第216話 VSデルキウス③
誤字の多さに驚いている今日この頃。
さて、首と体が別れたデルキウスが余裕の態度でこちらと対峙しているこの状況。俺はどう動くべきか。
もちろん、デルキウスが憑依している体を完全に消滅させるのが一番だろうが、首を刎ねて死なないのであればどうすれなば死ぬのだろうか。
「クフフフ。君たちは僕を殺す手段を持たないんだねぇ。ハハハ、これは愉快だ。僕を殺せないなら、怖くない。さぁ、今度は君らが苦しむといいよ。...《鬼ごっこ;隠れ》」
触手をうねらせながらそう言った後、姿がだんだんと薄くなり、透明になっていく。最後の言葉がうまく聞き取れなかった俺はそれを見て、周囲に〔擬態〕でもしたのかと思い、即座に近づいてイシュガルを振るうが、すでにそこにはいないようで空振りに終わる。
「ハハハ、当たらないよ。ほぉら、鬼さんこちら。手の鳴る方へ。まぁ、正確には触手だけどさぁ!」
つまりは“かくれんぼ”ということだな。確かにあれも鬼を決めて行う遊戯であるから《鬼ごっこ》と言えなくもないのだろう。単純に隠れたというのとは違うと思うが、奇襲に警戒しつつ、匂いをたどることにする。
と、鼻に意識を集中しようとしたところで、今の自分に花がないことに思い至る。そういえば頭は骨のままだった。
「アルカナ!何やっているのよ!匂いなんて嗅げないじゃない!メア!ここはあたしたちが探し出すわよ!」
「合点...!」
俺のふがいない姿にソフィアとメアリーが奮起する。マスクを変えてもいいが、先ほどのように再び混合魔獣面に変更する際にどうしても隙ができてしまうので極力やりたくないので、二人の申し出はシンプルにありがたい。
「展開...領域支配...不純物鑑定...対象を補足...防壁発動...対象指定...完了...《落とし穴》...。」
「わぁ、なんだこれ!?」
メアリーが何かを発動させると、ちょうど俺の後ろ辺りがドンッという音がして穴が開く。そして次に聞こえるのはデルキウスの声。どうやら俺の背後に移動していたようだ。
メアリーがこの浜の支配者になっていることには気が付いていなかったのか、杜撰なかくれんぼだったわけか。
「ナイスよ、メア!次はあたしね!これ!“クラーケバード”の墨!ヤァ!」
そうして開けられた穴の中にソフィアがどこかから取り出した黒い液体が入った瓶を投げ入れる。聞く限りでは何らかの魔物か何かの墨なんだろうけど、名前からしてタコかイカみたいな鳥?なんだろうな。想像がつかないが何をしたいかは理解した。
「ギャアアアア。なんだこれは、墨?これじゃ、透明になっても仕方がないじゃないか!」
ソフィアが投げた墨のおかげで、これ以降デルキウスは隠れることが難しくなった。小さい体で隠れられるとこの上なく面倒だったので、本当に助かった。
「あたし特性の墨よ!ただでさえ落ちにくいクラーケバードの墨に、海藻から抽出した粘り気を添加したの!こすったところで落ちないわ!この、中和剤がなければね!」
「クソォ、やってくれたなァ、クソガキィ!」
先ほどまで笑っていたデルキウスが突如として口調が荒くなる。今の時点では穴の中にいるデルキウスを視認することはないが、非常に怒っていることはわかる。よほど腹に据えかねたのだろうか。
「グルルルル、(まぁ、そう怒るなって。見やすくなったぞ?さっきまでは気持ち悪いだけだったからな。)」
聞こえないとはわかっていても俺は煽るようにそんなことを言う。俺は穴の方へと近づいて行き、のぞき込むように見下ろすと、デルキウスの姿を確認した。
デルキウスは墨に塗れて真っ黒だし、粘り気のある墨で身動きが取りずらいようだ。俺はイシュガルを振り上げて魔力を込める。この距離なら外すことはないだろうし、落ち着いて狙いをつけるのだから、余計に外す心配はない。
「待て!この体を殺しても僕は死なないぞ!それよりも僕を生け捕りにして情報を抜いたほうがいいと思わないのか?!僕を殺すな!」
ここにきてようやく慌てだしたデルキウス。どうやら万事休すと理解したらしい。しかし、もはや遅いのだ。降伏を促した時点で最後通牒だったんだから、ここで手を止めることはない。
