第7話「屋上を目指す」
名前:ニカイドウ ツバサLV4
種族:ヒト
HP115/115
ATK17+15
DEF9
経験値196
スキル
無し
職業
モンスターマスターLV6
仲間4/8
・アーサーLV12 経験値1668
・タニグチ ヒカルLV7 経験値542
・ホワイトスパイダーLV8 経験値602
・ラムレイLV7 経験値500
職業スキル
魔物使役、魔物合成、魔物鑑定、魔物武器化
あれから、また魔物達と遭遇しては使役と合成を駆使して戦況を切り抜けていった。
職業のLVも上がり、新たにリトルウルフを仲間に追加したぜ。
そして、このリトルウルフなのだが良い使い方があることにさっき気づいた。いや、気づいたというか発見した。
ゴブリン達が『乗っていたのだ』。リトルウルフに。
そう。この大型犬くらいのサイズの狼は、ゴブリンが上に跨るのに丁度良いらしく、二階フロアにいたゴブリン達が、まるで馬に乗る騎士かのように狼を乗り回していた。滅茶苦茶カッコよかった。
だから俺も真似してみようと思い、狼をスナッチしてやったんだ。狼の名前は、『ラムレイ』と名付けた。これは、かつてアーサー王が乗り回していたと言われる馬の名前から取ったものである。まさに相応しい名前と言えよう。
俺のアーサーも、これで立派な『狼騎兵』。存分に戦場を駆け回ってくれよ。
あ。あと申し訳程度に俺も装備を用意したぜ。でも、ずっと付けているのは邪魔なのでいまは鞄にしまっているぜ。長い爪があると、教室の扉も開けられない。
あれだな。別に装備でATKが上がっても体の調子が良くなる訳じゃないんだな。でも手始めに教室の机に突き刺したら簡単に貫けたぜ。破壊力は申し分ないようだ。
…………現状確認は、こんなところかな。
いや〜、二階フロアの探索も順調で本当何より。何だかんだ言ったって危険がないのが一番だからね!
「だけど、ここから先はそうも言ってられないんだよなぁ〜」
俺は教室の窓から下を覗いてみる。
そこは、まさに地獄だった。さっきも地獄だったが、今はそれよりも地獄と化している。
まず、死体だった生徒や教師達がゾンビ化していた。
このタニグチ ヒカルのように生気のない顔でヨタヨタと浮浪者にみたいにそこらを徘徊している。それも一体二体という話ではなく、ここから見えるだけでも二十〜三十人。…………他にも、もっと数が居てもおかしくはない。
次に魔物。
数が多いのもあるが、見慣れない魔物が闊歩している。
特に、校門前に居るあの二足歩行の巨体。ゴブリンどころか成人男性よりふた回りは大きい、あの『豚ヅラの魔物』は厄介そうだぜ。
オークLV6
HP270/270
ATK42
DEF19
経験値340
スキル
無し
種族名『オーク』
ランク☆☆
豚の頭をした魔物。雑食かつ食欲旺盛。畑を荒らし、人も動物も構わず襲い、餌とする高い凶暴性を持っている。
オーク。
こいつもゴブリンと同じく、ファンタジー作品では御馴染みのモンスターだが、まさかここまでステータス差があるとは。俺達のパーティーで最強の『アーサーLV12』ですら、全てのパラメーターで奴に敗北している。
ランク☆☆。いつかは遭遇すると考えていたけど、想像以上に厄介な相手そうだ。
「スナッチ! 漆黒の鎖よ、奴に絡み付けッ‼︎」
俺は、二階の校舎から校門前のオークに向けて『魔物使役』を発動した。
たちまち、オークの周囲に漆黒の鎖が出現する。奴の巨体を物ともせず四肢を拘束。そのままスキルの効果で俺の仲間に…………。
「あっ」
バリィーーン‼︎ と、弾け爆ぜる音が鳴り響く。
拘束され身動きが取れなくなったオーク。だが、奴が力を込めた瞬間、絡み付いていた漆黒の鎖が、まるでガラス細工のようにあっさりと砕け散ったのだ。
「やべっ!」
攻撃されたオークが周囲を警戒し始めたので、俺は慌てて身を隠した。
そろりと様子を覗いてみると、異変に気付いたオークの仲間達が校門前に集合をしている。
その数、十数体。
「まだ、あんなに居るのか。くそぉ、これは突破が難しそうだな」
スナッチが出来ない敵の登場。遂に俺の前に、明確な壁が立ち塞がってきたな。
おそらく、スナッチを失敗したのはLVの問題。今の『モンスターマスターLV6』ではオークを仲間に出来ないということだ。
LVを上げていくには、もっと仲間を増やして合成して、スキルを使っていかなければならない。だけど、この校舎内の魔物は殆どスナッチするか倒してしまった。かと言って、校舎に侵入してきた魔物だけをスナッチしては非効率的だ。
LVを大きく上げるには、校舎の外に出るしかない。強い意志を持って。
ランク☆を爆速でスナッチし、合成で魔物を強化。そうして職業LVが上がっていけば、いずれはあのオークも仲間に出来るはずだ。
しかし一番の問題は、あの大量のゾンビや魔物。外に出て、もし万が一囲まれでもしたら一貫の終わりだからな。
「…………いや、待てよ。何も外に出る必要はないんじゃないか?」
俺は、先程のことを思い出していた。
校舎二階から校門近くを狙ってのスナッチ。まあ結局失敗したのだが、問題はその射程距離だ。
ここから校門まで、少なくとも二十メートル以上の距離。そこまで離れていても問題なくスキルは発動した。…………であれば、もっと離れた距離からでも発動出来るんじゃないのか? 安全な校舎内で魔物をスナッチしてLVを楽に上げることが、もしかしたら可能なのかも知れない。
「そう考えると、一番見晴らしの良い場所を確保するのが鉄板か。四階、いや『屋上』がベストだな」
普段は鍵が掛かっていて、生徒は入ることが出来ない校舎の屋上。イタズラで侵入すれば停学ものだったが、今は緊急事態。校則なんて守っている余裕はないぜ。
俺は、仲間達を引き連れ、四階上の屋上へと目指した。
*****
四階より更に上の階。そこの屋上扉前。
俺がこの高校に入学してから、ここに立ち寄ったことは一度もなかった。単純に用が無かったからだ。
まあ、静かでひと気が無さそうなのは良いが、夏場とか冷房なくて暑苦しそうだしさ。俺は、環境には口うるさいんだよ。
…………こんな独り言考えてないで、サッサと扉を開けろよ。と思われるかもしれないけどしかし、俺の手を止めてしまう状況が視線の先にあった。
「扉が開いてる…………」
本来なら閉じられているはずの屋上前扉。しかし、その扉は鍵どころか半開きになっており、外の景色が見えるようになっていた。
単なる閉め忘れ? 誰かが入った? 魔物? それとも人間?
様々な可能性が脳裏を過る中、俺は屋上の地に足を踏み入れる。
誰も立ち入らないからだろう。屋上は少し埃っぽかった。周りには、空調設備や電力変電設備、ウォーターポンプなど色々。
元々、人が立ち入らないようにされているためか、落下防止用のフェンスは無い。屋上の端に移動するのは怖そうだ。でも、ここから下を眺めるためには、端に行かなければならない訳で…………。
「はぁ!?」
俺は、驚き声を上げた。
屋上の端。フェンスも無い、剥き出しの崖となっているそんな場所に、一人の少女が立っていたのだ。
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