龍皇取扱免許取得試験
鏑木戒
16歳・高校一年生。
六年前の事件で両親と死別。以来、【Enigma】とドラゴンを強く恨んでいる。最近はドラゴンに対しての嫌悪感は薄れてきている......?
スティ
ドラゴン・属性:???
【龍皇】が一体。路地裏で戒に拾われる。謎多きドラゴン。人化可能?
File2:『龍皇取扱免許取得試験』
開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。何せ、さっき飼うと決意して連れ帰ったドラゴンがいきなり少女の姿になったからな。
「な、何だおま、その姿、え......っ!?」
「声帯機構をUNLOCK。充電器からあなたの携帯端末の残留データを検知。そこから逆探知をかけてあなたの携帯端末に接続。そして............」
「取り敢えず服着ろ!!」
全裸で「?」みたいな顔をする少女に、俺は服を投げつけた。。
「で?お前はさっきまでのドラゴンと同一人物.........いや同一個体ってことで良いんだな?」
とりあえずスティには俺がガキの頃の服を着せてみた。ショートヘアでボーイッシュな雰囲気だからか結構似合うな。いや、今そんなことはどうでもいい。
「うん。」
「人化した原理は?」
「ドラゴニウムで投影したホログラムに実体を持たせてる。簡単に言えば、“スティはスティだけど、他人からは人間の少女に見える”。」
「なんでさっきまでキューキュー言ってたのに急に喋りだしたんだ?」
「元素構成機構は声帯の役割を果たす。だから通常の【龍皇】は言語能力を保有している。スティは元素構成機構にロックをかけてたから喋れなかった。」
「難しい話はわかんねぇよ。あ、あと何でその姿なんだ?」
「あなたの携帯端末に保管されている画像、検索履歴からあなたの理想の姿を疑似的に再現。」
「言っておくからな、俺はロリコンじゃねぇ!!」
このドラゴン、スティはどうやら俺を犯罪者にしたいらしいな。
「スティはあなたに拾われた。恩義を返す。」
「はいはいそうですか。あと俺は戒だ。鏑木 戒。お前の飼い主。」
「名称、戒.........。ご主人様と認定。」
「いや、別にご主人様にランクアップしなくても飼い主でいいんだが............」
「これからよろしく、ご主人様。」
「礼儀正しそうで微妙に失礼だなお前。あとその無機質な喋り方はなんだ?お前の内包属性が関係してるのか?」
【龍皇〈ドラゴニス〉】は一体につき一つ、能力......【Skill】を内包している。秀斗んとこのゼウスも持ってる。
「スティは【機械龍皇】。【Skill】は『文明ノ覇者』と『状態視認』。」
「大層な名前で。」
メカニカルというゴツい名前の分類に叡智の梟の名前を冠したSkillとは、こいつ、実はかなりの大物?......て言うかコイツなんで自分の分類知ってんだろ?まぁいいか。
「そういえば、保健所の職員が手続きに来いっつってたな............。」
「はい、じゃあ手続きはこれで終わりです。GPS付きの首輪とか、脱走対策しっかりして下さいね。」
「はい。」
保健所の手続きを終わらせ、スティを正式にうちで飼うことになった。まったく、保健所まで来るのもそこそこ疲れるんだ。手間をかけさせないでほしいな。保健所を見渡すと、ドラゴンについての張り紙が異様に多い。かつて、ドラゴンが開発されるまでは犬や猫の人気が高かったようだが、今ではドラゴン一強だな。
「あ。」
俺は目についた一枚のチラシを手に取り、折り畳んで懐にしまう。
「スティ。」
俺はホログラムで人化しているスティに話しかけてみる。
「なに?」
「お前、他の【龍皇】に会ってみたくないか?」
「おー、戒!お前がうちに遊びにくるなんて珍しいなー!ドラゴンちゃんも一緒かー!」
「実はこいつ【龍皇】だったんだよ。だからお前んとこのゼウスを参考にしたくてな。」
「そういうことか!わかった、上がれ上がれ!」
テンション高めに秀斗は俺と、俺が抱えてるスティを家に案内する。ちなみにだが秀斗の家は白が基調のモダンな作りの豪邸だ。門のところにベルがあって、正直押すだけでハズい。秀斗の家は中学の頃からちょいちょい行ってるが、地図が欲しくなる広さだ。玄関入ってすぐに吹き抜けがあって、秀斗の部屋は三階にある。三階のどこかは未だによくわからない。
