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第38話 「い、いや、知ってたさ。ほんとだよ?」

お読みいただきありがとうございます。


ギルドマスター、俺、レイア、ゴードンの四人でその場にいたすべての人を放置してギルドマスターの執務室に向かう。執務室にに入ると、先ほどからこちらから視線を外さないゴードンが俺に問いかけてくる。


「で、どういうことなんだ?ギルマスの魔法であいつらの記憶がなくなったのは心身に悪影響を及ぼすわけじゃないから、どうでもいいんだけどよ、さすがに訳がわからんよ。アルカナがやったんだってのはどういうことだ?俺にもわかるように説明してはくれないか?これでもこの都市の冒険者のまとめ役でもあるんだ。教えてくれや、アルカナ、ギルマス。」


さすがに〔親父〕なんていう称号があるだけあって、仲間思いのようだ。個人的にはわざわざ知らなくていいことを抱えるのもどうかとは思うが、気質なんだろうな。


俺が答える前にギルドマスターが答える。


「そのままの意味ですよ。あなたたちが一つの集落を殲滅しているときに、アルカナくんは2つの集落を潰していたんです。それも圧倒的な力で。上位種を含めて、ね。」


ギルドマスターは俺のほうを見てどこまではなしていいかをうかがってくる。自分が|骨の王であることや、獅子王面を装備していることを除いて不都合がない程度には話しておくことにした。まだ上がいるとは言えども、Sランクも十分一握りの実力者だ。理解者であればありがたい。

ある程度って言うのはエンペラーのゾンビ化や腐神ザンビグルのことも含まれる。自分の上司のような存在である最高神については、神とは言わず、知り合い程度で濁しておいた。

あ、死神については簡単に話した。死神の手伝いみたいなことをしている程度の認識でいてもらうつもりだ。もちろん、ダンジョンでのことは話さない。

また、人化とは話さずに、〔獣化〕を使えることにして話すことにした。獣人の中には、そういうのもいるようだしね。




「なるほど、まあ、強いってことはわかってたがそこまでとは思いもしなかったぜ。それに、アンデットのことを聞いてたのはそう言うことだったのか。死神様の手伝いってのはすごいな。オーリィン様の孫請けみたいなもんじゃないか。しかし、〔獣化〕とは、またすごいもん持ってるな。俺も獣人の知り合いはいるが、そのスキル持ってるのは、獣王国の貴族ぐらいだって話だぞ。できれば一度だけ見せてはくれないか?どれほど戦力強化されるか見てみたいな。」


突拍子もない俺の話を聞いて、すこしは驚くかと思ったが、それよりも俺の獣モードのほうが興味があるようだ。

おっさんのくせしてかなり目が輝いている。俺が説明をしている間、一切声を出さなかったレイアとギルマスは俺が人化を解くことに驚いたのか俺の方をじっと見ている。

これも一つのサービスだな。いざというときに実力者の知り合いを作っとくことは不利にはならないだろう。


すべて話したギルドマスターはともかく、レイアも俺のことは感づいているだろうから、別に気にする必要はないし、ゴードンに関してはこの町の冒険者のまとめ役なんだから、知っておいてもらって悪いことはない。冒険者ギルドルグラ支部のツートップともいえるような人とSSSランクに理解者ができることにはありがたい話である。


この場で人化を解くのは、二度目となるが、一度目は特に気にせずに脱いで人化をした。しかし、防具ができてからは、万が一にも壊したくないので防具を外して人化を解いた。

ゴブリンエンペラーの時が後者であるが。これだと今みたいなケースでは女性の前でも裸にならねばならなくなる。それは勘弁だ。


よし、服を着たまま人化を解いて、その瞬間に〔骨壺〕に服を収納しよう。そうすりゃ服も失わずに済むし、人化する際はその逆をすれば、素っ裸で戻ることもなくなるわけだ。

練習もかねてここでもやってみよう。


〔人化〕解除!


――の前に、一応防具だけは外しておこう。失敗してせっかくの装備をなくしたらしょうがない。


それじゃ気を取り直して、〔人化〕解除!




