第35話 VSゴブリンエンペラーゾンビ
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『聞こえるか、骨の王。いや、今はアルカナと言うのだったな。アンデットが出た。最上位種以上の存在がアンデット化したと考えられる。至急、処分せよ。』
なんかかなり上から目線だな。しかし、死神は友達がいないって話だったが、聞いていたよりも話すじゃないか。リオウから死神が友達がいないこと、あまり話さないことを聞いていたけど、上から目線だから友達がいないような気がする。話さないのはなぜだろう。
一方的な念話だが、こちらからも返せないか試してみる。
『もしもし、これ聞こえてんのかな?まあいいや。とりあえず、これからこいつは倒しますけど、このアンデット化の理由はわかってますよね?対処しないんですか?』
ここで見た結果、アンデット化の一部の理由が腐神にありそうだと辺りをつけて、そこんとこどうなん?といってみる。
『なんだ、その理由とは?アンデットの発生の理由は、死霊術士と怨念だと思うのだが、それ以外にもあるというのか?』
もしかして、知らなかったのか。ならこれで少しは原因の究明にもなるんじゃないか。まあ、ある意味では死霊術士と同じかもしれないけど。
もしかしたら、そこまで強いアンデットが出現しなくなるんじゃないか?
とりあえず教えておいた。ここまでの経緯とセットで。
その時の死神の反応は想像をはるかに下回るものだった。もっと原因がわかったことによる憤慨や気色が見られるかと思ったが、むしろ、一切の動揺すらなく、言い表すのであれば、『無』であった。
『フンッ、あの売女か。あいつのやりそうなことだ。上位神でありながら、気味の悪いやつだと思っていたが、即処分してやる。情報に感謝する。ではそちらは頼むぞ。』
『あっ、ちょいまち。リオウから死神様はあまりしゃべらないって聞いてたんだけど、結構しゃべるね。』
『・・・・・・・・・ないのだ。』
『ない?何が?』
聞き取れなかったので再度聞き返すと
『私は、念話以外で話そうとすると緊張して言葉が出ないのだ!!!!』
あ、まじか。もしかして、極度の上がり症ってだけなの?紛らわしいな。自分を守るために上から目線なのかもしれないな。まいいや。聞きたいことは聞けたし。
『もういいだろう。では頼んだぞ。腐神のクソアマが接触してくる可能性があるが、下手にかかわるな。あいつは、所謂、悪女だ。貴様程度ではすぐに誑し込まれるぞ。じゃあな。あ、そういえば、その鎌の銘は私がつけたものだが、しょうがないからくれてやる。ドヴァルの死後に私がもらい受ける予定だったのだがな。』
おっと、最後に小さな爆弾が。マジか、こいつはそこまでの武器でしたか。これはいいものを手に入れたものだな。ドヴァルには足を向けて寝れないな。
音もなく感覚で念話が終わったことを理解して、現実に意識を向ける。
今は、ゾンビになったゴブリンエンペラーがその棍棒を振り回しながら俺を追いかけている。死神と話している間もそれは続き、ゴブリンの集落があったところは、すでに多数の大きなクレーターができている。俺のレーザーで出来たクレーターはそれよりも大きいが、それも相まって、そこそこ深くなってしまっている。
「グゲルロォオォオオ」
言語にならない叫びは、先ほどまで会った知性を感じさせず、まったくの別物であると印象付ける。
いろいろとステータスが上がっているから、人化している状態だと避けることはできても、少しだけ分が悪い。
とりあえず、〔戦力把握〕でステータスを見た結果がこれだ。これにはずいぶん驚かされた
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名前:グキャルド
種族:ゴブリンエンペラーゾンビ
性別:オス
レベル:―
体力:4000000/4000000
魔力:120000/120000
筋力:28000000
耐久:20000000
敏捷:180000
精神:300000
運 :50
【伝説級スキル】
〔醜帝〕
【固有スキル】
〔腐敗〕
【通常スキル】
〔棍棒技〕〔魔力急速回復〕
【称号】
〔帝王〕〔統率者〕〔腐りし者〕〔腐神の死徒〕
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あらら、想像よりもステータスの伸びがいい。数十倍ってやっぱりやばかったな。なんでこんなに上がってるんだか考えればすぐにわかることじゃん。
