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第34話 VSゴブリンエンペラー

お読みいただきありがとうございます。


対峙しているのは、生き残ったゴブリンジェネラルが5体、ゴブリンキングが1体、正体不明だがおそらくゴブリンキングより上位種が1体玉座に座っている。


さっきのブレスは獅子王面リオウマスクが持つ神獣の聖属性であり、聖属性は魔物に効果が強く、手加減したといってもかなりのダメージが出るはずだ。

現にジェネラルとキングはすでに足元が覚束無いでふらふらしている。ここら辺はダンジョン内部のものよりも強いといっても所詮はDからCランクの魔物、手加減がなければ死んでいただろう。しかし、玉座に座る上位種は、まだピンピンしている。大したダメージにならなかったようだ。手加減などせずに決めるべきだったか?


ゴブリンの上位種はこちらを不愉快そうに睨んでいる。


「キサマ、ナニモノダ。ワガクニニナンノヨウダ?ワレラニナンノヨウダ。ヘントウイカンニヨッテハヨウシャハシナイ。」


こいつしゃべれるのか。想像していたよりも知能が高いようだ。さらっと言っていたが国って言ったな。こんなところに作るなよな、面倒くさい。

見逃す手はないが、一応どっか行ってくれないか聞くかな。


「あー、とりあえず。ここは人間の国の中だ。そんなところに、魔物が集落を作ってたら、そりゃ、排除されるだろ。できればほかに行ってほしいんだがな。ところであんた、なにもの?」


このゴブリンキングより上位種は普通のゴブリンとは見た目からして全く違い、身に着けているものも王冠やマントなど、座っている玉座から見ても、皇帝とか帝王とかそんな感じだ。威圧感がすごい。というより、〔威圧〕を使われている感覚がある。「王」の付くスキルには〔威圧〕が標準装備っぽいのだが、スキルの格や存在自体の格で威力が違うんだろうか。


もちろん俺はこいつよりも格が高いはずだ。現にこいつの威圧は俺には関係ない。




俺の「排除されるのは当然」発言は、かなり頭に来たようで、憤慨している。そもそも無駄に偉そうなのどうにかならんのかね。


「キサマラヒトハワレラガマモノデアルカラトイッテ、クニヲツクッテハイケナイトイウノカ。フン、ソモソモ、ココデクニヲツクッテスグニ、グンゼイヲヒキイテニンゲンノクニナドホロボスヨテイデアッタノダ。シカシナ、ソレハココニイルワレラダケデ、モットイエバ、ワレダケデデキルワ!アノヨウナザコドモナド、トルニタラン。ヒトヲサラエバスグニカズモフエル。ワレハ、ゴブリンシュノコウテイ、ゴブリンエンペラーナリ!!ギャバババババババババ」


長々としゃべりやがって、聞き取りにくいったらありゃせん。

結局人間の国を滅ぼすから、どこで国を作っても同じって、暴論もいいとこだし、そんなこと言われたら排除するしかないじゃん。

てか、ゴブリンエンペラーって初めて聞いたんだけど。皇帝と王って同じくらいじゃないんだな。皇帝のが偉いのかな。まあいいや。さっきのブレス、というよりレーザーを食らっといてあれだけはしゃげるのは素直にすげえな。


笑い続けるゴブリンエンペラーを見据えて、排除することを決める。最初からそのつもりではあったけど。


「じゃあ、とりあえずは、排除させてもらうな。さすがに、来たばっかりの街だけど潰されるとほっとけないわ。一応知り合いもできたしな。で、覚悟しろよ?」


とりあえずエンペラーよりも前に出てふらふらしているジェネラルとキングに接近する。イシュガルを取りだし、大鎌モードで振るう。ジェネラルは、ふらつきながらも武器を構えガードをしようとする。

しかし、そんなのは関係ないとばかりにイシュガルは武器ごと首を狩る。その威力は振るっていた俺ですら驚きが隠せない。いくらなまくらとはいえ金属製の武器を簡単に切断できるのはさすがだ。


