第11話「自己中の意思」
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「お前らも跳べぇ!! 一時退却だぁあああ!!」
俺がそう指示を出すと、アーサーとラムレイとホワイトスパイダーは次々とスライムの上に落ちていった。
今、オーク達は戦闘中だ。その間、稼いだ時間で少しでも奴らから距離を取る!
「取り敢えず逃げれたけど、まだここは危険だ! すぐにどこかへ避難しよう!」
「ちょっと! 屋上から跳ぶんだったら事前に一声かけてから跳んでよ!?」
「ゴメン! 緊急事態だったからさ。許しておくれ!」
安全だったとはいえ、屋上から落とされたのだからコトノハさんが怒るのも無理はないだろう。お小言なら後でいくらでも聞こう。今は、オーク達から身を隠せる場所を目指すのが先決だ。
俺達が落下したのは、人工芝生が敷き詰めたれた広い裏庭だった。脇に設置されている花壇の花は、こんな地獄と化した校内でも綺麗に咲いている。何ともいじらしいじゃないか。
「…………ここには、今のところ魔物の姿はないね。通りに出ればすぐ裏門に行けるよ。今なら見張りを切り抜けて脱出できるかも」
「脱出…………、しないほうが良いんじゃないかな?」
「えっ?」
「だって私達、外がどうなっているのか何も知らない訳だしさ。下手に動き回るより、救助の人が来てくれるのを待っているのが安全だと思うよ?」
「救助…………?」
意外な言葉を耳にして、俺はしばし思考を停止する。
そして、次第に回復していく頭の中で、俺は静かに納得をした。
「なるほどなるほど。確かに、こういう災害時って警察や自衛隊が助けに来てくれるもんなんだよなぁ。だからみんな税金を払っている訳だし」
「まあ、その救助がいつ来るのかが心配ではあるけど。こんな事態、今までに無い出来事のはずだし」
「うんうん」
「学校のみんなも救助が来るまで何処かに隠れているんだと思う。多分、体育館や旧校舎辺りかな。そこへ合流すれば…………」
「嫌だ」
「…………えっ?」
「嫌だよ。合流なんて。そもそも俺、人が沢山いる場所嫌いだしさ」
全く、恐ろしいことを言いやがるぜこの子は。
何が悲しくて魔物の襲来如きで大勢の場所へ向かわなければならないのか。そんなことするくらいなら死んだ方がマシだ。
「俺は、絶対に合流は嫌だ。コトノハさんが皆のいる場所へ行きたいっていうなら構わない。ここで解散しよう。僕は、未だ見ぬ出来事と巡り合うため、外の世界へ旅立つからさ」
「な、なに言っているのっ? 危ないよ、外もきっと怪物だらけのはずだし…………死んじゃうかもしれないんだよ!?」
「死? 死なんて怖いものか。自分の意思を、貫けなくなる事よりは」
俺は、それだけ言うと彼女と離れて、仲間の魔物達と一緒に裏門を目指した。
裏門から出た後は、また周辺を探りつつ情報収集だ。何にしても不可解なことが多い現状で、少しでも情報を得る必要がある。
まずは、敵の勢力図の調査。それと同時に拠点になりそうな場所を探して、食料と水を…………。
「ま、待ってよッ!!」
「おっとぉ!?」
突然、服を掴まれたので思わず前のめりに倒れ掛ける。
振り返ってみると、コトノハさんが未だこの場を離れておらず、俺の服を掴んで真剣な表情で俺を見ていた。
「ど、どうしたの? もしかして、皆がいる場所まで移動するのが怖いのかな? ランク☆程度の魔物なら、大した脅威じゃないから上手く切り抜ければ…………」
「そうじゃない! …………何で、君は。死ぬのが怖いんじゃないの?」
「へ? それはもちろん、死ぬのは怖いさ。でも俺は、死ぬより嫌なことがあるんだ」
「死ぬより、嫌なこと?」
「そうだよ。大勢がいる場所へ行くことだろう? 人に命令されることだろう? 誰かから危害を加えられることだろう? …………まあ、色々さ。俺には、自分の命よりも大事なことがあるんだ。そして、命を捨ててでもやってみたいことがあるんだ」
「……………………」
コトノハさんは、呆然としていた。
まるで、自分がこれまでの人生で、想像もしてこなかったような存在を目にしたかのような、驚愕と感動を孕んだ瞳で俺を眺めている。
「えーっと…………、何その目? ちょっとくすぐったいんだけど」
「…………私も行く」
「え?」
「私も、君と一緒に付いていきたい。良いかな?」
「ええ〜?? みんなが居る場所に行くんじゃないのぉ?」
「行かない。…………それに、私も人がいる場所。好きじゃないしさ」
「うぅ〜ん、そう? じゃあ、まあ構わないけど」
「ありがとう」
「…………はい」
コトノハさんから感謝の言葉を言われて、俺は生返事をした。
何というか、女の子というのはよくわからないな。
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