「あー、確かにドラゴンちゃん翼あったもんな。忘れてたわ。そういえばこの子の名前決めたのか?」
「鉛色してるからスティだ。」
「ちょっと安直じゃねえのか?」
「ゼウスだって神々しいから付けたんだろうが。」
「それはそれ。だよなーゼウス。」
秀斗は抱えたゼウスを見る。俺らは今秀斗の部屋でお菓子とジュースを片手にダベっている。たびたび話に出る「ゼウス」とは、秀斗が飼っている【龍皇】だ。全身黄色の鱗で腹の部分が白、そして黒の線が走っている。秀斗に非常に懐いていて、可愛げのあるドラゴンだ。
「俺っちは何だっていいや。秀斗っちも戒っちもそう思うだろ?」
ただし、一人称、二人称共に「っち」が付くのが少々残念でもある。
「あぁ。」
返事は愛想笑いで。
「戒っち、そのドラゴンは?」
「スティはスティ。名称・【機械龍皇】。あなたは?」
「俺っちはゼウス。【雷霆龍皇】さ。」
そう、ゼウスの属性は雷。ゼウスの父親にあたるドラゴンも雷属性で、秀斗の父親がその鱗から開発した繊維の特許で大儲け。一代で「樫宮繊維」を作り上げた凄い人だ。俺にも優しくしてくれたな。
「《Over Custom》......MIM・SYSTEMに登録済みの個体と一致する個体を検出。ゼウス・カシミヤ......スティの友達。」
「仰々しい解析したわりにフランクなこと言うのな、お前。」
「おっす!俺っち友達!」
ゼウスの良いところは楽観的な性格をしているところだ。
「ところで秀斗、お前、資格とか興味あるか?」
「急になんの話だ?」
首を傾げる秀斗に俺は保健所で貰った一枚のチラシを取り出して見せる。
「『龍皇取扱免許取得試験』?なんでこんなもんを?」
【龍皇】は【Enigma】を殺すことのできる唯一の生物。当然、警察や自衛隊なども所有しているが、民間の家で生まれた戦闘向きの【Skill】を持った【龍皇】を全て国が取り上げるわけにはいかない(昔は取り上げてたらしい)。よって、民間の【龍皇】所持者に非常時の戦闘を許可するのが『龍皇取扱免許』。その取得試験は、【龍皇】とその所持者に非常時、正確な行動が取れるか、免許を持つにふさわしいバディなのかを問うものだ。
「これ、倍率エグいんだろ?それに試験クソムズいらしいし。」
「いやなら受けなくていい。俺は【Enigma】をぶち殺せる手段があるなら使わない手はないと思ったから受けるだけだ。」
「いや、お前が【Enigma】を憎いと思ってるのはわかるよ?俺なんかにはかり知れるものじゃない。でもさ、お前だけじゃなくてスティちゃんまで危険にさらされるんだぞ?」
言われてみればそうだ。正直、【Enigma】を一体でも多くこの世から葬り去れるんだったら俺は喜んで命を捨てられる。だがスティは違うだろう。俺はこいつの飼い主だが、こいつの命を奪うなんてことはできない。
「スティは受けたい。」
「「へ?」」
俺と秀斗がシリアスのセオリーをぶち破られて間抜けな声をあげる。
「スティの使命は、“【Enigma】を世界からなくす”こと。その為に必要なお受験なら、受ける。」
「本当にいいのか、それで?命を落とすかもしれないのにか?」
「無駄死にはしたくない。でも、【Enigma】を一体でも多く殺してから死ぬなら、本望。」
フッ......俺とこいつの出会いは運命ってやつだったのかもしれないな。まさか信念まで同じだったとは............。
「わかった。というわけで秀斗、俺達は受ける。」
「はぁ~............わかった、俺達も受けるよ。俺とゼウスも、【Enigma】に思うところはあるしな。」
そういえば、そうだったな、とお互いの思いを馳せつつ、俺達は決意を固めた。
「おし、つーわけで秀斗、明日から受験勉強な。」
「え?待って、試験いつ?」
「28日。」
「一週間ねぇじゃんかよ!?」
「まぁ筆記なんてモラル問われるだけだからあんま肩肘張るな。問題は実技。こっちに関しては対策不能だから、まぁできることといったら過去問をこなすのと軽い体力作りしかねぇな。」