「アルカナ!やっちゃって!あたしたちも少しだけその体には聞きたいことがあるけど、もはやどちらでもいいわ!その姿でほとんど決まりだし。」
ソフィアは俺を止めることはしないで、むしろやってしまえと煽る。彼女が言う聞きたいことというのは、軟体系の氏族の全員が敵側についたのか、ということなんだと思う。俺も気になるがそれはデルキウスに聞かずとも良い。
「グラァアアアアア(ということ、らしいぞ?まぁ、もとよりそのつもりだが。なぁ、お前も今更になって情報を話すから助けてくれってのは虫が良すぎるとは思わないか?)」
「何言っているのか分かんないよぉ!」
なんだかここにきて一気に小物感が増したデルキウス。そんな彼に俺はイシュガルを振り下ろす。
どう考えても避けられない斬撃はデルキウスの気味の悪いタコのような頭に向かって飛翔する。
「クフフ。なぁんてね。まだ僕は負けていないよ。《鬼ごっこ:色》。指定するのは“黒”だよぉ。ハハハ、バイバーイ。」
俺の“飛斬”が迫るデルキウスは突如態度を戻し、馬鹿にしたような笑い声とともに消えた。どうやらまだまだ《鬼ごっこ》には種類があったらしい。今のはどういうものか推測するに色指定をしてその色に沈み込んで移動するというようなものだろう。
黒い墨に沈み込んでいったことからも間違いないはずだ。うーん、入ったのなら、どこかから出てくるというのが自然だと思うんだが、黒はさすがに選択肢が多くて見つけられないな。
「アルカナ様!メアリーですじゃ!」
村長が声を上げる。俺はその声でメアリーに視線を向けると、メアリーの足元にある影の中から見覚えのある触手が生え始めたところを目撃する。
「グラァアアア(メアリー!逃げろ!)」
俺は必死に叫んだが、メアリーは先ほどと同様にいなくなったデルキウスを探していたのか集中していて反応が遅れた。
「不覚...。」
メアリーは影から這い出てきたタコに手を縛られて拘束される。俺はメアリーを盾に取られて攻撃ができなくなった。
そんな俺の様子を見て、デルキウスが勝ち誇るように言った。
「フフフ。これで君たちは何もできないだろう?おっと、そちらの人魚ちゃんも動かないでくれるかな?ハハハ、うん、それでいい。じゃ、僕の体を元に戻そうかな?」
ソフィアが背後から攻撃しようとしたところで、デルキウスの触手がメアリーの首に巻き着きそれをけん制する。
デルキウスの目的は俺が切り離した体をくっつけることみたいだ。
デルキウスが何かをしたのか、倒れていた体が、ゆっくりと立ち上がる。それはゆらりゆらりとデルキウスの方へと歩き出し、そばまで行くと頭を持ち上げて首の上にのせる。
乗せられた首はだんだんと接続されているのか、魔力が動いているのが見て取れる。その間にもメアリーは脱出しようと藻掻くが、触手がきつく巻き着いているようで、びくともしていない。
「ふぅ、これで完全に元通りだよ。それじゃ、今度は僕の方から仕掛けてみようかな?」
デルキウスは元通りになった腕をグーパーしながらこちらへと視線をやる。髭部分の触手でメアリーを拘束しているので、どこか滑稽な見た目だが、笑える状況じゃないな。
「もう人質の意味はないでしょ!メアを放して!」
「いーや、この子にはまだいてもらうよ。言わば盾だ。君たちが無駄な抵抗をしないためのね。クハハハハハ。」
どうやらそう簡単には解放してくれなさそうだ。それなら、仕方がない。一つ手札を切るとしよう。
俺は〔骨壺〕の中から一つの魔物の素材を取り出す。それは剣迷彩蜥蜴という魔物の頭で、見た目はただのカメレオンだが、こいつは舌に特徴がある。
「そんなの取り出してどうするんだい?見た感じ装備しているわけではなさそうだし、供物かな?クハハハハハ、そんなわけないか。」
デルキウスが笑うが、それを無視して俺はその頭を唯一空いた頭へと被せる。これで準備が整った。
「グルルルル。(〔適応〕発動。)」
