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第181話 村長への報告

明けましておめでとうございます。2022年も拙作『骨の王になりました』をよろしくお願いします。


とりあえず、竜宮氏族とのこともあるので、村長の元へと戻るとする。なので、トロの海とは別れて、先を急ぐことにした。


「んじゃ、俺は急いで村長のところに行かなきゃいけないから、ここで!」

「なんじゃ?ワシも行った方が良くないかのぅ?」

「いや、大丈夫。まあ、何かあったら頼ると思う。」


何やらトロの海がこちらへの参加の意思を示したように思えたが、ここでは断っておくとする。万が一ということもあるしな。


トロの海とわかれた俺は、急いで村長とソフィアがいる社に向かう。先ほどの使者についてソフィアも何か思うところが在ったようだし、俺も気になる点があるので確認をしたい。


それにしても村長はまだ分かるにしても、トロの海も俺を見てすぐに俺だと分かったな。ふむ。


俺はなんとなく引っかかったそれにはっきりとした答えが出せないままに、社へと到着することになる。


ガラガラガラ


社の引き戸を開けると、そこにはミザネ村長とソフィア、そして、いつの間に合流したのかキョウカがいた。

特に先程の話をしている様子は無く、どうやらソフィアと他二人が自己紹介をしているところの様だ。


「あら、アルカナ。その様子じゃ、撒かれたわね。ふぅん、やっぱりね。」

「アルカナ殿、このお嬢さんは面白いのぅ。今代の氏族長は儂が知っておる者の3代後の様で、ソフィアちゃんのような気質ではなかったんで、話しているだけでも楽しいぞ。」

「スケルトンさん?あれ?...私もソフィアさんとお友達になっちゃいました!」


三人はこの短い時間で中を深めた様で、俺が戻ってくるのを待っている間に友達になったりしたみたいである。


俺としては真剣に尾行している間にのんきだなぁと思わないでもないけど、今後の竜宮氏族とミザネ村の関係を考えれば悪いことではないのは確実なので、下手に文句を言う必要はないと黙っておく。


しかし、ここからは少しばかり真剣になってもらおうか。


「仲良くなってくれた様で何よりだけど、こっからは少しばかり真剣な話をしようか。尾行はソフィアが言うように撒かれてしまったが、それならそれで気付けたこともある。

ってことで、少しばかり情報の共有をしたいんだけど、今からでも大丈夫か?時間を変えたほうが良いか?」


俺の提案は彼らも不満はないようで、すぐにやってしまおうと賛成してくれる。ただ、キョウカは自らが出せる情報がないことに少し申し訳なさそうな顔をしたが、まあ、彼女は元々の仕事というか、俺の抜けた穴を埋めてくれていたから感謝こそすれ、だ。


「何から話せばいいか。まずはアルカナ殿とソフィアちゃんに人魚との話はどうなったかを聞くべきだろうかな?」

「ええ!あたしたちから話した方が良いわね。あたしがここにいることが一つの証明だけれど!」


ソフィアがドヤ顔で村長に言うが、だとしても過程や詳細は伝えなければいけないので、俺はそんなソフィアにデコピンをして言葉を引き継ぐ。


「だとしても詳細は伝えるべきだろ。村長。ソフィアはこんな感じだから、海底でのことは俺が話すよ。」

「うむ、それで良いじゃろう。頼む。」

「あの、最初に質問良いですか?」


村長も了承したので俺が話しだそうとしたときに、横からキョウカが質問があると入ってきた。


「ああ、何かあるか?」

「えっとですね。スケルトンさん?その姿はいったい...?」


キョウカが恐る恐ると言った感じで聞いてくる。俺の姿と言われて不思議に思ったが、すぐに自分が村の中ではスケルトンの姿で過ごしていたのを思い出して、今の獣人の姿は見慣れないだろうことに思い直る。


「そう言えば、ずっとスケルトンのままだったな。こういう姿を取ることも出来るんだよ。隠していたってわけじゃないが、驚かせたならすまない。」

「いえ、予想もできましたし、大丈夫です。」


キョウカはすまなさそうな感じだが、普通はこう言う反応をするだろう。村長は俺の本質が見えているみたいだからいいとしても、な。


まあ、とりあえずはこれで、俺の見た目に関しては大丈夫だろう。さて、それじゃ、竜宮氏族との話をしようじゃないか。


「それでは、話してもいいか?」

「うん。」

「うむ。」

「すいません。よろしくお願いします。」


3人の許可が取れたので、正確に伝わるように慎重に言葉を選んで伝える。どうせ知っているのは俺とソフィアだけだから、指摘はされないだろう。

海の中で槍を突きつけられたなんて言っても笑われてしまうだけだ。どうせならかっこよく話したいが、できるかなぁ。無理そうだなぁ。


意を決しておれは話し始める。その際にソフィアが口だしをしないように視線で牽制しながら。


「まず、俺が偶然にも釣り上げた人魚がこちらのソフィア・ローレライ姫だ。これはすでに伝えてあるので、問題ないと思う。」

「うむ。」

「あれ?あたしあの時、アルカナに氏族長の娘って言ったっけ?」

「パパと言いかけていたな。」


ソフィアは自分がへましたことを思い出したのか、顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。まあ、ギリギリで言い淀んだので残念としか言えない。


「続けるぞ。そして村長たちに断って、その時に知った海の中で起きている異変のことを直接聞いたり、この間のアンデッドの襲撃の際に多くの人魚を含めた水棲魔物を冥界送りにしたことの謝罪をしに出向くことにしたわけだ。」

