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第214話 VSデルキウス①

戦闘描写って難しいです。デルキウス戦が終わるまでは毎日0:00に投稿します。


「それじゃ、行くよ?クフフフ《掌遊び:二指》よっと。あら?」

「《[衛星サテライト][射出キャノン]》...ぬおっと...あん?」


戦いの先手はデルキウスに軍配が上がる。俺も初手に大きな一撃をと思って〔衛星〕を飛ばして攻撃に入っていたのだが、デルキウスの方が速かった。


デルキウスの攻撃は目を狙った鋭い一撃で、二本の指を正確に眼孔に突き入れる凶悪な攻撃だ。俺はそれを避けることができずに食らう。しかし、俺の今のマスクが功を奏したのか、圧倒的なまでに強化されている耐久値が目ですらも守り切った。


「へぇ、これもダメなんだね。貫通力に優れた手なんだけどな。」


その言葉を聞いて、星鉱亀面の特性を思い出す。そういえば〔貫通攻撃耐性〕を持っていたんだったな。もしかすると、今の攻撃はこのスキルがなければ防ぐことができなかったかもしれない。


内心で冷や汗を流しながらも直前に準備を完了していた《[衛星サテライト][射出キャノン]》をゼロ距離で発射する。目に指が付きたてられているので、これを幸いとしてその腕をつかんで逃がさない。


「お返しだ。発射ファイヤ


ズガァーン


俺の発射した《[衛星サテライト][射出キャノン]》はデルキウスを直撃する。今回のは先ほどソフィアたちを助けるために発射した時よりも数段威力が強化してある。魔力を十分に込めたのだ。

先ほどはどうしても威力よりも最短で発射することを目指したので、今回のは前よりも成果が期待できる。


右肩付近に直撃を受けたデルキウスは、その勢いを逃がすことができないままに錐もみ回転で吹っ飛んでいく。そして、空中でどうにか回転を止めるとストンと着地し、即座に地面を蹴って俺に肉薄する。


「クハハ、良い威力だね。ベーが良い様にやられるのも理解できる攻撃だ。でもね。フフ、一緒にしてもらっては困るよ。《掌遊び:零指ゼロユビ》ハハハ!」


お返しのお返しとばかりにデルキウスの拳が俺の腹部にめり込む。どうもこの掌遊びという技は、手に魔力を込めて硬化した状態で攻撃する技のようだ。それだけなのかと不思議に思うが、今のところ特殊な効果は見えていない。


ガキンという人体同士が当たったとは思えないような音が浜に響く。この星鉱亀面の防御力は神の強化した拳であっても防ぎきることができるらしい。俺の生身の耐久力もあるのだろうが、それでも作っておいてよかったと思う。

デルキウスは一撃の後、距離を取って薄ら笑いを浮かべて俺に問う。


「うーん、ハハハ。やっぱり硬いねぇ。それにしても君は面白い能力だねぇ。ただの加護を持つ冒険者だと思っていたけれど、そういうわけではなさそうだ。

ザンビグルも言っていたけど、君は本当にただの使徒なのかなぁ?もしかして奴らに関係あったりするかい?ハハハ。」

「ふむ、ザンビグルが何を言っていたかは気になるが、その質問に答える意味はあるか?それにとは誰のことだ?」


俺は答えるつもりはないとバッサリと切って捨てたのだが、デルキウスはあきらめない。こちらとしても気になる話が出たので質問したが、答えは求めていない。飽くまでも敵同士だからな。


「クハハ。質問に質問で返すなんてひどいことするなぁ。せめて誰に加護をもらっているか教えてほしいんだけど。フフフ。

何となくだけど、イシュガル君に似ている気がするんだよねぇ。ほら、その赤色の目とかさぁ。この体はどうにも気配とかを読めないようでねぇ。ハハハハ。」


デルキウスが俺の目を指してそう言うと肌の色が抜けていき、だんだんと白っぽく変化していく。さらに何もなかった顎や鼻の下には髭のようなものが伸びてきて、すぐにもじゃもじゃになった。ただ、その髭もうねうねと動くところを見ると髭というよりも職種に近いのかもしれない。

