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第26話 「ねえ,なんでよ.」

お読みいただきありがとうございます。


門番と別れて少し進むとすぐに広い通りに出る。広い通りでは,どこからか鼻をくすぐるものがあって、我慢が聞かなくなってきた俺は走りだす。隣のエミリアは,俺の突然の行動に驚いて声を上げる.


「えっ!?ちょっまって!!」


エミリアの声も聞かずに俺は一心不乱に匂いのもとを辿っていく。そして、さっきの広い通りから別の大通りに出る。

この食欲を刺激する濃厚なたれの匂いはどこからするのか.きょろきょろと辺りを見回す.


「おお!」


この大通りは多くの露店や飲食店がたくさん立ち並ぶ,いわば食い倒れ通りとでもいってもいいほどであった.その中でも久しく食べていなかった焼き鳥のたれの匂いにつられて屋台を覗く.


「そこの獣人の兄ちゃん!どうだい、串焼き買ってかないかい?一本15セルだよ。」


俺は匂いにつられて覗いた屋台のおっちゃんに串焼きを勧められた。今の俺は獣人だからかわからないが嗅覚が鋭くなっているようだ。この通りとは別の通りからでもわかった、この串焼きのにおいはどこか懐かしいにおいがした。


「おっちゃん,これは何の串焼き?鳥?」


「ああ。これはビッグコッコって魔物の肉だ。うめぇぞ、買ってくか?」


「10本頂戴。はいこれ、銀貨と大銅貨5枚。」


「おう!毎度あり!またきてくれよな!」


串焼きをもらって、おっちゃんに礼を言ってから歩きだすと、後ろから息を切らしたエミリアが走ってきた。とりあえず串焼きを一本取りだして食べ始めながらエミリアに振り返る.


「ハァ...ハァ...突然走り出さないでください!驚きました!って、なにちゃっかり串焼き買ってるんですか!?」


「おう、悪い悪い。うまそうな串焼きの匂いがしてな.ついつい急いじまったんだ.これ食うか?うまいぞ。あのおっちゃんはプロだな。」


串焼きをエミリアに差し出しながらおっちゃんのほうを向くとおっちゃんは次のお客さんの相手をしている。先ほどからあの屋台は客が途切れていない人気店のようだ.


「ありがとうございます。あのお店は人気店の屋台なんです。本店が王都にあって、オーナーさんがこの町の出身なんだそうです。それで、ここで屋台を出してるそうです。」


「ほお、あの屋台の本店か。いつか食べに行ってみたいな。じゅるり」


串焼きを食べながら,これよりもうまい可能性によだれを垂らしそうになり拭って歩きだす。エミリアは渡した串焼きを食べながらついてくる。説明し終わって串焼きを食べるのを再開したエミリアを見て、そこでふと一つ疑問に思う。


「なあ、適当に歩いてるけど、冒険者ギルドってどこだ?場所知らないんだけど。」


「それなら大丈夫です。ここを歩いて行くと町の中心に大きな建物があるのでまず迷うことはありません。これで迷ったら、真の方向音痴ですよ。」


自信満々の様子で串焼きを食べながら進むエミリアに先頭を変わって,俺もそのあとに続く.


.........なんだか、フラグがたった気がしたけど











やっぱり迷子になった。

だろうな.だと思ってたわ.フラグだったわ.


「で、ここはどこだ?」


「・・・・・・・・・わかりません。」


「お前と先頭変わってからすぐだったな。裏路地に入りだしたところで嫌な予感はしていたが、まさか本当に迷うとはな。真の方向音痴だっけ?なれたな、おめでとう。」


真の方向音痴(エミリア)はさすがに自分で言いだした称号を自分が手に入れるとは思っても見なかったのか,明らかにショックを受けている.


「いわれてみればいつも誰かと一緒でした.もしかしてずっとおりされてたんでしょうか.」


エミリアは今にも泣き出しそうだったが、俺にはそんなことは関係がない。どうしてくれようか。


「とにかく広い通りに出よう。そろそろ暗くなってくる、こんな細い路地は、面倒だ。ほれ、歩け、泣くな。お前いくつだよ。」


もうすでに半分泣き出しているエミリアを歩くように促す。泣き出していた彼女も暗くなると聞いて少し足早になる。

こういうときは決まってトラブルがあるもんだ。今回も例にはもれず、それは起きた。


俺たちが大きい通りを見つけもう少しで路地から出るといったところで、その道は断たれた。そこには、山賊だか冒険者だかわからないようなガラの悪い男が三人で道をふさいでいた。

そのガラが悪い男たちは俺らに向かって何やら言いがかりをつける。例に漏れずチンピラの要求は道理にかなわない.


「おうおうおう!ここを通るなら通行料払いやがれい!!」


「銀貨1枚で許してやらぁ。早く出しやがれ!」


特に雑魚っぽいのが二人前に出て何やら因縁をつけている。俺は何とも思わないのだが、エミリアはなぜかおろおろしている。もしかして、俺がやられると思ってるのか?盗賊どものほうが多かったの忘れてるのか?


