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第203話 浜に移動

夜中に爆音を鳴らしている車が森を挟んで逆側にいることがあるんですが、近くにいる方々はうるさいと思わないんですかね。


海龍王の使者が、先触れとしてミザネ村長の社へと来てしまったので、俺たちは渋々であるが、されど渋々であると感づかれないように使者を伴って移動する。


使者は歩いている間は村長と話すようで、突然現れた、ゴブリンには特に興味はないらしい。俺の方を一瞬だけ見てすぐに視線をミザネ村長に戻したからな。


村長が接待をしている間に、俺とメアリー、ソフィアは今後の話をしておく。もちろん聞かれないようにする工夫はして。


「ねぇ、アルカナ?いきなりあの使者さんが来たけど、大丈夫なの?」

「緊急事態...?」


二人はこちらが動く前に使者が来たので少々不安に思っているみたいだ。しかし、俺はそこまで焦る事態ではないと、使者の言葉から理解したので、それを二人に伝える。その前に魔道具を展開しておくか。


「チョット待ッテナ。ヨット。コレデ向コウニコッチノ声ハ届カナイ。ソレデ、今ノ状況ダガ、別ニ緊急事態デモ何デモナイ。」

「どういうこと?」

「マァ、コチラニ迎エニ来タノハ、少々驚イタガ、ソレダケデ済ンダ。」


使者がこちらへと来たのは予定にない出来事ではあったが、それでも特に予定としては変更が出ない範囲だ。

当事者であるメアリーには気が付いてもらいたかったが、彼女も意外に衝撃が強かったのかもしれないな。動じないように見えても中身は女の子だ。

ソフィアは別のところには気が付いているはずだから、どうにか海中の竜宮氏族に連絡を取ってもらいたいな。


「メアリーガ支配下ニオイタノハ、当初ノ予定通りニ東ノ湾ダロ?ソノ道程ニハ浜モアル。ダカラ、少シ歩ク距離ガ短クナッタ程度ダ。」

「ふぅん。」

「安心...。」


これで、メアリーが不安に思うことはないことが分かったかな。なら、あとはソフィアに頼みごとをしたい。


「ソフィア、オ前ニハ頼ミタイコトガアル。」

「え?何を?」


あれ?ソフィアはあの使者の場所変更に伴ってやらなきゃいけないことに気が付いていないのか。

まあ、あとは本番だけって考えてたら、しょうがないか。


「竜宮氏族ハ当初ノ予定通リニ東ノ湾ニ待機シテモラッテイルダロ?ソレヲ移動シテ貰ワナイト。」

「あっ!そっか。みんなに連絡を取らないとね。」


ソフィアはそう言って魔力を飛ばす。あら、これは少しまずいな。魔力に気が付かれるわけにはいかない。俺は村長に合図を出して使者を引き付けてもらう。

しかし、村長がクドイくらいに話しかけていることに気が付かないもんかね。使者がどういう立ち位置かわからないが、残念な奴だ。


「ん~、あっ、パパ?うん、そう。えっとねぇ、なんだか使者に来た奴の都合で、場所が変更になっちゃった。急いで移動してくれる?え?どこにって?ちょっと待って。

アルカナ!どこに移動すればいい?」


まるで電話のような会話だが、これも〔人魚魔法〕の為せる業ということのようだ。どうやらさっきの話を聞いていなかったのんきな人魚姫に俺は変更になった場所を告げる。


「村ノ正面ニ位置スル浜ダ。今、ガルガンド達ガイル場所カラ、西ニ回リ込ンデモラエレバ良イ。」

「わかったわ!」

「ア!デキルナラ真ン中ヲ開ケテ、待機シテホシイト伝エテクレ。」


俺はソフィアに要望を伝えてもらうべく付け加える。海龍王(?)の登場するための道がないと困るし、待機しているのは隠しておきたい。

そのことを伝えると、案の定ガルガンドは不審に思ったようで、ソフィアが何度も確認をされる。


「あ、パパ?村正面の浜だって!うん、そう。そこ。え?浅瀬過ぎ?知らないわよ。だってそこだって言ったらしいもの。あとね、浜に到着したら左右に分かれるように待機してほしいんだって。」


