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第241話 海王の棲み処⑧

なんか前回の更新日が誕生日だったみたいです。気付かず過ぎて愕然w


はぁ(ゲェ)...はぁ(ゲェ)...はぁ(ゲェ)...」

 

だんだんと静かになってきたことで、俺の息遣いが周囲に響く。骨の状態であればスタミナなんぞ関係ないが、マスクを装備しているとそれも限界ができる。水中で満足に動くために必要なので文句を言うつもりはないが、少し残念なところだ。


俺がイシュガルを振るうたびに魚雷の数は減っていくようになってから数分経ったが、それでも断続的に魚雷は追加される。バカデカエイはそれに掛かりきりでそれ以外の攻撃は飛んでこないのが幸いだった。


グイッ?!グイッグイッ!グゥウウウ


そうして魚雷を爆発させることなく殺し続けていたところで魚雷の奥からバカデカエイの焦ったような声が聞こえてくる。

それがどういう意味かすぐには分からなかったが、結果として意味は判明することになる。俺が倒していた魚雷の数が目に見えて減るようになっていたのだ。


ふーん(ゲゲェ)弾切れかぁ(ゲッゲゲェ)?」


俺はシーリザードマンのお世辞にも綺麗とは言えない顔でニヤリと笑い、前にも増して勢いよく魚雷の殲滅を開始した。

魚雷は断末魔を上げることなく数を減らしていき、ついには最後の一匹となった。


グイッ!グイッ!


これで(ゲゲ)最後っ(ゲッゲェ)!」


最後の一匹に何かを訴えていたバカデカエイの言葉が通るよりも先に俺の一閃が魚雷を斬り捨てる。

召喚するための魔力が無くなったのか、それとも近くに魚雷がいなくなったのか。どちらにしてもこれで手札の無くなったバカデカエイと俺の一騎打ちだ。


バカデカエイは魚雷の補充ができないので、自分が戦わなくてはならないことに気が付いて悲痛な鳴き声が聞こえる。


さて(ゲェ)もういいな(ゲッゲ)〔人化〕(ゲェゲ)


俺は先ほどよりも余裕ができたので〔人化〕をする。素早く動く必要はないわけだからな。バカデカエイはそこまで早いわけでもないし。


グイッ!ググググ


俺が〔人化〕をしたことで弱体化したとでも思ったのか、バカデカエイが笑う。その表情までは読めないが、ムカつくな。

俺は“飛斬”を放ち、その余裕を打ち砕く。こういう通り一辺倒な戦い方をする魔物はあまり賢くない。故に先ほど〔人化〕状態の俺に巻き込まれたことを忘れるのだ。


イシュガルを腰だめに構えながらバカデカエイに向かって直進する。水中での移動にも慣れたものだ。


バカデカエイは俺に向かって発射口を向けるが、残念ながら魚雷の補充はもう存在しない。こんなことも覚えていられないのか。呆れながらも手に持つ武器に魔力を込めていく。


「〔温情〕発動!死ね!“首狩り”」


殺さないようにスキルを発動して魔力を十分に込めたイシュガルを振る。狙いは首だ。首が落ちることはなくても無力化することはできる。


俺の一撃は確実に首を狙った鋭いものだったが、意外にもバカデカエイはそれを回避した。どうやら全力で逃げに徹すれば、さっき見たよりも速く動けるらしい。


「まぁ、別にこれで終わりじゃないさ。“投槍”」


俺もバカじゃない。これだけ長引いたのだから保険くらいはかけておく。先ほどの魚雷の殲滅では大鎌と槍の二刀流で暴れたのだから、〔人化〕をしてもそれは変わらない。魔力を込めていたのだって両方に十分に込めていたさ。


ちょうど海蜥蜴面シーリザードマンマスクには〔槍聖術〕があるわけだから、こういうことだってできるのさ。

シーリザードマンの槍は魔力で強化してやっと実用に足るほどの耐久力しかない。なので、これが最後の一撃になるだろうが、とどめの一撃になるんだったらそれで十分だろう。もちろん槍での攻撃にも〔温情〕は発動しており、殺してしまうことはない。


放たれた槍は水を掻き分け突き進む。イシュガルの一閃を必死に避けたことで安心していたバカデカエイは不意を突かれて驚いている。

既に避けられないほどの距離まで槍が迫っているため、回避行動に移る前に直撃した。槍はバカデカエイの胸部に小さなくぼみを作り、撃ち落す。


グゥ、グイィ


バカデカエイは弱弱しく声を出しながら落ちていく。大量の魚雷の死骸がある場所に水の抵抗を受けてひらひらと右往左往しながら落ちる様は、枯れ葉の山に木の葉が落ちるようでどこか寂しさを覚える。