――――よしよし、上々だ。

何とか、服を同時にしまうことができた。正直結構できるか不安だったけど、やればできるもんだな。


巨大なホワイトライオンと化した俺を見てゴードンの顔は明らかにひきつっている。そりゃ驚いただろう。間違いなく想像していたよりも大きくなっただろうし。

しかし俺にはそんなことは関係ない。なんだかんだで信用できるやつだってことはわかってるし、ルグラにいる限り、ゴードンが何とかできないことなどほとんどない、とギルドマスターがこの前言っていた。何とかできないのは、領主である貴族だけらしい。

その貴族もめったなことでは冒険者に手を出そうとはしないらしい。

冒険者と領主がwin-winの関係ならいいことだよね。


『ゴードン、これでいいか。さすがにこのサイズだとこの部屋でも狭いな。少し小さくなるから待っていろ。〔縮小化〕・・・・・・・・・ふぅ。これでいいだろう。どうだ?かっこいいだろう?』


大型犬と同等くらいのサイズまで小さくなり、ドヤ顔でゴードンに声をかけると別のほうから声がかかった。その声には畏怖と敬意が含まれているが、それ以上に興奮して、とんでもない言葉を発しようとしている。


「その姿!まるで神じ、ふがっもがっ、ぷはっ何するんですか!ギルドマスター!・・・・・・・・・いや、そうね。わたしが悪かったわ。あなたもごめんなさい。」


ギルドマスターが神獣といいそうになったレイアの口をふさぎ、状況を理解したレイアが俺に謝罪する。ゴードンはわかっていないようだが、俺の姿に感動して周りが見えていない。

レイアの謝罪を受け取り、ライオンの姿のままだと不便なので人化して椅子に座る。


もちろん、服は着ているよ?


座ってから数瞬後、ゴードンも興奮から覚め再起動し、レイアとギルドマスターも椅子に座りなおす。

どうでもいいが、この部屋はギルドマスターによって空間が拡張されているため、どうにも広すぎる。広い空間に執務机と来客用のイスやテーブルといった具合で、本棚もあるにはあるがそれでもまだ何もない部屋に感じてしまう。


再起動したゴードンが席につくことを確認して、ゴブリンエンペラー討伐までの流れと理由、ゾンビ化したエンペラーへの対処、死神とのつながりなどと今話したことに関しての質問に答える。

特に答えられない質問はなかったし、ゴードンも俺のことはある程度理解してくれたようだ。


「まあ、こんなところだ、俺のことはもうほとんど話したしもういいだろ?俺はとにかく今は死神の依頼があった時にアンデットを狩るってのが常にある話ではないけど第一優先目標だ。冒険者になったのは、移動やなんやで都合がいいからだしな。」


「はぁ。まあ、このことは誰にも言わないでおくわ。まあ、誰に言ったところで、ギルマスの魔法もあるし、信じてはくれんだろうしな。じゃあ、俺はいくわ。・・・・・・・・・あっと、まだこのルグラにいるなら、ズカーホ・ムリニールに気をつけろよ。じゃな、何かあれば力にはなるさ。」


ゴードンはそう言って部屋を出ていく。

誰だ、ズカーホって。この世界では、苗字がある方が珍しく、所謂上流階級であることの証でもある。一部、没落した人が名乗り続けることもあるから一概には言えないことではあるが。


そんな感じで、『ズカーホ・ムリニール』ってのも貴族かそれに準じる存在であろう。

強いのかな?ある程度、俺の実力を知って、なお気をつけろというのだから、きっとそうなんだろう。


ふと、ギルドマスターのほうを見ると、顔が引きつってしまっている。レイアにいたってはなんだか怒っているようだ。

ギルドマスターの渋いイケメンな顔が、残念なくらいひきつって、口角がピクピクと痙攣を起こし、レイアの表情はその端麗な顔からは想像が付かないほどの怒りがあふれている。まさしく般若といった表情だ。


いったいどうしたんだろうか。


「二人ともどうしたんだ?そのズカーホ・ムリニールとやらはそんなに強いのか?ギルマスやSSSランクがそこまで警戒(?)するのは尋常じゃないだろう?」


「そんなわけないじゃない。あなたに力って意味で気をつけろなんて言わなきゃいけないのは神獣と戦うときくらいよ。ズカーホは世にいうところのクズ貴族なの。親が伯爵だからって調子に乗ってるのよ。お金もあるから護衛だけは粒ぞろいだし、まあ、私の敵じゃないけど。とにかく、あいつはクズよ。すぐに女の子に手を出そうとするし。私にも近寄ってきたしね。――――――次に何かしようとしたら潰す。」


ギルマスはその表情からしても相手にするのが面倒な相手なのは様相ができていたが、レイアのこの怒り様は、相当嫌だったのだろうな。


話に聞く限りでは、絵に描いたクズってことか。

レイアが何かを潰すように手を握るが、やられてもいないのに内股になってしまうな。これが男の性か。ちょっとの変化ではあるがギルドマスターも内股だ。


それはさておき、そんな奴を何で気をつけなくちゃいけないんだ?ぶっ飛ばすわけにもいかないのはわかるが、絡まれないようにしておけばいいだけだし。


「アルカナくんが獣人だからですよ。あのゴミ野郎は獣人を帝国に奴隷として売っているという噂があります。あくまで噂ですが、限りなく黒です。そんな奴が、アルカナくんみたいな、見た目の整った獣人をほっとかないと思います。護衛の強さもSランク程度の実力はあるようですし、自信があるんだろうね。」