素のゴブリンエンペラーの時でも耐久力やらなんやで、ぎりぎりの勝利であったのに、これはいよいよ、人化縛りなんてしている場合ではないかもしれないな。
まあ、一応触れとくか、名前付いてんじゃん。
誰だよつけたの。間違いなく俺じゃないとして、今付近に人はいないんだけどな。〔気配探知〕にも〔魔力探知〕にも反応は一切ない。
思考している間も続く攻撃を避けながら考えていると、不意にゴブリンエンペラーゾンビのほうから声が聞こえる、それもグギャグギャとうるさいゾンビボイスでも、先ほどのギャバギャバエンペラーボイスでもなく、女の艶かしい声だった。
「あらぁ、あたしのかわいいゴブリンエンペラーがついに死んだと思えば、殺したのがまさかこんなにかわいらしい獣人さんだったとはねぇ。どうやってやったのかは知らないけど、もう終わりよぉ。じゃあねぇ。おとなしく死になさぁい。そしたらぁ、あたしがあなたもあたしの下僕にして、ア・ゲ・ル ★三」
めちゃくちゃなこといいながら、ゴブリンエンペラーゾンビが追いかけてくる。
――――あれ、こいつもしかして死神さんの言う腐れ売女か?まさかのご本人登場ってどこのテレビ番組だよ。
ご本人登場ついでに聞けることは聞いてみよう。答えてくれるかはわからないけど。
「誰が死ぬか!!おい。お前はなんでアンデットを作るんだ?そんなことをしてもこの世界のためにはならないだろう?死体が動く、それも意思とは関係なく。そんなのあっちゃあいけないことだろう?」
「さぁんねぇん。アンデットを作る理由ぅ?あらぁ、そんなのぉあたしが腐を司る女神だからよぉ。今は見た目はこんなだけどぉ、本当の姿はぁ美しいんだからぁ。「ぶふぅ」・・・・・・・・・なによぉ?」
やばい、ついつい吹き出してしまった。いや、普通笑うだろ。見た目、オスゴブリンが本当は美しいって、なんの冗談だよ。信じられんわ。
ムキムキのおっさんが化粧している画しか浮かばなかったぞ。いや、マジで。
「なぁによぉ。あたしだってぇ、好きででこの体に入ってるわけじゃないのよぉ。この子はあたしがぁ、あいつの使徒を殺すのに使うつもりだったんだからぁ!」
俺が笑ったのに気を悪くしたのか、たぶん怒っていらっしゃる。口調が変わらないから何とも言えないが、語気になんとなく怒りが含まれている気がする。
「いや、何でもない。そんなことよりお前はここで潰させてもらうぞ。死徒なんか放置しては置けない。」
「そんな簡単にはやられないわぁ。あたしの死徒だものぉ。それに、さっきのもムカつくわぁ。だからぁ、あなたはぁ死になさぁい?」
やっぱりぶちきれてるじゃないか!このままじゃ面倒だから、少し驚かせてやるか。どうやら、こいつの目的も俺のようだし。
今なお受ける棍棒での攻撃を避けるのから受けるにシフトチェンジし、大鎌で受けてそのままゴブリンエンペラーゾンビを弾き飛ばした。純粋な筋力値は圧倒的に俺の勝ちだしむしろ純粋なステータスではすべてにおいて勝っている
ただゴブリンエンペラーゾンビのスキルの中で厄介なのは、ゾンビになって習得したのか、この女が中にいるから取得したのかわからないスキル〔腐敗〕だ。
〔戦力把握〕で見るとなかなか厄介なスキルであるとわかる。
〔腐敗〕:魔力を消費して腐敗攻撃をする。直接接触する必要があり、有効範囲は熟練度に依存する。
これは、直接体にあてられても、俺には耐性スキルがあるから、問題はないが、マスクとイシュガルを除いた装備はそうもいかない。
自己修復が付与されているといっても、さっきから攻撃が掠るたびに腐って修復しての繰り返しだ。正直腐る速さのが早い。このままだとせっかく買ったのに廃棄だ。それだけはいやだ。
人化を解く。そう決めてすぐに行動を起こす。
さっきもそうだが念のため人化解除前に一応装備をすべてしまう。せっかくの装備がだめになるのはいただけない。
この女(?)の前で裸をさらすのは不本意だが、一応の保険だ。
いつの間にか立ち上がっていたザンビグル入りゾンビが俺の裸を舐めるように見まわす。
「あらぁ、すごいわぁ、いいの持ってるわねぇ」
・・・・・・・・・ザンビグル入りゾンビが何か言っているが気にしない。
俺の体は光りだすと、ぐんぐん大きくなり四足歩行になる。エンペラーも大きいが、俺の大きさはその比ではなく、7mといったところか。何か前よりも大きくなってるな。なんでだろうな。また馴染んだようだ。
これで俺のステータスは1.5倍。100%の力を使えるわけじゃないがそれでも圧倒的だ。これで〔獣王〕も使いやすくなった。〔人化〕は熟練度も何もないが、〔獣王〕はいろいろなスキルが複合されている分扱いがむずかしいのだ。
