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第232話 海龍王の自己紹介


立場は同格であるが年が若い俺から自分の紹介をすることにした。


「お初にお目にかかる。俺の名はアルカナ、今代の戦争と死の根源種だ。海龍王殿のことはミザネ殿やガルガンド殿よりお聞きしている。大陸では冒険者としてレイア=ブラッドレイ殿と共に活動している。

また、海王により海を漂流している際、我が従魔を助けてくれたこと本当に感謝している。海龍王殿のご助力がなくては、俺は優秀な従魔を失うことになっていただろう。

俺たちをこの島へと流れつかせてくれたことも加えて、本当に感謝しているんだ。俺は今後も根源種として活動することも多いと思うので、今後ともよろしく頼む。」

「うむ。」


俺の紹介はいろいろと言いたいことを端折っての自己紹介になる。わざわざ自己紹介を知っている者たちの前でするのは気恥ずかしいからな。

俺の自己紹介を受けて海龍王も自己紹介を始める。何か言いたいことがありそうであったが、先に自己紹介からにしたみたいだ。


「丁寧な自己紹介をありがとう。こちらこそよろしくな。さて、自己紹介としようか。

我は豊穣と生命の神に使える神獣、名をレヴァルトラーネという。貴様も気軽にレヴァとでも呼んでくれ。様もいらんぞ?ディランはともかく、ミザネやガルガンド達はなんと言っても変えてくれぬのでな。

さて、我が貴様をこの島へと送ったのには理由もあったのでな。礼を言われることもない。貴様の従魔もあの場で死ぬにはもったいないと感じたが故に助けただけだ。こちらも礼には値しない。それをしたが故に島を守ることができたのであるからな。

ふぅ、それにしても懐かしい名前を耳にした。レイア=ブラッドレイ。我が主の根源種。我が最後に会ったのは彼女が赤子の頃で、記憶もなかろう。それはかわいい赤子であったが、今は美しく成長したと予想できる。ちなみに彼女の名前は我が考えたのだぞ?海底に咲く希少で美しい花、レイアネルスにちなんでつけたのだよ。」

「なんと!そんなことが。これはレイアにいい土産話ができたな。」


海龍王、いや、レヴァは気安く読んでくれというので、そう呼ぶことにした。レヴァの自己紹介は非常にシンプルだったが、それ以上に興味深い話だ。レイアの名前が彼から出てもおかしくないとは思っていてもいざ実際に出るとなるほどと思ってしまう。名付け親が彼だとはレイア自身も思ってもない話だろう。

しかし、美しい花に由来した名前か、レイアにピッタリじゃないか。レイアを美しい花にたとえるとはレヴァもやるな。


「ゴホン、共通の知り合いで盛り上がるところ悪いが、そろそろ吾輩の質問に答えてもらいたい。アルカナの言い分も理解できるは故、黙っていたが、村人も見ている今、雑談に花を咲かせるべきではなかろう。

このまま続けるのであれば、村人たちはそろそろ村に帰すべきである。どうだ?レヴァルトラーネよ。」

「うむ、そうだな。我も久々に皆の顔を見れて満足だ。ミザネ、そろそろ戻るように告げると良い。」

「分かりましたのじゃ。」


ミザネ村長は立ち上がると村人の方へと向かう。言われたとおりに指示を出しに行ったのだろう。そして少しすると、跪いていた村人たちが一人また一人と立ち上がって村の方へと戻っていく。素直に聞いたようで何よりだ。


「さて、ミザネも戻ってきたことだし、先ほどの質問に答えようではないか。質問は我が遅れてきた理由であったな。それこそが疲れの原因ではないかと。」

「うむ、大体あっているのである。」


海龍王は質問内容の確認を取りディランが認めたので、答える。


「我はいつも通りに海の中を観察していたところ、はるか昔に竜宮氏族と協力して成し遂げた海王の封印が弱くなっていることに気が付いた。あのままでは百年もすれば封印が解けるだろところまで来ていたので、修復のためにもそちらに向かったのだ。幸い封印が完全に解ける前に到着できたのだがな。そこで思わぬ出来事があった。」

