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第27話 「冒険者の登録をしたい」

お読みいただきありがとうございます。


とりあえず俺はエミリアについて行く形でギルドの中へと進んでいく。一歩足を踏み入れる毎に冒険者たちの俺を睨む視線は強くなっていく。一瞬ピリッとした感覚があったがそれ以上何もなかったから無視をする。気のせいだったのだろうか。


さっきの路地裏でテンプレに近いような出来事が起こったから、本来起こりそうな冒険者ギルドではもうないだろうと高をくくってここまで来たんだけど、鋭い視線の数はあまりにも多いし、また同じようなことがあるんじゃなかろうか、本当に面倒だ。


もともとここでエミリアとも別れる予定であることは話してあるし、この視線も俺が予想しているような視線であるならば少しは減るだろう。

エミリアがこの都市で好かれているようで何よりである。


「アルカナさん!私はあちらの窓口で討伐証明して賞金をもらいに行きます。登録はあちらの窓口です。では、ここまで、ありがとうございました。」


「おう。また機会があったら会おう。当分はこの町にいるから。」


「そうですね。でも、私はそろそろ杖ができると思うので、王都に行こうと思ってますので会えないかと。あ、王都に来るときに会えるかもしれないですね。」


そういや、装備をつくりにここに滞在してるとかいってたな。どうもそれ以外にも何かありそうだけど。

そうか、エミリアは王都に行くのな。それならしょうがないか、いつかまた会えるだろう。俺も王都は気になるしな。なんにしても身分証の問題もあるし、とりあえず、登録しなくちゃな。


エミリアに再び会えることを願って、別れの挨拶を軽くする。


「おう、その時はよろしくな。じゃあな」


俺とエミリアはそんな簡単な別れの挨拶をしてからそれぞれの用がある窓口に並ぶ。挨拶をして別れたあたりで背中に刺さっていた視線はほとんどが威力を失う。やっぱりか。


さて、目的の窓口には当然受付がいる。ここの受付はどうにも顔面偏差値も採用条件にあるのか美人、イケメンばかりである。俺が並んだ受付も例に漏れずに美人さんだ。その受付嬢は栗色の髪をした狐の獣人で、間違いなく冒険者に人気がある。なぜならばこの窓口の列に並んだだけで、減ったはずの後ろの冒険者たちから受ける視線が増えた。しかも殺気付きで。


そんな物騒な視線を受けながら数人の手続きなどを済ませて、ついに俺の番がやってくる。


「すまない、冒険者の登録をしたいのだが。」


「はい。それでは、身分証明となるものはありますか?仮身分証でも構いません。また、登録には10000セルかかりますがよろしいですか?」


「ああ、これでいいか?」


仮身分証と金貨1枚をポケットから取り出したように見せかけて〔骨壺〕から取り出し受付嬢に渡す。受付嬢は俺の格好から見て払えないと踏んでいたのかもしれない。目を丸くして驚いたが、そこはプロ。すぐに表情を取り繕い対応した。


ここで俺の服装に関して話しておこう。

まず、ダンジョンにいたときは裸でよかった。なぜなら骨だったからだ。誰が見ても関係ない骨なのだ。しかし、ダンジョンから出たことでそうも言っていられなくなった。〔人化〕によって、まさしく全裸になってしまったからである。

その場ではオーリィンにもらった黒の上下を着ていたが、ダンジョンの外に出てからは旅をしてきたにしてはきれいすぎたため、服をどうしようかと思っていた。そんなところに少ししてエミリアを追っていた盗賊団に遭遇し戦闘になった。


その時の俺はこれをチャンスであると思っていたわけだ。

町までの案内を得られるとともに服を得られると思ったからな。実際盗賊の宝物庫には獣人用の服までも放り込まれていた。今はそれを着ている。元から質が良くなかったのか、少々、いや、だいぶボロボロである。


そんなボロボロなやつが金貨一枚出せるとは思っていなかったのだろう。しかし出せたのだからしょうがない。あきらめて接客してくれ。


「ありがとうございます。それでは、こちらにご記入お願いします。わからない部分はご記入いただかなくても構いません。代筆は必要でしょうか?」


「あ、いや、必要ない。字は書ける。――これでいいか」


紙には、名前、種族、性別、出身地の欄があった。俺は、出身地以外を書くと受付嬢に渡す。


「大丈夫です。えっと、アルカナ様ですね。申し遅れました。私、ルグラ支部受付嬢フィンと申します。それでは、ギルドカードを作りますので、30分ほどお待ちください。」


この子、どうでもいいけど、口調堅いな。もっと砕けた感じでいいんだけど。

しかし、ギルドカードを作るのに少し時間かかるのか、待ってる間に何しようかな。絡まれたりしないかな。そうすれば少しは面白いのに。


そんなことを思いながら、ふと気づく。先ほどまで感じていた視線は、今はもうほとんど感じない。


できるだけ目立たないようにしなくちゃ、目立ってもいいことない気がするし。それにすっかり忘れてたけど、オーリィンの頼み?依頼?依頼でいいか、依頼もあるし、少しくらい情報を探っとこうかな。


死神が出張るくらいの案件だったらそれなりに噂にでもなるものだろう。

よし、情報収集でもしてよう。


「了解。あと、俺のことはアルカナでいいよ。そっちのが年上だろうしね。それに口調ももっと普通でいいよ。敬語はちょっと緊張するし。」


「そう?じゃあ、そうさせてもらうわね。私、あんまり堅いの得意じゃないのよね。ありがと。いってくるわ。適当にしててね、アルカナくん。」


彼女はそう言って中に入っていく。ギルドカードができるのを待っている間、とりあえずアンデット系の依頼がないか探すことにした。依頼ボードに向かおうと振り向くとそこには、とんでもなくでかいおっさんが立っていた。

俺の身長はだいたい170cmだから、目の前のおっさんは目算2mぐらいではないだろうか。頭一つ分はでかい。筋骨隆々のスキンヘッドで顔面も厳つい。装備から見ても間違いなく冒険者だろう。

それに強い。今までに会った人間で一番ではないだろうか。


俺、このおっさんに何かしただろうか、いや、してない。じゃあ、なんだ?テンプレか?テンプレなのか?


