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第215話 VSデルキウス②

想定よりも長くなりました。


俺はそのマスクを装備した状態でどれだけの時間を動けるかを計算する。その間にもデルキウスは攻撃を続けるので、こちらも適切に回避したり防御したりと対処しながら、頭を回転させる。


もともとは対海龍王を想定したマスクなので、使者相手に使うつもりはなかった。しかし、使者の正体が神であるというのなら、この選択も仕方がないと割り切る。

切り札は切ってこそ意味があるのだからな。ただ、大事に持っていてもそれはお守りにはなるが、事態は好転しない。俺はエリクサーは使うべき時に使う派だ。


いろんな可能性を考えて導きだした結果は、このマスクを装備しての活動の限界は、およそ1時間。意外に長いと言えるかもしれないが、デルキウスをどうにか倒すことができたとしても、その後に偽龍王が待っているとすれば、これは心許無い時間としか言えないのだ。


「クハハハ、どこか上の空だけど大丈夫かい?ほらほら、どんどん行くよぉ!《掌遊び:零指ゼロユビ》“流星群メテオ”ハハハハハ!」


デルキウスは拳を握り締めて連撃を仕掛けてくる。ご丁寧に両手に魔力を込めて、高威力の爆弾のような連撃だ。それはまさしく、地形を変えるほどの攻撃で、一撃ごとにクレーターができている。


ソフィアとメアリーには退避を優先してもらっており、幸いにしてデルキウスが俺だけを狙うので引き付けるようにして対峙し続けるのだ。

すべての拳を避け切ったところで、デルキウスも疲労がたまったのか、動きが鈍くなる。


「クフフ、この体はやはり少々、難しいね。これだけの動きでバテバテみたいだ。僕ならこの程度、朝飯前だってのにさ。クハハハ。」

「ハッ!それならこの隙にこっちも手札を切らせてもらうぜ!」


俺はこの隙を逃すわけもなく、これを利用してマスクを切り替える。


「行くぜ!〔換装〕混合魔獣面キメラマスク、う、グガァアアアアアアアア」

「アルカナ!?」

「...?!」

「おや?」


俺は自分を襲う強烈な痛みに思わず叫び声をあげてしまう。その様子に驚いたのはむしろ見方であるソフィアとメアリーで、デルキウスは不思議に思っただけでそれ以上の反応はない。


光が俺を包み、だんだんとその形を変化させていく、混合魔獣面キメラマスクは俺とスパイダーシルクのヤンの合作と言っていいマスクだ。

俺が計画して仮縫いし、本縫いを本職であるヤンが行った。そのおかげか、縫い目はわからず、体のつくりも現実的な大きさになった。もともとの仮縫いで少し不格好だったのをうまく修正してくれたようだ。


光がだんだんと収まると、俺の体が衆目にさらされる。背中側から見ているソフィアやメアリーは俺の姿を見ようとしても背中にある、2対の大きな翼によって見ることは叶わないはずだ。

その逆に正面からこちらを見ているデルキウスや偽龍王、ミザネ村長はしっかりとその全貌を見ている。デルキウスは何やら面白そうに笑いだしたが、あまりの光景にミザネ村長や偽龍王は、その表情を引きつらせている。まぁ、控えめに言ってドン引きだわな。


「ハハハハ、なんだい、それは。」

(なんでこれを見て笑っていられるんだ、お前は。創った俺でも正直、引いたっていうのに。)


俺の見た目は一言で言えば、『醜悪な継ぎ接ぎ』。縫い目が分からなくてもところどころに別の魔物の素材が使われているために色合いがごちゃ混ぜなのだ。


どのようなマスクなのかを説明するとしよう。


まず、混合魔獣面キメラマスクのベースはオークキングの変異種だ。以前も説明したかもしれないが、他種族を孕ませることができるほどの適応能力は他種の魔物の素材を組み合わせるための土台としてはこれ以上に無いほどに優秀だった。

さらにオークキングの変異種は龍因子を持っており、その皮膚はまるで龍の鱗のようで、非常に強固だ。そのオークキングの胴体のさらに外側にグランドグリズリーという魔法に強い長い時を生きた熊の魔物の皮を縫い付ける。このグランドグリズリーは魔法薬による改造が施されていた魔獣で、これらを一体化することにより物理魔法両面の防御力を確保した。


次にこれを支える脚は4本のスレイプニルの脚だ。巨体を支えるその脚は非常に発達しており、鈍重なオークキングの体であっても軽々と運べるほどの脚力を実現した。

また、腕はグランオーガのボスの腕を一対と以前どこかの依頼で手に入れたウルフマンという理性を失ったオオカミが二足歩行しているような魔物の腕を一対取り付けた。ウルフマンの腕は人のものに酷似しているが、頑丈さは非常に高く、手先も器用である。ただ、この腕の一番の利点は、鋭い爪がそのまま武器になるということかもしれない。