「海王はそれ以前もある海域で暴れていたことは知っているだろ?それには対処しなかったのか?」


俺たちが何をしていたかを遠くの海にいて気が付いていたというのならば、海王が野放しになった状態であったことにも気が付いていなかったとは思えない。俺は疑問をレヴァにぶつける。

これにはレヴァも嫌な顔をしたので、俺はやはり気が付いていて放置したのではないかとの疑いが強くなる。しかし、実際は違っていた。


「アレは我も知らなかった。広い海の中でも我に分からぬことはない。しかし、まさかあのような手を使うとは我にも思わなかったのよ。」

「ふむ、何らかの手段を使ってレヴァルトラーネの認識を逃れたというのであるか?」

「ああ、その通りだ。海王はあの時点で魔物に変じておった。神獣である我でもすべての生物を個別に監視することは不可能だ。故に魔物は魔物、人魚は人魚、といった風に観測をしている。ただ、それに加えてガルガンドや封印など個別にみているモノがある。

海王ミューネは封印の有無で居場所を確認していた。それが裏目に出て魔物化して外に出た奴を魔物として判別してしまったのだ。」

「なるほど。あまりに多くの中から個別認識する対象を間違えたのであるか。それは貴殿の失敗であるな。」


つまり、海龍王のミスってわけだ。まぁ、さすがに神獣が魔物になってまで封印を抜け出すとは思わないわけだな。封印があったからこそあの海域を出なかったのだろうけど。


「そして、話を戻すと、到着したそこで何かの妨害を受けたのだ。直接その者がいたわけではなく、罠が仕掛けられていたのだ。我は罠ごときに屈することはないが、少々面倒で会った。おそらく、それをしたのはザンビグルであろう。その罠は大量の悪霊をけしかけるというシンプルなものであったが、その量が異常だった。我は細々とした作業が得意でないのでな。何とか悪霊をすべて処理した後、急いでこちらに来たのだ。封印はとっくに壊されておったからな。」

「ザンビグルにしてやられたおかげでそれだけ疲れているということであるな。吾輩としては納得である。」


ディランはうんうんと何度も頷いている。どうやらザンビグルはこの島以外でもずいぶんと働いていたらしい。本当に迷惑な奴である。死神があれだけ嫌うのも理解できるというものだ。


「ミザネ、ガルガンド、二人には本当に迷惑をかけた。竜宮氏族や村人に被害が出なかったことは幸いだ。」

「はい。海底の氏族はそもそもが戦闘の民、被害が出てもそれは自身の力不足が故、レヴァ様の非はございませぬ。」

「儂らも同様ですじゃ。戦闘を得意とするものばかりではないとはいえ、自己責任の面が強い。しかし、一つ訂正を。村人が一名、犠牲になっておりますのじゃ。」


ガルガンドは海龍王の言葉をそのまま受け入れた。今回海底の氏族で被害を受けたと見える者はどれも掘り返せば犯罪者だけで肉親もいないような者たちばかりだったらしい。これは今さっき歩きながら聞いたのだが、肉親がいなくて潜み住んでいる者ばかりだったため、いなくなったことに気づかれるのがおそくなったいうことなんだってさ。

そして、村長が言う村人の被害者というのは、トロの海のことだろう。彼はずいぶん前に悪なる神によって殺されてしまったらしく、それを今日知ったばかりなのだ。


レヴァはそれを聞いて少し考えると、ああ、と思い出したように告げる。


「トロの海のことであれば安心しろ。我が保護している。いつだったかまでは分からぬが、体をばらされた状態で海を漂っていたところを我はすべて回収して修復したのだ。これでガリア様の神獣だからな。回復はお手の物だ。さらにトロの海自身の回復力にも幸いした。

