第205話 登場、海龍王
毎日、何かを書くようにしているんですが、そのせいか、小説の一話目みたいなのが量産されています。
海龍王を出迎えるために、この場にいる村長、俺、ソフィア、メアリーがひざをつく。使者は波打ち際まで行ってこちらを振り返り海龍王の到着を待つ。
本来であれば、最高神の部下として同格である俺は跪く必要はないんだけど、今は俺が骨の王であると知られないように変装しているので、村長に倣うのだ。
「ふむ、しかし、少々困ったことになったの。」
村長は距離が開いてこちらの話声は使者に届かないと考えたのか、ため息をついたのが分からないようにしつつも愚痴をこぼす。
「せっかく敵の正体に見当がついておったというに、海龍王様の登場でそれも水の泡じゃな。あそこまでの神気を感じさせるのは、ただの〔擬態〕じゃ不可能じゃ。
今の今までは本物の海龍王レヴァ様から離反した軟体系の氏族の族長が使者殿や海龍王様に〔擬態〕していると予想しておった。しかし、あれは少なくとも儂と同格、いや、それ以上かもしれん。こりゃ、まずいのぅ。」
村長も俺と同様の想像をしていたみたいで、海底で消えた軟体系魚人の〔擬態〕によるなりすましを疑っていたらしい。前は否定されたが、さすがに可能性は捨てていなかったようだ。
ガルガンドからの手紙の内容は村長にも伝えてあるため、そのことも考慮した結果だと思う。
「村長モソウ考エテイタカ。実ハ俺モソウ考エテイタ。タダ、ソレニモ懸念ハアッタ。神気ヲ再現デキルホドノ〔擬態〕ノ上手ナ者ガ二人以上モイルノカ、トイウコトダ。」
俺は村長に懸念していたことを伝える。ガルガンドに聞いたところ、軟体魚人の族長は〔擬態〕が非常に得意で、対象の隠れた特性までそっくりそのままに〔擬態〕できるらしい。
それほどの実力者であれば、神気の再現は可能だと考えたのだが、だとしても海龍王と使者の二人を同時に〔擬態〕することはできないはずだ。
「たしかにのぅ。一人で二役は物理的に不可能じゃな。となれば、次席でもおるかもしれん。族長に家族は?」
村長の質問にソフィアが答える。しかし、その答えはこちらが期待した答えではなかった。
「ううん。あの族長はまだ若かったし、奥さんはいたけど子供はいないわ。両親も亡くなっているから、並ぶほどの〔擬態〕の名手はいないはず。若くして族長になったのはライバルもいないからね。」
「むむぅ、そうか。家族という線はないのじゃな。であれば、ライバルと思ったが、それも違うと。さて、いよいよわからんな。」
村長は跪いたまま頭を抱える。俺もそうしたい気分だ。しかし、そうも言ってられないので、脳みそをフル稼働する。まぁ、頭の中は空っぽだけどな。
うーん、おそらく、使者は軟体魚人の族長で間違いないだろう。その強さは測れないが、それでもここにいるメンバーで抑えられないほどじゃないと思う。
問題は海龍王だ。ガルガンドが言うには帰還の報はなかったようだし、本人であるとは思えないが、〔擬態〕などの成りすます手段が思いつかない。
もはや、本人か神様のいたずらって言われた方が納得するほどの存在感なので、ここまで焦っているわけだ。
どうにかして突破口を思いつかないかと考えていて、何かに引っかかる。ふぅむ。可能性としては0ではないか。
俺は自分の中でほとんど確定と言えるレベルで固まった。それを村長に話す。海龍王が浜まで到着するのに後10分ってくらいだと思う。その間に全部説明するほどの時間はない。
村長は俺の話を聞いて半信半疑ながらも、それに同意した。そうするに足るほどの存在感を海龍王は放っているのだ。
「そう考えれば、少なくとも辻褄は会うか。あり得ないとは言えんのぅ。襲撃の際の儂は直接会ったことはないが、悪なる神とは厄介な者どもよ。」
「ソレニハ同意スルガ、神トイウノガソウイウ者ナノダト思イモスルゾ。」
俺と村長は二人で納得して、とりあえず相手の想定が終わる。これでよほどの事態でなければ対策を即座に建てることもできよう。しかし、それでも不安要素はあるので気を引き締める。