そうして現れたのは、おそらくタコの魚人だと推測できる。これは事前に聞いていた軟体系魚人氏族の長の種族と一致しているので、やはりデルキウスの依り代はそいつで間違いないようだ。


「どうだい?醜悪な見た目だろう?魚人なんて使うのも嫌だけど、今回の作戦には必要だから、いやいや変わったんだよ。クフフ。ほら、見てよこの手。吸盤が付いていて気味が悪いでしょ?」


本当に嫌なものを騙るかのようにデルキウスは手を差し出して言った。心の底からそう思っているのが分かるが、今なんで〔擬態〕を解いたのだろうか。


「君の加護が誰のものであれ、ここで倒さないと後々になって僕らの邪魔をしそうだからね。つぶさないといけないんだ。だからこの姿になったのさ。クフフ。癪だけど、こちらの方が強いし。

ま、結果として、君に加護を与えた神と敵対することになるだろうけど、もしかしたら和解できるかもしれないからね。一応聞いてあげるってだけ。」


俺としては和解などできるとは思えないので、答える義務はないと思ったので黙って警戒していると、そこで思わぬ横槍があった。


「其奴に加護を与えたのは、オーリィンの奴であろう。我には分かるぞ。気配がプンプンと匂うわ。のう、ミザネよ。」

「海龍王様、ここでそのような敵に対する助言、感心しませんぞ。もしやあなたも奴の味方なのですかな?」

「ふむ、これもダメか。すまぬな。つい口を出してしまった。」


偽龍王は俺の上司をデルキウスに教えてしまった。まぁ、どうせ敵だと思っているので、想定内ではあるが、村長が隣で目を光らせているのにこういう行動をするとはな。

村長に注意されて黙った偽龍王を無視して、デルキウスの行動に注意する。今のところこちらにダメージはもらってはいないがこちらもほとんどダメージを与えられていない。攻撃力という点では、どうしても他のマスクに劣るからな。


デルキウスは偽龍王によって知った情報で俺に加護を与えた神を把握して表情を変える。口調こそ変わらないものの表情は先ほどまでのニヤリという笑顔ではなく、無表情だ。タコの魚人なので表情が分かりにくいが、無表情というのは凄味が増すな。


「ふぅん、奴の加護をねぇ。クハハ。もしかして根源種だったりするかな?だったら猶更、ここでつぶさせてもらうよ。そっか、だから僕の〔神式呪法〕も脱出できたんだね。あーあ、厄介だよね。スケルトンって。ははは」


オーリィンという情報だけで、俺の正体まで当ててしまったデルキウスは無表情で笑う。温度の無い笑い声は不気味だ。触手がうごめいて気味が悪い。


「バレちまったか。ま、潰すって言うが、それはこちらのセリフだ。悪神をぶっ飛ばすのも仕事の内だからな。」

「クハハハ。ところで一応、どうやって脱出したのか聞いていいかい?」


まぁ、マネできることではないし、良いか。


「精神世界ではある程度自由が利く部分がある。おそらくだが、あの時、武器を取り出すのはお前が禁じていたのだろうが、装備を仕舞うのは制限がなかったのだろう?

だから、〔人化〕を解いてスケルトンに戻ったんだよ。欲が種族的に封印されるスケルトンの状態であれば、欲の牢獄も意味をなさないからな。」

「え?でも、あの空間ではスキルの使用も制限があったはずだよ?」

「攻撃系なんかの話だろ?正確にはあの場で使ったのは、収納系だけだ。マスクを収納してスケルトンに戻っただけだからな。」


俺はこちらに戻ってくるのに閃いた手段はスケルトンになることで俺を支配していた食欲を封印し、その隙に精神世界を脱出するという方法だったが、結論としてこれは成功した。

ちょっとした閃きが成功したのも十分に幸運だったが、さらに幸運だったのは、その時ちょうど現実世界での俺は吹っ飛ばされていたので、精神に引っ張られてしまったせいで、現実でもスケルトンに戻ったのを見られなかったということか。それがデルキウスにバレていれば、あの時の助太刀が遅れてしまっていたかもしれない。あの瞬間、スケルトンから即座に星鉱亀面を装着できたから助けることができたんだよな。


