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第201話 集合

隠れ島編も終盤に近くなってきました。今後ともお付き合いください。


珍しくも俺がメアリーやソフィアに食事をふるまってから数日。今日は、海龍王レヴァが島へと来訪する当日である。

俺とメアリー、ソフィアはあれから特に何かをするでもなく、いつも通りに過ごしていた。メアリーは仕事にして生きがいでもある家事、俺とソフィアは主に狩りだ。

メアリーも誘ってはいたんだけど、彼女自身が広げた支配領域の管理をする必要があるとかで、家を離れないようにしていた。


ソフィアはあの日から、めきめきと地上での戦い方を学び、今では狩人として文句ないほどに成長した。肉を確保する戦い方が身についたってところだ。


「おはよぉ~」

「...ふわぁ...。」


二人はあくびをしながらリビングへとでてくると、メアリーはすぐに朝食の準備に取り掛かり、ソフィアは腹回りにある浮遊するための泡を消してソファーに沈み込む。

俺は料理をふるまった日同様に、朝早くに起きてマスクの可能性を突き詰めていたので、広げていた魔物素材を片付けて、軽くあいさつした後に外に出てシュツェンに飯を与えるのと、今日のことを伝えておく。


シュツェンも今日は連れていき、メアリーの護衛をさせるつもりだ。支配領域にあってもメアリー自身が危険なのは間違いないし、俺やミザネ村長でも他のことに手いっぱいになれば守ってやれないかもしれないからな。


「おはよう。ちょっと片付けるわ。...よし。それじゃ、シュツェンに飯を出してくるよ。今のうちにソフィアは顔でも洗ってしゃきっとしておけよ。今日は予測できないからな。」

「ふぁ~い。メア~、お水ちょうだい~。」


ソフィアがメアリーを追って台所に向かったのを見送って俺は外に出る。〔骨壺〕から、メアリーが作り置きしてくれたシュツェンの食事を取り出して大きな皿代わりのタライに入れて抱える。シュツェンはどんどん体が大きくなっているので、食事量もどんどん増えているのだ。


「おーい、シュツェン~、飯だぞ~。」

「ぎゅい~。」


俺が声をかけて厩舎の中に入ると、シュツェンが俺の方へと立ち上がって歩いてくる。従魔契約があるからか、シュツェンの考えていることはある程度把握できている。しかし、今は寝起きなのか、ぼんやりとしてはっきりしない。


「ほれ、しっかりと起きるんだ。お前には今日もしっかりと働いてもらう必要があるからな。飯を食う前に水を被るか?」

「ぎゅお?ぎゅい。」


シュツェンが承諾したのでタライを少し離れた場所において、〔骨壺〕から別のアイテムを取り出す。今度は水を出す魔道具だ。これも思えば長いこと使っているものである。

ダンジョンを出て最初にあった女の子を追いかけていた盗賊団が所有していた魔道具で、魔力を込めるタイプの半永久的に使えるタイプのお高いやつだ。


魔力を込めて生成された水を頭の上からシュツェンにかけてやる。シュツェンはそれを受けると気持ち良さそうに目をつむって受ける。


「ぎゅい~♪」

「気持ち良いか。目も覚めただろう?そーか、そーか。ほら、次は飯だ。って、うわっ!首を振るなって。ハハハ。」


シュツェンは水を飛ばそうと体を震わせる。水を蓄えられるほど毛がふさふさというわけではないので、大きな被害はないが、それでも服は多少濡れることになった。

この島では特にこれでも困ることはないので、そのままだけど、風邪をひくようなやつだったらそうもいかなかっただろうな、とは思う。


笑ってしまったが、俺以外にこういうことをするのはよくないので、しっかりと注意してから、次の話をする。もちろんシュツェンの飯を食べるのは邪魔せずに、食べながら聞いてもらう。

シュツェンはすでに食事を開始している。


「ぎゅい。」ムシャ

「こら。俺だからいいけど、メアリーにはこういうことするなよ?わかってるって?俺だから?ククッ、まあいいよ。釈然とはしないけどな。」


仲がいいと思えば、怒りはない。それだけシュツェンも俺に信頼をしてくれているということだからな。


「それで、今日の話なんだけどな。ああ、飯は食べ続けてくれていい。聞いていてくれればな。話していいか?」

「ぎゅい。」ムシャムシャ


返事をしてから食事に戻ったシュツェンは俺の話に耳をぴくぴくさせる。聞いているというアピールなんだろうが、わかりやすくて助かる。


「さて、今日は以前から話していた海龍王がこの島へとくる。もちろん、怪しい使者もだけどな。

その場に出て対応するのは俺とミザネ村長、ソフィアとメアリーだ。」

「ぎゅい!?」


メアリーの名前を出したとたんにシュツェンは食べるのをやめてこちらを凝視する。その思考は、なぜメアリーが!?というのに終始するんだろう。

まあ、このことは初めて話したし、しょうがないか。メアリーには世話になっている自覚があるのか、危険ではないか?としきりに質問を飛ばしてくる。


「まあ、そうあわてるな。俺だって危険だとは思っているよ。だけどな。あの場で相手を油断させつつも戦える人物ってのはメアリーくらいしかいないんだよ。

他の村人はって?他はみんな見るからに強い。サキュバスクイーンのマリエルやオークファーマー兄弟、蜘蛛人族のヤンなんかはわかるやつには分かる。候補すらいない状態だったんだ。」

