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第175話 会談

今年もあと少しですね。評価ブクマうれしいです。クリスマスプレゼント貰った気分です。


氏族長について行った先に在った部屋は、不思議なつくりになっていた。どう不思議かと言えば、部屋に入る前の段階がおかしいのだ。


部屋に入る前にもう一つ部屋があり、そこは若干のスロープのようになっているだけの部屋なのだ。若干と言えどもその距離は20mほどあり、最初と終わりでは階を上がったくらいの差がある。

そして、これが一番不思議なのだが、終わりの方に行くと、完全に水中から出ることになるのだ。

つまり、これから行く部屋には空気があることが期待されるということだな。


こうして通された部屋は、道程を考えなければ本当に普通の部屋だった。広々とした空間に、座れるように配置された大きめのテーブルとその周囲の椅子やソファー。どれもふかふかそうである。


「この部屋であれば地上人であるアルカナ殿にも安心していただけるでしょう。」

「(いや、何だかすまんな。それじゃ、失礼して。)」


俺は空気があるのだからと、獅子王面を〔換装〕する。まあ、ソフィアとはこちらの顔の時に会っている訳だし、骨と向かいあって話すよりは人魚側としても安心するだろう。

人魚側は腰に浮き輪の様な者を撒いて、俺が立ったのと同じくらいのところでふわふわと浮かんでいる。


「おお、話には聞いておりましたが、本当に獣人の姿を取られるのですな。」

「ソフィアが連れてきたのがスケルトンであった時は驚いたが、こんな姿にもなれるのだな。」

「お兄様ったら信じてなかったのね?」


氏族長ファミリーは結構すんなりと受け入れてくれたが、そんなに簡単に信用するのか。

まあ、こちらとしては特に問題ないので良いがな。


「とりあえず、こちらの姿で話させてもらう。骨のままじゃ、そちらも落ち着かないだろう?」


そう言って俺は部屋のあちらこちらをきょろきょろと見やる。俺の視線に気が付いたのか、ソフィア以外の4人が驚いたような顔を一瞬だけしたが、さすがに身分が高いからかすぐに取り繕う。


まあ、俺としては当然の対応だとは思うが、見破れないと思うのはさすがに慢心だろう。俺がただのスケルトンであるというのならいいが、少なくとも氏族長は俺が骨の王であることは知らされている訳だから、どんな能力があるか分からない相手に隙を見せるのは良くないに決まっている。


「そう驚かないでくれ。ここに来るまでにそちらのことを少しは理解したつもりだ。

ここへと来るまでは、そこらの村や集落をイメージしていたが、すでにそんなレベルじゃないことは理解した。もう、氏族長なんて王族と同義だろう?それなら俺だってどういう対応されるかくらいは考えるさ。」

「む?そ、そうか。ご理解いただいて感謝する。」

「さすがだな。」

「え?何が?」


若干一名意味を理解していないが、まあ、もういいだろう。これ以上この話をしているメリットも無いので、とりあえず切り上げる。

氏族長達も部屋の周りにいた護衛と思われる者達を下がらせるような動作をした後、しっかりと椅子へと腰かける。


俺もそれに合わせて腰を掛けると、今度はレナが紅茶の用意をして各人に配る。その姿の通りメイドとしても働く様だ。さっきの様子からして戦えないわけではないはずなので、戦闘メイドとかそういうことなのだろうな。人間で見る前に魔物で会うとは思わなかったが。


紅茶が運ばれたことで、氏族長がレナへと礼を言って、今回の会談の目的を一つずつ進めるとしようか。


「それじゃ、まず、本日はお招きいただき感謝する。本来であれば自ら出向かねばならない所を迎えまで頂いたことありがたく思います。

さて、それでは早速とはなりますが、こちらへ来た目的を果たすとしましょうか。」

「感謝など、当然のことだ。まあ、貴殿がそういうのなら、そうしようではないか。」


直前に王族と同義だと言ってしまった手前、対応をそのままにすることは良くないかと思い、口調を改めたところ、氏族長もそれに倣ってくれたので、これで正解だったのだと安心した。

