第36話 「突然やってきたピンチ。」
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突然やってきたピンチ。それは、他人の前で人化をしてしまったことは当然として、現在何も着ていないことである。
いそいそと服を着て、ギルドマスターのもとへと歩く。すると、ギルドマスターは深々と腰を折り、俺に礼を言う。
もう一人の女性冒険者は、一瞬何かを考えたように目を閉じ、ハッとして、すぐに武器を構える。武器はレイピアのようだが、ほとんどフェンシングで使うような細さだ。あれでは切りつけることなどしたら最後、一発で折れてしまうのではないだろうか。
「ありがとうございます、アルカナ様。この度はゴブリンの集落、2つの排除、並びにゴブリンエンペラー討伐、ギルドを代表して礼を言わせていただきます。このままでは、ルグラも大量のゴブリンによって蹂躙されていたでしょう。Sランクの冒険者では、おそらくあのゴブリンエンペラーには、手も足も出すことができなく死んでいました。よしんばやつを倒せたとしても、キングやジェネラルによってただちに統率がとられ、勢いは収まることなくルグラを襲ったでしょう。それと、レイアさん。この方は魔物ではありません。攻撃姿勢を解いてください。それと、このことはだれに聞かれても、どこで聴かれても、絶対に話さないでください。守っていただかないようであれば、私が直接動かせていただきます。」
ギルドマスターの声に反論しようとした女性冒険者――レイアというらしい――は、次のギルドマスターの声で沈黙する。
「私は、戦い自体は好きではありませんが、口を封じる手ぐらいは知っているのですよ。これでもオリジンエルフの一角ですので。」
黒い笑みと共に投下された爆弾は、その場の空気を凍らせるのには十分であった。
その黒い笑みは俺でも震え上がるほどのものだったし、こんな女の子ではひとたまりもないだろう。必死に首を縦にぶんぶん振っている。この女性はどうやら助っ人の冒険者であるのは確定だが、それよりも強者であるギルドマスターは、素直にすごいと思う。
それについでとばかりに明かされた、種族は俺も聞いたことのない種族であった。
『オリジンエルフ』
読んで字のごとく原初のエルフという意味のようだが、これでわかったのは、ギルドマスターが長命種と呼ばれる中でもさらに長命であるということだ。リオウと昔あっているという意味もやっと分かった。
どうやら以前〔戦力把握〕で見たときはうそを見せられたらしい。【伝説級スキル】だろうか?
気を取り直して、それてしまった話を戻す。種族のことも気にはなるが、自分のことのほうが大事である。
「種族のことは気になるが、今はそんなことはいい。俺が倒してしまったが、そちらは件のSSランクの方だろう?俺の名前はアルカナ。一応獣人だと考えてくれればいい。訳あって旅をすることになったんだが、ルグラの街には知り合いもいるので、この依頼に参加した次第だ。できれば俺のことは他には話さないでほしい。それと、君は面白いスキルを持っているようだ。まあ、俺のことが知りたいなら、聞きに来てくれ。歓迎するよ。じゃあ。俺は先に行くよ。ここに俺はいなかったってことで頼む。目立つのはよくない。」
捲し立てるように早口で言いたいことだけを言いきり、ギルドマスターとレイアをおいてその場を後にする。
面白いスキルといったのは、おそらくだが、〔偽装〕のようなものだろう。しかも【伝説級】だ。俺の〔戦力把握〕が弾かれた。〔戦力把握〕は【固有】までの〔偽装〕では弾くことはできない。ということは確実に【伝説級】なのだ。一応、偽装されたステータスがあったが、俺の〔戦力把握〕は偽装されていることは看破できる。看破できなかったギルドマスターがおかしいのだ。
偽装されたものであっても公然のことはそのままなのだろう。ギルドランクは表示があった。