「それは聞きました。その謝罪や聞き取りはうまく行きましたか?」


「キョウカは俺が説明した場にいたと思うが、その結果が気になるみたいだ。まあ、その後の話にもつながるのだから当然とも言える。


「もちろん、そこら辺はしっかりとしてきたよ。人魚の、竜宮氏族って言うんだけど、彼らの氏族長ガルガンドはとても好人物で、俺の謝罪も受け入れてくれたし、海底での異変についても有力な情報をくれたさ。」

「ふむ、ガルガンドか。ソフィアちゃん、長というのは名を引き継ぐのかい?」

「いいえ、でも、パパは数代前の氏族長の名前を貰ったって言ってたわ。」


なるほど。もしかしたら村長が知っている氏族長というのもガルガンドって名前だったのかもしれないな。ふむ、であれば話も違和感が無い。


「なるほどのぅ。彼もまた良き長であり、良き戦士じゃった。巫女としてもレヴァ様によく仕えておったしのぅ。」

「そうなのね。あたしは知らないけれど、たぶんそれってあたしのおじいちゃんのおじいちゃんくらいの人でしょ?すごい人だったのね!」


ソフィアが元気にそういうと、ミザネ村長は彼女の頭を撫でて、過去を振り返るように「そうじゃなぁ」とつぶやいた。どこか寂しそうにも聞こえたが、それを言っても詮無いことである。


「アルカナ殿、話の邪魔をして悪かった。ところで、その海底で起きているという異変というのはいったいなんだというのだ?」

「ああ、一つは行方不明のことだな。

海底にはいくつも水棲魔物の集落みたいな場所があるみたいなんだけど、そのいくつかの場所で行方不明者が出ていたらしい。中には集落ごともぬけの殻になってしまっているようなところもあるんだってさ。

氏族長は俺の話を聞いて、十中八九、行方不明者が殺害されたのちにアンデッドとして村への襲撃をしたのだと言っていた。これには俺も納得したよ。

最初のアンデッドを思い出してくれ。鎧をつけていただろう?素材こそわからなかったが、シンプルなつくりの正規兵とでも言うべきものだ。」


俺の言葉に村長やキョウカは、あの時のオークの漁師たちが取り押さえていた人魚のアンデッドを思い出しているのだろう。アレはあまり思い出したいというものではないが、鎧は確かに人の手で作られたものに違いなかった。


「確かにアレはそう思えるのぅ。」

「そうですね。まるで職人が作ったような鎧でした。少し待っていてください。」


そう言ってキョウカが一度席を立って社を退出し、次に戻ってきた時には件の鎧を持っていた。

わざわざそれを取りに行ったのかと思ったが、恐らくそれはこの場にソフィアがいるからだと思う。


「ソフィアさん、こちらの鎧に見覚えはありますか?」


そう言ってソフィアに鎧を差し出して、ソフィアも受け取った鎧をじっくりと確かめる。


「うーん、手入れがされてなくて傷んでいるけど、たぶん、サンゴの村の鎧だわ。集落ごと消えた人魚ね。あ、ほら、ここにサンゴのマークがあるもん。」


ソフィアはこちらにそのマークを見せてくれるが、ここにいる三人にはそのサンゴのマークというのが分からないので困る。

ただ、ソフィアが言うなら信用していいだろう。


「やはり、あの人魚は海底の行方不明者でしたね。こちらを持って来て正解でした。」

「ありがとうな。キョウカよ。しかし、あの時の襲撃でアンデッドはアルカナ殿が冥界へと送ってくださったはずじゃ。もう苦しむ者はいないじゃろうて。」


村長が言うのはあの場にすべての被害者が集っていた場合になる。しかし、腐神ザンビグルもすべてを一度に襲撃に回すだろうか。

まあ、あの時本人が憑依して出撃してきたと考えれば、それもあり得ないわけではない。


「待ってくれ。あの時のアンデッドはすべてを冥界に送りはしたが、どこぞに伏兵がいたとも考えられる。そもそも襲撃に加わらなかった可能性もな。」

「しかし、それを考えるときりがないぞ。それに、ソフィアちゃんや。」

「なあに、おじいちゃん?」


俺の反論にミザネ村長がソフィアに何かを確認するみたいだ。というか、一応、神である村長をおじいちゃんって。さすが神獣にもねだる少女だな。


「竜宮氏族では行方不明者を数えているかな?」

「ええ。アルカナに聞いたのと大体同じくらいね。詳細までは数えてないって言うから、分かんないけど。」


俺がソフィアに伝えたのは、大体これくらいっていう数だし、実際あの場でどれだけのアンデッドを消滅させたのか俺には分からないからな。全部と言ったら全部なのだ。


「ふむ、儂も正確な数は分からん。じゃが、大体同じであれば、少数だけを別にしておくこともあるまい。」

「確かにそうですね。あれだけいたアンデッドでだめなら、少しだけ残したところでどうにもならないでしょう。スケルトンさんもいることですし。」


キョウカが言うことはもっともである。あれだけの大軍勢で攻めてきたのを防ぎ切ったのにそれよりも少数であったら、どうしようもないはずだ。

俺は納得をして、一応全部殲滅したという仮定の下に動くことにする。


「それじゃあ、アンデッドはすべて消滅させたとして、もう一つの異変について話そうか。こちらはいまだ解決していないし、村にいる限りは問題ないだろうが、竜宮氏族はそうも言えない。

同盟を組んだのだから相手の未来を考えて行動をすることも大切な同盟の意義ってものだろう。」


俺の言葉はソフィアにも村長にもわかってもらえているようで、二人は頷いてこちらを見る。


うん、それじゃあ、二つ目の異変、海王の封印について話をしようか。











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拙作を読んでいただきありがとうございます.


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