最後に取り付けたのは二対の劣化飛竜の翼である。大きなそれは背中を背後からの攻撃から守るようにオークキングの皮で補強されており、劣化飛竜なのにどちらかと言えば龍の翼に見えなくもない。これも龍因子の効果だろうか。


これまでに上げた魔物素材以外の細かい素材や腕脚翼の過剰接続が混合魔獣面キメラマスクを異形たらしめる。正面から見ている三人はさぞ恐ろしいだろう。

このマスクのすごいところは見た目だけではない。その異常なまでの能力の追求は、一部とはいえ、このマスクを神獣の域まで昇華させた。獅子王面のようなバランスの取れたマスクとは違い、一部の能力が突出したこれは、まさしく現時点での最高到達点と言ってもいいだろう。


~~~~~~~~~~~~~

名前:混合魔獣面キメラマスク

種族:混合魔獣キメラ

【固有スキル】

〔適応〕〔物理大耐性〕〔魔法耐性〕

〔筋力超強化〕〔貫通攻撃〕〔器用〕〔飛行〕

~~~~~~~~~~~~~


体力:5000000/5000000

魔力:200000000/200000000

筋力:950000000

耐久:50000

敏捷:100000000

精神:500


~~~~~~~~~~~~~


スキルは素材となった魔物それぞれの持っていたスキルを全部とは言わないが受け継いで、各数値も非常に高い。

物理魔法の両方に耐性スキルを持っているマスクは今後のマスクの創作にも役立つ資料になるかもしれない。スレイプニルも同様のスキルを持っていたが、オークキングの変異種を使っているだけあって、こちらの方が物理面で有利だ。


残念なのは、精神と耐久の数値だが、俺がそれを補うことができるとすれば、問題はなくそれ以外の数値の素晴らしさが引き上げられる。

さらに凄まじいのは、筋力と敏捷に関しては、獅子王面を若干上回るということか。これがなければ安定している獅子王面の方が良いとなるところだった。

魔力体力も申し分ない強化ができるので、総合的な評価としては作ってよかったってところだ。


ただ、神獣ではない魔物のマスクで、ここまでの性能を引き出した大小なのか、このマスクは使用するにも制限がある。と言っても、それはマスクを装備している間は常に魔力を消費し、最大稼働時間が余裕をもって一時間となるというくらいだ。

制限を加味しても強力なマスクであるのは違いないので、ここで勝負を決めるために取り出したというわけである。


ああ、そうだ。もう一つこのマスクの特徴があるのだった。それは頭である。このマスクには俺が被るべき頭部がない。一見してそれは悪い部分かと思うが、これにはちゃんと理由がある。

それは低い精神の値を無視するための措置なのだ。


頭部がないとすると、マスクを装備した時、頭が露出することになる。防御力という点では多少柔らかくなるが、それ以上にメリットがあるのだ。頭が出ているということは精神の値はスケルトンに準拠するということだ。

つまり、この状態なら低い精神値は関係ないということである。


この醜悪なマスクをもって、遊びの神デルキウスを討伐するために俺は動き出す。これに合わせて相手の手を潰す作戦を携えて。



***



パカラパカラと蹄を鳴らして走り出す。4足の脚は小気味よく地面を鳴らし、尋常ではない速度でデルキウスに肉薄する。


「グラァアアア」

「おっと、早いなぁ。でも、クフフ。僕には届かないさ!《鬼ごっこ:影踏み》ほい、止まれ。ハハハ。」


しかし、デルキウスが初めて行使したスキルによって俺は止められてしまう。すでに攻撃をしようとイシュガルを振り上げ、空いたウルフマンの腕で貫手を放とうとしている態勢のままで固まる。

《鬼ごっこ:影踏み》という名前からして、影踏み鬼を模した技なのだろう。本来なら、影を踏まれた場合、鬼を変わるのだが、それが相手の動きを止めるという効果に変化したみたいだ。


まぁ、何となく壊せそうだったので、力任せに体を動かして攻撃を続行する。ただでさえ時間がないのに足止めは食らいたくない。


「グ、グガァアアアア、グガァアア!!」

バキン

「え?!まさか無理やり解除したの?ハハハハ、やってくれる!」


魔法的な拘束が解除されたことを示すかのような大きな音が響いて、体が自由になる。未だ近くにいたデルキウスに向けて、攻撃を再開すると、奴はギリギリのところで回避する。まさか避けられるとは思っていなかったので、追撃をしきれずに一旦は逃がしてしまう。


ふむ、正面から挑んでも『だるまさんがころんだ』で攻撃を防がれてしまうし、背後に高速で移動して攻撃を仕掛けても次からは《影踏み》で止められて、その隙に逃げられてしまうだろう。

どうしたらいいか。もう少しギアを上げられるか?現段階でかなりギアは上げている方だ。これ以上に早くというのは限界突破をするしかない。でも、ここでそれをしてしまえばのちに控えた偽龍王に切る札がない状態で挑むことになる。


ここは別の手を考えよう。


