表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/220

第78話「家政婦」

「はい、これがお布団。寝る時はこれを使って。私は、まだ用が残っているのでこれで失礼するね。それじゃあ、ごゆっくり!」


 十橋先輩は、早口でそう言うと向こうの方へと去っていった。

 余程、忙しいのだろうか。まあ、これだけの人数をお世話しているのだとすれば、私達だけに構っている余裕はないのかも。


「では、私もこれで……」

「ああ、待って!」


 ここへ来た目的の少女が行ってしまいそうになり、私は慌てて彼女を引き止めた。


「ど、どうしました?」

「う……その……」


 しまった。引き止めたは良いけど、なんて言えば良いのか考えてなかった。

 そもそも、なんて勧誘すれば良いんだろう? 出会ったばかりの間柄で、いきなり「仲間になってください!」って言うのも変だし……。


「あ、良い天気ですね」

「はぁ」

「えっと……お名前を聞いても良いですか? 私は、言ノ葉杏里」

「私のですか? 花江(はなえ)水千佳(みずちか)って言います」

「花江水千佳さん……」

「あっ。呼び捨てで結構です。言ノ葉さん、高校生ですよね? 私、中学二年生なので」

「ああ、そうなん……ですか」

「……其方の二人は?」


 花江さんは、私の後ろにいる二人に視線を向ける。


「あ〜……遠い親戚の子です。こっちの子がリリー。そしてこっちがコスモス」

「みー」

「うっす!」

「……変わったお名前、ですね。外国人……それともハーフかな?」

「ま、まあそんな感じです!」


 焦りが顔に出ないように必死に堪えながら、私は肯定した。

 すると、今度はコスモスが花江さんに向かって話し掛ける。


「なあ、花江水千佳。オメエ、『異能者(プレイヤー)』だよな? どういう職業なのかオレに教えろよ」

「えっ? えっ?」


 うわっ! 凄い直球に訊いてきた!

 花江さんは、コスモスの粗暴な物言いに戸惑っている。


(ちょ、幾らなんでも強引過ぎないかな!?)

(オメエがチンタラしているから悪いんだろうが! 何だ、『良い天気ですね』って!)


 その通り過ぎてぐうの音も出ない。

 でも、そんな強引な訊き方じゃあ花江さんが怖がっちゃうと思う。


「わ、私は『家政婦』という職業でした。お掃除やお洗濯が上手に出来る能力です」


 私とコスモスが内緒話をしていると、花江さんがそう言って自分の職業を教えてくれた。


「『家政婦』?」

「う、うん。戦闘向けのスキルは使えないけど、これで皆さんの身の回りのお世話をしているの」

「……何というか、思っていたのと違うな。二階堂の旦那は、コイツを連れて来いって言ったのか?」


 確かに妙だ。

 てっきり、魔物と戦える強い『異能者(プレイヤー)』だから仲間候補に選んだと思った。


「……花江さん。突然、こんな事を言うのも何だけど、貴女に会ってもらいたい人がいるの。良ければ、私たちと一緒に来てもらえないかな?」

「は、はい。その人は、何処にいるんですか?」

「……警察署の外」

「そ、それはちょっと。私、戦えないので魔物に襲われたらすぐ殺されちゃいます」


 勧誘に失敗した。

 まあ、至極当然なんだけど。大体、出会ったばかりの人から「ついてきて」と言われて素直に従う方がおかしい。


(どうする、今からでも旦那を呼んでくるか? オレがひとっ飛びすればすぐに連れてこれる)

(いや、性急過ぎるよ。今はやめておこう)


 花江さんだって忙しいだろうし、「急いで仲間に誘う必要はない」って二階堂くんも言ってた。

 それに、まだもう一人の候補者を見つけられていない。


「つ、都合が悪いなら仕方ないね。この話は、また今度という事で」

「はい」

「そ、それはそうと聞きたい事が……。人を探しているんだけど、この写真の子に見覚えはないかな?」


 私は、二階堂くんに渡された写真を花江さんに見せる。


「……あっ。見た事あります」

「本当?」

「確か、彼処のスペースに居たはず」


 そう言って花江さんは、写真の子が居るという場所へと案内してくれた。

 しかし、その場所には件の子は居なかった。


「うーん。何処かへ行っているかも知れません」

「おい。心当たりはねーのかよ?」

「すいません。私、この人とはあまり話した事なくて。時々、ご飯を持っていったり服を洗ってあげたりしていますけど、そのくらいで」

「でも名前くらいは知っているんだろう?」

「……わ、分かんないです」


 仕方がない。ここにいる全員の顔と名前を覚える方が無理な話だ。


「チッ。何だよ、使えねーな……痛い痛い痛いッ!!」

「みー」


 愚痴を零すコスモスを嗜めるように、リリーがコスモスのほっぺを強く引っ張った。

 この二人のこういうやり取りにも見慣れてきたな。


「けど、ここにいるのは確かみたい。探してみよう」

「みー」

「いててて。……この写真の奴は『異能者(プレイヤー)』だ。なら、外で戦っている連中に混じっているんじゃねーのか?」

「なるほど」


 それなら、ここで待っていればそのうち戻ってくるはず。リリーが大量の魔物を倒したから、そう時間は経たないだろう。


「じゃあ。せっかく場所も用意して貰ったし、彼処で座って帰りを待とうか」

「良いぞ。こんな事もあろうかと、暇つぶしの道具を用意してきたんだ」


 コスモスは、ポケットからある物を取り出した。

 ……『トランプセット』だ。


「ババ抜きでもする?」

「やるか」

「みー」


 こうして、私達はトランプで遊びながら外の人達が帰るのを待ち続けた。

『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』


下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。


お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想 をいただけると嬉しいです

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