SSSランクだってよ。一個上だったわ。そら強いわな。下手にちょっかいは出したくないがしょうがない時はあるよね。
さて、彼女は誰かの加護を受けているのか、それとも先天的なものか。興味は尽きないな。
――まあ、いいか。現段階では敵対するとも思えないし。
そういえば、加護を受けているやつに会いに行くのもいいかもしれないな。どうせ俺が動かなきゃいけないようなアンデットなんて当分出ないだろう。今回の一件でザンビグルの力はかなり削った…はずだ。
なんにせよ、依代を一体作るのも適当というわけにはいかないだろう。適性が一定の基準をこさなければいけないし。
俺がオーリィンから聞いた話では、俺以外の根源種、要はガリアとブラウマンの根源種だが、ブラウマンのほうは超越種に進化しているらしいし、いろいろ聞いてみたいな。一応先輩にあたるのだから。
あとはガリアのほうは吸血鬼だったと思うが、どんな奴だろうか。さっきのレイアもかわいいというかきれいというか、フード付きローブでほとんど隠れてたけど、魅力的な何かが感じ取れた。スキル的なことかもしれないが、また会うことになるかもしれないし、少し楽しみにしておこう。
そんなこんなかんじで、考えながら進んでいると、気配探知と魔力探知に多数の人間の反応が出た。おそらくゴードン達討伐隊の冒険者だろう。
ある程度の距離に近づき、〔認識阻害〕を解くと、ゴードンは驚いた声を上げる。
「おわっ、なんだお前か。どこから現れたんだ?その外套は影龍のか。またすごいの持ってんだな。それで、お前はどうしてここに?まだランク的にもこの依頼は無理だろう?」
「いやもうDランクだ。この依頼は受けれるがもう無理だな。」
「もうDランクなのか!?そいつは驚いた。んで、無理ってどういうことだ?まだこれから、奥の集落が待ってるだろう、こいつらには森から魔物があふれないように、警戒させて、俺は集落に向かうつもりだったんだ。さっきの光の柱が魔物がやったものだとして、いるのはただのゴブリン種ではない。SSでもきついかもしれんだろう?これからくるSSランクの負担を少しでも減らさなきゃな。強いから全部任せるってのは性にあわねえ。それに、今は止んでいるが、昨日から続いていたバカでかい音も気になるってもんだ。」
ゴードンの話から分かるのは、やはり親父ってことだな。面倒見がよすぎる。あの集落に一人で突撃してたらさすがにゴードンでも厳しいかもしれない。エンペラーには瞬殺されるだろう。
早めに倒せてよかったと思う。
あらら、俺の暴れた音も聞こえてるよな、やっぱり。最後のレーザーもかなりやりすぎたかもな。俺だとばれることはないだろうが、とりあえずのところ、ここはごまかしておこう。
ゴードンにすでに集落がつぶれていることを教える、すべてレイアがやったことにして。
今度会った時に謝っておこう。さすがに押し付けすぎてる。
「すでに2つあった集落はレイアという冒険者によって消滅した、その場にいた上位種もすべて殲滅の上安全は確保されている。光の柱は、彼女の仕業だ。安心しろ。俺がこのローブで隠れて、この目で直接確認したから間違いない。抜け駆けしようとしたが、とんだ誤算だったよ。上位種どころか、さらに上がいるんだからな。」
やれやれといった感じで肩を竦め首を振る。
俺の説明で少しは納得したのか、大半の冒険者は街へと戻っていく。しかし、冒険者のうち上位のランクの者は疑問が消えたわけではないらしくその場に残る。
そこでゴードンから声がかかる。
「ちょ、ちょっと待て。レイアって言ったか?もしかして『女神』か?そんなのが来てるなんてすげえな。それなら納得だ。まさかこんな町まで王都からくるのがSSSランクだとは。」
SSSランクという言葉には俺も周りのやつらも驚いた。いや、俺は知ってるけどね。
「知らねえってのも無理はねえ。SSSランクは実際に知れ渡ってしまっているやつ以外は秘匿されているからな。SSのギルドカードを持っていたり、そのほかのカードかもしれない。戦争なんかの勧誘を防ぐためだが、こんなことを知っているのは、そういう奴と一緒に仕事をしたことがあるやつだけだな。」