「マジかぁ............」
6日後───────11月28日・横浜
「へぁ~............来ちまった、来ちまったよこの日がぁ............」
「何をそんなにビビる必要があんだ?言っとくがお前こん中で相当上位だぞ?」
こいつ、気色の悪いことに体育の成績は9、勉強は後期中間テスト学年5位。この団子とパンケーキが詰まった脳ミソのどこにそんなスペックがあるのか教えて欲しい。
(ちなみに俺は体育の成績8、後期中間テスト学年17位。)
「そうかなぁ.........そうだといいなぁ.........」
「心配しすぎだ。」
まぁこいつが心配するのも無理は無い。バスケの地区大会で名の知れた“程度”のこいつが勝てない連中が集まっている。例えば......
「え!?なぁ、戒、あれ『PRISM』のショーコちゃんじゃね!?なんでこんなとこにいんの!?」
人違いじゃなければ、あれは三人組の国民的アイドルユニット『PRISM』の水野晶子だ。【龍皇】を使った派手且つ可愛い演出で有名だな。キャップとサングラス、マスクで顔を隠しているが、隠し過ぎなのと漏れ出るオーラでバレバレだ。
「あれは............」
あっちにいるのは水色のワンピースを着た金髪と黒髪の混じったロングヘアーが特徴的な少女。周りにSPが三人居てガチガチに警護している。名のある令嬢か何かか?どこかで見たことある気がする............
そんな感じで会場には大物がわんさか集まっている。秀斗が“相当上位”なのは一般ピーポーの中での話。コネ抜きでも余裕で通過するような連中相手ではさすがの秀斗でも苦戦するだろう。
「スティ、あの女の名前が思い出せないんだが、わかったりするか?」
「ん。」
スティは少女形態でUSBメモリを咥えながら上目遣いで返事をする。ここ数日の生活でわかったが、どうやらスティは食事の他にデータと電気を吸収する性質があるらしく、こうしてUSBメモリに移したデータを食わせている。うちに来た初日に充電器をかじっていたのは電気を食おうとしていたかららしい。俺のスマホとスティは(逆探知で)同期しているようで、俺が一度調べたことを記憶したり逆にスティが検索をしたりできるようだ。『文明ノ覇者』とはそういったあらゆるネットワークに接続できる【Skill】らしい。便利能力だな。
「≪Over Custom≫......MIM・SISTEMより画像検索。............合致。式 ロロア、米国上院議員カスタ・ローン氏と日本人の式 鳴音との間に産まれた式家次女。東京都在住。」
あー、式 ロロアか。確か姉が失踪しただとかのニュースとかで見たことあるな。母親の式 鳴音といえばブランドバッグ会社日本大手の「SIKI HOLDINGS」の女社長じゃないか。京都に本社を置く有名ブランドだ。それとアメリカの上院議員の娘?吐き気がするほどのサラブレッドだな。肩にとまっている【龍皇】も透き通るような空色の美しい鱗を持つ可憐な容姿をしている。こいつらを出し抜いて好成績を出すのは骨が折れそうだ。そんなことを考えながら俺と秀斗は会場の中へと入った。
会場はでかいホールで、中は相当広い。受験人数は定かではないが1000人は軽くいるだろうな。まぁ要するにボンボン共を出し抜いて好成績出せば受かれるからいいんだけどな。ほどなくして、試験官が筆記試験用の紙を持ってきて配る。90分間の問題に答えたが、ぶっちゃけたところかなりヌルい。過去問にもあったが、「【龍皇】を飼育するにあたって最も注意すべきことは?」とか。筆記に重きを置いてないとはいえ、こんなでいいのかと思ってしまう。秀斗も隣で安心したような表情でカリカリとペンを進めている。そして驚いたのが秀斗の右隣に『PRISM』の水野晶子が、俺の左隣に式ロロアがいることだ。番号順で連番になるように座らされてるが、こんなブルジョワサンド何も嬉しくない。因みに俺は受験番号627番、秀斗が626番で、必然的に水野晶子が625番、式ロロアが628番ということだ。やっと90分が終わった。30分は余ったぞ。これは実技がますますわからなくなってきたな............
