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第38話「二階堂翼vsオーク②」

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 第二戦目だ。

 敵は一体。対してこちらは俺と三十の仲間達。

 数の上では圧倒的優位だが、いかんせんステータス差がある。しかも、あいつは俺が用意した武器を装備しているからATKが増しているのだ。

 しかし、今となっては倒せない相手ではない。こっちにもオークはいるし、何よりスキル『魔物使役』があれば一発で仕留められる。


「スナッチ!」


 漆黒の鎖が放たれる。

 強オークは、それを装備している『爪』で弾き返した。

 デカい図体の割に俊敏な動きをしやがる。しかも動体視力も相当高そうだ。

 だが、ここまでは想定内。さあ、次の一手を打とうか。


「デビル。煙幕だ!」


 宙を飛んでいたデビルの口から、真っ黒い煙が吐き出された。

 煙はどんどん充満していき、強オークに目眩しを行っていく。



 デビルLV9

 HP80/80

 ATK11

 DEF5

 経験値536


 スキル

 煙幕



 仲間の魔物達の中には、有用なスキルを持つ者達が何名か存在する。このデビルもその一人。

 スキル『煙幕』。口から黒い煙を出す能力。目眩しに使えそうだと思い、合成せず残しておいたのだ。


「この煙の中じゃあ、どこから鎖が飛んでくるかわかるまい! 喰らえ、スナッチだ!」


 正直、煙が立ち込めているせいで中がどうなっているのか俺にもわからない。「まあ適当に鎖を放っていけばいつか捕まえられるだろう」という希望的観測での攻め。

 しかし、数十という鎖の集中砲火。一発的中すれば必殺となる攻撃を浴びせ続ければ、あの強オークだって倒せるはずだ!

 俺は、ひたすら漆黒の鎖を召喚し、放ちまくった。撃ち込んだ数は、既に数えるのも面倒臭い程となっている。


「ふぅ。これだけ鎖を放てば流石の奴も……」

「ブルッヒィィィィッッ!!」


 その瞬間、黒い煙が強烈な風によって吹き飛ばされ、同時に漆黒の鎖も砕き散った。


「なにぃ!」


 煙が晴れたことで伺えるようになった強オークの姿。その全貌が明かされる。

 ただでさえ歪に肥大化していた腕が、更に大きくなっていた。

 最早、体より大きい。腕の一本の全長は四〜五メートルといったところか。それが『両腕』、つまり二本巨大になっていたのだ。


「グロテスクな格好になりやがって! ホラー映画かぁ!? ええい、オーク二号! ガサツに突っ込め!!」


 校門前で仲間にしたオークに突撃の指示を出す。

 いくらステータス差があろうとも同じオーク。一方的に蹂躙されることはあるまい。


「ブヒィ!? ブルッギヒヒィィィン!!」

「ああっ! フラグを立てたら仲間のオークが秒で倒されたぁ!? ……こうなったら総力戦だ! 全員突っ込めぇ!!」


 俺に、賢い戦略的手段なんて出来るはずがない。

 ならば電撃戦。‥‥要するに脇目も振らず前進させるだけだ!