「そう言うってことは、ゴードンは仕事したことがあるのか?」
「ああ、3年前に一度だけな。別のSSSランクとだが、あの強さはもはや化け物だった。震えたよ。その時に少しだけ現役のSSSランクについて教えてもらったんだ。とにかく、これでルグラの町は大丈夫だ、安心したぜ。」
どうやら、SSSランクってのは思っているよりもたいそうな存在のようだ。そこまで強そうには見えなかったけど、抑えてたりしたんだろう。
俺たちがSSSランクや冒険者ギルドについて話をしていると、俺の来た方向と同じ方向から、ギルドマスターとレイアがやってきた。
「どうしたんだ?こんなところにいてもすでに集落はないぞ。」
「ああ、そこにいる嬢ちゃんが2つとも潰しちまったんだろ?こいつに聞いたぜ。まさかこんなところでSSSに会えるなんてな。光栄だぜ。」
俺の方を指さしたゴードンにギルドマスターはその指の先を見る。そこにはすでに誰もいなくなっていた。
ギルドマスターはすべてを察したかのように頷き、ゴードンのほうを向きなおる。
「ええ、この方はレイアといって、おっしゃる通りSSSです。今回の立役者です。街に帰ったら、宴会でもして気分を晴らしましょう。そうしましょうレイアさん?」
レイアは否定仕掛けたが、ギルドマスターの黒い笑みには逆らえなかった。やってないことをやったって言わせたのは素直に悪いと思う。ごめんね。
ところ変わって俺は、すでに街に戻ってきていた。街に入ったその足で、とりあえずドヴァルのもとに行く。イシュガルのお礼と、防具の修理だ。こんなにもいい武器をくれたのは是非ともあってお礼を言いたい。それと少し腐敗してしまった部分の直りが悪い。完全には無傷とはいかなかったようだ。
「おーい、ドヴァルいるかー?ちょっと修理をお願いしたいんだけど。」
「おう、よく来たな。もうしゅうりなんてなにと戦ったんだ?ゴブリン程度じゃ傷すらつかんはずなんだが。ってこりゃ少し腐敗してるな。アンデットとでもやったか?ここんところアンデットなんて見なかったが、全く、面白いやつだな。」
「直せるか?」
「当り前だ。俺を誰だと思ってやがる。このルグラでいや、国で右に出るものはいない鍛冶屋だぜ!!俺以外にだれが直せるってんだ。」
頼もしい限りだと思いながら防具を渡す。今の格好は、鎌を背中に担ぎ、普段着に外套だ。
我ながら怪しいな。
「明日には治しといてやるから、こい。じゃあな」
「ああ、じゃあな。」
防具の状態を確かめたドヴァルに、予定工期と費用を聞いて納得して握手する。今回の報酬で問題なく払えるだろう。
対外的にはもらえるかわからんが、そこはギルドマスターとフィンさんを信頼するしかない。
やることが終わったため、宿屋に向けて歩き始める。
箱庭亭につくと、大体昼時だった。中に入るとヘレンとブレッドがせわしなく動いて食事を運んでいる。ヘレンは俺に気が付くと近寄って来る。
「おかえりなさいませ、お昼はいかがいたしますか?」
「ああ、いただきたい。それと湯を一桶分くれないか?体を少し拭きたい。」
「かしこまりました。食事前になさいますか?」
「いや、先に昼食にしたい。いいか?」
「はい。それでは席についてお待ちください。」
席に座り運ばれてきた料理を食べる。やっぱりうまいんだよな。エルフの国の想像が膨らむ。
食事をとり終えた後、部屋に戻るとブレッドが湯を持ってくる。それをもらい、体を吹いてさっぱりした後、布団で横になる。
一晩中戦っていたからか、横になるとすぐに眠気がきてすぐに眠りについてしまった。
俺はこのときはまだ、まさか自分と同じことを考えていたやつがいるとは考えてもいなかった。
報酬をもらいにギルドに向かいましょう。
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