第2話「魔物と職業とステータス」
ゴブリン。
所謂、ファンタジー作品において代表的なキャラクターだ。その成り立ちとしては、諸説様々であるが、一貫してゴブリンは『邪悪』、『悪意を持った存在』と言われている。
今、俺のすぐ目の前、距離にして六メートルくらい離れた場所に、その悪魔が立っていた。
武器は無し。だが、敵意は十分なようで、俺の姿を目視するや否や、叫び声を上げて俺へ突進を仕掛けてきた。このままでは数秒と経たずに俺とゴブリンは衝突する。
「…………スナッチ!」
俺は、迫り来るゴブリンを指差し、そう声を放った。
『スナッチ』、とは『スナッチモンスター』でモンスターを仲間にする際に主人公が言う決め台詞だ。
まあ、正直に言わせて貰えばこの発言に意味はない。どうやれば魔物を使役できるかわからなかったので適当に叫んだだけ。
これでゴブリンを仲間にできる保証はないが…………どうやら偶然にも功を奏したらしい。
「ギャギャッ⁉︎」
それは、突然の出来事だった。
ゴブリンの足元の地面から、漆黒の鎖が伸びて奴に絡みついた。鎖は、徐々にゴブリンの動きを封じていく。
そして鎖が奴の首に巻きついた瞬間、ゴブリンの体が赤白く発光。
その途端、もがいていたゴブリンは急に動きを止めたかと思うと、巻きついていた鎖が一斉に弾け飛んだ。
≪使役が成功しました。種族名『ゴブリン』が仲間になりました≫
≪職業経験値を獲得しました。職業『モンスターマスター』のLVが2に上がりました≫
名前:ニカイドウ ツバサLV1
種族:ヒト
HP100/100
ATK14
DEF7
経験値100
スキル
無し
職業
モンスターマスターLV2
仲間1/4
・ゴブリンLV1
職業スキル
魔物使役、魔物合成、魔物鑑定
再びアナウンスが流れた後、ステータス画面が表示された。
見てみると、アナウンスの通り『モンスターマスター』のLVが上がっていた。それだけでなく、仲間の欄に『ゴブリンLV1』と追加されており、これは間違いなく、このゴブリンのことを意味しているのだろう。
…………これで、スナッチ成功ということなのか?
試しに何か指示を出してみよう。
「ゴブリン。こっちに来い」
俺が指示を出すと、ゴブリンは言われた通りにこちらに歩み寄ってきた。先程までの敵意は既になくなっているようだ。
すると在ろうことか、ゴブリンからステータス画面が現れた。
ゴブリンLV1
HP50/50
ATK8
DEF4
経験値100
スキル
無し
…………『ATK』と『DEF』とは、おそらく攻撃力と防御力のことだろう。『HP』は、ヒットポイント。つまり体力だ。
『経験値』、これはゲーム的に考えれば敵を倒す毎に貯まっていき、一定値を越えればレベルアップするというシステムに違いない。
『スキル』は、何らかの特殊技能のこと。まあ、これはまだ獲得してないようなので保留にしよう。
「これが、俺に宿った異能な力か。…………良いじゃん。唆るじゃんッ!」
自分が今行ったこと。魔物を使役し、仲間にすることができた事実に打ち震えてしまう。これで、仲間にした魔物を戦わせたりともに冒険したり出来るってわけだ。
俺は、『スナモン』の主人公と同じ、憧れの『スナモントレーナー』になれたんだ!
「お〜よしよし。良い子だぞゴブリン、お前は今日から俺の仲間だ」
前かがみになり、自分の背丈の半分くらいのゴブリンを昔祖父祖母が飼っていた愛犬のように撫でてやる。
こうして愛しく接してやると、この厳つい顔も可愛く思えるのだから不思議なものだ。
俺は、ゴブリンの頭を撫でるなどして数分間。穏やかな時間を堪能した。
「さてさてさ〜て。試したいことは山ほどあるけど、これからのことを考えなければな」
ゴブリンが可愛くてうっかり忘れそうになっていたが、今俺は非常に危うい状況に立たされている。
原因は不明だが、現在校内には魔物が入り込み、沢山の人を殺しまくっている。いくら『魔物使役』のスキルがあるとはいえ、この力もおそらく万能という訳ではないだろう。
何故ならステータス画面の職業欄に『仲間1/4』など書かれてあったからだ。これはおそらく、仲間の数と仲間にできる最大数を表している。現在の俺は、四体までしか魔物を仲間に出来ないということだ。
それに、『魔物使役』は職業LVが高いほど強い魔物を仲間に出来る。…………逆に言えば、LVが低ければ仲間に出来ないということ。もし、格上の魔物と遭遇すれば、非戦闘民の俺に戦う術は無い。あっという間に殺されてしまう。
そのためには、もっと仲間を増やして戦力を高めていくしかないな。さっきの感じからして職業LVは、仲間を増やすと上がっていくようだし。それにもう一つのスキル『魔物合成』。これも気になる。仲間が増えたら早速使ってみよう。
「まだまだチュートリアルだ。最強の『スナモントレーナー』になるために、精進していくとしますか」
俺は四階廊下を突き進み、さらなる魔物と出会うために探索を開始する。
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