実技の会場は別らしく、専用のバスで移動させられる。それも連番で座らされ、かなり気まずい空気になる。
「あーやべぇどうしよう......大問2の三番のb絶対間違えたわぁ......終わった......」
「たかが一問間違えたくらいじゃ終わらん。」
気にしすぎだ学年5位。
「す、すみません!626番さん、あなたもそこ間違えたんですか!?」
秀斗の隣の水野晶子が話しかけてくる。
「え、ショーコちゃんも間違えたの!?」
「あ、なんで、私が水野晶子だと......」
「いやバレバレだよ。」
思わず俺がツッコミをいれる。
「でも、変装とかして............」
「まず「ショーコちゃん」って言われたのに「水野晶子」とフルネームで答えてしまう辺り、しかも他人とシラを切らずに本人だと認めてしまう辺り、挙げたらキリ無いぞ?」
「うぅぅ............完璧に変装したと思ったのに............」
「うっわぁ、戒、女の子泣かした............」
「俺かよ。」
知るか。雑な変装したこいつが悪い。
「すみません、少々静かにして頂けます?」
今度は俺の隣に居る式ロロアが話に割って入ってきた。
「あ、すみません。」
秀斗が申し訳なさそうに謝ると、式ロロアはフンッと鼻をならして前を向いた。
「......怖ぇ......ハーフ令嬢怖ぇ............」
「ですねぇ............」
秀斗と水野晶子が肩を震わせている。仲いいなこいつら。因みに連れのドラゴン達は別手段で会場に向かっている。事前打ち合わせする時間を削ぎたいんだろう。バスは20分程走るととある場所で止まった。乗っていた受験者達が降ろされる。降ろされたのはバカデカいスタジアムのような建造物の前。東京ドーム6個分くらいあるぞこれ。ここが実技試験の会場か。何故か知らんが武者震いの一つもしない。戦場で全く緊張しないのもダメだと思うけどなぁ............。
スタジアムの中に入る前にドラゴニス達と合流した。スティは俺の頭の上が好きらしく、器用によじ登ってしがみついている。ゲートを潜り、スタジアム内部から陽の当たるスタンド席へ。そこから見ると、なるほどこうなってるのか。倒壊しているもの、していないものが混在するビル郡を模した会場だ。これは......嫌なものを思い出させてくれる。大方、「旭区龍害事件」をイメージしたセッティングだと思うが、ちょっと運営側のデリカシーが足りないな。普段はサッカーか何かのスタジアムなのか、でっかいモニターがあり、そこに今映像が映し出される。
『えー、受験者諸君ご機嫌よう。龍皇管理委員会「DCC」の蔵中と申します。』
この試験の主催である管理委員会の一人が大きくモニターに映る。スタンド席にいる受験者の視線がモニターに集まる。
『えー、これからに皆さんには実技試験を受けて頂きます。内容はご覧になってお分かり頂けるように「【Enigma】被災地にて倒壊した建造物に潜伏している【Enigma】の掃討」です。不公平の無いよう、受験者の皆さん1027人全員一斉に試験を行います。』
うわぁ、鬼畜そうな内容だな。
「スティ、お前索敵能力とかあったりするか?」
「【Enigma】含め生体反応を感知することならできる。」
「なんだその含みのある言い方は?」
「スティの『状態視認』で感知できるのは生体反応だけ。感知したものが【Enigma】かその他の生物か判別できない。」
「そういうことか。まぁいい、無いよりマシだ。」
『制限時間は120分、時間内に【Enigma】を模した機械を“停止させて”下さい。尚、“番号連番の四人一組の即席チームの合計掃討数”が採点基準となります。13:10から開始致しますので入り口にお集まり下さい。では皆さん、ご武運を。』
なーんか含みのある言い方だな。
「ようは他の四人組より多くぶっ壊せばいいのか!」
「そうですね!」
「そんな単純な作業じゃねぇだろ。」
番号順四人一組、つまり水野、秀斗、俺、式の四人だ。俺と秀斗は互いのドラゴンの詳細を把握している。水野のドラゴンも全国的に能力がわかっている。問題は.........