そうなのだ。海龍王とはもちろん、海龍の王なので、とても大きい。具体的にはわからないが、それは間違いないだろう。村長も浅瀬の浜に現れると聞いておかしいと思ったみたいだしな。

村長と同じかそれ以上に海龍王のことを知っている竜宮氏族の長であるガルガンドがそれを知らないわけもない。

仮に〔人化〕してここまで来るにしても、〔人化〕して泳いでくるのはさすがに間抜けすぎる。聞いた話じゃ、海龍王は飛行能力はないらしいし、泳いでくるはずだ。

ということで、ソフィアはガルガンドに質問攻めにされたのだろうが、娘として父に強く出れるのか、全く意に介さない。すげぇな。


「とにかく!お願いね!あたしは確かに伝えたから!」


ソフィアが話し終わって魔法を終わらせる。どうやら最後まで父は娘に弱かったようだ。さて、これで、向こうにつくまでにやっておきたいことは終わった。

ちょろっと話したところで、魔道具を切っておくか。変なところで気づかれるのも面倒だしな。


「アリガトウ。コレデ浜ニ着クマデニヤッテオキタイコトハ出来タ。アトハ概ネ予定通リダ。魔道具ハ切ルゾ。シュツェンモ二人ヲ頼ム。」

「了解...。」

「はーい。でも、あの使者、前の時より神気が多い気がするわね。」

「ぎゅい。」


魔道具を切る前にソフィアにそう言われて俺も確認する。確認したところ、確かに少しだけ多い。理由はわからないな。

そもそも、神気の増える理由がわからないので、確かなことは言えないが、前に来た使者と別人ってことはないだろう。だって、最初にソフィアと会ったことがあるみたいなことを言っていたからな。


ちなみに、前の時はダメだった使者の神気も、今日に間に合うように村長がメアリーとキョウカの【加護】を強化して神気それから守っているぞ。

そういや、前の時より少し身長が小さい気もするな。前はトロール並みに大きかったと思うのだが、どういうことだろう?


いろいろとわからないことはあるが、考えてもわからないことばかりなので、ここでは特別に思考に耽ることはしない。


「ソウダナ。マァ、確認デキナイカラ今ハイイ。魔道具ヲ切ッタ。コレ以降ハ不用意ナ発言ハ控エヨウ。」


そこからの道程は村長と使者が話しているのに聞き耳を立てつつ、あまり近づかないようについていく。

というより、俺が使者の方に近づくと露骨ではないが距離を空けられる。使者も突然現れたゴブリンに近づかれるのを良しとしないのだろうか。


そんなことを考えつつも歩いていると、村長と使者の会話が今日のメンバーに移る。どうやら、子供や低身長の俺のような魔物が謁見の際の供に選ばれたことが気になるみたいだ。


