表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/250

第229話 根源種の役割②

設定って難しい。


ディランと視線が合うと彼は一つ頷いて、次を話し始める。次に話すのは予想したように俺ではなく、豊穣と生命の根源種、つまり、レイアの話をするようだ。


「次は、豊穣と生命の根源種である。吾輩は今代の吸血姫との面識というほどのものはないので、前代の話が主になるが、一言で言って、彼女は女傑だな。」


違った。レイアの話ではなく、その前の代の根源種の話が主になるらしい。まぁ、ほとんど面識がない話をつらつらと話すわけもないか。

とりあえず俺も口ははさむことはしないで聞き手に回る。ディランはどこか遠い目をしているが、その意味は俺たちには分からない。


「彼女は根源種としての役割を全うするが故、相当数の魔物を屠ったのである。吾輩もトカゲと間違えられて攻撃されたときはさすがに命の危機を感じたほどであるからな。」


どうやら、相当に暴力的な性格をしている女性のようだ。聞いた話だと、吸血姫は世襲制だったはずなので、レイアに近しい人物であるのは間違いない。となると、今後会う可能性もゼロではないのだ。会うときには気を引き締めなくてはならないかもな。


「まず、豊穣と生命の神の別名は知っているだろうか?」

「ガリア様の別名とな?儂は存じておらぬが、ガルガンド殿なら知っておるのではないかのぅ?」

「うむ、知っておりますぞ。ガリア様は他にも大地の女神と称されることがあります。これは主に守護範囲から来ているとされていますな。」


へぇ、知らなかった。そんな別名があるんなら、ブラウマンやオーリィンも他の名前がありそうだな。


「うむ、それである。我が主やオーリィン様は天空の神、冥府の神などと言われているのである。まぁ、それは良い。今は彼女の話である。

吸血姫と呼ばれる、大地の根源種の主な役割は、吾輩の人を裁くというのとは逆に魔物を裁く。ただ、魔物を見ればすべてを屠るというわけではなく、こちらも一定の基準があるのだ。」


そりゃそうだ。無差別に魔物だからと殺して回れば、人と共生している魔物まで手に掛けることになる。俺のシュツェンの様に従魔やこの村で平和に暮らす村人たち、人との関わりを絶って深い森の中でひっそりと暮らす者など、殺す意味を持たない魔物は数多く存在する。


「この一定の基準というのは本人やガリア様でなくては分からぬのであるが、推測はできる。まぁ、おそらくにはなるが、吾輩と同様に世界にどれだけの害を与えるかということではないかと思う。吾輩は魂の色を見ると言ったが、似たようなことをしているはずである。」


ディランは悪人の魂の色を見て判断すると言っていたが、それと同じことをレイアもしているのだろうか。そんな話はまだ聞いたことがないんだけどな。


「アルカナは今、そんなこと聞いたことがないと思ったであるな?それは仕方がないのである。正確にはまだ、貴殿の友は根源種として成り立っていないのであるからな。」

「は?どういうことだ?レイアは根源種であることは間違いないぞ。ステータスにも【称号】という形で表示があったし。」


俺は根源に至る者(アビス)というパーティーを組む際にレイアとステータスに関して情報の交換をしてある。俺は彼女のステータスを覗けるが、彼女にはそう言った手段がなかったからだ。


「うむ、だから、“正確にはまだ”なのである。吾輩とアルカナ、そして彼女の違いを思い出してみるのである。それが分かれば意味も分かろう。」


俺は言われたとおりに、違いを考える。

今わかっているのは三人とも根源種であることくらいで、他には男女の違い、種族の違い、立場の違い。どれも違うが、明確に二人とレイアを分ける違いではない。さすがに男女の違いというわけではないだろう。


「うーん、参ったな。レイアは根源種として十分な強さがあるし、何か違いがあるとは思えないな。」

「良く考えるのである。貴殿は経験しているが、レイア殿?がしていないことである。」


そう言われてより深く考えると、一つの心当たりを見つけ出す。俺がダンジョン内で経験したことで、おそらくレイアがしていないこと。


「超越化のことを言っているのか。」

「うむ、その通りである!以前、会った時にちらっと確認したのであるが、彼女はまだ超越化には至っておらぬ。それこそが、根源種として成り立っていない証拠なのである。」


超越化の話などしても村長やガルガンドにはさっぱりなはずだから、詳しい説明はせずにサラッと流す。


「超越化していないが故に魔物の罪を見る目を持たないってことか。」

「うむ。超越化することで、一気に開花するはずである!これも推測であるが、超越化するまでは前代の彼女が今代の代わりに活動しているとみていいのである。」

「ふむ、その人はどこにいるんだ?」

「彼女は普段は魔国にいるのである。吾輩も久しくあっておらぬが、吸血姫の国でほぼ鎖国に近い。近づく際には覚悟するのである。」


そういえばレイアの故郷は魔国だって聞いた気がするな。授与式でもグランドマスターがそんなことを言っていた気がする。


「とにかく、吸血姫は特別な目をもって魔物を選別しているのである。魔の者を裁くと言っても、その手が伸びるのは世界の均衡を崩す可能性のある程の強大な魔物の討伐が主になるのであるから、吾輩らとかち合うことはないのであるな。」

