第68話「これから為すべきことは」
さて。あの時は他にも何個か質問をしたのだが、取り敢えずはこの辺で終了としよう。
「この通り。コスモスからは、興味深い話を聞けたって訳さ。特に重要なのは、最後にした二つの質問。『スポーンシステム』と『キング』」
「その二つをなんとかしない限り、この街はずっとこのまま……」
「そういう事。まあ、これらに関してはすぐに対処出来るとは思えない。敵は、強大だ。焦らず、落ち着いて行動しよう」
キング。この街にいる全ての魔物を支配下に置いている存在。
だが、コスモスの反応を見る限り、キングは相当の強者……そして残虐なようだ。
出来れば、魔物鑑定で奴の戦闘能力を調べておきたいが、コスモスにも現在キングが何処にいるのか知らないとの事。それに……格上を相手に迂闊な接触は危険が伴う。最悪、死に繋がりかねない。
「コスモス。お前は、一番隊の隊長なんだよな? という事は、他にも隊があるんだな」
「ハイッス。キング軍には、現在一番隊から六番隊までの六つの隊で構成されているッス。それぞれの隊は指定されたエリアを占拠しようと動いていて、人間をぶっ殺したり何やりやってるんッスよ」
「なるほど」
「そして、他の隊長達はオレとは違ってベテラン勢……別の世界からここへ来た方々ッス」
コスモスの話だと、他の隊長はコスモスよりランクもLVも上の連中だそうだ。そして、そいつらが指揮している部下の魔物達は、一番隊の魔物よりもずっと強いらしい。
「コスモスは、キング軍の隊長格では最弱だった?」
「まあ……そういう事ッスね。何せオレ、隊長に任命されたのつい最近の事ッスし」
「うーん。となるとやはり、別エリアに向かうのは危ないな」
それは、俺にとって非常に厄介な事だった。
何故なら、別エリアには俺の実家がある。強い魔物がそこを彷徨きまわっているとなれば、今向かうのは危険。
まあだからこそ、しばらく帰れそうになかったからこのホテルを拠点にしようと考えたんだよな。
「でも、他の隊長達ならきっとキングの情報を持っているはずッス。だからもし、どうしてもキングと会いたいのなら、まずは他の隊長と接触して情報を得る方が無難だと思うッス」
少なくともキングに直接会うよりかはリスクが少ない……と、コスモスは念を押して俺に伝えた。
この様子。どうやらコスモスは、余程そのキングに会うのを拒んでいるようだ。
「じゃあ、その辺は任せる」
「えっ?」
「だって、同じ隊長なら他の隊長と会うのも簡単だろう? ここにいる誰よりも、コスモスがキングの情報を集めるのに向いている」
今後、この世界でどう生きていくにせよ魔物の存在は切って離せない。ならば、そいつらを束ねる長の情報は必要不可欠。
だけど、俺はリスクを犯したくないし、他の者に仕事を任せるのが安全だ。
「という訳で、コスモスを『情報収集係』に任命する。仕事内容は、魔物の長キングの情報を探る事」
「え、えーー……」
「大丈夫だ。仕事に見合った報酬は支払うさ」
労働には適切な対価を。ビジネスの基本だ。
キングの情報は重要だし、良い成果を収めたら餌をたっぷり与えてやろう。
「何もキングと直接あって探りを入れろと言ってるんじゃない。時間を掛けても良いから、少しずつ奴に関する情報を調べていけ」
「うーーーーん。……わ、わかりましたッス」
コスモスは、凄く嫌そうな表情を浮かべたが、最終的には了承してくれた。
魔物使役の効果か。俺の命令には、逆らえないようだ。
「よし。キングへの取り組みは、今のところこれくらいかな。情報が集まるまで、俺達は別の事を頑張ろう」
「別の事?」
「そう。やるべき事があるんだよ」
俺は、スキルを発動する。
直後、空中にディスプレイが現れ、そこにはヘリコプター等の飛行手段を用いて上空から撮影されているような映像が映し出されていた。
モンスタマスターの職業スキル『魔物の眼』。
仲間の魔物が見ている光景を、このディスプレイに表示する能力。つまり、カメラと同じような効果を持つスキルだ。
このスキルがあれば、俺は外へ出る事なく外の世界を見ることが出来る。何故か、無線が使えなくなっている今の状況下では、この能力は実にありがたい。難点を上げるとすれば、音声が流れないという事だな。
「これは、仲間が街の上空を飛んで撮影している映像さ。……ここに映し出されている範囲が、コスモスが任されたエリアらしい」
一番隊が任されたというエリアは、それなりに広い。
結構高く飛んでもらっているから、地上が凄く小さく見える。
「このエリア内にいる限り、俺達は安全だ。何故ならここを指揮しているコスモスは、既に俺達の仲間。コスモスが部下の魔物に命令すれば、襲われる心配はなくなる」
「うん」
「つまり、異能の力を持っていないコトノハさんでも、街を出歩いて平気って訳。……そこで、コトノハさんに一つ仕事を頼まれて欲しいんだ」
俺は、ディスプレイに映し出された一軒の建物を指差す。
「これは、警察署さ。魔物の被害から逃れてきた人達が集まる避難所となっている。仲間達を使ってこの場所を調査したところ、『異能者』も何人か確認する事が出来た」
そして、俺はテーブルの上に幾つかの写真を置いて、コトノハさんに見せた。
写真には、それぞれ人の姿が撮られている。
「これは、俺達の仲間に誘おうと考えている候補者だ。コトノハさんには、この人達と接触して、『勧誘』をお願いしたい」
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