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第59話「〜決戦〜 vsグレートオーク①」

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 それは、何の変哲もない日の出来事だった。

 突如として起こった魔物の襲来により、世界は滅んだ。

 電話もネットも使えず、外部との連絡手段がない二階堂達にとっては未だ知りえぬ事であるが、魔物という異形の存在は、この街、この国だけではなく、世界各地で現れていた。『計画的な犯行』とも言える程正確なタイミングで。

 魔物は、その圧倒的な数と強さによって人々を蹂躙する。警察も軍もこれらを対処し切れず、人類は滅亡の危機に晒されていると言っても過言ではなかった。

 ……とはいえ、だ。

 それよりも重要な事があるだろう。世界だ、人類だ、等と言っている前に、まずは自分の身の安全を守らなければならないのではないか?

 少なくともこの少年。二階堂翼ならば、そう考える。

 なぜなら彼は、『自己中心主義者』であり、全てにおいて己を優先する男だからだ。


「さあ、これが本日最後の山場だな」


 二階堂は、顔を見上げる。

 そこには、全長十メートル級の豚面魔物グレートオークがいた。

 間違いなく、二階堂が遭遇した中で最強の魔物だ。

 魔物の長であるインセクトキッズを倒した以上、残りの障害はこの魔物しかいない。奴を倒せば二階堂は、今日も枕を高くして眠る事が出来る。


「ブッヒッヒ!」


 グレートオークは、二階堂を見下ろして嫌な笑みを浮かべていた。「負ける気がしない」と、言外に含んでいるのが伺える。

 当然といえば当然か。この魔物は、今日だけで二階堂相手に二度も勝利している。しかも、現在は更なるパワーアップを得て挑んできているのだから、余裕も余裕と言ったところだろう。