たったの5振りでジェネラルは全滅し、キングは一瞬の出来事に思考が追い付かず、恐怖に震え始めた。


あっ、逃げ始めた。


キングは全力で走るが、もともとそこまでステータスが高くないこともあり、結構遅い。第一、ゴブリンキングはCランクの魔物の上位で、1体では脅威にはなりえない。今回は、数が多いから緊急依頼だっただけで、集落が1つ程度であれば、1パーティーに指名依頼をする程度だ。

そんな魔物に俺が追い付けないわけもない。ないが、俺は追いかけずに足を止め、ジェネラルの死体をしまい、イシュガルを構える。


ブォン ギュンッ スッ 


俺がイシュガルを振るうと、斬撃が勢いよく飛んでいく。イシュガルに付与されている特性には〔斬撃強化〕があり、威力も強化されている。

飛んでいく斬撃がキングに当たり縦に二つに割れる。断末魔の叫びすら上げることができずに死ぬ。


以前戦った時より楽になったな。個体自体は強いはずなんだが、ま、進化したしそれも当然か。なんだか悪いことした気になってきたな。気のせいか。


俺が思考の海に沈みかけながら、キングのもとに歩きだす。


「おわっ、チッ!!」


イシュガルを肩で担ぎキングに近づくと、横から棍棒が振り下ろされ、キングの頭部に当たる。棍棒によって潰された頭部ははじけ飛び、首無しの遺体が出来上がる。

自分に接近しているエンペラーを警戒しつつキングも収納し、棍棒を持つ腕を切り落としながら後ろに飛ぶ。


正直なめていたとしか言いようがない。人化時には装備分が半分になるといってもかなりのステータスがある。ステータスはあっても、まだ、それを活かしきれずにいる。〔骨格完全制御〕である程度は制御できるとしても、それは完璧ではない。




この世界のスキルには、熟練度というものがある。ダンジョン内にいるときに気が付いたのだが、スキルは仕様するたびに熟練度が上昇する。〔戦力把握〕でも注意してみなければわからなかった。また、熟練度が一定に達すると、進化する。例えば、〔剣術〕が〔剣技〕になり〔剣技〕が〔剣聖術〕となる。俺の〔骨格完全制御〕は俺用に特殊な変化をしているため、進化はしないが、熟練度は際限がない。しかし、そんなに簡単にも上がらないため、まだ完全な制御には至っていないのだ。




俺とこいつでは、そこまでの差がないのかもしれない。腕を切り落とせたのはラッキーだった。ぐっじょぶ、俺!


ゴブリンエンペラーと距離を保ちながら、一切目を放さない。

こういうときは、情報量が多い方が有利だ。ゴブリンエンペラーに〔戦力把握〕を使ってステータスを測る。




~~~~~~~~~~~~~

名前:―――

種族:ゴブリンエンペラー

性別:オス

レベル:146/250

体力:200000/200000

魔力:6000/6000

筋力:400000

耐久:10000000

敏捷:3000

精神:15000

運 :50

【伝説級スキル】

 〔醜帝〕

【通常スキル】

 〔棍棒術〕

【加護】

 〔腐神の呪縛〕

【称号】

 〔帝王〕〔統率者〕〔最終進化者〕

~~~~~~~~~~~~~


・・・・・・・・・想像していたよりもずっと厄介だったようですね。

えっと、なんですか、このスキルと加護。ステータスはやはり俺の方が高い。しかしスキルと加護が厄介だし意味がわからない。

どうにも有利であるようには見えない。より気を引き締めねばならないことだけはわかる。


誰だよ、腐神って、呪縛ってなんだよ。スキル詳細を表示すると、内容を理解する。やはり厄介だ。

注目すべきは〔醜帝〕と〔腐神の呪縛〕だ。


〔醜帝〕:ゴブリン種最上位種ゴブリンエンペラーが持つスキル。〔繁殖〕〔絶倫〕〔威圧〕〔統率〕が統合され、新たに、〔剛力〕〔頑健〕〔自己再生〕〔全異常耐性〕も統合されている。