まぁ、あれだけ必死にさばききった後なので達成感はひとしおだ。しかし、まだ決着はついていない。


バカデカエイは〔温情〕の効果で辛うじて死ぬことはなく虫の息だからだ。本来だったら、あれだけの魔力を込めた槍はバカデカエイの体を突き抜けていたはずだし、間違いなく死んでいたはずだ。

しかし、マスク化するには損傷しないようにするしかなかったので、結果として狙い通りになり満足する。


「ふぅ、なんとか終わったな。」


俺は動けなくなったバカデカエイのもとへとゆっくりと歩み寄りながら、途中に落ちていた槍を拾う。拾い上げたその槍はやはり耐えきれなかったようで、手に持った瞬間にボロボロと崩壊していく。

完全に朽ち果てた槍を振り払いバカデカエイに向き直る。苦しませ続けるのは本意ではない。


グイッググ

「悪いが、これで終いだ。お前さんも安らかに死んでくれ。〔骨抜〕」


俺はバカデカエイに手を添えると静かにそう告げてスキルを発動する。今回は押し出す方式ではなく引き出す方式だ。

腕を力任せに引き、骨を体から一気に取り出す。骨を引き出されたバカデカエイはぐったりとして動かなくなる。完全に死んだのだろう、それを確認するために〔戦力把握〕を発動した。


うん、何も出ないな。


完全に死んでいることを確認した俺はおもむろに骨を口に運んでバリボリと嚙み砕きながら皮だけとなったバカデカエイを〔骨壺〕へと収納する。


塩味が効いていて旨いじゃないか。


おやつを食べて落ち着いた俺は次の階層へと進みだす。このダンジョンに入ってからどれだけが経ったかわからないが、ゆっくりもしていられない。

階段を下りて次の階層まで急いだ。



****

Side海龍王レヴァルトラーネ



なんと、海王が手塩にかけて育てたディープ・シー・マンタを完封か。我が言うと違うかもしれぬが、あれは海王の執念を感じる魔物であったのにこうも簡単に討伐されてしまうと奴も浮かばれぬな。


しかし、〔召喚術〕を駆使することで非常に厄介な魔物に進化した奴は魔力切れという弱点をほとんど克服していたというのに、それすらも食い破るか。

〔魔力強化〕によって保有魔力も格段に上がっていたはずなのに、今代の骨の王は逸材なのかもしれぬな。

我の予測では、あのマスクを用いた戦闘法はメリットだけではないはずだ。歴代の骨の王の強みは圧倒的なまでのスタミナと特殊能力という形だったが、彼は違う。今代の骨の王はマスクを被ることで、それそのものに変化している。つまりスケルトンという枠組みから外れているのだろう。

故にスタミナが有限まで落ち込むのだ。通常の生物は無尽蔵のスタミナなんぞ持ってはいないからな。


アルカナがディープ・シー・マンタをマスクにしたいのは分かっていたが、我の要求には達していないそれを手に入れるのはどうしてだろうか。〔召喚術〕が珍しいことは確かだが、奴のは限定的すぎるが故、使いどころはなさそうにも思えるがな。


我の疑問に答える者はなく、骨の王は次への階段を歩き出す。ここからは海王も本気も本気だ。寝床に近づけば近づくほど、難易度も上がる。それをどうやって切り抜けるか楽しみだ。


ああ、そうだ。少しばかりガルガンドに伝えておこうか。


「ガルガンドよ。骨の王がダンジョンをどこまで下りるつもりか分からぬが、攻略まで行くかは分からぬ。50階層のボスはそれまでの魔物とは一線を画すからな。

して、話は変わるが、貴様らにもダンジョンの攻略をしてもらおうと思う。もちろん竜宮氏族全員だ。我のダンジョンを開放する故、ガルガンドが主導して氏族を鍛えるのだ。今回のようなことがあっても貴様らだけで対処できるほどには強くなってもらう。」

「は?...いえ。承知しました。しかし、レヴァ様のダンジョンですか。」


我のダンジョンがどうしたのだろうか。あまり管理はしておらぬが配下が何かしらしているだろう。既に竜宮城まで向かったはずの配下にそのうち聞いておこう。


「ガルガンド殿。レヴァ様のダンジョンとはどのようなところなのでしょう?」

「話を聞く限りでは地獄ですね。私は行ったことはないですが、入場すればダンジョン内での食物連鎖の最下層に組み込まれるらしいです。」

「なんと。恐ろしい。」


何やら我の後ろでミザネとガルガンドが小声で話し始めたが我には声が聞こえぬ。こそこそと話すのは少しばかり気になるが、ダンジョンの話だろうと推測して我は骨の王の観察に戻る。

















先に進みましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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