なるほど奴隷か。この町では見てないな。俺がそのことを聞くとギルドマスターは教えてくれる。


「ルグラでは、というより、この国やほとんどの周辺国ではすでに奴隷制は廃れています。」


そこからの説明をまとめると、

この世界にはいくつも国があり、まず俺たちがいるのがベルフォード王国というらしい。この国は一切の侵略をしない完全中立国で隣のベントラ神聖龍国とヴォルフガング獣王国と同盟を組んでいる。


ベントラ神聖龍国は聖龍を信仰する国。聖龍を神の使いとする宗教国家。光神教の総本山。全種族平等を訴える。など異世界の宗教にしてはかなり評判がいい。


ヴォルフガング獣王国は獣王フェリル・ヴォルフガングが治める国。力こそすべてだが、基本的に獣人のみが市民権を得ることができる。王は〔獣人王〕というスキルを持つことが必須とされている。〔獣王〕と〔獣人王〕の違いは種族だそうだ。魔物や神獣が〔獣王〕、獣人が〔獣人王〕なのだが、王の呼び名は獣王らしい。ややこしい。


これら3つの国と組合連合国ミツバとブレナンド帝国を合わせた5つの国を5大国というらしい。


それで、奴隷制度はブレナンド帝国以外ではすでに撤廃されているそうだ。奴隷にしたり、売ったり買ったりしたら、厳罰が下るらしい。


「こんなところかな。だから、秘密裏に奴隷を売るのは帝国へ、となるんだ。それで、この国の帝国領に面した街を治める貴族がムリニール伯爵家なんだ。ここまで言えばわかるだろう?たぶんだけど、ゴードンくんが言いたかったのもこのことだろう。とにかく気をつけてね。」


ムリニールの護衛は、レイア曰く粒ぞろい、ギルマス曰くSランク冒険者、と。そこそこ強く下手に手出しができないということか。

レイアが粒ぞろいというのなら、やはりそれなりに厄介なのだろう。レイアという人物はいったい何者だろう。ただものではないのはわかっているが、そんな護衛を敵じゃないと言い切れるんだとしたら、想像の上をいく強さであることがわかる。


とりあえずは、話は終わりだ、と皆立ち上がり、ギルマスを残して部屋から出る。ギルマスはこれから戦後処理を行うようだ。






執務室から退出してレイアと一緒にギルドを後にし、そのままの足で俺の部屋まで戻る。

この後はなしをするなら誰にも邪魔されることがない場所がいいというので、俺の部屋で問うことになった。


部屋に向かう途中でブレッドやヘレンさんにかなり茶化されたが、それもしょうがないだろう。これだけの美女が、10人いれば10人が振り返るような美女が、俺の腕に抱きつきながらいたら、普通は勘違いするだろう。どうして俺は腕を掴まれているのだろうか。


思い切って聞いて見たが、

「逃がさないためよ。あとは、変な虫除けね。」

と、返されてしまった。もとより逃げるつもりもないが、虫除けというのは納得してしまう。


そんなこんなで俺たちは部屋に入って、椅子に腰かけ、机を挟んで向かいに座る。さすがにこの状況で抱きつかれたら耐えられん。

こちとら今は普通の青年なんだから。






とりあえず、自己紹介からしよう。


「改めて、俺はアルカナだ。だいたいわかってるだろうが、〔戦争と死の神〕の関係者だよ。主に死神の手伝いをしている。」


関係者、とぼかした表現をしたが、まだ彼女が何かをわかっていないうちはこの程度の表現でいいだろう。死神の手伝いも嘘ではないし。

それに予想していたのだろう。この世界の最高神が出てきても驚きもしない。このことから予想できるのは、いくつかあるが、これだろう。



「私はレイア・ブラッドレイ。〔豊穣と生命の神ガリア〕に仕える真祖吸血鬼トゥルーヴァンパイアです。あなた同様に最高神に仕えております。神獣様。」




――――――ほらね?だと思ったよ。彼女もどうやら最高神に仕えているみたいだ。

俺は特に仕えているという認識ではないし、同様というのは違うかもね。ってあれ?なんか違う気がする。


それに、吸血鬼だって。あれ、もしかしなくても根源種?――い、いや、知ってたさ。ほんとだよ?








勘違いを正しましょう。


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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