俺が混合魔獣面のスキル〔適合〕を発動させると、次の瞬間には混合魔獣面に剣迷彩蜥蜴の頭部がまるで最初からそこにあったかのように接着された。このスキルはオークキングの特性で別の魔物素材をインスタント的にくっつけることができるというものだ。
「グルルルァアアアア」
しゃべることができないのはそのままのようで、俺は雄たけびを上げるために口を開けると、声とともに長い舌を射出する。
「うわぁ!なんだそれ!って、あぁ!せっかく捕まえたのに!」
「脱出成功...。」
剣迷彩蜥蜴はカメレオンとして非常に高度な隠形術と長い舌による奇襲が得意な魔物だ。舌は特殊な構造で、魔力を込めると硬化して剣のようになる。
俺は魔力を込めた舌でメアリーをつかんでいた触手をぶった切ると、魔力を放出して柔らかくなった舌で、メアリーを回収する。ちょっとぶよぶよして気持ち悪いのは我慢してもらいたい。
「グルルル(すまん。油断した。)」
「大丈夫...同様...。」
メアリーは俺の謝罪を受け入れてくれたし、自分も反省しているようだ。それに安心した後はデルキウスに向かって肉薄して仕留めにかかる。下手に悩むと、面倒なことになることはもう十分に体験した。
「グラァアアアア!」
俺はイシュガルとウルフマンの腕でデルキウスを攻撃する。しかし、デルキウスもただではやられるつもりはないみたいだ。奴は自分の腕や足を変化させてこちらに反撃してきた。
その様はどこか混合魔獣面の俺に似ており、いろいろな魔物がごちゃ混ぜになったようであった。いつの間にか両手に一本ずつ棍棒を持っているのも異様である。
「クフフ。僕も君みたいなことはできるんだよ。この体は〔擬態〕に特化しているみたいだからね。まぁ、そんなだから、あいつに見初められたんだろうけどねぇ。クハハハハ。」
あいつ、というのが誰かわからないが、ここで推測するならザンビグルか偽龍王だな。まぁ、どちらにしてもここで決め切りたいところだ。
「グラァアアアア」
イシュガルを振り下ろす。デルキウスの右腕のこん棒がそれを防ぎ、左手のこん棒で反撃される。ウルフマンの腕で突き出した貫手は、デルキウスの腹が変化した強靭な毛皮に防がれてそれ以上貫けない。
俺は反撃を避けるためにも、大きく跳躍してデルキウスと距離を取る。
「ほら、そんな攻撃効かないよ。それじゃ、今度はこっちの番。ハハハハ。」
デルキウスは足を何かのものへと変化させると尋常じゃない速度で俺に迫ってきた。その速度はギリギリ目で追える程度で、反応もギリギリになってしまう。
何とか振られたこん棒は防ぐことができたが、二度目に振られたこん棒によって、ガキンと音がした後にイシュガルを跳ね上げられる。
俺はさらに後ろに跳んで次の攻撃を避けると、跳ね上げられた状態のイシュガルを前進と同時に振り下ろす。
「さすがにそれは食らわないよ。」
デルキウスはそれを余裕で受けようとこん棒を横にして頭の上に出す。ソフィアやメアリー、ミザネ村長ですら、防がれたと思っただろう。
しかし、結果は違った。
「そうか?そうはならないさ。」
俺がそういった直後、俺とデルキウスの間の空間に壁を作るかのように魔法陣が現れた。その魔法陣に体が触れたそばから俺は消えていく。
とっさに取った手段ではあるが、大きな失敗につながることがなくて良かった。
「フゥ、久しぶりだがうまくいって良かったよ。死ね。」
再び、というか、次の瞬間に現れた俺はデルキウスの背後にいた。そこで振り上げたイシュガルを袈裟斬りの要領で振り下ろす。イシュガルは然程の抵抗なくデルキウスの体を通り抜けて過ぎ去った。
ウルフマンの腕では貫けなくても、ドヴァル合金製の大鎌の刃は防げないらしい。
「な、なんで...!?」
驚きが隠せないデルキウスは驚愕の表情でこちらを振り返り、反撃もできずに倒れる。体が真っ二つなのにすごい生命力だ。
「ふむ、ツェーには一度見せているんだが、情報の共有は出来ていないみたいだな。」
「そ、んな、馬鹿な。」
ふむ、仕留めることができたみたいだな。いや、〔魔法陣魔法〕で転移して背後からの強襲は必勝パターンかもしれん。今度、もう少し練習してみようか。転移の際に〔人化〕を挟むのは初めてなのだが、結果的にうまくいったようで何よりだ。