安心した俺は徐に〔骨壺〕に手を伸ばすと、周囲から今度は観察の視線ではなく明らかな殺気が飛んでくる。その数が先程の護衛と一致していることで、彼らが優秀であることが分かる。

下がったと見せかけて、その場に残って気配を消すことに集中してたんだな。


まあ、俺としてはここまで来て氏族長以下5名を殺す意味も無いし、ただでさえ地上ではザンビグルの脅威があるのに敵を増やすはずもない。


「まずは、こちらをお受け取りください。姫がご所望のお土産でございます。」

「!?これは、ご丁寧にどうも。肉ですかな?竜宮氏族は海中で生活する種族柄、外の肉には目がありません。極稀に海龍王様が下賜される程度なので、非常にありがたいです。

ただ、ソフィア、お前には後で罰を与えよう。客人に土産をねだるな。海龍王様にもするなといったのと同じだ!」


ソフィアの名前を出したのがいけなかったのか、氏族長はソフィアの方を向いて顔を真っ赤にして説教する。

ソフィアに言われたから、交渉のプラス要素になればと思って持ってきたけど、ほとんど個人の欲望だったとは。さすがに予想できないだろう。てか、神獣にもねだることができるソフィアに、呆れればいいのか、感心すればいいのか。まったく、すごい娘だ。

フォローぐらいはしてやるか。


「まあ、こちらとしても土産に悩まなくて済んだのはありがたかったですよ。こちらは近くに在ります隠れ島の食肉区画で収穫したスタンピードブルになります。ダンジョンで調整された肉なので、旨いと思います。」

「おお、これは見苦しいところを。そう言ってもらえると助かります。我らにとっては肉はご馳走。スタンピードブルも大好物です。重ねてお礼申し上げる。」

「ほら!パパ!アルカナもあー言ってるし!」

「もう黙っていようなソフィア?」


何とか取り繕った氏族長の言葉を台無しにするかのようにしゃべり出すソフィアだったが、横で話を聞いていたバルクスによって抑え込まれた。

まあ、俺とのつながりができたっていう功績もあるわけだから、そうひどいことにはならないだろう。引きずられていくソフィアとそれを引き摺るバルクス。さらにそれについて行くレナを見送って視線を氏族長に戻す。レナはしっかりとお土産の肉を抱えていたし、嬉しそうな顔をしているのはバッチリ確認済みだ。

最後にケインは、どうやら近衛兵長という職業に就くものとしてここに残る様である。


「いやはや、お恥ずかしい。我らは寿命が非常に長いからか、幼少期が長くてね。ソフィアも100年は生きているが、ああやって幼稚なのだ。バルクスは早くに大人になってくれたのだがね。」

「氏族長、また愚痴になっております。」

「おっと、すまないな。それじゃあ、貴殿がこちらにいらした理由をお聞かせ願おうかな。」


ソフィアはやっぱりまだまだ子供の用だな。氏族長の表情からは相当に苦労しているということが見受けられるが、その表情には子を愛する気持ちが見え隠れしているので、なんだかんだでかわいくて仕方がないんだろう。


この話はこれくらいにして本題に入ろうか。肉に関してはしっかりと受け取ってくれたし、印象も少しは良くなっただろう。娘と仲が良いというのは父としては複雑だろうとも王としてはとれる手段の一つということに他ならないからな。


さて、すんなりと謝罪を受け入れてくれるとこちらとしてもうれしいのだがな。ソフィアに話た感じではそこまで気にしていないというような話しぶりだったけど、子供な彼女の言うことは話し半分って感じだ。