 そう、二階堂と二階堂が従える魔物達。それだけならグレートオークは、圧勝出来たかもしれない。

 しかし、今ここにいるのは二階堂だけではなかった。

 言ノ葉杏里、リリー、インセクトキッズ。三人の少女がパーティーに加わっている。

 人員増加。特に、強き魔物の加入は二階堂には喜ばしい事だ。

 何せ、二度ある事は三度ある。その流れを変えるには、パーティーに新しい風を吹かせるべきだろうから。


「ぐるるっ」

「ん? あれ、このゾンビ。何処かで見たような」


 二階堂は、蜘蛛糸で縛られ近くに転がっていたゾンビ二人が気になり、魔物鑑定で調べてみた。

 そしてその二人が、謎の死を遂げた飯塚ぱん子と定峰ありさであると、二階堂は知る。


「何故、こんなところに……。というか、ステータス高いな!」


 二階堂は、突然のことに驚いたが、これをラッキーと捉えることにした。

 漆黒の鎖で先輩方をスナッチ。戦力強化を行う。


「何だかよくわからないけど、棚からぼた餅だぜ! 勝ち札がどんどん揃っていく!」


 二階堂翼。彼は、『運』が良かった。

 これまで様々なトラブルに巻き込まれるものの、彼にはそれを何とかしてしまえる強運があった。

 だから二階堂は、こんな事態になっても何とかなる、何とか出来る、と心の奥底では考えていた。

 二階堂翼の生き様・人生は、そのような感じで作られている。


「さて、先輩方の蜘蛛糸を解かないと……。コトノハさんも手伝ってくれる?」

「あ、うん」


 しかし、二階堂達が行動を終える前に、グレートオークは動き出す。


「吸引!!」


 グレートオークが、自身の口を開いた。あまりにも大きく、それこそ顎が外れたと言わんばかりに。

 元々巨大であるが為に、開ききった口と言ったら、それこそ人間を束にして飲み込めるくらいのサイズだ。

 そして、その例えは決して比喩表現ではないと、この直後に思い知らされる。


「きゃっ!」

「おおっと!」


 突如、凄まじい風が二階堂と言ノ葉を襲った。二階堂は、言ノ葉を抱き締めて、飛ばされないようにその場で踏ん張る。

『吹く』……というより『吸う』ような風だ。風の力は、二階堂達だけではなく、この辺り全ての魔物やゾンビを襲う。

 風の発生源は、グレートオークの口から。

 口の中へと……吸い込まれるような力が働いていた。



【吸引】

 強力な吸い込みをするスキル。物量を無視して無尽蔵に口から体内へと取り込める。取り込んだ物体は凄まじい速度で消化される。



 二階堂は、魔物鑑定でグレートオークのスキルを確認後、詳細を調べて、この現象がスキル『吸引』の力であると気付いた。

 レベルアップで強くなった二階堂ですら、踏ん張るのがキツい。それ程の吸引力だ。並の人間や魔物では、この力に抗う事は出来ないだろう。

 実際、周囲にいた魔物達は次々とグレートオークによって吸い込まれていく。


「ああ、先輩方!」


 蜘蛛糸に縛られていたアリサとパン子も、グレートオークの吸引に抗えず体内に飲み込まれてしまった。

 スキルの説明通りなら、体内に入った者は消化されてしまう。

 二階堂は、二人を即座に切り捨て、残った者達で敵を倒すための思考に切り替えた。


「みんな気を付けろ! 絶対に吸い込まれないよう踏ん張れ!」

「おう!」

「みー!」


 リリーとインセクトキッズは、流石は主力と云うべきかこの風の中でも平然としている。

 リリーは、スキル『火炎放射』でグレートオークに炎を浴びせた。

 高いステータスを持つグレートオークも、リリーの火力には耐えきれなかったらしく、身を退け反らせる。


「破・壊・光・線!!」


 続いて、インセクトキッズのスキルが炸裂。口から放たれた白い光がグレートオークの広い胴体に直撃し、爆発を起こした。


「……小癪な奴らなのだ」


 ミチミチミチッ……!

 グレートオークの肥大化が始まる。奴の両腕が、腫れ物を何十倍にも酷くしたような歪な膨らみを起こしていった。

 あっという間にその両腕は、十メートル級の自分の身の丈より大きくなる。


「ブヒィィィイイイイイイ!!」


 豚に酷似した壮大な鳴き声と同時に、肥大化した両腕が地面へ乱暴に叩きつけた。

 その瞬間。大地は裂け、凄まじい震動が生まれる。

 あまりの揺れに、旧校舎の窓ガラスは立て続けに割れていった。それどころか、壁は崩れ、今にも崩壊してしまいそうだ。元々古い建物だっただけあり、耐朽性があまり良くなかったらしい。

 インセクトキッズと、スキル『浮遊』を習得している二階堂と、彼が抱えていた言ノ葉だけは空中に浮かび上がり、揺れの衝撃から逃れていた。しかし、他の飛べない者らは地面の揺れに怯み、膠着してしまう。

 グレートオークは、膠着したリリーに対して突進を仕掛けた。


「スナッチ」


 漆黒の鎖がグレートオークへと放たれた。突進する奴の体を繋ぎ止めるため、何十本もの鎖が手や足に巻き付く。

 リリーは、体勢を立て直すとその場を離れ、突進を回避する。

 グレートオークの動きを止められたのはせいぜい数秒。漆黒の鎖は、次々音を立てて破壊されていき、完全な拘束をするには強度が足りないのは明らかのようだ。


「グレートオークをスナッチするには、奴を弱らせる必要がある! ダメージを与えていけ!」


 二階堂の合図と同時に、強者達は一斉攻撃をする。

 リリーは炎を吐き、インセクトキッズは剣で斬りかかる。アーサーはラムレイに跨り手持ちの棍棒を振り回していく。

 どれも並の魔物なら一撃で倒してしまう威力の技だ。それらの波状攻撃を受けて、グレートオークも無傷ではいられない。


「ブヒッ」


 ……しかし、それはグレートオークを『本気』にさせるきっかけにもなり得た。

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