今の俺は腕の数はそのままに足は普通に二本、背中には翼という状態だ。“ヒト”と言って良いかわからないが、こちらの方が動きやすいので、戦闘時には有用だ。化け物の姿も悪くはないけどな。
「アルカナ!いきなり消えたから驚いたわ!」
「転移...?」
「ああ、すまんな。あまり連発できないんだよ。それに、見せてない手札の方が確実だろ?」
俺は駆け寄ってきた二人に笑いかける。この島に来てから魔法陣は基本的に使っていない。火をつけるのにも魔道具、水を出すにも魔道具と、魔道具でできることはそちらで対応してきた。
まぁ、今となっては杞憂だろうが、一応、この島の誰が敵かわからなかったからな。それに魔力量も安いわけではないので、行使に消極的ではある。
「とりあえず、これで、デルキウスは終わりだな。もうさすがに動けないみたいだからさ。」
俺がそういうと、デルキウスが悔しそうに負け惜しみを言う。俺はそれを振り返りもせずに聞き流す。
「クフ、フ。甘い、ね。僕はまだ楽し、める。今ここ、で倒されても、次はもっとじっくり、遊ぼうじゃないか。クハハハハハハハ。」
デルキウスの言葉には何も思わなかったが、少しずつ言葉につっかえがなくなった気がしたので、振り向こうとしたところで、海の方から声が聞こえる。
「そいつの言う通りだ、アルカナ殿!甘い、甘すぎるぞ!敵に情けをかけるとはな!」
その声の人物は海の中から飛び出ると、俺の背後にいるデルキウスに向けて攻撃する。獲物は大きな槍のようで、三つに先が分かれた所謂トライデントという奴だろう。
振り向くと、トライデントはデルキウスの頭に刺さり、その体はその人物の尾びれによって一切の行動を制限されていた。
「おお!」
「アルカナ殿、此奴のような軟体系の魚人は体内の核が無事であれば再生を続ける厄介な特性を持つ。くれぐれも情けなどかけなさるな。」
「ぐぁアア、こ、こんなところで...あ、接続が...切...れる...」
俺の甘さを指摘する彼は、デルキウスの頭からトライデントを引き抜いて次の瞬間には頭を刎ねる。血が出ないことに違和感を感じていた俺は、徹底的なその所業にそこまでしなくてはいけないのかと反省をするのと共に、再会を喜ぶ。
「ガルガンド!いや、助けられてしまったな。感謝する。」
「うむ、私も娘が世話になっているしこれくらい、当然よ!」
海底の人魚、竜宮氏族の長、ガルガンドは頭を拾い上げて朗らかに笑う。3m近い身長と金色の長髪が特徴的な美丈夫だ。人間の見た目で考えれば、二人も子供がいるとは思えないほどに若い彼の笑顔は、なかなかの破壊力だ。
「さて、再会を喜び、貴殿のその姿について聞きたいところだが、先に尋ねるべきがある。逃がす前にと海より出てきたので無駄足にならぬといいが。」
ガルガンドは自分が海に潜んでいたことを偽龍王に気づかれないように言葉を選んでそう言った。
きっと彼が言う、用があるというのは、デルキウスではないのだろう。
「軟体氏族の長、ムー=ヴァイヒよ。意識はあろう?貴様に巣食っていた神はすでに沈黙した。貴様には問うべきことがある。」
ガルガンドの言葉で、デルキウスが完全にいなくなったことを知る。どうやら、先ほどのガルガンドの一撃が核を壊し、そこに巣食っていたデルキウスを排除したそうだ。
ガルガンドが話しかけたことで、軟体氏族長が目を覚ましたのかうめき声をあげて目を開き、返答する。
「ぐぅ、うぅ、あぁ。ここは?......ふぅ、そうか。怠惰な神は敗れたか。竜宮氏族長、ガルガンド=ローレライよ。俺は大罪を犯し負けた。答えられることは答えよう。」
潔く答えると言った軟体氏族長ムーはガルガンドの手の中で観念する。どうやら遊神デルキウスは怠惰とも呼ばれるようだ。
「ふむ、戦士である貴様に一つだけ尋ねるしよう。なぜ、貴様は海龍王様を裏切ったのだ?」
ガルガンドは多くを聞かずに一つだけ質問した。どうも、海の中のルールとかそんな感じで、数が決まるのかな?
