第33話 「さあ、狩りを始めようか」
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白金貨2枚 → 白金貨7枚
翌朝、6時の鐘の音に合わせて起きると、どうにも腹が減ったので食堂に向かう。食堂では俺と同じように鐘の音を聞いて起きたのであろう冒険者も食事をしている。この時間にきて食事の準備ができていることを考えると、3時の鐘で起きて準備しているのかもしれない。
席につくと、すぐにブレッド君が料理を運んでくる。その料理は、前世の俺にはなじみ深い、と思う、所謂日本人の朝定食だ。
なんなのかはわからないけど、鮭っぽい焼き魚に味噌汁とご飯にちょっとした野菜サラダ、こんなのを見せられたら、エルフ族に料理教えたのは確実に日本人だなってことは想像に難くない。これはますますエルフの国に行くしかないな。
朝食もぺろりと平らげ、サイフィズに料理の感想を言って食堂を出る。その評価はもちろん、大満足だ。鮭っぽい魚は前世の焼き鮭よりも数段うまく、野菜サラダも手はほとんど加わってないように見えて、相当こだわったのだろう。また、味噌汁は思った通りの味だった。想像のうちとは言えど、うまくないわけではなく、故郷を思い出す様な、そんな懐かしい味だった。まあ、故郷なんてみじんも覚えてないけどね。とにかく、すべてはうまかった。これからの食事も楽しみになるレベルであった。
食事に満足し、ヘレンさんに依頼に行ってくることを伝えて、宿屋を後にする。
今日の予定としては、ドヴァルの工房に行って防具を受け取って、東の森にゴブリン狩りに行く。できれば、冒険者の戦いぶりを見て、擬態の手本にすることだ。
ドヴァルの工房は今日も客はいなかった。
中の方に向かって声をかけるが返事がない。寝てるのか?と考えて中に入っていく。中に入ると鍛冶場のすぐそばで寝ているドヴァルを見つけた。慌ててドヴァルに近寄るが、すぐに特に異変がないことに安堵する。また、その手には一升瓶を握っていた。
「おい、起きろ。ドヴァル、約束の日だぞ。楽しみにしてきたんだ。この鎌も上出来だった。ほら、起きろ、って!」
ドヴァルの下にあった外套を引っ張ってドヴァルを起こす。少し力を入れて引いたので勢いよくドヴァルの体が浮く。しかも回転付きだ。
ドヴァルはドワーフであることからもわかるように鍛治で必要な筋肉が付いている。そのことからも、低身長でありながらもかなりの重量だ。そんな重量があるからだが、浮くほどとは、力を入れすぎた。ドヴァルは高速回転をしながら地面に落ちる。大丈夫だろうか。
どんがらがっしゃん、と大きな音を立てて転がり目が覚めたようだ。
「・・・ん?ああ、アルカナか。おはよう。待っとったぞ。どうせ今回の緊急依頼にも召集がかかっとるんじゃろ?こいつを持っていけ。俺が作った防具と外套だ。これらはな・・・・・・・・・」
一度浮いて落ちたことは特に気にしていないようで、すぐに起き上がって防具の説明に入る。
ドワーフって打たれ強いんだなぁ。
ドヴァルの説明によると、防具は、一応ブラックドラゴンの皮の軽鎧だそうで、一応というのは、幼竜だからで、多少防御力にかけるらしい。しかし、魔法に対する抵抗力は成竜よりも高いらしい。それは、幼い時に他のドラゴンのブレスや魔法によって殺されないようにそうなっているらしい。どこかの学者さんが調べたそうだ。
この皮鎧一式とあとは外套だが、これは影龍の皮を使われているそうだ。影龍はブラックドラゴンの特殊進化個体らしい、がよくは知られていないらしい。素材からして高価そうだ。
この外套には、〔認識阻害〕が付与されていて裾がボロボロで見た目はこういってはなんだが俺が着ると鎌と相まって死神チックだ、さらにすべての装備には〔自己修復〕が付与されている。
この〔認識阻害〕がかなりすごい。影龍の固有スキルに由来しているようだが、かなり有用だ、〔気配遮断〕や〔魔力遮断〕、〔生命遮断〕などの遮断系スキルを合わせたようなもので、〔音声遮断〕などの効果もあるというものらしい。〔戦力把握〕があるからここまでわかるが、なかったらありがたみもわからずに過ごすことになっていただろう。
