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第180話「エルダーサキュバス」

「今日の先輩、なんかおかしいんッスよ。さっきから言ノ葉杏里にべったりくっ付いて離れようとしねーんッス。そんで、引き剥がそうとしたらスゲー嫌がるし」

「うーん。リリーが魔物の本能に目覚めて暴走し、コトノハさんを餌か何かと認識したという可能性は?」

「確かに、言ノ葉杏里は餌としてちょうど良さそうな奴ッスけど」

「あれ? 私、褒められてるの? それとも貶されてるのかな?」

「少なくとも褒めてねー。いいから、オメエは先輩を説得しろ」

「でも、幾ら話し掛けても反応してくれないの。心ここに在らずというか……」


 コトノハさんは、自分に抱きついているリリーに視線を向ける。

 リリーは、目をハートにさせていた。蜘蛛の糸でぐるぐる巻きに拘束しているコトノハさんをまるで抱き枕のようにギュッと抱きついている。

 いや、ただ抱きつくだけではない。

 すり寄り、頬擦りし、熱い吐息を漏らしながら頬を赤く染めていた。それこそ、恋人と添い寝でもしているかのように。


「みー♡ みー♡」

「今朝からずっとこんな調子で。ずっと抱きついてるだけだから敵意は無いと思うんだけど……」

「ふむ、確かに。少なくとも、リリーが今すぐコトノハさんを食べちゃうということは無さそうだ」

「まあ、別の意味で食べられそうにはなっているッスけどね」

「「別の意味って?」」

「エッ? それ、オレの口から言わせるんッスか!?」


 コスモスは、何故かギョッとした様子を見せ、それから咳払いをした。


「とにかく、先輩の様子がおかしいのは明らかッス。今何が起きているのかを知るためにも、念のため原因を探るべきだと進言するッス」

「他人の心配をするとは。コスモスが二人と仲良くなれているようで俺は嬉しいよ」

「べ、別にそういう意味で言ったんじゃないッス」


 コスモスが慌てたように否定する。

 しかし、最近のコスモスの動向を見るに、三人の関係性は悪くないように思える。こんな朝っぱらからわざわざ顔を見せに部屋まで来ている訳だし。


「ふむふむ。まあ、何にせよ原因究明には賛成だ。今この世界は、未知に満ち満ちている。ちょっとした見逃しが大きな災いを呼び寄せるかもしれないからねぇ。……という訳で、自分が犯人だという奴は隠さず名乗り出るように」

「イヤイヤ。そんな奴出てくる訳……」



「ここに居るよーっ!!」



 大きな声で何者かが名乗り出てきた。

 振り向くと、そこに居たのは背中に悪魔の羽を携えた少女だった。やたら露出の多い衣服を着用し、ピンク色の髪の毛の間からは二本の角まで生やしている。

 俺は、直感的に彼女が『魔物』だと理解した。……まあ、直感的というか、単にスキルが反応しただけだけど。


「君のような魔物は、初めてみる。しかも、包囲網を破ってここまでやって来るとは只者ではないと見た。申し遅れたけど、俺は二階堂翼。君の名前を教えてくれるかい?」

「リリスは、リリス! キング軍一番隊隊長のリリスだよっ。覚えておいてね♡」

「アンッ? 一番隊隊長だと〜?」


 リリスの言葉に反応したのは、コスモスだった。


「アハ♡ 元隊長さんじゃんっ! 確か名前は、コスモスちゃんだよね?」

「なんだコスモス。お前、隊長クビになってたのか?」

「うんうん! コスモスちゃんはね〜。キング様を裏切って人間の味方になっちゃったからクビになったのっ。で! 代わりにこのリリスが、ヘブライ様の命で隊長に就任することになったんだ♡」

「くぅぅ。十中八九わかっていたけど、やっぱりオレのことはキングの耳にも入ってたか」


 コスモスは天を仰いだ。

 隊長でなくなった悔しさ虚しさというより、裏切りをきっかけに起こるキングからの報復を恐れての反応だろう。

 しかし、今はコスモスのことはどうでもいい。

 問題なのは何故、リリスがここに現れたのかである。


「俺が知りたいのは、たった一つだよリリス。君が俺の味方か敵かという事実確認さ」

「んっと。立場上は、『敵』ってことになるのかなー? あ、でもでも! リリスは、二階堂くんを懲らしめるつもりは全然無いんだよっ」

「仲間のリリーが今、こんな風になっている」


「みー♡ みー♡」


「……彼女をこんな状態にしたのは、どうやら君だそうじゃないか?」

「うんっ! リリスは、『エルダーサキュバス』っていう、サキュバスの中でも上位の種族なの。私のフェロモンに当てられると、ヒトもモンスターもみーんな『愛』で胸いっぱいになって、幸せな気持ちになれるんだっ♡」

「はーん、サキュバスね。つまり劣情を活性化させる能力か。オメエが側に居るだけで、周りの奴らは今の先輩みたいになっちまうと」

「でも、何で俺達は何ともないんだ?」

「生物としての格の違いッスよ。旦那は言わずもがな、オレだってランク☆☆☆☆☆のモンスター。こんなちんちくりんのサキュバスのフェロモンなんて効かないんス」

「なるほど。じゃあ、この件はお前に一任しようコスモス。リリスの相手をしてやれ」

「かしこまりましたッス」


 コスモスは、意気揚々とリリスに向かって歩み寄る。勝てるという自信に満ち溢れているようだ。

 実際、この数日間でコスモスのLVは着々と上がっていた。更に俺からのプレゼントでスキルを幾つか授けてるので、以前よりかなりパワーアップしている。

 少なくとも、ぽっと出の魔物程度に負けることはない。


「オウオウオウッ! 新顔風情が良い気になりやがって!! 誰の許可取って隊長面してンダァコラッ!!」

「キング様とヘブライ様」

「……………………ッ!! そ、そんな事は、どうでもいいんだよッ!! ヤイヤイ、先輩への礼儀がなってないんじゃねーかァ!? このオレが教育してやる、覚悟しろッ!!」


 そう言ってコスモスは、飛び掛かった。


 コスモスVSリリス。

 新・旧隊長同士の戦いが今、始まる!

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