〔腐神の呪縛〕:腐神ザンビグルの加護。死後一度だけ、ステータスを数十倍にしてゾンビとして生き返る。


おっと、これらはちょっと笑えない。これを見ているとすでに切り落とした腕が元通りになったエンペラーがこちらに武器を構えている。統合前の〔自己再生〕が相当高度だったのだろう。


「キサマ、ワガハイカヲカンタンニホフッテクレルトハナ。イササカナメテイタヨウダ。サキホドノブレスモ、ホンキデハナカッタノダロウ。ダガ、アノトキワレヲコロセナカッタノガキサマノハイインデアル。・・・シカシナ、ブレストハキサマホントウニヒトカ?セイゾクセイノブレスヲヒトノミデハクナドアリエン。ナニモノナノダ。」


先ほどまであった怒りは、俺がキングらを殺したことによって、鎮まってしまったようだ。

まさか、向こうが俺に興味が湧くとは思いもしなかったが、答えてやる義理はない。そもそも最初に対話してやろうというのも、俺の慈悲であったわけだ。

引けない理由もできてしまった。再生力や耐久力、筋力も厄介だが、やるしかない。アンデット化を前提として動くべきだろう。そしてアンデット化した後は本格的に俺の仕事だ。


俺は、イシュガルを構え、力を込める。


「おらあ、くらえ。“首狩リ”ィイ!!」


〔鎌術〕のスキルを発動させ、エンペラーと打ちあう。こちらは比較にならないほどの耐久力がある。そして、こちらの武器も向こうの耐久値を上回る力を持つ。

相当な硬さを持つエンペラーの皮膚も、この大鎌の前では紙も同様にスパと切断される。


ザクッ!


ついにはエンペラーの太い首をはねた。

これで終わりかと武器を下ろしかけたところ、エンペラーの腕が飛んでいった頭に伸び再び首につける。

持ち前の再生力で、切ったはずの首はきれいにつながった。


どうやら、スキルをON/OFFを切り替えながら、戦っているようだ。常時使用しているような状態であったら、回復にダメージが追い付かず決定的なダメージは与えられないだろう。


さらにイシュガルを振り、どんどんとエンペラーの体に小さくない傷をつけていく。その体はどんどんとボロボロになっていき、ついには、エンペラーは切り飛ばされた腕や足をくっつけるのではなく、新たに生やし始めた。



うわぁ、とんでもない再生力だ。周りに腕やら足やら散乱してきたぞ。邪魔くさいったらありゃせん。



そんなことを考えながらエンペラーから距離を取ると、それをチャンスと見たかエンペラーが動きだす。


「ギャバババババババババババババババババァ」


叫びとともに散乱している自らの手足であったものをつかみ取り口に放り込む。〔戦力把握〕で見ると吸収するたびに、魔力が回復していく。


2300/6000 → 2800/6000 → 3300/6000


どんどんと回復していく、これはまずいと接近し攻撃を開始する。〔自己修復〕は魔力を消費するが、それよりも回復が上回っているために、ダメージらしきダメージも与えられなくなってきた。



質の悪いマッチポンプを見せられているみたいなもんだな。これはいよいよ決め手がなくなってきたな。



これまでは大鎌だけでの攻撃を行ってきたが、埒が明かないと考え、〔骨壺〕から一本の槍を取り出す。


その槍は、総ミスリル製の短鎗だ。スキルは俺には合わないが、なにを隠そうこれはリオウから受け継いだ、ハオの鎗だ。銘こそ風化して読めないが、攻撃力は申し分ない。大鎌だけでは足りない攻撃力を補充する。

