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第239話 海王の棲み処⑥

長く書いたのを区切り良く切ると文字数にばらつきが出ますね。


****

Sideアルカナ


階段を進み39階層へと到達すると、38階層ではなかったいつも通りの急襲があった。〔探知〕も発動し目視での警戒もしていたというのにそれは潜り抜けて俺に当たる。

もちろん、ダメージを受けたかと言えばそうでもないのだが、何にやられたのかわからないというのが問題だ。


攻撃を受けたのは左腕だったのでマスクが傷つくことはなかったし、それと同時にダメージを受けなかったことで〔防御貫通〕を伴った攻撃ではないことが分かりホッとする。姿が見えなくて攻撃も通るじゃやってられないからな。ぶっちゃけ死んでたかも。


「さて、次はどこから来るかね。」


俺は警戒を強めて、少しでも反応できるように全身で集中する。海蜥蜴面シーリザードマンマスクは〔海棲〕の効果により海の中では感覚も鋭くなる。壁を背にできるだけ警戒範囲を減らしたところで二度目の襲撃があった。


ガツン


今度は俺を正面から吹っ飛ばしたソレはかなりの速度だったからか、離脱できずに一緒になって壁に激突する。

思ったよりも小さいその魔物だが、それでも俺を飛ばすほどの威力を出す魔物であるので、壁と挟まれただけで十分な衝撃を受ける。


クイッ

「逃がすかよぉ!」


鳴き声を上げて離脱しようとしたその魔物を無理矢理にでも捕まえて逃がさない。触れたことで形状が判明したが、水の抵抗を極限まで削いだヤジリのような形のようだ。〔探知〕にも引っかからない上にこの形だと、さながらステルス戦闘機のようだな。


クイックイッ

「暴れるなって!〔戦力把握〕」


逃げようとするそれを押さえつけて〔戦力把握〕をかける。押さえつけているのにその見た目が分からない辺り、どうせ〔迷彩〕か〔透明化〕のスキルを持っているのだろう。


~~~~~~~~~~~~~

名前:―――

種族:ステルスレイ

性別:オス/メス

レベル:46/90

体力:20000/20000

魔力:30000/30000

筋力:6000

耐久:400

敏捷:650000

精神:30000

運 :50

【固有スキル】

 〔存在隠蔽〕〔迷彩〕

【通常スキル】

 〔敏捷強化〕〔鋼の翼〕

~~~~~~~~~~~~~



ホラな?名前もそのまま、ステルスレイ。レイってのはエイのことだったはずだし、隠密行動に長けたエイってことなんだろう。39階層の魔物はそのまま40階層の魔物の予習なのが一般的で、階層守護者もエイなのかもな。

ステータスは俺にダメージを通さなかったのだから大したことないが、スキルがこれだけ強力なんだから、ステータスが高くないのも納得である。


「〔鋼の翼〕って、ヒレの間違いじゃね?」


ぶつくさと文句を言いつつも捕まえているステルスレイを握りつぶす。耐久が異常に低いから、簡単に息の根が止まる。俺も筋力がそこそこあるからな。

とりあえず、このダンジョンの傾向から言ってステルスレイが大量にいるはずだから、どうやって対処しようか。姿が見えないし〔探知〕もできないし、どうしようもないな。


「進むしかないか。」


悩んでいても答えは出なさそうなので四の五の言わずに進みだす。どうせ黙って歩いていれば向こうから突撃してくるだろうさ。そういうスキルしか持っていないわけだし。


俺の考えは間違っていなかったようで、来るわ来るわ。ステルスレイと思われる衝撃が次から次へと俺を襲う。どうやら、順番を守っているというか、一体ずつ突撃しているようで、相互の存在は知覚できているらしい。

来ると分かっていれば衝撃をモロに受けることもない。だが、さすがにすべての勢いや衝撃を逃がすことはできないので、少しずつ後退させられるのは仕方がないか。一歩進んでも連続で下がらされれば、先に進むことなどできないさ。


「でも・・・そう何度も受けないってんだよ!」


何度も突撃を受けている間にステルスレイの突撃の予兆を発見した。奴らが突撃するときにどういうわけか道を作るように水流ができるのだ。その予兆をもとに一匹ずつステルスレイを捕獲していく。

まとめて全部仕留めることができればそれが一番だけど、そうもいかないなら地道にやるしかないんだ。チリツモってわけよ。


クイッキュゥゥ


ステルスレイを捕まえては体の先っぽを握りつぶす。両翼は〔鋼の翼〕の効果なのか、非常に硬く、握りつぶすっていうのは出来ないとは言わないが手間がかかる。頭ならそんな面倒もなく、効率を考えるとこれが一番だ。

正直、全部で何体いるかわからないのだから、加減なんてするよりは確殺で続けるより他ない。俺はステルスレイをちぎっては投げ、さらにちぎっては〔骨壺〕へと、効率重視でやり遂げる。


襲撃はどれほど続いただろう。このダンジョンは海王の寝床までの防衛機構のような役割なので、魔物が恐怖で逃げ出すようなことはない。つまり、根絶するまでは何度でも立ち向かってくるということだ。

これまでの群泳するタイプの魔物でもそうだったように、戦闘できないほどに数を減らせばそれも無くなるかと思ったがそうでもない様だし、あとどれくらいかかるかわからないな。


そうして作業のようにステルスレイを殺し続けること数十分。突撃が止まった。これで打ち止めなのか、それから数分の間、警戒しつつ待ち続けたが、やはり突撃してこないので、これで終わったのだろう。

