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第200話 一方その頃4

なんだか200話まであっという間でした。今回は例によって主人公以外の話です。最後に主人公側もありますが。どうぞ。


アルカナが外で働くメアリーとソフィアのための料理をしていた頃、隠れ島から遠く離れた場所にいくつかの人影が出現していた。


ソレは時間が増すごとに数が増えていき、最終的には人の形を取る。集まって形を成す姿は、女性の形である。

抜群のプロポーションであると分かるソレは、足取り重く動き出す。


カツンカツンとハイヒールの音が鳴り響くそこは、人が踏み入れることの無い未踏の島。人が踏み入れたことは無いはずなのに床は大理石もかくやというほどに輝いているようだ。


足音が止まると今度はその女のいら立った声が響く。


「あぁ~、本当にムカつくわぁ。せっかく苦労して誘導したのにぃ、結果は惨敗。あの女の守護する島だって言うから、襲撃に手を貸したのにぃ。

あの男ぉ、名前はアルカナ、だったかしらぁ。3度目は無いわぁ。」


女は怒りのままに足を踏み鳴らし、アルカナを恨みがましく呼ぶ。その様はまるで呪いでもかけているようだった。


そうして一人で怨嗟の声を上げている時、次の人物がやってくる。今度現れたのは男で、スーツに眼鏡という小奇麗な格好をしている。


男は女の荒れ様を見て、少々面倒そうな顔をしながらもその場を収めようと声を掛ける。


「ヘイヘイ、荒れてるな、君は。落ち着いてくれよ。ハハ。」


格好に反して軽い口調の男は女に近づいてまあまあと落ち着かせる。そして男の存在にようやく気が付いた女はそれを見てさらに激しく口調を荒げる。


「ウルサイ!だいたい!あたしがぁこんなことになってるのはぁ、あんたらのせいだってこと分かってるぅ?!」


女は荒ぶる口調でも間延びした特徴的な話し方は変わらない。


「分かってる。分かってる。ぼく等のせいなのは重々理解しているよ。フフフ。悪いとは思っているけどね。アレはしょうがなかったんだよ。彼だって、最初に言っていただろ?あそこで仕留める作戦ではないってさ。」


女の指摘に対しても男は冷静に返し、さらには女の問題点を指摘し返す。女はそれを突かれると痛いので、それ以上、文句は言えない。


「フフフフ。君だって、あの場でよろしくないことを口走ったみたいじゃないか。君があの女神と対立していることや、陰湿にその使徒を狙うのは自由だけど、僕らの作戦まで潰されちゃ敵わないよ。」

「ぐっ、それはごめんなさいねぇ。」


女が黙ったことで男も満足したようで、その場で話すことはなくなり、どこからか取り出したおもちゃで遊び始める。

それは所謂、けん玉のような物で、先が三本に分かれた枝に紐で括り付けた穴の開いた石を食めて遊ぶ玩具のようだ。


「ほっ、よっ、それっ。」


のんきに遊び始めた男に女の苛付きは増す。どうせ暇なら、世間話程度に自分が聞かされていないことを聞いておこうかと、遊んでいる男に質問することにしたようだ。


「ちょっとぉ、あの島への襲撃以外のこともぉ教えなさいよぉ。あたしだってぇ聞く権利はあるでしょぉ?」

「えー?君は興味ないんじゃなかったのぉ?そもそも、君の関係のある作戦は、ぼく等が解放した海王を誘導してあの船を襲わせることとあの島への大規模な襲撃だけだろ?