ダンジョンから出る際に受け取っていたが、名を授かった際に〔槍術〕が変質したために使う機会を失っていた。


そして再び、エンペラーへの攻撃のダメージが、回復量をわずかながら上回り始めた。鎗と鎌の二刀流の攻撃の回転速度は増していき、ずんずんとエンペラーの体を削っていく。


「ギャババァ!!」


あまりのダメージに根を上げたのか、エンペラーは悲鳴とも怒りともとれる声を上げる


しかし、体力がずんずんと削れるのはここまでだった。

このまま押し切れると思っていたが、エンペラーがスキルを瞬間的な発動の切替から、魔力の燃費の悪い常時発動に変えたときにまた戦いに動きがなくなった。

気づいた時にはエンペラーには〔魔力急速回復〕という、何とも都合が悪いスキルを習得していたのだ。


これではまずいと思った俺は、武器での攻撃にブレスを混ぜて攻撃する。

さらに攻撃の手数が増えたことや、エンペラーの魔力の消費が回復に追い付かなくなってきたことで、だんだんとエンペラーを圧倒し始める。


「ナカナカヤルナ、マサカワレヨリモツヨイトハ、ソウカ。キサマハざんびぐるサマノイッテイタ、『センソウトシヲツカサドルチョウエツコンゲンシュ』トユウヤツカ。ワレモウヌボレテシマッタジテンデ、マケガキマッテイタノダロウ。シカシ、スケルトントキイテイタノダガ、ミタメハ、ニンゲンダ。」


ザングビルってのは、腐神のことだが、俺のことを知っているということか。オーリィンは何も言ってなかったが、アンデットってこいつのせいじゃないのか?腐ってる神だし。

そんなことをかんがえながらも、削られて魔力が空に近くなったエンペラーを袈裟切りにする。


「俺のスキルでこうなってんだよ。とりあえずは俺の勝ちだな。お前は、ゾンビ化するようだが、自我は保てるのか?」


「ムリダ。ワレハコノシヲモッテ、コノヨヨリイナクナル、アトニノコルハ、ワガカラダノミ。ジガナキバケモノガ、チジョウヲウゴキマワル。ワガカラダガソノヨウナムタイナコトヲスルノハ、ワレニハキョヨウデキヌ。ハイシャカラノネガイトシテハココログルシイガ、ドウカ、ワガカラダニトドメヲサシテクレ。」


「いいのかよ?腐神の加護もらってんだろ?」


「アア、ヤレ」


加護をもらっているやつが、神が許容している行為を否定するのはありなのだろうか。考えるだけでも罰が当たるなんて宗教もあるようだが、そういうわけではないんだろう。


こいつは、思想の胸糞悪い魔物の頭領だが、頭領ゆえに自分の意思なく暴れるのはいただけないのかもしれない。

この世界のゴブリンってのは偉くなるたびに誇りも持つのだろうか?ダンジョンのゴブリンキングもそうであったみたいに。

なんにせよ、魔物が自分の死後のことなどを考えていることだけでも驚いた。

言われたようにとどめを刺す。


「じゃあな、フンッ!」


ブオン、ズシャッ


「アア、ハラダタシイ...」


エンペラーは言い終わった後目を閉じ、静かに息を引き取った。敵ながら穏やかに死んでいてほしいものだ。


なんて感慨に吹けようとしたその数瞬後。


ゴブリンエンペラーの死体に異変が起きた。


「感慨に浸らせてもくれないのか」


「グギャグゲゴァゲギュゲゲゲ」


アンデット化していることがわかるが実際に腐っているわけではないので、異臭はしない。しかし明らかに異常事態だ。

そんなとき俺の頭の中に声が響く。声は女性のものと思える声であった。


『基準値以上のアンデットの反応を検知、即時殲滅を命じる。』


なんだこれ、あ、もしかしてこれが死神か!?






最後エンペラーが武人みたいになってしまった。こんな潔い死にざまは想定してなかった。


第二ラウンド開始しましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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[一言] ここでハオの槍出てきましたね。自己解決しましたw とりあえず読み進めます
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