第10話「二階堂翼vsオーク①」
≪職業経験値を獲得しました。職業『モンスターマスター』のLVが11に上がりました≫
レベルアップのアナウンスだ。
しかし、今はそれに構っている場合じゃない。強敵が目の前にいるんだ。
「噛みつけ! タニグチ ヒカル!」
LV20のオークに対して、攻撃の指示を出す。
タニグチ ヒカルのスキル『毒の牙』。攻撃した対象に毒のダメージを持続して与えることが出来る効果を持つ。
これで、奴のHPを少しでも減らすことが出来ればやり易くなるはずだ。
…………しかし、どうやら見通しが甘かったらしい。
「ブヒィィィーーー!」
瞬間、オークLV20の腕が『膨らんだ』。
本人の半身を超えるほどに肥大化したその腕は、まるで何本もの腕が重なったかのように歪な形状をしていた。
暴力的となった筋肉の塊が振られ、近づいてきたタニグチ ヒカルを場外まで殴り飛ばす。
「グォオオオオオオッ!!」
「た、タニグチッ!?」
この屋上には、落下防止用の柵がない。
殴り飛ばされたタニグチ ヒカルは、そのまま勢い余って地上へと落ちていった。
「タニグチィィィーーー!! ちっくしょおおおおおタニグチを殺りやがって、許せねえ!!」
標的変更だ!
雑魚敵と戦わせていた仲間達を、オークLV20に一斉攻撃を仕掛けるぜ!
指示を受けたゴブリン、リトルウルフ、デビルといった魔物達が、オークに無数の技を浴びせていく。
しかし。
「な!? ダメージが…………入らないだとぉ!?」
どれだけ攻撃を放っても、奴のHPは一つも変動はしなかった。
考えられる理由は、ステータス差。俺の仲間のATKが、オークLV20のDEFを下回っているから。
憶測ではあるが、戦闘へのダメージ計算は『ATK一DEF=ダメージ』と言ったところだろう。これなら、仲間がオークにダメージを与えられないのも納得出来る。
「ブルゥヒィィーーーーー!!」
そして、反撃が始まった。
敵オークは、降りかかる火の粉を払うかのように仲間達を蹴散らしていく。たった一撃でほとんどが瀕死、中には即死する魔物もいた。
その戦闘模様は、まさに大人と子供。圧倒的な体格差とステータス差が、俺たちを蹂躙していった。
「まだまだぁ! スナッチ&魔物武器化!!」
上限の空きが出来た側から仲間を増やしていく。
それだけではない。仲間にした魔物を『魔物武器化』で武器に! 他の仲間を武装させて強化するぜ!
「これで仲間のATKはお前のDEFを上回った! 畳み掛かれぇぇぇぇ!!」
攻撃力が上がった魔物達で群れを作り、第二波を放つ。攻撃力の高いリトルウルフの武器を装備した魔物達なら、少なからず奴へダメージが通るはずだ。
…………しかし。
しかし、これは…………。
「ジリ貧ね。あの子達じゃあ、あの怪物を倒せない」
「ああ。いくら数の優位があり、装備でATKを底上げしても力の差は明らか。このままでは全滅する」
見れば先程スナッチした俺の仲間は、既に半数を下回っていた。元々のDEFが低いので一撃死してしまうからだ。
一方、オークLV20のHPはまだ四分の一も減らせてない。しかも他の二体まで戦闘に参加して奴のサポートを行っていた。
状況は、圧倒的に向こう側が勝ち越していたのだ。
「まずい…………!」
「どうする? 降伏する? それとも…………ここから身を投げて自殺するとか?」
「どちらも御免だね! この二階堂翼。見下げられることと死ぬことが何より嫌いなんだ!!」
ならば取れる手段は一つしかない。遂に『アレ』を使う時がきたな!
俺は、コトノハさんの手を取り、屋上の端を走り出した。柵もない、剥き出しの崖へとだ。
「えっ。ちょっと!?」
「行くぞコトノハさん! 跳べぇぇええええええええ!!!!」
「嘘、えぇえええええええっ!?」
俺は、コトノハさんを道連れに屋上から跳び降りた。
地上までの高さ、約十メートル。到底、助かる高さではないが、俺には秘策があった。
「スライムッ!」
俺は、落下しながら真下に向かって指示を飛ばした。すると、落下地点にいた青色の物体が四方に広がったのだ。
こいつは、屋上でLV上げをしていた時に密かにスナッチしておいた新しい仲間。プニプニの青いボディが特徴的な魔物『スライム』だ。
こいつを俺達が飛び降りた真下、落下地点に待機させておいた。
俺はコトノハさんと一緒にスライムの体に落ちると、スライムが落下の衝撃を吸収。結果、まるでトランポリンの上に落ちたかのように「ポヨン!」と弾み、俺達は事なきを得た。
『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』
下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。
お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!