「(俺はこの通り、スケルトンだ。でもな〔換装〕大子鬼面グランゴブリンマスク)コンナ風ニ、〔換装〕獅子王面リオウマスク〔人化〕、っとマスクを切り替えることで、姿を変えることができる。この応用であの場でも疑似的に姿を変えたのさ。」


そう。俺は普段は〔換装〕という便利なスキルを多用しているが、これに関しては言うなれば、ただのショートカットだ。精神世界だろうが現実世界だろうが、服を脱ぐのにスキルは使わなくてもいい。

脱出するのに使った手段として、あの場でただ服を脱いだ。装備を外しただけということだ。背中を破いて出たわけだから、少々気は引けたがな。精神の世界であるとはいっても、獅子王面(恩人)を引き裂くわけだからな。

正直、こうして獅子王面を〔換装〕できて、損傷も見られないことに安心しているんだが、それは表には出さない方がいいな。


「フフフ、根源種と戦うのはずいぶん久しぶりだけど、その...マスクだっけ?それは驚いたことに神獣が素材になっているんだね?一瞬だけど、この体ですら感じるほどの圧力。まさかとは思うけど、自分より格上の神獣を狩ったのかい?」

「まさか。これは恩人にもらったんだよ。それよりも、そろそろ仕掛けてもいいか?〔換装〕大鎌斧イシュガル。こっちは準備完了だからさ。“飛斬”、ラァアアア!」


話は終わりだとばかりに取り出した大斧イシュガルを振るって斬撃を飛ばす。狙うは触手がうごめくデルキウスの首だ。デルキウスに迫る斬撃は横方向に一文字を描き、その首を目指した。


「クフフ。《掌遊び:五指イツユビ》セイハァ!」


ま、そう簡単にはいかないよな。


俺が放った斬撃はデルキウスの魔力を込めた手刀によって撃ち落される。いや、あれは壊されたのか?だとすれば、相当な破壊力だ。

俺は魔法が使えない代わりに、こういった遠距離に届く攻撃には、必要以上に魔力を込める。それだけで段違いの威力が出るのだから、やらない意味もない。魔法使いのように広範囲に攻撃が仕掛けられないという欠点はあるが、十分な程の成果をこれまで出してきた。


それが今、ただの手刀で破壊されたのだから、俺にとってはかなりの衝撃だ。もちろん他の面々にもどれほどのことかは理解できるだろうが、俺ほどではないはずだ。


「アルカナ!その《掌遊び》って、ただの高威力の魔拳ってわけじゃないみたい!あたしたちの魔法も全部弾かれてしまったの!」


ソフィアが大きな声で教えてくれる。どうやら、俺が精神世界で爆食している間に何かあったらしい。


「クフフフ。そちらの人魚族のお嬢さんはわかっているみたいだね。そうだよ。先ほど、アルカナ君も教えてくれたから、少しだけ教えてあげる。」


デルキウスは手を振りながら答える。その手をグー、チョキ、パーと変えながら、魔力を込めて見せた。


「これらには一つずつ効果があってね。零指ゼロユビは単純な破壊力、二指フタユビは防御すらも貫くほどの圧倒的な貫通力、五指イツユビは魔力を吸収し魔術を破壊する完璧な対魔力性能。場合によって使い分けられる。クハハハ、良いスキルだろ?」

「そんなことを教えてしまっていいのか?俺たちはそれに対処できるぞ?」


デルキウスは説明して満足そうだ。しかし、俺はそれにどう反応すればいいか困惑する。ソフィアも同様で、きっと俺と同じことを思っているのだろう。

なぜなら、これが真実である保証はないからだ。どう考えても敵に情報を与える意味はないからだ。


「いいのさ。クフフ。だって、これを知ったからって、どうにもできない、だろ!」

「うわぁっと。」

ドゴォオ

「キャァ。」


デルキウスは変え続けていた手を動かしながら俺に向けて振り下ろす。瞬時に近づかれたことには気が付けたが、どの指かはわからなかった。振り下ろした瞬間から手を変える速度が一気に早くなったのだ。


それでも辛うじて避けると、握りられた拳が地面へと当たってその破片が俺の後ろにいたソフィアまで届く。どうやらソフィアは話すために少しだけ近づいていたようで、メアリーよりも前に来ていたらしい。