「何をしてるんだ?」


「だ、だって、三人もいますよ?こんなのやられちゃいます。」


忘れてるな。そういえばあの時気絶してたな。実際の先頭を見ていないのだからしょうがないかもしれない.それならこいつらでちょうどいいか。実験だ。


「いいか、エミリア。こいつらみたいなのじゃ俺には勝てないし,もっと言えば傷の1つ付けられない。第一、こいつらよりも盗賊団のが多いし、ゴルとか言うボスのが強い。安心して下がってろ。な?」


俺の発言にエミリアは顔が青くなる。まあ、それも当然か。だって、今の発言は向こうさんにも全部聞こえてたしな。雑魚二人は怒り心頭だし、もう一人はどうにかこらえているが、青筋が出ている。


「おいてめぇ!!言いたい放題行ってくれるじゃねえか!俺らがてめぇみてえな軟弱野郎より弱いって言うのか!?獣人風情がありえねえこと抜かしてんじゃねぇぞ!!」


「こっちには兄貴もいんだ。てめぇみたいにヒョロヒョロしたようなやつにやられる分けねえだろ。早く観念して有り金全部おいてけや!!」


要求が増えてるし。ひょろひょろといっても獣人である時点で見た目だけで判断できんだろ.はぁ、めんどいな。もういいか、行こう。


面倒になってきたのでとりあえず雑魚二人を瞬殺する。二人とも腹に一発と股間を蹴り上げてやったから声も出さずに倒れもだえ苦しむ。

力は抜いたけど、そこそこ本気で動いたから、誰にも見えなかったはずだ。エミリアは突然倒れた二人を見て、目を白黒させてるし、兄貴と呼ばれたやつは、目を丸くして口をぽかんと開けている。街中だったから殺さなかったが,そもそも俺は魔物よりの存在だし,エミリアいなかったら殺してるわ.そもそも〔温情〕がなかったら殺してたかも.


「で、どうすんだ?まだやるか?やるなら、容赦しないけど。」


できるだけ威圧しないように落ち着いた口調で問いかける.

兄貴と呼ばれたやつは、開いた口をどうにか閉じてしゃべりだす。その様はどこか滑稽である.驚きすぎて口が開くって間抜けすぎるな.


「お前が強いのはわかったさ。だけどな、所詮こいつらはEランクの冒険者だ、それに引き換え俺はCランク冒険者だ。この意味がわかるか?」


ニヤリとしながら何かを取りだし,こちらに見せびらかす.うん,何をいいたいかわからん.

目いっぱい馬鹿にした口調で切り返す.


「わからないな。雑魚と雑魚の差なんて微々たるものだろう?お前の様に性根が腐っているやつにはどうやらお仕置きが必要なようだな。」


俺の挑発にしっかりとかかって怒り出すCランク冒険者は、拳を振り上げ向かってくる。この狭い路地では武器は邪魔になることくらいはわかっているようだ.

Cランク冒険者は俺の顔目掛けて殴りかかってくる。その速度は確かに先ほどの二人《雑魚》とは強さの桁が違う。まあ,それでも、“白夜の金孤”のボスよりも弱い。やはりあんなのでもエミリアが言うようにそれなりに強いんだな.


拳が止まって見えるとはこういうものか.もしかしたらこいつはパワータイプなのかもしれない.その拳には技術も何もない.だからこういうことも簡単である.


俺はその拳に自分の拳を合わせるようにして突きだす。Cランク冒険者は重ねられた拳を壊し地面に倒れ伏す。おそらくだが,粉砕骨折だろう.手の形があり得ないくらいにひしゃげている.そのまま雑魚と同じく股間を蹴り上げて終了だ。これからは冒険者は続けられないだろうが,自業自得である.


最後に聞こえているかわからないが,忠告も忘れない.


「これに懲りたら真っ当に生きるんだな。エミリア行こう。」


エミリアに声をかけたが、返答はない。どうしたかと思ってみると、飛び出るかと思うほど、目を見開いている。口こそ空いてないが、その表情は驚愕一色だった。


「えっと、どうした?」


なんとなくわかるけど、一応聞いてみる。


「どうしたのじゃないです!!すごすぎです!Cランクの冒険者にも勝っちゃうなんて。ゴル倒したのも嘘じゃないんですね。」


うおい、そこ疑ってたんかい!まあ、見てないことを信用なんてできないよな。そんなことより,早く行きたいんだけど。


「早く行かない?」


「そ、そうでした!行きましょう。早くしないとギルドの窓口が閉まってしまいます!」


え?そんなのあんの?初めて知った。登録もとっととしたいから急ごう。


俺たちは、走り出す。そして、広い通りに出て進むと、大きな建物が見えた。とんでもなく大きいな.その建物には、盾に剣と杖が交差した看板が掛けられていた。


想像していた通りの看板だな。


エミリアは俺の前に出ると得意気に語る。


「ここが冒険者ギルド・ルグラ支部です!この大きさのギルドは王都に次いで2番目に大きいんですよ。」


エミリアがカウボーイ映画にでも出てきそうな扉を開けて中に入る。中からは男どもの笑い声と喧嘩の声が聞こえてくる。

俺たちが中に入るとすべての音が止み,その場にいた全員がこちらを振り返る


エミリアはこちらを見て両手を広げて,


「ようこそです、アルカナさん。」


歓迎します,と俺を温かく迎えてくれた.





うん,歓迎してくれるのはいいんだけど、俺が入った瞬間に振り返ったほとんどの冒険者(男)が親の仇かのように俺を睨んでるんだけど、どうして?



ねえ,なんでよ.




ギルドに入りましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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