ザンビグル入りゾンビ、もうザンビグルでいいか。ザンビグルは少しだけ驚いた声を出す。
「あらあらぁ、あなた神獣だったのねぇ。しかもオーリィンのところのじゃなぁい。これはさすがに分が悪いわねぇ。まだ超越種どころかぁ根源種にもぉ勝てないだろうこの子がぁ、あなたに出会ってしまったのはぁ不運と思うしかないわぁ。ここは引かせてもらいたいんだけどぉいいかしらぁ?」
やはりというべきかリオウは神にも知られているようだ。ある種の名刺代わりになるんじゃないか?それに強さも知れ渡ってる。ある種の威嚇にもなる。
そんなことを考えていたのが行けなかったのかもしれない。ザンビグルは俺をじろじろと観察しながら、一つの結論を出す。
「でもぉ、あの子にしては、少し動きが悪いわねぇ。あなたなにものぉ?」
なんか、リオウじゃないの速攻でばれた。一応名乗っとくかこれからもかかわることになりそうだし。敵の首魁といっても過言ではないわけだし。ここで引き留めていれば、死神さんが何とかしてくれるかもだし。
ちょっと偉そうに言ってみるか。
『俺はアルカナ。貴様が知っての通り、戦争と死を司る超越種だ。訳あって、リオウの抜け殻を譲り受けたが、本体はスケルトンである。しかし、この体も俺のものであることは変わらない。リオウの力も俺は持ってるということである。これがどうゆう意味かわからぬ貴様ではあるまい?』
精一杯、偉そうな雰囲気をつくりながら自己紹介してみたが、「我」とかいってもよかったかもしれない。本人リスペクトで。
ザンビグルは俺の若干の脅しを含んだ自己紹介に少しも焦った様子もなく答える。
「あなたがそうなのねぇ。スケルトンと聞いてたんだけどぉ、面白いスキルを持ってるのねぇ。〔骨の王〕の特性による特殊進化ってところかしらぁ?そうだ!どう?私と子作りしなぁい?」
スキルをいきなり言い当てられたのには驚いたが、それよりも突然降ってわいた突拍子もない突然のお誘いにただ困惑する。子作りとか、死神さんの言う、売女ってのはこういうことか。
『んなことするか!とにかく処分させてもらうぞ。どうせ本体にはなんの影響もないだろうが、すこしは苦しむといい!死ね【獣王の息吹】!!』
どうにも長居させるのはよくないと考えて、速攻で勝負を決めにかかる。獣化状態だと、このレベルの相手も余裕がある。何かステータス以上の力を発揮している気がするのは気のせいだろうか。
ザンビグルの体を上空に前足で蹴り上げ、上空に向けてブレスを放つ。威力調節無しの完全フルパワーだ。
いくらザンビグルが入っているとはいえ、さすがのゴブリンエンペラーの体でも耐えきることはできないだろう光の奔流が、その体を包み込む。しかし、そこはさすがの神入り個体、すこしは抵抗している。
最後に何かを言い残したいようだ。辞世の句だろうか?現役の骨が詠んでいないのを、敵には許すってのもおかしな話だけどな。
「残念だわぁ。いつでもぉ気が向いたらぁ、言ってねぇ。すぐにぃ...あなたのところにぃ...子作りしに行...くか...らぁ」
――――――――実にありがたくない最後の言葉を残してゴブリンエンペラーの体ごと消滅する。ゴブリンエンペラーの骨はもったいない気もしたがしょうがない。これ以外の手がなかったのも事実だったのだから。
完全な消滅を確認してから、再び人化すると、また頭の中に声が響く。
『アンデットの消滅を確認。感謝する。』
死神さんからの声を聞いて終わったことを理解する。
長かった戦いもこうして終わったのだが、戦闘していた時間は体感以上に長期だったようだ。すでに日が変わり、今は戦闘開始時の翌日の昼頃だった。
この時の俺は忘れていた、日が変わっているってことは、到着しているはずなのである。
――――そう、SS以上の冒険者が。
というより、今まで、これだけめちゃくちゃやってて何も来ないはずがない。さすがに弱い冒険者は来ない、来れないだろうが、ゴードンくらいはきてるかもしれない。
恐る恐る振り返ると、そこにはギルドマスターと一人の女性の冒険者がいた。
ゴードンがいなくてよかったと思うのと同時に、どうすべきか必死に考えるが全く思い浮かばない。目の前で思い切り人化を使ってしまった。どうしよう。
――――あ、やべ、俺今全裸じゃん...
ピンチを回避しましょう
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