「いけー!! スナッチスナッチスナッチ!! ……さて、俺は隠れるか」


 危ないことは仲間に任せて、身の安全を第一に考えよう。

 そもそも、俺のスキルは遠距離技だから近付く理由が無い。なんで二階から降りてきたんだ俺。

 と、そこで強オークの様子が変わった。

 奴は、肥大化させた腕を敵の居ない場所に思い切り叩きつけたのだ。

 瞬間、強オークは腕の反動によって宙に跳ぶ。


「なっ!?」


 あれだけの巨体が空を飛んだ。

 あまりの出来事に絶句した俺だが、そんなことをしている場合でないと気づく。

 跳ねた強オークの着地点。軌道線を予測すれば、それは俺が立っている場所ピンポイントだったからだ。

 強オークは、そのデカい図体を持って空中から俺に対して突撃を仕掛けてくる。


「スナッチ!」


 慌てて漆黒の鎖を召喚する。

 但し、放つ対象は強オークではなく、俺自身。

 空中から現れた漆黒の鎖が俺に絡みつき、そのまま上に向かって俺の体を引っ張り上げる。

 その直後に、強オークの巨体が降り立った。

 落下しただけで体育館中を揺らす衝撃が伝わってくる。鎖を使って、あの場から離れるという選択は正しかったようだな。

 俺は、そのまま漆黒の鎖に引っ張られ、再び二階通路へと戻ってきた。


「即興案の割に上手くいったな。鎖には色んな使い方があるという訳か。……おーいアーサー! 猪八戒! そっちはどうだ!?」


 女子更衣室内を見てみると、まだ二人はバリアと戦っていた。

 この調子ならまだ時間は稼げていられそうだ。


「よし。距離は取ったが次はどうするか…………って!?」


 考えている暇もなかった。

 一階のコートにいる強オークが、自身の腕を振り下ろし、その勢いのまま俺へ目掛けて真っ直ぐ『伸ばした』のだ。何を伸ばしたかと言えば、『腕』をである。

 おそらく、スキル『肥大化』の応用だろう。体の一部を太く巨大にするだけでなく、細く長く伸ばすことも出来るらしい。なんて便利なスキルなんだ。

 なんて、冷静に分析している場合ではない。


「スラタロウ!」


 咄嗟に仲間を呼び出した。

 瞬間、真っ直ぐ伸びてきたオークの腕を、懐から現れたスラタロウのボディーが防ぐ。あと少しスラタロウが出てくるのが遅かったら、俺は今頃壁のシミになっていたことだろう。


「スナッチ!」


 次は、ピンチをチャンスに変える番だ。

 漆黒の鎖を放ち、伸びた腕に絡ませてガッチリ拘束。


「よっしゃー! 捕えたぜ!」


 そのまま腕を伝うように鎖を体の方へと伸ばしていく。この状態ならどれだけパワーがあっても力任せに破壊するのは困難だ。


「更に、強オークを中心に漆黒の鎖を全方位展開! 圧倒的な数の鎖でお前の全身動けなくしてやる!」


 スキルを発動。

 俺が出せる最大数の鎖を、地に、宙に、召喚した。

 それらが全て強オークに狙いを定め、直後力強く射られた矢のように一直線に放たれる。


「ブヒィィイイイイインッ!!」


 狙いは見事成功。

 大量に放たれた漆黒の鎖は、強オークの脚、腕、胴体、首、あらゆる箇所を拘束したのだ。


「今だみんな! 一斉に畳みかかれぇ!!」


 俺の一声と同時に、仲間の魔物達が雪崩のように強オークへと押し寄せた。

 魔物達が思い思いに強オークを攻める。殴り、蹴り、噛み付き、引っ掻き、等々。

 本校舎一階で行った猪八戒戦の再来のようだ。あの時も漆黒の鎖でオークの動きを封じて、仲間達の一斉攻撃で弱らせて猪八戒をスナッチした。

 そう。結局は、『数』だ。

 個々の能力が如何に高かろうと、群れれば勝る。偉い人は皆そう言っているのだ!


「はっはー! まるで手も脚も出ないようだなオークよ! 俺の勝ちだ!」


 そう言って俺は、高らかに笑った。

 一時は圧倒的とも思えた強オーク。しかし、今では既に俺達の方が強い。

 これならリリーも、あの羽の少女を敗るのも時間の問題かもな。いや〜未来は明るいぜ〜!


「…………ブヒッ」


 身動きを封じられ、仲間達からの攻撃を受け続ける強オーク。

 その奴が、途端に前屈みの状態となった。


「ん? もう力尽きたか?」


 そう考え、魔物鑑定で状態を確認しようとした刹那。


 ブッッッグゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!と。

 強オークの全身が『十倍規模』の肉団子状態にまで肥大化した。


 本来の姿の面影などまるで感じさせない肉の塊。それが生物なのだと説明して誰が信じるかと思わせる醜き姿。

 強オークの肉体を変形したと同時に、拘束していた漆黒の鎖は勿論、周囲を囲っていた仲間達も為す術なく弾き飛ばされてしまう。


「ブッギイイイイイイイイイイッッ!!!!」


 首を締められた豚の声だ。

 そんな感想が脳裏を過ぎるおぞましい鳴き声が体育館中に響き渡った。

 そして。次に強オークが行ったのは……『ぶちかまし』。

 超巨大超重量によって爆発的な威力と化した突進が、弾き飛ばされた仲間達に対して繰り出されたのだ。


「ギャギャギャァー!!」

「ギギギッ!!」

「ブルッ!?」


 ……結果は、悲惨なものだった。

 強オークのぶちかましを喰らった仲間達は、『轢かれた』などという生優しい現象に至らなかった。『潰れた』。若しくは『擦れた』。

 見上げる程の巨体。重量は未知数。

 そんな生物として規格外の物量を受けて、耐え切れる者がどれだけ居るだろうか?


「……………………」


 ゴブリン。デビル。ゾンビ。オークまでも。

 強オークが繰り出した、ただの『ぶちかまし』によって全体の半分。光の粒子となって消滅してしまった。

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