そんな俺たちをよそに、海龍王は浜までその巨体のまま近づいてくる。遠めに見えただけではあるが、明らかに体が大きすぎて浅瀬である浜までの海域では体がどんどんと水面から出始めた。
その姿は、これぞまさしく海の龍、といった容姿で、長大な体に青色の鱗を持った巨龍であった。東洋龍と言えばわかりやすいだろうか。
「フム。」
「おぉ、あの姿はまさしく海龍王様。久しぶりに拝謁することになるのぅ。」
村長は久しぶりであるためか、偽物であると思っていても感動はするようだ。同様にソフィアやメアリーもそれぞれ反応を見せる。
「レヴァ様の体、やっぱり大きいわね。というか、場所的にどうするつもりかしら。」
「怪物...。」
ソフィアは久しぶりに会う友人の姿を目にしたかのように。メアリーは神に対して不敬かもしれないが、見たままの感想を。
俺はと言えば、その姿を見ても特に何も思わなかった。これが本人であるとすれば、感動の一つもしようが、それが偽物である可能性が高いとすれば、湧き上がるものなどどこにもない。
本来だったら、王獅子に感じたような神々しさを感じて当たり前のはずなのに、どこかそれも陰って見える。
それにソフィアが言うように、このままでは底に体をこすりながら上陸することになるだろうし、どうするつもりなのだろうか。
別にどうなってもいいが、近海には竜宮氏族の戦士が待機しているので、そちらに万が一にも被害が出ることのないようにこちらを向いて立っている使者に聞いてみる。
どうせ、海龍王がこちらまで来るのにもう少しだけ時間があるので、立ち上がって近づいてだ。
「ナァ、使者殿。海龍王サマハコノ浜ニドウヤッテ上ガルツモリダ?アノ巨体デハ容易ニ浜ヘハ上ガレヌダロウ。」
「チッ、身の程を弁えろと忠告したはずなんですがねぇ。」
使者は不快そうに表情をゆがめるとため息をつきつつも答える。俺が一人で来たことで、答えるまで帰らないと思ったのかもしれない。
「まぁ、いいでしょう。これ以上近づかれても虫唾が走りますし、答えてやります。」
「アリガトウゴザイマス。」
「まず、海龍王様もバカではありません。そのくらいのことは考えておられます。つまりは手段があるということです。
おそらく、あの近海を泳ぐ魔物を足代わりにこちらまで来るでしょう。海中には数えきれないほどの魔物が存在しますから。」
使者はそう言って海の方へと振り返り、海龍王に向かって指す。
「もうそろそろでしょう、あのあたりを見ていないさい。」
俺は言われるがままにその指の先を凝視して待機する。この使者にどういう意図があるかはわからないが、特に警戒もなく従う。今日、ここまで観察した限りでは、この使者なら、余裕で対処ができそうだからだ。
そうして凝視していると、一分もかからないうちに、海龍王が光だし、その光がゆっくりと収縮していく。どこかで見たような光景に頭を悩ますと、使者の方を向いて答えを促す。
せっかくここに答えを知る人物がいるのにわざわざ悩む必要はない。
「なんですか、その目は?ヒントは差し上げたのです。自分で考えるべきでしょう!ククク、ゴブリンには難しいでしょうがね?」
使者はどこか楽しそうにこちらを見てそう言った。どうやら、教えてくれるつもりはなさそうだ。と言っても俺もすぐには思い出せそうもない。そう思ったところで、ソフィアが声を出した。
その声は結構大きな声であったためか、この場にいる者の視線を集める。突然通どうしたのだろうか。
「あっ!そっか!」
「ソフィア、ドウシタ?」
「あれって、そういうことでしょう?へぇ、海龍王様はあんな感じなのね。」
ソフィアは一人で納得したように一人でうんうんと頷いている。使者はそんなソフィアの様子に嬉しそうに質問する。
「答えが分かったんですね、ソフィアさん?」
「ええ、使者様。あれって、〔人化〕した時の光でしょ?〔人化〕すれば、この浜まで来ても平気だし。」
ソフィアがそう言ったことで俺も理解した。確かに光に包まれて体が縮小していくのは〔人化〕する時のと同じだ。
