第62話「〜決戦〜 vsグレートオーク④」
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建造物を一撃で破壊するグレートオーク。実際、旧校舎は突進一つで全壊させて見せた。鉄の皮膚を持つリリーと言えど、そんな攻撃を受ければタダでは済まないだろう。
しかし回避は不可能な以上、覚悟を決めるしかない。
リリーは、腕の衝突に備えるよう身構えた。
「バゥ!」
しかし、不意にリリーの体に物理的な衝撃が掛かる。何者かが、彼女の体を横に押したのだ。
押された事で、リリーはグレートオークの攻撃による軌道線上から外れる。
見ると、そこには銀毛の狼ラムレイの姿があった。
「……っ!?」
リリーは、すぐに気付く。この魔物が、自分を助けたのだと。
ラムレイは、リリーの居た場所と入れ替わっていた。それは、グレートオークの攻撃範囲内にいる事を意味して……。
刹那。
ズドォオオオオオオオオンッッ!!
……盛大な地鳴りが響いた。グレートオークの腕が、ラムレイごと大地を殴り付けたのだ。
地割れを生み出す程の威力。
肥大化した腕の下敷きとなったラムレイの生死は、ここからでは確認出来ない。
「みー!」
リリーは、悲鳴を上げた。
一方、狙いを外されたグレートオークは、苦い表情を浮かべる。
「チッ! 邪魔が入った…………グヌゥッ!?」
爆発が起きた。
隙を見せたグレートオークを狙って、インセクトキッズが破壊光線を放ったのだ。
「ヘッ! やっぱり顔が弱点か!」
「小癪な……!」
グレートオークは、二発目の光線を撃たれる前に、再び肉の鎧を顔全体に覆おうとする。
しかし、その直前に一体の魔物が飛び出した。
アーサーだ。
アーサーは、グレートオークが身を守る前に奴の顔に張り付いた。アーサーの体そのものが肉の進行を阻害する
「ヌ……ガッ! は、離れろ雑魚めがッ!!」
グレートオークは、アーサーを振り落とそうと暴れ出す。
だが、アーサーは懸命に堪えた。更には、グレートオークに少しでもダメージを与えようと、自らが手にしている棍棒を顔に叩き込んでいく。
「キサマも消化してくれるわッ!!」
グレートオークの口が大きく開かれた。
スキル『吸引』。
能力が発動された事で、凄まじいパワーの吸い込みが発生し、グレートオークはアーサーを口の中へと飲み込んだ。
「オゲェッ!?」
直後、グレートオークは強烈な痛みを感じた。
痛みを感じた箇所は、体内。ちょうど、グレートオークの『胃』の辺りで、何度も何度も刃物か何かで斬り刻まれているかのような感覚が荒波のように押し寄せていく。
(腹の中で、何かが暴れ回っている……!?)
グレートオークは、直感でそう考えた。
その原因を取り除こうと、グレートオークは胃にあるものを全て吐き出す。
「ぐるるっ!」
グレートオークの口から出てきたのは、二人の少女。『ヒューマンワイト』のサダミネアリサとイイツカパン子だ。
彼女達は、直前に飲み込まれたアーサーを救出して、外の世界へと戻ってきた。
「クソッタレがぁッ!!」
怒り狂ったグレートオークが、二人の少女に腕を叩き込んだ。
しかし、アリサのスキル『陣地形成』がそれを防ぐ。どんな物質も通さない障壁は、グレートオークの攻撃すらも無効化する。
「ナ、ナニ!?」
絶対的だと思っていた自分の攻撃が防がれた。
その事による驚愕、焦り。
そしてそれらの感情が、グレートオークに『隙』を生み出す。
「隙だらけだ」
「みー」
グレートオークは気付けなかった。インセクトキッズとリリー、二体の魔物が自分のすぐそばまで近づいていた事に。
インセクトキッズは、自身の刃を鋭く尖らせた。
リリーは、拳を灼熱の炎で纏わせた。
攻撃が来る。しかし、グレートオークはそれを回避する術が無い。
刹那。
「オラッァァアアア!!」
「みーーーー!!」
まさに、破竹の勢い。
グレートオークの弱点である顔面。そこを集中的に技が繰り出された。
刃による斬撃。炎拳の連打。
二体の魔物の攻撃は、グレートオークのDEFをも上回る威力だった。
「ヌゥアアアアアアアッッ!?!!」
絶叫がこだまする。
かつてない程の攻撃、ダメージを受けて、グレートオークの体から光の粒子が溢れ出た。
そして、浮かび上がってきたステータス画面を見て目を見開く。
グレートオークのHPを表す数値が、既に最大値の半分まで減っていたのだ。
HPの数値は、生命の数値。これが『0』になった時、魔物は消滅する。
つまりは、『死』だ。
この時、グレートオークは、自分が死ぬ事に対して猛烈な恐怖を感じた。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
大地を揺るがす程の咆哮を上げて、グレートオークは自身のスキルを全力で発動させた。
己の限界すらも超える勢いで『肥大化』と『巨大化』、これらのスキルが真価を見せる。
「コイツ……! まだデカくなれるのかッ!?」
インセクトキッズが嘆いた。
グレートオーク。最早、見上げる事も難しい巨大さだ。奴は、ひたすら力を求めた結果、ただの醜い肉塊と化したのだ。
「ギフト!」
直後、グレートオークの顔付近で爆発が起きた。
インセクトキッズの破壊光線……ではない。
旧校舎の瓦礫に埋もれていた少年が、スキルを使って奴に攻撃を仕掛けたのだ。
「二階堂くんっ! だ、大丈夫なの?」
「まっっったく大丈夫じゃない。全身ぶつけて痛いし、なんか歩き難いし。こんなに体に不調を感じたのは、中3の頃に風邪をひいた時以来だ」
そうは言う二階堂だが、言ノ葉が見る限り目立った外傷は無く、所々擦り剥いているくらいのダメージしか負っていないように伺えた。
二階堂は、制服に付いた砂埃を払いながらグレートオークを睨む。
「このお礼は、たっぷり返してやるからな。覚悟しやがれ」
そう宣言した二階堂の瞳には、確かな怒りの光が灯っていた。
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