第9話「かつてない強敵」
屋上で偶然の出会いを果たした俺とコトノハさんは、この滅びゆく世界から安全な場所を探すため、一時的に行動を共にすることとなった。
更に、繰り返しのレベルアップで俺の仲間達も順調に強くなった。
スキルも強化されたし、これであのオークもスナッチ出来るはず! …………だと、思ってたんだけどなぁ。
「残念。まだオークを仲間に出来ない。一体何LVまで上がればスナッチ出来るんだ?」
ランク☆☆の魔物は、思っていた以上に格が違うらしい。どれだけ漆黒の鎖を召喚して巻きつけても、すぐに壊されてしまう。
LVが低い? 条件が足りていない? …………いずれにせよ、屋上でこれ以上のLV上げは無理そうだな。
俺とコトノハさんは、屋上から地上へと視線を向けていた。
「…………五十体以上はいるかな。正面口と裏口からどんどん中へ入ってくる」
「まあ、あれだけスナッチし続けていたら流石に気付くよね」
何もない所から突然現れ、魔物達に絡み付く漆黒の鎖。それを召喚しているのが、屋上にいる俺が原因なのではないかと向こうにバレたらしい。形振り構わずスナッチしたからなぁ。地上にいる魔物達が上を見上げてこちらを凝視してきたよ。恐らく、鎖を生む原因である俺を排除する気なのだろう。
こうしている今も、魔物の軍勢が屋上を目指して駆け上がってきているはずだ。敵に先手を打たれる前に、俺達も行動を起こさないと。
「大丈夫? 流石にアレだけの数と戦ったら危ないんじゃあ…………」
「まあ、ある程度問題はないよ。相手がランク☆なら『魔物使役』でいくらでも仲間を増やせるし。現段階で注意する点といったら、ランク☆☆のオークくらいかな」
校舎に突入していった魔物の軍勢には、あのオークも含まれていた。だが、今の俺の周りにはレベルアップして強化された仲間が四体。
更に、まだ十体以上の仲間を増やすことも可能だ。俺のスキルを駆使すれば、敵は味方の裏切りにより自滅。俺達が戦うまでもなく勝手に消耗していくという訳だ。
「おっ。お早いご到着だな」
「グギャァギャギャア!」
「ブルゥゥゥッッッ‼︎」
余程急いで来たのだろう。地上から屋上まで駆け上がり、屋上の扉を破るかのような勢いで突入してきた魔物達は、俺を見つけるや怒りを孕んだ絶叫を上げた。
それは、仲間を哀れんで故の怒りか。はたまた、自らの危機を案じての怒りか。
何にしても、俺は死にたくない。だから奴らが俺のせいで怒っていようとも、俺は生き延びるためにお前らを殺す。
「スナッチ!」
敵陣営。先頭の魔物達を仲間にして、同士討ちさせる。
拘束された魔物は、俺の味方と化し、そのまま隣に立つ敵の魔物達に向かって攻撃を仕掛けた。
「皆んな、敵さんのお出ましだ! 主戦力の君らは、防御の陣形を築いてここで待機! 死ぬ気で俺を護るんだ!」
主な戦闘は、同士討ちであぶれた奴らだけを相手にすれば良い。精鋭達は、守備に専念してこちらの消耗を抑えるよう働きかける。
魔物達は、俺の指示に従い、『アーサー』『ラムレイ』『タニグチ ヒカル』『ホワイトスパイダー』は俺を取り囲むようにして陣を引き、戦闘態勢に移った。
「あ、待てタニグチ ヒカル。お前は、この『リトルウルフの爪』で奴らを八つ裂きにしてくるんだ」
「ヴォオオオオ!」
タニグチ ヒカルLV13
HP160/160
ATK22+18
DEF12
経験値2542
スキル
毒の牙、HP自動回復、仲間を呼ぶ
突撃の指示を出されたタニグチ ヒカルは、激戦が繰り広げられる敵の陣地へ足を踏み入れる。
『爪』を存分に生かしての切り裂き攻撃で敵を一つ、二つと撃破していく。LVが高いというのもあるけど、やはり装備付きの魔物は強いな。雑魚敵なら二発くらいで倒せる。
しかも、スキル『HP自動回復』のおかげで多少のダメージなら物ともしないのが良い。こいつを鉄砲玉に使ったのは正解だったようだな。
…………それにしても、こいつまた新しいスキルを覚えているな。
まあ、それは後で詳細を確認しておこう。今は、目の前の敵を退けることが大事だ。
「思ってたより、何とかなっているみたいね」
「いや〜次だよ次」
そう。雑魚ならこの通り問題ない。
だが、ランク☆☆の魔物。スナッチが効かない奴らを倒すのが少々辛そうだ。
「ブヒィィィィーー! ブルルォォォォーー!」
そして、遂にやって来た。
オーク達だ。数は三体いる。
オークLV4
HP250/250
ATK38
DEF17
経験値212
スキル
無し
オークLV5
HP260/260
ATK40
DEF18
経験値268
スキル
無し
先頭の二体。どちらもLVは低く、スキルも無い。数で封殺すれば余裕だろう。
…………だけど。
オークLV20
HP410/410
ATK70
DEF33
経験値8200
スキル
人狩り、肥大化
「LVたっか‼︎」
今までにない強敵。
俺は、奴を前にし、思わず冷や汗を流していた。
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