かなり高価な装備であることがわかるが、金が足りるか不安になってきた。間違いなく足りないだろう。
「これらの説明を聞く限りではかなりの額すると思うのだが、金が足りないかもしれないぞ。」
「がっはっは。お代はこの間の酒と出世払いってことでいい。今なくてもお前なら簡単に稼げるだろ。ざっと、白金貨5枚ってところだな。とりあえず着てみてくれや。サイズ調節しなくちゃならんからな。ほとんど間違いはないだろうけど、一応な。」
そういって俺に皮鎧を装備させ、サイズの微調整をした後、外套を着るように言う。金額的には払えるが、フィンさんに聞いた話ではイシュガルだけで白金貨十枚はするらしいから、相当負けてくれている。とりあえずここは払っておいてまた酒でも持って恩返しでもしよう。
外套を着てフードを被ると、見た目はもうイメージ通りの死神だ。これでイシュガルを大鎌モードで持つと紛れもなく死神だ。禍々しい見た目になってしまったが、実際次の死神だと考えると、妥当なのかと、変に納得してしまう。数千年先だけど。
俺の装備を見てドヴァルも同じ反応を見せている。
「まるで、死神だな。獣人の死神ってのもなかなか珍しい仮想だが、外套によってその耳も目立たないから、普通に恐ろしいな。できるだけフードを外しといたほうがいいぞ。」
とりあえず言われた通りフードを外し、鎌をしまう。なんとなくしまってしまったが、ドヴァルの前で〔骨壺〕を使うのは初めてで、ドヴァルの顎が外れんばかりに空いている。
「お、おまえ、そいつぁ、ア、〔アイテムボックス〕か?すげえな。そのスキルを見たのは初めてだぜ。お前ほんとに獣人だよな?」
「ああ、獣人だぞ。こ、これが珍しいのか?お、食うか?」
動揺したのを必死に隠しながら、何でもないように〔骨壺〕を開き昨日買った串焼きを一本取りだしドヴァルに渡す。
「ああ、ありがとう。全く、すごいもんを持ったやつが来たもんだ。しかも何も知らないで嫌がる。困ったやつだ。あのな、〔アイテムボックス〕ってのはな今まで、異世界より来た人族のみが持っているといわれてたスキルなんだ。お前のそれは多分この世界の人間で初めてだぞ。そんなもん、持ってたら、国に召し抱えられてもおかしくないほどなんだぞ。」
やばいことを知ってしまったな。俺のは少し違うけど、それでも、たぶん貴重だな。今や〔骨の王〕に統合されているが、俺の資質によるところがあるらしいスキルだから、〔アイテムボックス〕よりも珍しいんじゃないか?それに俺、この世界の人間ではないんだよ2つの意味でな。
「できるだけ、誰にも見られないようにするさ。ドヴァルも言わないでくれよ。一応このかばんがマジックバックってことになってるからさ。」
「そう言うことであれば、誰にも言わんでおこう。信用が大事だからなこの商売も。」
「じゃあ、行くよ。このまま東の森に行って少し試してくる。」
「ああ、ついでに依頼もやってきてくれよ。こんなんじゃおちおち街の外にも出れやしねえ。」
ゴブリン程度じゃ相手にもならないと思うんだが、と思うと顔に出てたのかドヴァルが笑う。
「がっはっは。俺じゃねえよ。嫁と娘がだ。」
なんと!今日一番驚きだ。ドヴァルに嫁と子供がいたとは人間わからないもんだな。
「今度会わせてやるから、無事に帰ってきたらいつでも来い。装備の整備もしてやるから。」
軽く返事をして工房を出る。
ドヴァルとの出会いは、本当にありがたい奇跡だったと心の底から思う。神にでも導かれたのかね。あんなおっさんでは無く女神に。
外に出て南門に向かって歩く。
南門には冒険者もいくらかいて、怪我しているのが目につく。
次々と冒険者が出たり入ったりしているが、とりあえず戦況はよろしくないな。冒険者に話を聞くと、今は離れたところにある2つの集落を攻撃しているようだ。そこにも進化個体であるホブゴブリンやジェネラルがいるようで、かなり苦戦しているらしい。