俺の言葉を待つ氏族長はその大きな体から、かなり威圧感がある。俺も彼も座っているのだが、相変わらず見下ろされている訳だし。


「まずは、最初に伝えるべきことから言わせてもらおう。

先程もチラと話したが、この竜宮氏族の集落から、少し移動したところに隠れ島があるのはご存じだろうか。」

「ああ、あの島はミザネ様が修めておられる村があるし、海龍王様を通じて交流もあった。今はお互いに自給自足が出来ているため、希薄だがな。」


そうか。やはり氏族長はつながりがあったか。予想していたことだし、驚きはしない。


「それにこの城を造った技術はあの村のトロの海が我らに伝えてくれた技術だ。先代の氏族長の代の話だが今でも変わらず、感謝しているぞ。まだ健在かな?」


やはりトロの海だったか。頭が良いトロールの大工ってそれ以外に思いつかなかったし、彼は村の古参住民らしいから、寿命もあてはまる。ここまで行くともはや伝説の大工とかそんな逸話くらいならどこかに在りそうだな。


「彼はまだ元気ですよ。

続けますが、その村がある隠れ島に先日、大規模なアンデッドの軍団の襲撃がありました。村を挟みこむように仕掛けられた襲撃ではありましたが、今話にあったミザネ様とトロの海殿などの活躍によって防ぐことができました。」

「ふむ、もちろん、アルカナ殿も活躍為されたのだろう?骨の王というのはそう言う存在だと聞いている。」

「はて、なんのことやら。」


一応とぼけてはおいたが、俺は静かに驚愕していた。なぜなら、骨の王であることと同時にその役目までも神獣に伝えられているということが分かったからだ。


骨の王というのは歴史をさかのぼればいくつかそれらしき存在は見つけることができる。しかしそれ等の具体的な目的や行動方針などに言及している事実は一切見られなかった。

知識を求めるベルフォード王国の図書館でも見つからなかったのだから相当だろう。


それを竜宮氏族長は知っていた。これがどういうことかと推測すると、もしかしたら氏族長というのは神獣とのつながりが深いのかもしれない。

だからこそ、秘密に近いことまで知らされていたのではないか?


まあ、今ここで追及しても良いことは無いし。護衛たちにそれが隠されていたら、余計な世話になりかねない。


「まあ、それはいいでしょう。とにかく、その襲撃に関することでご報告と謝罪をしに参った次第でございます。」

「謝罪とな?それは一体?」


氏族長は俺の言葉が分からなかったのか首を傾げているが、今の時点で知らないということは神獣から知らされていないか、とぼけているのか。

知らないのであれば神獣はこのことに関して口を出すつもりはないということだろう。彼も神に使えるものとしては、積極的に下界と関わるつもりはないのかもしれない。まあ、すでに十分関わっている気もするけど。


というか、今回の件は腐神が関わっている時点で、介入の余地があるはずだし、どういうことだろうか。分からなくなってきたし、もう全部言っちまうか。


「その襲撃で、私は数多くの人魚および水棲の魔族を冥界へと送りました。」


俺は簡潔に言葉を紡いだ。しかし、それが良くなかったのかも知れない。俺の言葉が彼らの耳に届いた次の瞬間には、部屋に水が浸入し、その勢いと同じくして周囲に展開していた護衛が流れ込んできたのである。


俺はとっさに水中でも活動できるように〔人化〕と獅子王面を解除する。戦闘力こそ落ちるが、耐久はそこらの魔物に傷つけられるほどではない。とりあえずはこれで耐えられるだろう。武器は出すべきではないだろう。


「待てぃ!まずは話を聞こうではないか。彼は迎撃の体勢は取っていないぞ?」


氏族長が諭すように言ったことで護衛の彼らもすこしは落ち着いたようだ。まあ、俺に向けられた三又槍は全くと言っても良い程、微動だにせず俺の頭や胸を狙っているみたいだけどな。


言葉の選び方が下手だった俺が悪いかもしれないが、こんなに殺意を向けられるのはさすがにひどくね?


まあ、とにかく落ち着いて話そうか。








釈明しましょう


拙作を読んでいただきありがとうございます.


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