「ミザネ殿、疑問に思ったのですがお聞きしてもよろしいかな?」

「ええ、使者殿。なにかありましたかな?」

「それでは。失礼ながら、本日の海龍王様との謁見に際して、ミザネ殿の供がこの方々である理由をお聞きしても?」


丁寧な言い方ではあるが、特に意味のある質問ではなさそうだ。単純に気になったってところか。

それに対して村長は用意してあった返答をする。これは俺と村長、キョウカで質疑応答集を作ったので、予想の範囲内だった。

俺や村長が予想している通りなら、子供(のような見た目)が供であっても拒否されることはなく、油断もさせられるだろうと考えたのだ。

しかし、正直にそんなことを言うわけもなく、表向きの理由を告げる。その前に軽く聞き返しておくようだ。


「ふむ、何か問題あったかのう?」

「いえいえ。これは単純な私の疑問ですよ。何分、初めて使者となりましたので、気になってしまったのです。」


使者は村長が意外にもそっけなく返答したのに、少々焦ったのか、少し早口になりつつ弁明する。

まあ、村長が軽くジャブを撃ったってところなんだけど、意外に聞くのはこういうのに慣れていないってことかもな。


「そうですか。特に理由はないですじゃ。ですが、まあ、戦闘力が無い者なのは察していただきたいものですなぁ。ライノ種は彼女らが疲れた時の足代わりですな。」

「なるほど、戦闘力がない、ですか。そういうことでしたら特にいうことはありませんね。いや、変な詮索をしてしまったようで申し訳ない。」


村長の言葉に、使者が俺たち三人に少しの間、視線を向けたので、俺とシュツェンがメアリーとソフィアを隠すように前に出る。あくまで自然に見えるように。俺の思惑は成功して、俺が見られている間に、いつだったか感じたことのある不快な感覚を覚えた。その感覚はおそらくステータスを覗かれたのだと思う。シュツェンも反応がないので回避できたようだ。

ルグラでは特に感じることはできなかった感覚だが、王都ベルフォリアで経験した〔鑑定〕の感覚とよく似ている。おそらく悪意や敵意によって不快な感覚になるんだと思う。


まあ、ソフィアやメアリーにはステータスを誤魔化すことはできないので、俺が変わりに受けた。俺であれば、覗かれても見られて困る情報はない。すでに〔骨の王〕に統合されて久しいが、〔偽装〕や〔隠蔽〕というスキルがあるおかげでいくらでも誤魔化せる。

しかも、〔骨の王〕が【伝説級】であるからか、直属の上司であるオーリィンと同格以上でなければ覗いたところで誤魔化し切れるくらいの破格の性能だ。

世界に3柱って、それだけですごいことだよな。むしろ覗くことができるって方がすごいかもな。


ちなみに、今の俺のステータスはただのゴブリンと同じ程度の弱さで、参考はゴブリン族の細工師の青年だ。どの数値も4桁で多い方、というほどに貧弱だ。器用さってのはステータスに依存しないのをこの島で知ったよ。


「しかし、使者殿も大変ですなぁ。わざわざ三度もこんな辺境の島まで使者として赴かねばならんとは。

海龍王様も使者殿ほどの方に行かせないで、ほかの方に頼めばいいでしょうにのう。」


村長は世間話のようにそんなことを言い出したが、これも作戦の内である。ソフィアに俺が聞いた情報から考えた作戦だ。

ソフィアが言うには海龍王の部下は海龍王を慕っており、悪口は許さないし、自らが言うこともないらしい。軽口程度であれば許されることもあるみたいだけど。


ただ、今の村長の言い方は、間違いなく許されないとソフィアは評価した。ソフィア曰く、「レヴァ様の配下ってぇ、みんな海龍王大好き好きっ子だからぁ、そんなこと本心で言ったら即刻死刑?みたいな?本心でなくてもぉ、捕縛くらいはされるでしょうねぇ。」とのことだ。語尾が伸びているのは、寝ぼけていただけなので気にするな。


つまり、村長は使者の反応を見るために罠を仕掛けたってことだ。これで使者がどういう対応に出るかね。


使者は村長の言葉を聞いて、自らも口を開く。


「そうですよねぇ。私以外にも適任はいると思います。まあ、これも仕事ですし、ね?ああ、ここでのことは秘密ですよ。」


使者は朗らかに笑いながら(・・・・・・・・・)そう言った。この場で、そう言った事実に驚いたのは、使者以外の全員である。ソフィアに至っては開いた口が塞がらないのか、それを必死に隠そうとするメアリーに口元を抑えられている。


俺は使者にバレないように村長に視線を送って、それに気が付いた村長はうなづいて話を変える。


これで、もう、本当に事前に確認することはなくなった。あとは、海龍王が来るのを待つだけだ。


俺たちは、海龍王が来るという村の前方に位置する浜へと到着した。


















待ちましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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