幸い死者はいまだ出ていないし、この依頼では男限定の依頼となっているのでゴブリンクイーン出もいない限り、増えることはないが、それでも数が多い。ゴブリンだけでも、2つの集落で500体はいるらしい。
今のところ、集落から逃げられてはいないようだから、他の集落に襲撃がばれることはないだろう。しかし、この他にさらに3つの集落があり、どうやらキングかクイーン、さらに上位種がいると思われる。それに加えて、いや、だからというべきか、各集落にこの量よりも多くの数がいると考えられる。
王都からSS以上の冒険者が来るまでは、面倒なことになるのは目に見えている。
しかし、だ。俺の装備を試すにはちょうどいい。とりあえず、他の3つの集落に行ってみるかな。今の状態でも不安は全くといっていいほどないが、最悪、人化解けば楽勝だ。SSランクが来るまでに仕留めればいいよな。
今になって思えば、あの時のキングはダンジョン上層だけあって相当弱かった。養殖の魔物と天然の魔物、要はダンジョンの外と内では差があるらしい。(オーリィン談)
バレて面倒なことになるのは避けたいところだが、この規模なら、間違いなくキングよりも上位種がいるだろう。楽しみだ。
門番にギルドカードを見せ、門の外に出た後に外套を被り〔認識阻害〕を発動し、森に入る。さらに〔気配探知〕〔魔力探知〕を発動し、範囲を広げる。消費魔力を増やして無理やり広げているため少しだけきつい。
どんどん進む途中で、Bランク冒険者のゴブリンとの戦い方を見たが、即首ハネと簡単にまねできそうだったのでさっさと切り上げて進む。ホブゴブリン相手でもそんな感じだったので、特に区別の必要はなさそうだ。
それから少し進むとゴードンのパーティーが余裕でゴブリンを屠っているのを見つけて、SランクとBランクの差を知った。Aランクがどれほどかわからないが、それでもSランクはこれまで見た人間の中でも圧倒的に上位の実力であることは疑いようもない。練度が圧倒的に違う。
しかし、いかんせん数が多く、いくらSランクがいるといえど、鎮圧にはまだ1日はかかるだろう。残り三つの内の一つの集落でこれなのだから、残り二つはさらに数が増えより強力な個体があらわれることから考えても、2日や3日では終わらない。SSランクを呼ぶのもわかるというものだ。
俺が集落ごと吹き飛ばすにしても、もし冒険者が集落の中に入りすぎて巻き添えを食うと面倒なことになる。とりあえずほっとこ。何とかするだろ、ギルドが。
さらに、15分ほど移動したところで、人間の反応がない集落を2つ発見した。より奥地のほうの集落に近づく。その周辺にはかなりの数のゴブリンと思われる反応があった。
ただのゴブリンが1500程と、少しの差だが強い反応が100、もっと強いジェネラルだと思われる反応が5、キングが1、キングと比べられないほど圧倒的な強さの反応が1つだ。
「こりゃすっげえなあ」
この程度の戦力なら人化を解けば余裕だと思うがさすがにそれではやりすぎるし、人間としての訓練にもならないので、このままいく。だとしてもこの数は面倒だし、とりあえずキングたち以外を潰すために2つの集落が一直線になるように位置取り、大きく息を吸う。〔認識阻害〕の効果でゴブリンどもは進化個体を含めて俺の存在には気が付かない。いい買い物をしたものだ。
スウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「【獣王の息吹】ガァアアアアアアアアアアアアアアァ!」
リオウも使っていた【獣王の息吹】で2つの集落を塵にする。ゴブリンは人を攫う魔物だが、今回の集落には人間の反応はなくゴブリンだけなので問題ない。さすがに何も残らないのは問題なので威力調節して、雑魚ゴブリンを一掃して、ジェネラル以上を残すようにした。
俺は〔認識阻害〕を解除してゴブリンキングどもの前に立つ。
「さあ、狩りを始めようか」
キングがいる一番奥のゴブリンの集落は、ギルド側は把握はしていないくらい奥地にありました。
ゴブリンを狩りましょう
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