これ以上は聞いてもしょうがないって言ったのは君だしね。ハハハハ。今更面倒だよ。」


男は女の質問には答えるつもりが無いのか、それとも本当に面倒なだけなのか、自発的には教えてくれそうにはない。

女は少しだけ口調を強めて、説明を求める。


「良いから教えなさい!あたしはぁ聞く権利があるって言ってるの。話さないというならぁ、ここで死ぬぅ?」


さすがの男も女の気迫に押されてしまったようで、遊んでいた玩具を取り落として慌てて拾いながら答える。


「いやだな、そんなに怒んないでよ。クク。ちょっとした遊びじゃないか。まあいいや。教えてあげる。何が聞きたいの?」

「そもそも主催はぁ、あんたぁ?それともあいつぅ?」

「勿論、あいつだよ。僕は面白そうだから乗ったってだけ。ま、ぼくにも理由はあるけどね。フフ。」


そう言った男はどこか獰猛な目をしてどこかを見る。その視線は隠れ島の方角に向けられていた。


「僕のかわいい子をあれだけ痛めつけてくれたんだ。お礼は丁寧にしないとね?フフフ。」


小さく呟いた男の言葉は女には届かなかったが、その空気が一瞬だけ変わったのを感じさせた。


「相変わらず、根暗ねぇ。もう少し明るく生きたらどぉ?」

「え?そうかな?僕はこんなに明るく生きているじゃないか。ハハハ。」


男は言葉だけは笑っているが、表情は一切変わらず、真顔である。女に指摘されてようやく直る。


「まぁいいわぁ。それじゃあ、今後はどう動くつもりぃ?」

「近いうちにあちらに出向くことになっているし、そこで決着になるんじゃないかなぁ。」

「決着ぅ?どういうことぉ?」


女が聞き返す。男が答えようと口を開きかけたところで、どこかからピチャンという音がして二人はそちらを向く。

そこにいたのは大柄の魔物だった。


「あらぁ。ずいぶん遅い到着だわぁ。舐めてるのぉ?」

「フフフ、ようやくご到着か。遅かったじゃないか。」


まるでその魔物を待っていたかのように声を掛けた2人は、そう言って近づく。どうやら本当にその魔物を待っていたみたいだった。


「すまんのぅ。ワシも立場があるんじゃて。待たせてしもうた。」


その魔物は口調こそ年寄りの様だった。しかし、それを聞いた二人は不快感をあらわにする。


「ちょっとぉ。普段通りに話なさいよぉ。」

「ククク、それは笑えないかな?」


「すまんすまん。でもこれでずいぶん長いこと過ごしたし、癖になっちゃってね。」


魔物がそういうと魔物の姿が少しずつ変容していく。そして次に現れたのは成人男性?だった。その姿は普通の男性のようにも見えるが、頭が少しだけ違う。普通であれば髭が生えているところに、何かの足のような物が生えており、それがうねっている。

意思とは別にうごめいているようで、体に張り付いたり、色が変わったりとする。


「それで、なんの話をしてたんだい?」

「あなたたちが今後ぉ、どう動くつもりぃってことよぉ。」

「なるほどね。君が話したのかい?」

「まあ、主催が誰かってことくらいね。あとはまだだよ。」


男は魔物に聞かれて正直に話す。今この場にいる者の中では立場の上下は無く、対等な立場なので聞かれて困ることも無い。


「じゃあ、説明はボクがするけどいいかい?」

「ああ。フフフ、僕はそこらで遊んでいるよ。」


そう言って男は再びけん玉で遊び始める。今度は歩きながら穴に入れて遊ぶ様で、うろうろとし始めた。


「まず、今度、島へと訪問することになった。訪問するのはボクと遊びの。そしてボクと君で作った人形を複数ってところだね。

擬態人形はコレといくつかしかないけど、全部使ってしまうよ。」

「ふぅん。あたしがぁ手伝ったそれに入ってるのねぇ。でも、それじゃぁ、完全なパフォーマンスはできないでしょぉ?」


女は魔物に当然の疑問を伝える。女がしたのは島への襲撃。明らかにその目的は殲滅だった。だからこそ、深海で作ったアンデッドをすべて放出してまで襲撃したのだ。完全な力が出ない人形では、目的は達成できない。


しかし、魔物は何てことのないように自分の体を叩いて話す。


「大丈夫!コレのスキルは優秀でね。擬態するにも色々と出来るんだ。実在するもの以外にも擬態できるし、概念でも可能。もちろんモノ真似も完璧さ。

ワシだって村に溶け込んで生活しておるんだぞ?ちょいとまずいことがあるけどのぅ。」


途中で姿を変えた魔物は、年よりのような口調でそんなことを言う。すぐに戻って説明を続けるようだ。


「と、まあ、今のところ作戦は順調。君にしてもらったのでボクが村にいて不自然ではない状況を作る良いきっかけになったよ。ありがとね。」

「そのおかげでぇ、あたしはぁ当分憑依がぁ出来なくなってしまったけどねぇ。」

「それは御免としか言えないさ。まあ、まだやってもらいたいことはあるし、手伝ってくれるだろ?」


魔物は人好きのするいい笑顔で女に尋ねる。女もそれには否定はできなかったのか。渋々であっても了承する。


「分かったわよぉ。でもこれ以上はぁ直接動くことになるわぁ。それで大丈夫ぅ?」

「うん。次にやってもらいたいのはアレを島まで引っ張ってほしいだけだから。神気に引かれて誘導するだけだし、あの時と同じだよ。」

「あれで襲撃するつもりなのねぇ?」

「そうさ。」


魔物は女に指示を出す。どうやら、以前も利用した何かをまた利用するみたいだ。女はしょうがないと思いながらも自身の中でも作戦を整える。慎重に行わなくては自分のみが危ないだろうからだ。