俺はフッと息を吐いて座り込む。ダメージを受けることはなくても、少しミスすると後ろに飛ばされ、それまでの歩みが無効化にされるのは精神的に疲労した。


別に息が上がっているわけでもないのに息を整えようと深呼吸をする。水中でも鰓呼吸できるリザードマンは〔人化〕すると首元にある鰓から気泡が漏れるようだ。


「さて、進みますか。次の階層もエイなのはほぼ確定だとして、どういう上位種かが問題だよなぁ。そのまま正統進化したタイプか、それとも全く別の方向に進化したタイプか。どちらにしても厄介だけど、正統進化だったら対処のしようもあるんだけどなぁ。」


そんな風にぼやきながら何もいなくなったはずの39階層を歩く。階段はもう目の前のところでガツンと頭を衝撃が走る。


「あいたっ、まだいたか。ふぅむ、さて、次はどこからかな。・・・おっと。ナイスキャッチ。」

クイッキュゥゥ

「よし、駆除完了っと。行くか。」


最後のステルスレイを仕留めた俺は階段を下りる。


グイッ

あ~、上位種確定。


階段の先から聞こえる魔物の声に俺は疲れた気分になって溜息を吐く。この時点で主張してくるってことはきっと正統進化じゃないんだろうなぁ。


はぁ、こういうのがフラグっていうのかもね



****

Side海龍王レヴァルトラーネ


ダンジョン内に満たされた海水を通じて骨の王の様子を見ていた我は、彼の手際の良さに驚いていた。完全に存在を消したステルスレイを捕まえるのはなかなかに骨が折れる作業だ。

コツさえつかめば特に苦労しなくなるとは言っても、そのコツが掴み難い。我は触れた水を操ることで即座に制圧ができるが、通常それは不可能なやり方だ。〔水魔術〕の熟練者であってもさらに修練が必要だろうな。


全50階層の海王の棲み処では、10層ごとに階層守護者が配置されているのだが、次の階層は少しだけ毛色が違う。40階層の階層守護者は個であるが、群れのボスでもある。

魔物にしては珍しい魔法を使い、自らの武器となる魔物を用意する。もちろん魔力が尽きれば終わりだが、進化の過程でスキルを得たその魔物はそこら辺も抜かりない。

海王の寝床を守るための意思はもはや執念とも言えるほどでだな。ついつい、乾いた笑いが出てしまう。


ハハハ。しかし、こうして人がダンジョンを攻略していく様を見ることは初めてだが、ベントラが言う様に意外に楽しいものだな。

我のダンジョンを開放しても面白いかもしれん。ガルガンドを筆頭に竜宮氏族に潜らせるのも良いな。


おっ?骨の王がついに40階層に到着したようだ。既に階層守護者は臨戦態勢だ。既に発射口を入り口に向けている。

さて、どんな戦いになるかな。クククッ。



「なぁ、ミザネ様。レヴァ様は自分が村人たちにどう見られるか分かっておらぬのかな?アレはまるで妄想に耽っているようだぞ。」

「うむ、しかし、それは言わぬが華というようなものじゃ。」

「ですな。」


****

Sideアルカナ


ドゴン


階段を下りた俺を迎えたのは長さ一メートルのミサイル(・・・・)だった。正確には魚雷というべきだろうか。まさか水中でそんなものが飛んでくるとは思わなかったが、イシュガルで叩き斬って防ぐと飛んで来た方向を見る。

俺の視線の先には4mほどの大きさの巨大なエイがコチラに顔を向けて佇んでいた。そのヒレには大き目の穴が二つ開いており、そこから先ほどのミサイル程の何かが一つ顔を覗かせていた。


グイッグイッグイッ


なんだか馬鹿にしたような声を出したソレはこちらに向けて次の一撃を発射する。それはよく観察するとミサイルではなく、顔の尖った魚類だった。


ドゴンッシューッ


それは俺をめがけてまっすぐに進む。その直線的な動きに俺は泳いで射線から外れるとお返しとばかりに“飛斬”を放とうとした。しかし、俺の思惑通りにはいかない。なぜなら魚雷が俺に向かって進路を変えたからだ。


「マジか!?追尾機能付きかよ!!」

グイ~ッ


奴の満足そうな声が聞こえて、イラっとした俺は逃げる方向を変え、奴のもとへと向かって泳ぎだす。そのまま返してやる!


俺がまさか自分に突っ込んでくるとは思わなかった奴は慌てて発射口をこちらに向ける。でもさ、そこには何もないだろ?


「バカが!撃ち切ったんだろ?残念だったなぁ!ってあら?」

グイッグイッ♪


勝ち誇ったようにそう言った俺に対して奴は楽しそうに鳴いた。それがどういう意味だったかは言葉が分からなくても理解できる。


うん、どうやったのかわからないけど、装填できるのね。


無くなったはずの発射口にいつの間にか新しい魚雷が詰め込まれこちらに向けられているじゃないか。

今からじゃ回避も間に合わない。俺は覚悟を決めて前へと進む。こちとら防御力には自信ありだ!


俺を追う魚雷、迎え撃つ魚雷。そして、挟まれた俺はイシュガルを盾にして巨大エイに突っ込んだ。

ぶつかり合う魚雷がどういうわけか爆発を起こし、視界が白く変わった。


















睨み合いでしょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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