使者はソフィアの答えに満足そうに頷いて、されど少しだけ訂正した。どうも僅かに違うようだ。
「お見事です。しかし、少々違いまして、あれは〔龍人化〕というのですよ。龍種の魔物も会得することがあるスキルの源流で、海龍王という存在の権能として備わっている能力です。」
「へぇ。」
「ナルホド。権能ナノカ。」
権能とは大きく出たな。魔物ではなく、真なる神獣であるが故に持つ能力、権能とは本当に神獣であるかのような物言いだな。
権能を持つのは、神か真なる神獣のどちらかしかない。それをここでいうということはよほどの自信があるのだろう。
ミザネ村長も権能と言われて表情には出さずとも驚いているみたいだ。まあ、神獣の権能と言えば、現人神の権能とは天と地の差があると前に言っていたしな。
〔擬態〕をしているとして、権能まで使えるとは思えないが、万が一があるもんな。
さて、俺は訳知り顔で頷いてみたのだが、その態度が使者はお気に召さなかったらしい。この使者はどうも人間の見た目から乖離しすぎている魔物は嫌悪する質のようだな。
「ゴブリン風情が権能の何たるかなどわからないでしょう!?」
「ン?ソ、ソウカ。スマナイナ。」
「ほほほ。この子には儂が権能について説明したことがあったのじゃ。それを覚えていたのじゃろう。」
「フンッ!ゴブリンのくせに記憶力があるのですね!」
村長が俺をフォローしてくれたことで使者はその怒気を少しだけ緩めた。こいつ、軽度の人間至上主義なのかもな。
あまりの勢いに俺も少しだけ圧されてしまったが、何となく滑稽にも見えた。
そうこうしているうちに、海龍王が小さくなり光が収まると肉眼では見えなくなった。どれほど遠くだったかわかるってもんだ。
そしてそれから少しして、海龍王がいた付近の海中から魔物が一体現れる。どこかで見た魔物だと思えば、あれはフライングシャークか?
海龍王は海中から飛び出したフライングシャークの背びれに捕まり、そのまま空を進む。まさかの登場方法に俺や村長、メアリーは驚き、ソフィアは目を輝かせている。どうやら自分もやりたいと思っていそうだ。
「フライングシャークダナ。」
「うむ、あのような使い方をするとはの。驚いた。」
「驚愕...。」
「なにあれ!あたしもやりたい!」
海龍王を運ぶフライングシャークはぐんぐん進む。短いながらに空の旅だけあってその速度はとても速い。
「海龍王様がご降臨されます。」
使者の言葉とともに俺たちは最初のように姿勢を正し、待機する。あまりに来ないものだから、姿勢を崩してしまっていたのは失敗だった。まさか飛んでくるとは思わんだろう。
俺たちがそろって跪いたところで、使者もこちらを向いて敬礼をする。配下という設定であればあの程度か。
そこから30秒ほどで、浜にザっという砂を踏みしめる音がし、さらに何かが飛んで来る音が近づいてくる。きっと先に海龍王が飛び降りて、フライングシャークがこちらへと来ているんだろう。
「楽にせよ。」
威圧感のある声で、姿勢を楽にしろと指示される。俺たちはその声に従い立ち上がると、村長が挨拶をする。
「お久しぶりにございます。海龍王様。不躾でございますが、あちらのフライングシャークはどうなされるつもりで?」
「久しいな。ミザネ。あれは帰りにもう一度使う。あのままにしておくがいい。」
「ハハッ」
村長は海龍王の指示に大げさに見えるほど深くうなづき、フライングシャークを放置することにしたらしい。
そのタイミングで、フライングシャークは浜近くの海面に着水した。そこで待たせるようだ。
「では、レヴァ様もご到着されたところで、本日の目的に移りましょうか。いえ、その前に供の方々のご紹介からですかね。」
使者がそう言ったので、村長が再び跪いて海龍王に俺たちの紹介を始める。俺たちもそれに合わせて跪く。
「それでは、僭越ながら儂の方から紹介させていただきます。」
さて、これから、どういう展開になるかね。
紹介されましょう
拙作を読んでいただきありがとうございます.
評価ブックマーク、感想、誤字報告等、励みになりますのでお待ちしております。