「ほらね?こうすればさすがの君でも見ることができないだろう。僕はこれらの変化は自由自在。それにこれがすべてというわけでもない。少しくらいサービスしても、面白いじゃないか。ハハハハ。」

「チッ」


そう言われて、俺はつい舌打ちしてしまった。確かに、これだけがすべてじゃないだろうし、今のだけでも相当に厄介だからだ。


もはや、あれを出すしかないかもしれないな。試運転はしたけど、どこまで俺が持ちこたえられるかが不安だ。

大小鬼面は成功したのだから大丈夫と言えなくもないが、それに加えてもう一つ試みがあるので、そちらが不安なのである。


「何を悩んでいるかわからないけど、もう一回行くよ?ホラ。」


デルキウスがこちらの様子に気が付いて追撃を仕掛けてくる。俺はそれを避けてこちらからも仕掛けに動いた。

大斧を下からすくい上げるように振り上げて、デルキウスの腕を落としにかかる。降られた腕はどうやら二本の指が出ているので、貫こうとしたようだ。


イシュガルはデルキウスの腕に当たる直前に奴が腕を引いたので、当たることなく空を切る。しかし、そこで終わらせるほど、俺は間抜けではない。このタイミングで斧モードである意味はあるのだ。


「今だ!『解放』食らえ、デルキウスゥウウウウ!!!!」


俺の鍵言キーワードで、イシュガルの両刃の鎌が持ち上がり、斧モードから鎌モードへと移行する。確実にデルキウスの腕を両断する軌道で、それは迫る。


さすがにやばいと感じたデルキウスは即座に何かを思いついたのか、大きな声を発する。その声には魔力が込められ、その魔力がデルキウスの体を包んだ。


「『だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ!』」


その言葉は俺の耳にも馴染みがある子供のころによく見た遊びで使われる言葉だった。


その言葉が含んだ魔力がデルキウスの体を包むと、鎌モードに移行するために開いた刃は、両断するどころか腕に弾かれ、柄の方が押される形となった。


「クフフフ。はぁ、危ない危ない。まさか、その斧が開くとはね。びっくりしたよ。でも僕には届かなかった。ざぁんねん。クハハハハ。」


悦に浸るかのようなデルキウスの言葉はどこか馬鹿にしたようだったが、俺はすでに何をしたかの分析に入っていた。

そのからくりはわからずとも、法則はすぐに理解した。どうしてそうなるのかはわからないが、何がデルキウスの武器なのかはわかる。


「そうか。そういえば、お前は“遊び”の神だったな。この世界でその言葉を聞くとは思わなかったが、なるほど、じゃあ、あれは“じゃんけん”か。」

「わかっちゃった?せいかぁい!クフフ。大昔に僕がこの世界に連れてきちゃった男の子に教わったのさ。彼はずいぶん面白い性格でね。

まぁ、普通に考えれば破綻者ってことなんだろうけど、自分が面白いと感じることに猪突猛進ないい子だったんだ。ちょっとベーに似ているかな?彼にはいろんな遊びを教わったんだ。

『だるまさんがころんだ』もその一つさ。」


そうか。そういうことか。遊びの神デルキウスが使う技やスキルはどうも、すべて子供の遊びに由来するようだな。

指の数が零から二に飛んだことが疑問だったんだよな。そういうことなら納得だ。


今の効果から考えれば、『だるまさんがころんだ』ってのはおそらく防御系。推測するなら、“鬼と向かい合っている時は止まらなくてはいけない”という『だるまさんがころんだ』というルールから、“敵と向かい合っている時の防御力を上げる”か“敵と向かい合っている時の攻撃を無効化する”ってところかもしれない。


「クフフ。どうだい?異世界の遊びって面白いだろう?」


デルキウスは無表情だったのに余裕を取り戻したのか笑顔を取り戻した。俺はそんなデルキウスの様子に焦りながら、突破の手段を考える。


これは、マジで使うしかなさそうだ。さて、どれだけの時間を使うことができるかな?

























戦いは続くでしょう


戦闘は間を空けないように明日も投稿します。


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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