「それが吸血姫の役割ということか。」

「うむ、あの一族は世襲であるため、皆似たような性格で、吾輩少し苦手なのである。魔国の女王一族には近づくなと龍たちには伝えてあるくらいには過激なのでな。アルカナもミザネやガルガンドも気をつけるのである。」


最後の忠告はかなり真剣な表情で言われたが、今後もレイアとパーティーを組む以上、避けては通れないと思うので、頭の片隅に入れる程度にしておこう。他の二人も関わる可能性は限りなく低いとはいえ、俺と似たようなもんだろう。


「吸血姫はその役割から、都合が良い冒険者として活動している期間が長い。魔国の女王も即位までは冒険者として世界各地を放浪し、数多の魔物を屠ったのであるが、今代の吸血姫は如何なのであろうな。」

「ん?レイアもそこそこ動き回っているぞ?俺もついて行く事もあったが、移動手段を確保してからはかなり積極的に遠方の依頼も受けていたな。」


レイアは飛竜を従魔にしてから、それまでの比ではないくらいに行動範囲を広げて活動していたので、ディランが言う様に世界中とは言えないにしても、普通の冒険者ではありえないくらいに飛び回っていた。

本当だったら国境を越えるたびに手続きがいるんだけど、SSSランクに昇格したことでその手続きも不要になって余計に飛び回れるようになったんだよな。俺は飛行手段が乏しかったからついていけないこともあったし、手続きが面倒だったのもあった。シュツェンも飛べなくはないが、どうしても飛行に特化した飛竜には劣るんだよ。


「そうか。それであれば、正式な代替わりも近いかもしれぬのである。吾輩もいろいろな場所に行ったついでに魔物を葬ることもあるが、どうも数が増えている気がするのでな。何らかの原因があるのだろうと気になったのである。」

「スタンピードか?」

「うむ。人があまり踏み入れぬ森の奥に罪人を追い詰めた際に見つけてな。不自然な増え方であった。」

「腐神が関わっていることはあったが、そういう感じか?」


俺は自身の経験から考えたことを伝える。話が少し変わったが、ディランはそれが吸血姫の役割に関係していると考えているからこの話をしたんだろう。

しかし、俺の予想は外れていたようで、ディランは首を振って自分の意見を言う。


「いいや、神が関わっていたようには感じなかったのである。そう言った魔物は魂の色も少し変色して分かるし、近くに神気を放つような魔物もいなかったのであるからな。

その時、吾輩も気になった故、詳しく調査したのであるが、結果としては自然発生と結論するしかなかったのである。我が主を通してガリア様に通達はしたのであるが、経過は分からぬ。」

「なるほどな。それ以上は手を出すのは良くないってことか。相手の領分だもんな。」

「うむ、これは貴殿にも言えることだが、他の根源種の領分をおかしすぎると、神から苦情が来るのである。気を付けるのであるぞ。」

「苦情?」


俺はそんなこと関係ないとばかりに魔物を狩り続けてきたのだが、そんなことはなかったため少し困惑しつつ聞き返す。誰から苦情が来るというのだろうか。


「である。他でもないオーリィン様やカデス様からな。」

「なんで?」


ディランから告げられた名前は俺の上司に当たるオーリィンとその派生神、冥神カデスだった。どちらも俺にとっては関りがあった神なので疑問しかない。


「討伐された魔物や人間の魂はどこへと送られる?そう、冥界である。そこを治めるのは今言った二柱であるからな。そこへと魂が供給過多になれば、苦情も言いたくなるのであろう。それが悪いこととは言わぬがな。」

「なるほどな。そう言われると、理解できる。」


神と言えどもできる限界はあるということだな。その限界が高いことは分かるが、それでもこちらが精力的に動くと限界は早く迎えてしまうということか。


「故に我ら根源種はお互いの領分を越えないようにしているのだ。建前上はな。」


最後の言葉こそが真実だと思うが、まぁ、忠告は聞こう、できるだけ。

俺たちは神に命じられて働いているが、彼らも自分の役目を全うしているのだから、協力はするべきだしな。


「と、まぁ、話がそれたのであるが、大地の根源種の役割はこんなところである。吾輩が知っていること以上に貴殿の仲間は知っているだろうし、また聞くと良いのである。」

「ああ、そうしてみるよ。」


ふぅ、これで二人の根源種の役割を聞いた。最後は俺、戦争と死の根源種、骨の王の話になるのだろう。


「期待している通り、最後は貴殿、骨の王、骨の根源種、戦争と死の根源種となるのであるが、聞きたいであるか?」

「もちろん聞きたいが...」

「そうか。自分のことであるし、省略でもいいかと思ったのであるが、それなら聞かせて進ぜるのである。」


もちろん俺はオーリィンや死神イシュガルから自分のやることは聞いているが、他者から語られる俺の役目というのは気になる。

ディラン本人が言っていたように、最年長の根源種が知る俺の役割を聞かせてもらうとしよう。
















骨の役目でしょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


評価ブックマーク、感想、誤字報告等、励みになりますのでお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