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第191話「肉塊」

『魔物』。

 それは、この世界をおかしくさせたそもそもの発端であり、倒すべき人類の敵。彼奴らが現れてからおよそ十日が経つが、未だその正体は謎に包まれている。

 そんな存在を意のままに服従させる最強の力が、『モンスターマスター』。

 かつて、モンスターマスターの力を得たばかりの二階堂翼は、数十体程度の数しか魔物を支配出来なかった。しかし、あれから更なる成長を遂げた彼は、既に数千体に及ぶ数の魔物を掌握出来るようになっていた。

 現在、エレ・リッツマンホテルとその周辺には、二階堂翼が支配した数百体の魔物が居り、ホテルの警備や清掃、物資の管理などの様々な業務をこなしている。外に出れば、家や店に上がり込んでは物資を頂戴し、根城であるこのホテルに運ぶ。

 本来なら敵であるはずの魔物が、二階堂翼という一人の男に尽くすことに魔物達は疑問すら抱いていなかった。二階堂翼が命令すれば、彼らはその命すら差し出すだろう。


「にゃあー」


 そして今、ここエレ・リッツマンホテルの地下二階で、二階堂翼に支配された大勢の魔物達がその命を散らしていた。

 地下に隔離していた凶悪な魔物『ネコ』が抜け出し、暴れているのだ。

 警備の魔物達は、必死になってネコを抑えようとするが、まるで歯が立たない。

 ネコの攻撃で体に大きな傷を負い、悲鳴にも似た叫び声を上げながら倒れ伏す一体のゴブリンが居た。

 光の粒子となり消えていくゴブリンを尻目にし、アーサーは目の前のネコに向けて視線を移す。


「最悪だ」

「まあ、ある意味想定内だけど。でも、よりにもよってこのタイミングで脱走なんて、間が悪いというかなんというか」


 隣にいたラムレイがため息混じりにそんなことを呟いた。

 二人は、今尚戦闘が続いている通路の奥を凝視する。

 通路の奥は、戦いの余波で照明が破壊されてしまったためか薄暗く、敵の姿がはっきりと見ることが出来なかった。


「だが、こうなってしまっては仕方がない。早急に片付けるぞ」

「先に翼様へご報告した方が良いんじゃない?」

「それは他のモノに任せればいい。今、我らがするべきは、コイツの無力化だ」



【名前】アーサー

【種族名】ゴブリンヒーロー

 [ランク]☆☆☆☆☆

 [LV]84

 [HP]9190/9190

 [ATK]1548

 [DEF]834+214

 [EXP]483201

 《スキル》5種類


 《スキル詳細》

 武器召喚<鉄の棍棒>、血海の渦、サンドマン、風のワルツ、石の皮膚



「……まあ、そうね。他の奴らじゃ相手にもならないだろうし。私達がやるしかないわよね」



【名前】ラムレイ

【種族名】グレートガルム

 [ランク]☆☆☆☆☆

 [LV]80

 [HP]8605/8605

 [ATK]1501

 [DEF]798+203

 [EXP]512811

 《スキル》5種類


 《スキル詳細》

 針毛、ロックカット、誓いの指輪、電撃、仙人の毛



「出し惜しみは無しだ。最初から全力で行くぞ」

「はいはい」


 アーサーとラムレイは、覚悟を決めて通路を突き進む。

 二人は、数千体の魔物達を束ねる隊長クラス。いずれも、あのグレートオーク『アトラス』程度ならば軽く蹴散らせるだけのステータスを持っていた。

 更に、モンスターマスターの職業スキル『魔物防具化』により作られた装備でDEFを増加。二人の準備は整っていた。

 しかし、そんな二人であっても、この先に居る『ネコ』を止めるのは容易ではない。


「……我が主人よ。使わせていただきます」


 アーサーは、懐から赤いポストを取り出す。

 二階堂翼のスキル『ギフト』によって作られたアイテムだ。アーサーは、ポストの中から一振りの大斧を取り出し、構える。

 これは、かつて二階堂翼達と激戦を繰り広げたグレートオーク『アトラス』の大斧。高い攻撃力もさることながら、装備することで複数のスキルを発動することが出来る。


「貴様ら、そこを退けっ!!」


 アーサーは、先にネコと交戦していた他の魔物達に忠告した後、腕を大きく振りかぶった。


「スキル『風のワルツ』!!」


 直後、地下通路に大風が起こった。

 風を自在に操れるこのスキルは、狭い空間でこそ真価を発揮する。

 逃げ場のない密閉空間に突如出てきたエネルギーの衝突により、眼前で戦いを繰り広げていた魔物達は盛大に吹き飛ばされた。


「貴様らでは無駄に命を散らすだけだ!! ここは我らに任せて、貴様らは早急に出口を塞ぎに行け!! 彼奴を外へ逃すなっ!!」


 アーサーは、もう一度大風を吹かせ、ネコの足止めを試みていた。その隙を見て魔物達は立ち上がり、一目散にその場を離れようとする。

 しかし、ネコの身のこなしは大風さえも受け流した。


「にゃあー」


 ネコは、壁を走った。

 まるで凹凸が見当たらないつるつるの壁にも関わらず、その動作は俊敏だ。先端から伸びる『爪』を上手く支えにして、地面を駆けるのと同じ要領で移動している。

 まさに縦横無尽。後手に回れば一方的にやられるのは明白。

 かと言って、あの機動力を見れば闇雲に攻撃したところで命中は出来ないだろうと、アーサーは思った。


「サンドマン!」


 アーサーは、スキルを発動し、周囲に砂の化身を複数体出現させた。

 スキル『サンドマン』。

 その姿は、人の形を象った砂そのもの。戦闘能力こそ高くはないが、撹乱役としては十分機能する。

 サンドマンは、迫り来るネコに突進を仕掛ける。まずは、少しでも敵の機動力を削ろうという試みだ。


「にゃ」


 接近するサンドマンに対して、ネコは何らかのアクションを起こすとアーサーは予想した。

 しかし、実際は違った。『何もしなかった』のだ。


「っ!?」


 アーサーは、目を見開く。

 サンドマンがネコに接触した直後、サンドマンの体がネコの肉体に『取り込まれた』。

 まるで抜型でくり抜かれた後のクッキー生地のように歪な形となり、体の大部分を失ったサンドマンはバラバラに崩れてしまった。

 他のサンドマンも同様、触れるだけで体の一部を抉り取られる。

 一秒の足止めすら叶わなかったことで、ネコはアーサーとラムレイに急接近。バッと彼らの真上へ跳躍し、そのまま地下通路の天井にぶら下がる格好で二人を凝視していた。


「にゃにゃにゃ」


 アーサーとラムレイは、天井に視線を送る。

 すぐそこまで近づいてきたことで、この薄暗い空間でもネコの姿がハッキリと見えるようになった。



 そうそれは、謂わば『肉の塊』だった。



 おおよそ『猫』とは似ても似つかない、まるで様々な内臓を組み合わせたかのようなグロテスクなフォルム。

 腕や脚と思われる場所には複数の触手が伸びており、ピンク肌の頭には鋭い牙を覗かせる恐ろしい口元と、無数の目玉がギョロリギョロリと動いているのが分かる。

 ただ見ているだけで精神を蝕まれそうになる容姿。

 その悍ましさが原因で、ネコはこの数日間ずっと地下に閉じ込められていたのだ。

 しかし、遂に今日、ネコは脱走を企てた。


「にゃあー!」


 そう、これこそが二階堂翼が生み出した融合生物。

 種族名『リバイバルキャット』。


 規格外れの不滅の猫が、アーサーとラムレイに襲い掛かる。

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