ただ、今も我が部下が治療しておるが、目が覚めぬ。体は失った分を無理に繋ぎ、修復した故、少々改変が起きておるが、まぁ、多少若返るくらいだ。安心しろ。」

「そ、そんな...トロの海が...。よ、良かった、良かったのじゃ...。」


海龍王の言葉を聞いて村長は泣き崩れる。自分の友が生きていたと分かればこうなることも必然だろう。


「村長。良かったな。」

「ミザネ様、おめでとうございます。」

「うむ、うむ。ありがとうなのじゃ。」


俺とガルガンドで泣く村長を慰める。その間にディランがレヴァと話す。


「しかし、海王が封印が解けたとしてその対処に貴殿が出るとは意外なのである。普通は海神が出るのではないか?」

「ああ、我もそう思うが、あちらはあちらで忙しくてな。ガリア様に命じられたのだ。」

「ふむ、何かあったのである?」

「詳しくは知らぬ。ガリア様も内密で動く様に命じたらしい。我は海神にそれだけ伝えられた。」


聞き耳を立てていたがどうやら、ここ以外でも海関連でなにかあるらしい。海神が関わっているってことはそう言うことだろう。


そこで俺は自分が海龍王に聞きたいことがあるのを思い出した。ちょうど村長も持ち直したので、質問することにする。


「なぁ、俺は大陸に戻らなくてはならないんだ。何か手段はないか?」

「うん?まぁ通常の手段では我の創る海流を抜けて海へと出ることは出来ぬが、我の加護があれば抜けられるぞ?だが、貴様は無理であるな。」


レヴァに言われたのは無理の一言だけだった。その一言は場を沈黙させる。確かに俺はオーリィンの加護がある。それに重ねて加護を与えることが難しいことくらい俺でもわかる。じゃあ、どうするか。それくらい考えろよ。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・いや、ふざけんな。


え?やっぱりディランに頼むしかないのか?


俺がそう思って落ち込みかけたその瞬間、まるであきらめるなとでも言う様に天啓が浮かぶ。神というものを知っている俺が、これを神の啓示と思い込むわけはないが、それでも素晴らしい閃きだった。


俺はすぐにスキルを発動させる。


「ちょっと待ってくれ。〔骨壺〕えっと、あ、これだ。〔骨抜〕っと。即席だけど〔換装〕大鱓面オオウツボメン


俺は自分の姿を変える。これはソフィアを吊り上げる前に唯一釣り上げた魚類だ。カニも釣ったけど、甲殻類は外骨格なので俺が骨に成り代わることができないため、マスク化は不可能なのだ。

ということで採用したのがこの大ウツボなのだが、少々気持ち悪いのが難点だ。大きさはおよそ2.5mで、食いでがありそうなので取って置いた。浜に打ち上げられる魚にこんなのはいなかったし。


ただ、このままでは話すこともできないし、なんだか息苦しい。また、村長やガルガンドは気持ち悪がっている。村長は単純に気味が悪いだけだろうが、ガルガンドは別の意味もあるようだ。


「なんじゃ、この気味が悪い蛇は。」

「まさか、最近出没しなくなったのは、アルカナ殿のおかげだったとは。ありがたいが、やはり気味が悪いな。」


俺は〔人化〕を発動させて立ち上がると、ガルガンドに質問される。


「ふぅ。」

「こいつをどこで手に入れたのだ?大喰らいの厄介者をよくぞ。」

「んあ?ああ、此奴はソフィアと知り合った時に偶然な。」


本当のことは言わずとも完全に嘘ではないので良いだろう。このマスクなら海龍王に頼むこともできるだろう。


「それで、レヴァよ。此奴に加護を貰うことはできるか?」

「ふむ?どういうことだ?我の加護をどうしたいというのだ?」


海龍王ははっきりと理解ができていないのか、即座に聞き返す。まぁ、そんなことができるってのはあまり知られていないこと、というよりは、俺のマスクってのが、彼らにとって道なのだからしょうがない。

オーリィンやリオウは俺がダンジョン攻略をするのを見ていたり実際に戦ったわけだし、理解の深度が違う。海龍王たちに説明してからにするか。


俺はもう一度〔骨壺〕の中から別のマスクを探す。



















説明をしましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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