身構えてから、俺は見上げるように視線をおっさんの目に持っていき意を決して何の様なのか質問する。


「何の用だ?用がないならどいてくれないか?」


おっさんは俺の顔の前に顔を持ってくる。その顔は歴戦の男といった風貌で、いくつもの戦闘でついたであろう傷があった。おっさんはたっぷりと間を取って――







――笑った。そして俺だけに聞こえる声で話す。


「冒険者登録おめでとう!!これからは俺らは仲間だ。頼ってくれていいし、それにこっちも頼る。この仕事は命がけになることも少なくない。だから、俺たちは助け合わなくちゃならない。誰にでも言っていると思ったか?そういうわけじゃない。お前のステータスはたいしたことがないように見えるが、たぶんそうじゃない。強いんだろう?俺の勘が言ってる。だからな、これから仲良くしようぜ。」


全然テンプレじゃないのか。それに、さっきの感覚は鑑定をされたか。まあいい、〔骨の王〕と同等かそれ以上じゃなきゃ本当のステータスに関してはばれない。まあ、強さはわかるやつにはわかるか。どうにも威圧感は完全には消せないみたいだし。どれだけ小さくしても無にはならない。


しかし、


「仲良くといってもな、俺はあんたの名前も知らない。それに俺だけ見られたのも不愉快だ。おっさんも俺にステータスを見せろ。」


まあ不愉快であっても、特に不都合はないけどな。

おっさんはまたニカッと笑った。


「自己紹介がまだだったな。俺は、ゴードンだ。これでも一応Sランク冒険者の一人でもある。そんでステータスだが、見られたってのはお前の不手際だ。あんなとこで油断してんのが悪い。防げる方法があるのに対処していないんだから文句を言われる筋合いはないさ。仲間といっても一応は商売敵ともいえる間柄なわけだ。そう簡単に手の内はあかさんよ。」


おっさん、ゴードンの言うことはもっともだ。確かに、仲間といっても同じ組織にいるだけで商売敵なんだから当たり前だ。そんなことは俺だって百も承知だ。俺だって、そういう世界で生きてきた。......“生きてきた”?どうしてそう思ったんだ?どうにもまだわかっていないことはあるようだな。それに――


「そうか、すまなかったな。気をつけることにするよ。忠告ありがとうな、ゴードン・ドーガさん?」


俺はニヤリと笑って言ってやった。

こっちだってただやられるだけでは済まさない。すでにこのギルド内にいる目につくやつは把握済みだ。


「おう!いいってことよ!って、・・・・・・・・・ん?」


ゴードンは笑った後に目を丸くして、俺のほうを見る。そして、また笑う。


「そう言うことか。がっはっは、おもしれぇじゃねえか、そうかそうか。こりゃ一本取られたな。まあ、これからよろしくな。」


〔戦力把握〕で得られたゴードンのステータスから苗字を言い当てることで自分の一つの手札を切ったのだ。ゴードンはどうにも愉快だったのか、まだ笑っている。

そんなことよりも、今ほしいのはアンデットに関する情報をである。Sランクともなれば何かしら知っていてもおかしくない。


「じゃあ早速だが、一つ聞いて言いか?モンスターの情報なんだが。」


俺は大まかにアンデットのことを聞いた。強いアンデットかアンデットの大量発生がなかったかだ。

ゴードンは少し考えた後話す。


「いや、ないな。ここ最近は、そう言ったことは起きたとは聞いてないな。そういうのがあったのなら俺にも救援や討伐、なんらかの要請が来てるはずだ。」


そうか、と俺が言うとゴードンは、それじゃあ、と出口へと向かい途中で足を止めると、こちらに振り返る。


「あっと、最後に一つ。受付嬢の嬢ちゃんたちに抜け駆けは禁止だ。俺は嫁子供がいるし、別にいいんだが、他のやつらがな。まあ、気をつけな。」


ゴードンは、がっはっは、と笑いながらギルドから去っていく。


その時にはすでに俺の思考はアンデットの話が一切ないことに移っていた。ゴードンが去った後もその場で考える。


最終的に“アンデットの情報がない=自分の仕事はまだない“、ということで決着が付いたところで、受付窓口から声がかかる。


「アルカナくん、ギルドカードの準備ができたわよ。こっちへ来て。」


考えているうちに30分も時間がたっていたようだ。呼ばれて待たせないようにフィンのもとに急ぐ。









以下、アルカナが見たゴードンさんのステータス

~~~~~~~~~~~~~

名前:ゴードン・ドーガ

種族:人間

性別:男

レベル:98

【固有スキル】

 〔全方位防御オールガード

【通常スキル】

 〔大盾術〕〔風魔法〕〔挑発〕〔気配探知〕

 〔鑑定〕

【称号】

 〔Sランク冒険者〕〔親父〕

~~~~~~~~~~~~~

ステータスの数値はだいたい弱体化時のリオウより少し弱いくらい。防御に特化しているスキル構成。


ギルドの登録をしましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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