「裏切った、か。貴殿らにはそう見えるかもしれんが、我らは己が生き残る道を選んだのみ。海龍王レヴァルトラーネは我らが海王による襲撃を受けても救済を与えなかった。
そんな時に手を差し伸べてくれたのが、我らが主よ。海龍王に心酔している貴殿らには分からぬだろうが、我らは失望したのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ、俺は選択を間違えたのかもしれないな。」
ムーのそれはまさしく慟哭であった。深い悲しみの末に海龍王を見限ったという彼はこのような結果を予想していたのかもしれない。
最後のつぶやきにはどういう意味があったのだろうか。
「ムー=ヴァイヒ。貴殿にも事情があったのかもしれぬが、こういう結果になったのを私は残念に思うよ。さて、最後になるが、介錯は要るかい?」
「いや、もう、視界も保てないし、もう耳も遠くなってきた。既に冥界への旅路に足が向いているんだろう。
最後にはなるが、どうか、生き残りの我が氏族を見たら、温情を...。」
最後に仲間に温情を願って軟体氏族長ムー=ヴァイヒは息を引き取った。ガルガンドはそんな彼に応えず、静かに見送る。
俺の目には満足そうな表情で、体から魂が抜けだして冥界へと堕ちていく様がはっきりと見える。彼は冥界へと到着した後、冥神によって裁かれることになるのだ。
願わくば、彼の死後の幸福を。どうしてか敵になった彼にも、死後の祝福は平等に訪れて良いのだから。
「さて、こうして彼を送ったところで、挨拶をしておこう。」
沈黙を破るようにしてガルガンドが口を開く。その視線は俺でもミザネ村長でもソフィアでもメアリーにでもなく、偽龍王に向いていた。
「海龍王レヴァルトラーネ様。ご無沙汰しております。海底の城にて御身の留守を預かっております。竜宮氏族長、ガルガンド=ローレライ、御前に。」
「う、うむ、ガルガンドよ。よくぞ参った。如何様にしてこの場に現れたのだ?」
ガルガンドが丁寧にあいさつをすると、偽龍王は歓迎を示した後、この場に現れた理由を尋ねる。
ガルガンドは、その質問に答える前に立ち上がり、偽龍王の前まで歩いていく。偽龍王よりも大きいガルガンドは見下ろして告げる。
「そんなの、決まっている。」
ザクッ
「なぁっっ!?」
ガルガンドが付きだしたトライデントは偽龍王の腹部に深々と突き刺さり、鮮血を撒き散らす。
「海龍王を騙る不届き物を成敗するためだ。」
ガルガンドは視線で人が殺せそうなほどに偽龍王を睨みつけてそう言い放った。ここからは偽龍王を相手にしなくてはならない。
俺は4本の腕の内、空いた二本の腕を握り締め、羽も広げて、いつでもガルガンドの援護に入れるように足を踏みしめる。
さて、どんな戦いになるかな。
暴きましょう
拙作を読んでいただきありがとうございます.
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