「クフフ。どうしたんだい?仕掛けてこないみたいだね。ハハハ、それなら今度は僕が仕掛けてみようか。《鬼ごっこ:こおり》ホラ、凍ってしまうよ?!!」


俺が考えている間に今度はデルキウスが攻撃を仕掛けてきた。その文言からして今度はこおり鬼だろう。記憶にあるこおり鬼は、鬼に触れられたら凍らされるというものだったはずだが、これはそうじゃないらしい。俺にめがけて迫るのは氷の波だ。それは地面を凍らせながら迫り、きっと触れたらアウトだろう。

その範囲はなかなかに広いので、ソフィアたちの方を見ると、すでにそれなりの距離を稼いで回避していたようで、被害はなさそうである。俺は安心して避けられるとほっとする。


スレイプニルの脚を回転させ、その場から移動する。ついでとばかりにデルキウスの背後に回ると、イシュガルを振り下ろす。


「おっと、今度は余裕があるね。『だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ』!ニヒッ」

「グルゥ グラァアアアアアアア!!」

「え?うわぁあああああ」


舌打ちの代わりに低く唸ると俺は、方針を変えてデルキウスにイシュガルを引掛けるようにして振り上げる。

防御を固めているからと言って地面に固定されるわけではないので、移動させることは簡単だ。上からたたきつけるのでは地面がストッパーになりそれ以上は動かないが、空中ならそんな制限もない。

俺はデルキウスが重力に導かれて落ちてくるのをじっくりと待つ。


グンと上に投げられたデルキウスは『だるまさんがころんだ』の効果が切れると、戦闘になってから初めて慌てたような声を出す。空を舞う遊びなんて思いつかないもんな。


「うわぁあああ。影は!だめだ!『だるま...』もだめだ。再使用には早い!何かないか、何か!」


落ちてきたところで、俺はイシュガルを構えて待つ。そのまま首を落としてゲームセットだ。いくら神が憑依しているとしても首を落とせば、死ぬだろうさ。


「何か、何か、何か!」


慌てながらも落ちてくるデルキウス。俺がイシュガルを振りかぶったところで、ニヤリと笑い、ぴたりと止まる。


「なんてね?《鬼ごっこ:のぼり》甘いよ。」

「グルルァアアアアア(わかっていたさ。ま、賭けだったけどさ。“首狩り”、フンッ!)」


俺は飛び上がってデルキウスの上に位置したところで止まると、下にいるデルキウスの首にイシュガルを振るう。


これが俺の狙っていた通りの結果だ。影踏み鬼、こおり鬼、とくれば、高鬼がないとは思えなかった。異世界からこちらへと来た者が、メジャーな鬼ごっこをすべて教えていると予想したのだ。


高鬼は本来のルールでは高いところにいれば鬼にタッチされることはないというものだったはずだが、改変された《鬼ごっこ》ではどう変化するかを考えた。

推測できるのはいくつかあったが、可能性が高いのは二つで、一つが“自分よりも低いところにいる相手から傷つけられない”で、もう一つが“ただ空を飛ぶ”もしくは“空中浮遊”だと予想した。

結果としては後者の空中浮遊だったわけだ。まぁ、予想通りだな。前者はどうしても『だるまさんがころんだ』と能力が被るし。


ということで、俺の一撃はデルキウスの首を一刀のもとに両断し、その触手のほとんどをぶった切った。首が飛ばされたデルキウスはというと、なぜかそこまで焦った様子ではない。

体が壊されても憑依しているだけだから本体には影響がない、とかそんなところかと思ったが、たとえ憑依しても器が死ねば多少の影響はあるはずなのでそれも当てはまらないはずだ。


俺は警戒を緩めずにその動向を注視する。


よく切断されたタコの脚を見ると、うねうね動いていることが分かる。死ぬ前の最後のあがきかと思ったが、どうも違いそうだ。

その動きは一定しており、首に向かって動いている。俺が慌ててタコの脚を始末にかかるが、すでに時は遅く、首にタコの足がくっついてしまった。


「クフフ、まさかこんな状態になるとは予想できなかったね。ベーに続いて僕もやられたよ。でも僕はこうしてまだ元気。まだ、やれるさ。クハハハハ。」


デルキウスは首だけになりながらも笑う。


「なんなの?気味が悪いわ!」

「不気味...。」


ストレートに怖がる二人の声を聴いて、そろそろ仕留めないとまずいかもな。対して情報を取れなさそうなのはわかってきたので、決めようか。まぁ、さっきも決めるつもりで大鎌を振ったんだけどさ。


「グルルル(次で仕留める。)」

「え?僕は獣の声は聞こえないよぉ?何を言っているんだか。さ、続きをやろうか。」


神との戦いはまだ続く。



















決着をつけましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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