ブラック企業の社長と重役達の宴。
僕が働いている会社はブラック企業。
残業、残業の日々、土日祭日も関係無く残業が続く。
それなのに給料は雀の涙。
だから家賃の安いアパートを求め、都会の一等地にある会社から遠い海沿いのボロアパートに住んでいる。
当然通勤時間は往復4時間。
通勤時間を短くできれば夢にまで見た、朝、波の音を聞きながら海岸を散歩する事ができるのに。
そんな僕や同僚等に朗報が届く。
会社がテレワークを行うとの事。
僕のような独り者で一人暮らしの者だけが対象らしいんだけど、使用するパソコンまで会社が支給してくれた。
此れで朝の散歩が出来る。
出来る…………筈なのに…………アレ? 出来ない。
朝、朝食を食べパソコンの前に座り仕事を始める。
勤務時間が終わると外は真っ暗になっていて、夕食を食べ直ぐ寝ないと翌日が辛い。
翌日始業時間ギリギリまで寝ているから散歩なんて無理なんだ。
何でだろ? 仕事のし過ぎなのか頭がぼんやりして仕事以外の事が考えられない。
ああ…………早く…………パソコンの前に…………座り…………仕事を…………始めなくては…………。
そのころブラック企業の社長と重役達は酒を飲みながら語り合っていた。
「社長上手くいきましたね」
「ああ、そうだな」
「支給したパソコンに掛かった費用は痛かったですが、それ以上儲けていますから」
「パソコンの画面を注視すると軽い催眠状態になり、働く事に疑問を持たなくなる。
そして、パソコンに表示されている時計に従って仕事を進めるんですからね」
「その時計が通常の時計の3分の1で進んでいるから、社員は1日で3日分の仕事を行っている訳だからな、笑いが止まらんよ。
ハハハハハハハハ」
「時計は毎日リセットされ、催眠状態の社員は疑問に思わずに仕事を続けているんですからね。
仕事量が3倍なのに、残業代の支払が0、本当に笑いが止まりませんね。
ハハハハハハハハ」
「万が一バレてもその時は知らぬ存ぜぬを貫き、パソコンのプログラムが狂ってたって事にするから、皆、口裏を合わせろよ」
「分かってますって」
「此れで会社を設立した時からの夢だった一部上場が、現実になるな。
それを祝って乾杯しよう。
乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」