「式、あんたのドラゴンの能力の詳細を教えてくれ。」
俺が式に話しかけると無愛想にこちらを向く。
「何故でしょう?四人一組の掃討数が多ければ良いのですから、各々別行動すれば良いでしょう。」
こいつの言ってることはもっともだ。だが鼻につくハーフ令嬢よ、俺は敢えてメタ発言をしてやろう。
「バラけてもいいなら管理委員会は個別に試験させるよな?管理委員会の意図を読むとしたら、即席のチームアップで【Enigma】に対応しながら協調性チェックとかそんな感じだろうな。」
はいキラーワード入りましたー。「お前試験受かりたいんだろ?」と念押ししとけば嫌でも首を縦に振るだろ。
「............いいでしょう。教えて差し上げます。ですが他言無用ですよ。」
「あぁ。頼む。」
「ただし教えるのには条件があります。まずあなた方のドラゴンの能力の詳細も私に教えること。そしてこのチーム、二手に別れて行動すること。」
「なんでまた?」
「ダイヤの行動に制限がかからないためです。」
「わかったわかった。じゃあまずうちのスティだが、能力はざっくり言うとサーモグラフィーが使えるのと【Enigma】をぶち殺せるブレスが出せる。」
「この試験では攻撃力皆無ですね。」
「俺は樫宮秀斗!うちのゼウスの能力は発電と逆探知。雷のブレスを放つこともできるが無差別に被弾するからこれは使わない。帯電した爪、尻尾で近接って感じかな。」
「私は水野晶子!うちのクリスは【水晶龍皇】なの!能力は光を体内で屈折させて好きな方向に放出できるのと体内の結晶の倍率変化!」
「そうなのね!皆たんよろしくなのね!」
クリスと呼ばれた水野のドラゴンが元気に返事をする。テレビでたまに見るが、こうドラゴンはどいつもこいつも一人称が残念なのだろうか?
「ふむ......私のバディはこの【銀嶺龍皇】のダイヤです。能力は絶対零度のブレスを放ちます。氷点下なら-200℃まで下げることができます。それと熱源感知ですね。」
うわぁ、何その優遇性能。
「樫宮さんのドラゴンは出力を絞って、尚且つ水野さんのドラゴンと行動すれば無差別放電も使えます。硝子は絶縁体ですからね。」
「あ、そうじゃん。式、頭いいな!」
「フンッ............」
秀斗が誉めると式は少し頬を赤らめてそっぽを向いた。はは~ん、さてはこいつツンデレだな?
「なので私とあなた、樫宮さんと水野さんの二手に別れての掃討を希望します。」
「俺は別にいいよ。あと俺は鏑木戒な。」
「俺も賛成。」
「私も!」
「ではあと10分ほどですので、互いの性能とそれを活かしたコンビネーション、そして別れたあとの行動パターンとおおよその場所を決めましょう。」
「おう。」
─────開始1分前─────
「式さぁ。」
「なんです?鏑木さん。」
「お前の手腕なら、俺たち三人をまとめあげるくらいできたんじゃねぇの?」
「............それは............」
「いや、何か隠したいことがあるなら言わなくていい。どうせ今日限りの付き合いだしな。訳ありかどうか知りたかっただけだ。すまねぇな。」
事実、式の読み通り俺とスティは今回の試験では足手まといだ。式の広域制圧をスティの『状態視認』でバックアップするスタイルと相なった。入場ゲートに近い位置を俺たち四人はポジション取ることができた。
「じゃ、いっちょ受かりますか。」
スタートの号砲は鳴り響いた。