「とりあえず、こんなところで良いかい?ボクもそろそろ戻らないと。人形に入ると抜けることができないのは不便だねぇ。使い捨てだから。」

「死霊はぁその点でぇ楽だわねぇ。耐久が上がるからぁ、耐えられるのよぉ。」


そこからは少々雑談をして解散することになった。けん玉で遊んでいた男を呼び戻して、今後の動きを軽く打ちあわせてからだが。

男と女、魔物はその場で解散することになるが、解散した後は各自の目的のために作戦を遂行する。


「それじゃ、またね。僕とザンちゃんは帝国でも会えるだろうけど、偽りのはいつになるかな。まあ、当日は会うことになるけどね。じゃね!ハハハ。」


男はそう言って笑い声と共に闇に沈む。どういったスキルかは不明だが、すでに付近にはその気配はなく魔力ですら見当たらない。


「最後までぇ愉快なやつだったわねぇ。まぁいいわぁ。あたしもぉ自分の役割を熟すことにするわぁ。じゃぁねぇ。」

「うん、君の役割は飽くまで保険だけど、大事だから。本来なら万が一にも起こるはずもない事態は、これまでのことから、低くない確率で起こりそうだから。じゃあ、ボクも戻るね。」


二人は軽い挨拶をしてその場を後にする。女は来た時と同様に、少しずつ何かが飛び去っていき、魔物は姿を変容させて海へと飛び込む。


静かになったそこでは、再び何もいなくなったことで波の音だけが響く。




*****

Sideアルカナ


料理ができたので、二人が戻ってくるのを待つ。メアリーもソフィアも大事な役割を持つので、無事に帰って来てくれることを願うばかりだ。


「ふぅ。そろそろかな。」


俺がそう呟くと外からシュツェンの声がする。それはだれかが来たことを示す声で、鳴き声からしてメアリーだ。


「帰還...。」

「おかえり。夕飯はできてるぞ。すぐに食べるか?ソフィアももうすぐ帰ると思うんだけど。」

「待機...。」


メアリーはソフィアを待つようで、俺もそれに合わせることにした。料理は完成しているので、手持無沙汰になって〔骨壺〕に中を整理する。

『スパイダーシルク』に依頼したマスクを作るので素材をいくらか出したので、少々ごちゃごちゃしたのだ。


そうしているとまたシュツェンが鳴き、誰かが来た。今度はソフィアかな?と玄関まで出ると、そこにいたのは蜘蛛人族のヤンだった。噂をすれば影ってことか。


「スケルトンさん。ご依頼のこちら、お持ちどぉ。仕上がりは完璧やで!うちのお針子も全力で仕上げたで。もちろん自分もな。ほい。」

「おお、ありがとう。待ってたよ。確かに。」


依頼していたマスクを受け取った俺は簡単にマスクを〔戦力把握〕で確認して「仮縫い」が無くなっているのを見てから仕舞う。

詳しくは見ていないが、どちらも想像以上の出来だ。


「ほなまた。次の配達があるんや。」


ヤンはそう言ってサッと帰っていく。忙しないとは思いつつも、そんなもんかと思う。見送った後にドアを閉めようとしたところで、前方よりふわふわと浮かんでいる人魚がこちらへと向かっていることに気が付いた。

俺は彼女に手を振る。


「おーい。おかえりー。」


ソフィアはこちらへと来てから、ただいまと言って中に入る。どうやら相当急いでくれた様で、息が切れている。

その手には封筒のようなものが握られており、おそらくガルガンドからの物だと分かる。


「はいコレ。パパからの手紙。おじいちゃんにはもう渡したから。こっちはアルカナの分。あー、おなか減った。」

「ありがとな。飯は俺が作ったから堪能してくれ。」


俺が封筒を受け取ってそういうと、露骨にソフィアが意外そうな顔をする。その表情には若干、「お前料理できんの?」と言った意味合いも見て取れるが、そこは食ってみろ、としか言えない。

これでも旨い物を食べて、依頼先では野宿中に料理もしてきた。レイアと組んでいると機会は減ったが、ソロの時は毎回だし、それなりに食えると思う。


「大丈夫。これでも料理は良くやってた。ココじゃメアリーに任せてしまってるけれどな。」

「ふぅん。それじゃ、あたしが審査してあげるわ!」


ソフィアはそう言って食卓のある部屋へと急ぐ。俺は手にある封筒を〔骨壺〕にしまうと食卓へ向かう。読むのは夕飯の後でいいだろう。

すでに竜宮氏族は島の周囲に潜んでいるはずなのでゆっくりと過ごすのは悪いが、これも策だと我慢してもらおう。


まあ、メアリーと差し入れを作って持っていっても良いがな。その時はソフィアに頼もう。


こうして俺たちはそれぞれの準備を完了させて、一日を締めくくる。


もう、使者が指定した海龍王が来る日は間近である。どんな結末が待っているか分からないが、ここまで来たらできることをするまでだ。


夕飯を食べてゆっくり寝て、英気を養おう。


あ、その骨料理は俺のだから。え、食えるの?人魚って顎強いんだな。











集合しましょう


次話以降の展開に少々苦戦しておりますが、応援いただけると嬉しいです。


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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