に偏ったステータスに〔信仰〕と〔親衛隊長〕の組み合わせは、最良だ。こちらとしては最悪といわざるを得ないが。
ステータスを見ながら、対策を考えている間にも俺とゲオルギアはにらみ合いを続けている。
ゲオルギアはゲオルギアで、俺から〔強奪〕したスキルの確認をしながら警戒しているのだろう。
しかし、〔人化〕なんてスキルは、普通は使いようがないスキルだ。それを見てもゲオルギアにはどうしようもない。
っと、そんなことをしているうちに時間が来たようだ。
今の俺は〔人化〕を奪われたことで、人の形を維持するのが難しくなった。しかし、俺には〔骨格完全制御〕と〔万能骨格〕がある。これで無理やりに人の形を維持しているが、そろそろ〔人化〕スキルの効果が切れて皮膚が人間のものから獣のものに変化していき体が大きくなる。装備をだめにするのはいやなのでとりあえず防具類は〔骨壺〕へと収納する。
そこでゲオルギアも俺の正体に気が付いたのであろう。
そもそも俺が獣人ですらなくて〔人化〕をした魔物である、と。
どんどんと体が伸びていく。体高7mのライオンになるのを無理やり抑えて人型に押し込んでいる今の状態は、ムキムキマッチョのライオン頭だ。限界まで小さくしても身長3.5mが限界なので、すでに肩を掴んでいた腕は放された。そして俺はゲオルギアを見下ろす形で向かいあう。
「貴様!まさか獣人ですらなくて魔物であったとはな!これで貴様を切り捨てる口実を得たわけだ。好都合よ。それにレイア嬢、あなたもこの魔物に騙されていたのだろう?どうだここは共にこやつを討伐せんか?」
口実などなくても関係がなく斬りかかってきたくせに、と思いながらも口実を与えたのはしょうがないこととはいえ不手際である。
それになんだかトンチンカンな方向に勘違いし始めたが、レイアは俺のことを知っている。あのような提案には頷くはずもない。
「いやよ。私はアルが獣人じゃないことは知っているし、仮に知らなかったとしても、あなたとの共闘なんてあり得ないわ。」
レイアはすげもなく断ると俺とゲオルギアから離れていく。思い切りやっていいということなのだろう。正直ありがたい。
こんな姿になったのは初めてなのでどうにも加減ができそうにない。
ゲオルギアなら加減する必要もないし、むしろ全力で消し去りたいくらいだ。この姿を見たものは生きて返すわけにはいかないってな......なんか悪役っぽい?
まあいいや、正直今こんなことを考えている間にもゲオルギアは切りかかってきている。レイアを超える程の筋力で繰り出される剣術は、そのスキル熟練度も相まって、それなりの威力だが、人化を解いたような状態の今はただでさえ高い耐久に獅子王面の装備ステータスが最大で加算されていることで無効化している。
ゲオルギアはどれだけやっても傷一つつかないことに焦りを感じたのか、何やら剣を構えて集中を始めた。これは来るか?斬撃飛ばすか?逆手に持ったりなんかして?
「貴様のような下等な魔物風情にこのような技を使うことになろうとは。しかし、これを受けて立ちあがったものはいない。詫びるなら今のうちだぞ!フハハハハハ。死ぬ覚悟を決めるがいい!!闇炎付与!!」
わーかっこいー。
うん、わかってた。まあ、正直期待しすぎてた感はある。剣を構えた状態で魔力練ってんだもん。そりゃ期待するでしょ。
今まで会った人はあまり魔法をうまく使う人が少なかった。ルグラのギルマス位じゃないかね。そうなると、いくら敵とはいえ気になるじゃん。
で、期待した結果がこれ。エンチャントって。百歩譲って獅子王面の属性は光100%だから?闇属性の付与はいいよ。でもさ、そもそもかすり傷1つ付けれないんだからエンチャントしたところで何が変わるというのさ。
俺はギ○スラッシュ的なのを期待してたんだけど、まあ、無理でした。今だってなんか黒く燃えた剣でぺちぺちやってるだけ。
〔人化〕してる状態でやっとこさ薄皮一枚ってところじゃないかな。後ろでレイアが爆笑してる。
さすがに決め顔までしてたゲオルギアがかわいそう。敵だけど。
『さて、こんなもんか?闇属性には今まで出会ったことはなかったから期待していたんだが、正直期待外れである。それじゃ、それ以上に何もなさそうなので、終わらせてやる。一瞬だから、覚悟しなくてもいいぞ。よしキングズブ――「ちょっと待ってくれ!!」――レ?なんだ。』
そろそろ決着としようとブレスを溜めたところで止められた、他でもないゲオルギアに。無視してもいいが、何かしようとしても特に問題はないため話だけは聞いて見ることにした。
『もう一度言う、なんだ?』
「俺が貴様にかなわないというのは不本意ではあるが理解した。それほどまでの存在ということも。任務を達成できないことは非常に不愉快ではあるが、引いてやってもいい。」
なんかとんでもないこといいだしたぞ。どう考えても泣いて懇願する立場なのに上から目線は変わらず、言うに事欠いて「ひいてやってもいい」って何様のつもりなんだ?