「ぎゅ...。」


俺がそう説明すると、しぶしぶといった感じでシュツェンが納得する。シュツェンも俺と一緒に村の中で物々交換したり、メアリーと散歩に行ったりと村人の強さは把握しているはずなのでな。


「ということで、今日のお前の役割は、メアリーとソフィアの護衛だ。」

「ぎゅい!」


シュツェンは俺の言葉にすぐに機嫌を取り戻した。まあ、ソフィアも付けたのはまだまだ彼女も強い存在とは言えないからだ。あくまで自衛は出来るってくらいだな。


「基本的に彼女たちは魔法での遠距離攻撃が主体の戦闘スタイルだ。魔法を準備する時間を稼ぐためにも壁役がいる。それがお前だ。できるな?」

「ぎゅい!ぎゅおー!」


シュツェンは俺に当たり前だと鳴く。いつの間にか食事を止めてこちらの話に集中していた。

とはいえ、海龍王が来るまでに時間は少しだけある。時間まではゆっくりしていてもらった方がいいな。


「それじゃ、頼んだぞ。時間はあるから、ゆっくりしてくれ。」


食事に戻るように促すと、それに従って食事に戻ったことを確認して俺は家へと戻る。従魔の飯を用意した後は、俺の飯だ。メアリーが用意してくれているだろう。


部屋に戻ると、ソフィアは顔を洗ってすっきりしたのか、ソファーに座りながら本を読んでいる。


「目が覚めたか。メアリーは?」

「うん。メアはまだ朝食の準備しているわ。あたしが手伝おうとしたら、座っててって言われたから、本を読んでいるの。『ギルベルの冒険』よ!」


ソフィアはそう言って本をこちらに見えるように掲げた。その本は俺も読んだことがあるが、子供向けの冒険譚で、上中下巻からなる三部作だったはずだ。ソフィアが読んでいるのは下巻だな。


「この家にあったのか?」

「うん。上と中は昨日までに読んだからね。海底には本はないし、楽しいわ!」


海の中じゃ本は維持できないからな。楽しそうで何より。そう思っているとメアリーが台所から出てきて、食事を運ぶ。


「完成...。」

「あっ!メア!手伝うわ!」

「感謝...。」

「俺も!」


俺たちは手分けして食事を運ぶ。運び終えて食事中に一つだけ言っておく。


「今日はまずは村長のところに行ってから海龍王を待つことになる。二人にはシュツェンを護衛につけるから、安心してくれ。俺の相棒は頼れるやつだからさ。」


二人は俺の話に特に文句はないようで、すぐに了解と言ってくれる。それから俺たちは食事を終えてから、家を出ることにする。

とりあえず最初は、シュツェンは連れて行かずに村長の社だ。


***


村長の社へ行くと、そこにはすでに数人の村人がいた。物々交換で見たことがあるだけのものから交流のあるものまで、さまざまな種族がいるし、きっと今日のことに関係するのだろうが、半分以上は海龍王との謁見には参加しない。


「おはようさん。村長はいるか?」

「あっ!スケルトンさん!村長は社の中です。まずは謁見に参加するものだけで話をってことで。

村側の代表として、マリエルさんとトロの海さんもいます!」


俺が来たことに気づいたキョウカが、俺たちを社の中へと招き入れる。先に俺たちが中へと入り、あとにキョウカが続いた。キョウカも話をするそうだ。


「おお、アルカナ様。来てくれたか。」

「村長、おはよう。待たせたな。」

「いんや。気にするな。儂らは年寄りじゃて、朝早く起きてしまうものよ。」


村長はそう言うが、寿命という概念がほぼない村長たちには『年寄り』ってのは当てはまらないと思う。

そんな俺の内心に気づかない、ソフィアは能天気に「そうなのね!」と言っているが、メアリーはどちらかというとあっちよりなので苦笑している、ような気がする。


「スケルトンさん、今日は村長をよろしく頼みますね。妾はその場に行けないので、頼むことしかできないけど、よろしくね?」

「ワシも村の防衛にあたるのでな、そちらにはいけそうにない。今日は頼むぞい。」


マリエルとトロの海は謁見の間、村を守ることが決定しているため、直接海龍王に会うことはない。以前のようにアンデッドの襲撃があると困るのだ。村の防衛という点では二人は十分な戦力だからな。


俺はキョウカの方を見ると、キョウカは俺の視線に気づいてうなづく。頼んであったことはしっかりとこなしてくれているようだ。とりあえず、この場にいる者に一つ小細工をするか。


「任せてくれ。でも、一応、このペンダントを渡しておく。これは対になる物を持つ者が危険な場合に発光する魔道具だ。二つある。一つはそちらに渡しておく。トロの海、受け取ってくれ。」

「ワシか?そうピンチにはならんと思うがのう。」

「そういう者が持った方がピンチかどうかの指標になる。現にこちらは俺が持つことにするからな。首にかけてくれ。」


そう言ってトロの海に魔道具を渡し、バレないようにキョウカに視線をやった。トロの海がそれを首にかけてくれたことを確認して、俺も首にかける。


「さて、今日のことを少し話しておきたいんじゃが、大丈夫かのう?儂らと村側に分かれて行動することになるが、この場にいる者が責任者じゃ。各々頼むぞ。」


村長は俺たちを見まわしてから今日の話を始めた。












話し合いでしょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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