レイアさんが腹抱えて笑ってますよ。いい加減にその態度もどうかと思うな。
『お前自分の立場がわかっているのか?生殺与奪の権利を握っているのはこちらだ。断じてお前じゃない。それをわかったうえで発言しろ。』
ここまでは抑えていたが〔獣王〕の〔威圧〕を発動させ、追い込んでいく。
しかし、〔威圧を〕多少かけたところでゲオルギアも実力がなまじある分耐えきってしまう。
「私だって、それなりの修羅場をくぐってきている。威圧されたとていいようにはされん!」
〔威圧〕を強める。
「ぐぅ、まだこれくらいでは平気よ、これが貴様の全力か、私には無意味である。交渉に応じろ!」
何様だか。はあ、お望みならば全開だ。
ぐわんっと世界が揺れるような感覚と主にゲオルギアを〔威圧〕の波が襲う。さすがに獣王の威圧には耐えきれなかったようで、足ががくがくと震えて尻もちをつく。
《個体名アルカナは通常スキル〔威圧〕を取得しました》
《熟練度が一定以上に達したので通常スキル〔威圧〕が固有スキル〔王威〕に進化しました》
《固有スキル〔王威〕は伝説級スキル〔骨の王〕に統合されます》
スキルゲットできたし、ラッキー。装備スキルを自分で使えば習得もできるのか。もしかしたら〔人化〕も生えるかもしれないな。
とりあえず、このままではしゃべれないだろうから、ちょっとだけ〔威圧〕を弱めて聞いてみる。
『さあ、どこらへんが無意味だったのか、教えてくれんかね?』
もちろん無意味な訳もなく、震える足を抑えてゲオルギアが何とか立ちあがる。
「ま、まて!ここで私を殺してみろ、貴様はこの国にはいられなくなるぞ!私はムリニール家長男の親衛隊長、貴様はムリニール家を筆頭に王国貴族から手配されることになるぞ!」
上から目線の次は主家を使った脅しかよ。親衛隊が聞いてあきれるぜ。さすがに引いたのかレイアさんも、うわぁって顔してる。
『それがどうした?敵になるというのであればすべて叩き潰すのみ。相手は魔物なんだから、それくらいわかるだろ?その頭は飾りか?』
「で、であれば、そ、そうだ!スキルはどうだ。貴様から奪ったスキルを返す代わりに私を見逃せ!貴様もこのスキルがなくては困るのであろう?悪い条件じゃないはずだ!」
確かにスキルは奪われたままはまずい。〔人化〕出来なければ人の街には行けないし、冒険者としての依頼も受けれない。
ここにきて賢い脅しとは、面倒な。
って、別にレイアがいれば関係なくね?レイアが依頼受けて俺が達成してレイアが報告すれば万事解決。
それにこいつを殺せばそのままスキルが帰ってくる可能性もある。
『確かに悪い条件ではないが、お前がそれを守る保証もないし、むしろ反故にする可能性のほうが高いまであるがな。』
「そこは信じてくれとしか言えない。だが約束は守る!見逃してくれ!」
だんだんと上から目線ではなくなってきた。よほど精神的にダメージを食らっているのだろう。まあ、攻撃を緩めるわけもないがな。
『お前を殺して奪い返す方が確実だとは思わないか?』
「俺を殺したらスキルがどうなるかわからないぞ!俺は今まで相手の死を確認してからしかスキルの強奪が解除されたことはない!死んだら無くなってしまうかもなぁ、フハハハハハ」
何やら勝ち誇ったように笑っているが、それなら選択肢はほとんどないようなものだ。俺は覚悟を決めて、魔力を練り上げる。
「ん?な、何を考えているんだ!?おい!!私との取引をしないつもりか!?まて、待ってくれ――」
『じゃあな、〔獣王の咆哮〕!』
「ぐあああああああああああああああああああああ!!!!」
『別に人化出来ないのは、レイアが仲間になった時点で、デメリットでも何でもなくなったんだよ。残念だったな。』
グオンと上空にしゃくりあげるように進んだ光のレーザーはゲオルドを連れて突き進む。
そして
ぼしゅっという音とともにゲオルギアが消滅する。
《必要経験値を満たしました。個体名アルカナのレベルが32に上昇しました》
おっレベルが上がった。さすがに強かったもんな、ゴブリンエンペラーの次くらいに。
さてこれからは、レイアのペット生活が始まるわけだけど――
《〔強奪〕所持者の消滅を確認.個体名アルカナにスキル〔人化〕が返却されます》
――うぉい!帰ってきたわ!これでペット生活が回避できた。
よかったよかった。一応スキルの確認をしとこうかね。
ステータスっと。
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名前:アルカナ
種族:骨の王(超越根源種)
性別:男
レベル:32/-
体力:47420/47420+300000000
魔力:1821180/1821180+1200000000
筋力:37880+900000000
耐久:138646000+50000000
敏捷:38300+90000000
精神:1473000
運 :86
【伝説級スキル】
〔骨の王〕〔人化〕
【固有スキル】
〔完全反射〕
【通常スキル】
〔鎌技〕〔拳聖技〕〔家事〕〔縮小化〕〔気配探知〕〔魔力探知〕
【加護】
〔戦争と死の神の加護〕
【称号】
〔異世界の死体〕〔着用者〕〔最強の一角〕〔死神〕
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名前:リオウマスク
種族:王獅子(神獣種)
性別:オス
【伝説級スキル】
〔獣王〕
【加護】
〔戦争と死の神の寵愛〕
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........................はあ?
はああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?
彼は何に驚いたのでしょう?
拙作を読んでいただきありがとうございます.
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